シアと勝負の結果は当然俺の圧勝で終わった。けれど俺はこのシア・ハウリアを仲間として認めることにした。それだけの根性と覚悟は確かに持っていたから。
《勇気がありますね》
《ええ、私もシアを評価します》
クロノスとへレスも俺と同様にシアを強く認めて評価した。
ああ、こいつはもっと強くなるだろう。家族を護れるぐらいにな……………。
……………まぁ、既に護られるだけのハウリア族は死んだが。
ハジメの訓練もとい洗脳で豹変したハウリア族はもはや自ら獲物を狩るぐらいに頼もしくなった。前よりかはいいとは思うが流石にやり過ぎだとは思うが。
そんなハウリア族は置いておいて俺達は本来の目的である【ハルツィナ樹海】にある大迷宮がある大樹までやってきたのだが、すぐに攻略は無理であった。
―――四つの証
―――再生の力
―――紡がれた絆の道標
―――全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう。
石板にそう書かれていた。
七大迷宮を四つ以上攻略した上で再生に関する神代魔法を手に入れて、亜人の協力が必要だった為にすぐに攻略は不可能だと判断して後回しにすることにした。
そして俺達というかハジメについて行こうとするハウリア族を置いて俺達は新しい仲間であるシアを連れてひとまず迷宮攻略前に物資を揃える為に町に訪れて冒険者ギルドで素材の買取りをしてそこで出会ったおばちゃんから貰った地図にある‶マサカの宿〟を紹介してもらった。
「いらっしゃいませー、ようこそ‶マサカの宿〟へ! 本日はお泊りですか? それともお食事だけですか?」
カウンターにいた元気な声で接客をしている女の子にハジメが言う。
「宿泊だ。このガイドブック見て来たんだが、記載されている通りでいいか?」
「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。はい、書いてある通りですよ。何泊のご予定ですか?」
「一泊でいいよな?」
「そうだね。明日には動くから」
「ああ、一泊の食事付きで、あと風呂も頼む」
男女分けて入るとして二時間確保したハジメだったが、どういうことか女の子が驚いていた。
まぁ、そういうことに敏感な年頃か……………。
「え、え~と、それでお部屋はどうされますか? 二人部屋と三人部屋が空いていますが……………」
「ああ、それなら」
「…………………私とハジメで一部屋。後は先生達で」
俺達が二人部屋にしようとしたらユエがそう言ってきた。そこにシアが。
「ちょっ、なんでですか! 私だけ仲間はずれとは嫌ですよぉ! ハジメさんとユエさんと私で三人部屋でいいじゃないですか!?」
猛然と抗議するも、ユエはさらりと言う。
「……シアがいると気が散る」
「気が散るって……………なにかするつもりなんですか?」
「……………なにって……………ナうっ!」
「ユエ! こんなところでそんなこと言っちゃいけません!」
「……………………ごめんなさい」
ユエが言い切る前に桜の鉄拳がユエの頭に落ちる。
「たく、俺とこいつで二人部屋。残りは三人部屋で頼む」
「は、はい!」
俺は二人部屋の鍵を手にして早速部屋に向かう。
「と、ハジメ。お前風呂はどうする?」
「ん? ああ、後でいい。先に少し寝ておきたい」
「わかった。桜、行くぞ」
「うん、ユエそれにシアも宿の人に迷惑をかけないようにね?」
「……………………んっ」
「はい……………」
二人は頷くもどこか不満そうでそれに気付いたハジメは小さく溜息を溢していた。
そうして俺達は部屋に向かう道中、あることを思い出してそれを伝える。
「ハジメ、それにユエもシアも。俺達のことについて知りたいのなら後で部屋に来てくれ。話してやるから」
少ししてハジメ達は俺達の部屋に訪れて話を聞く体勢となると俺は口を開く。
「端的に言えば俺達
「……………………随分な言い方だな。それって奈落の底で魔物を喰った俺みたいなものか?」
「少し違うかな? 南雲くんは確かに魔物を食べて変わったけどそれでもベースは人間だよ。けれど私達は能力もそうだけど肉体面も人間を辞めているの」
「……………どういう意味?」
首を傾げるユエ達。だがその疑問も当然だな。
「そもそもどうして俺達
「ストレス?」
「
「そういや、聞いたことがあるな。人間はストレスを抱え込むと心身に影響を及ぼすって。だがそれがどうしてお前等のようになるんだ?」
「……………………南雲くんは元の世界で魔力の代わりになるものがなにかわかる?」
「魔力の代わり? そんなのわかるわけっ!? ……………そうか、そういうことか」
「……………………んっ、なるほど」
「え? え? どういうことなんですか!?」
どうやらハジメとユエは気づいたみたいだな。
「気付いたとおり、ストレス、負の感情が肉体を変化させつつ俺達の体内に魔力の結晶が構築していく。負の感情が魔力の代わりになっているんだよ」
「でもそれで
「なんだよ、それは?」
「絶望を抱えたまま死ぬことだ」
「「「っ!?」」」
その言葉にハジメ達の表情が強張る。
「俺も桜も両親に捨てられ、絶望と共に命を落とした。その結果、体内に構築している魔力の結晶が壊れて特殊な能力を持ち、人間以上の身体能力を有した俺達、
「南雲くんは確かに変わったけど多分寿命は人間と変わらないし、元の世界で生活すれば時間はかかるけど日本にいた頃の南雲くんに戻れる可能性もある。けれど私達はもう人間には戻れない」
「言ってしまえば俺達は人間の醜さから生まれた負の存在。俺も桜も人間に対して嫌悪感や憎悪を抱いているし、そんな人間を支配下に置こうとする組織、
この世界に転移する前に潰したからもうないが……………。
「元の世界では私達
「色々な種族が存在しているこの世界なら俺達は幸せを手に入れることができる。その為に俺達は異世界に渡る方法を調査し、戦い続けてきたんだ」
俺も桜も自分達の事そして組織のことも全て話した。すると……………。
「……………………なるほどな」
「………………ぐす…………戒も先生も……………つらい……………」
「ひぐ、ぐす、ひっぐ」
両腕を組むハジメに涙を流すユエとシア。
「まぁ、幸か不幸か俺達は組織の悲願、異世界に来ることは出来た。後は一度元の世界に戻る方法を探してまたこの世界に戻る。そしたら俺も桜もこっちの世界で暮らすんだ」
「うん。最終的にはユエ達とは違う世界で生活することになっちゃうけど私達の幸せはこっちにあると信じているから」
「この世界で桜と一緒に生活するって決めてるしな」
「うん」
見つめ合う俺達。
そうだ、他の誰でもない俺が桜を幸せにしてみせる。この気持ちはこの先何があっても変わらない。
俺達の気持ちも想いも一緒―――。
「あ~、イチャつくのは構わねえが俺達のいないところでしてくれねえか?」
ハジメの一言に俺と桜は見つめ合いすぎていたことに気づいた。
「………………んっ、ハジメ、私達も」
「……………………後でな」
「もぉ~~~!! 私だけ仲間外れにしないでください! ハジメさん! 私とも!」
「……………………図々しい。お邪魔ウサギはどっか行ってて」
「ひどい!!」
羨望の眼差しを俺達に向けながらハジメに寄り添うユエにそんなユエを羨ましそうに騒ぎ出すシアに俺も桜も思わず笑ってしまう。