俺達は
この世界の情報を集め、元の世界に帰還する方法とまたこの世界に戻ってこれる手段を探す為に組織の一員、
「桜!」
「うん!
双銃をその手に魔弾で魔物を駆逐しつつ桜の精霊の力を纏わせた矢が魔物を殲滅していく。
城から飛び出して約一週間。俺達は既に【オルクス迷宮】の百階層を超えているが、そこから先の魔物の強さはこれまでとは桁外れの強さを持っている。
真の【オルクス迷宮】と呼ぶべきか……………俺達はそこにいる。
「まさか百階層を超えてもまだ階層があったなんてね」
「ああ、それも出てくる魔物は全てベヒモス以上ときた」
脚力が異常な兔モドキ、雷を纏う狼、爪が長い熊。俺達が
元の世界ではこれぐらいの魔物クラスとは何度も戦った。
それに比べればここにいる魔物はまだ可愛い方だ。
「さて、南雲がここにいるなら何かしらの痕跡がある筈なんだが」
周囲を見渡しても特にそれらしいものは見つからない。
技能にある〝夜目〟や〝視力強化〟を使っても発見できない。すると、辺りを見渡す俺に桜はクスリと笑った。
「心配なんだね。南雲くんのことが」
「………………………………評価するべき人間にはそれなりの対応をする。それに南雲は失うには惜しい奴だ」
少なくとも天之河よりかはマシだ。
あの混乱した状況で冷静に思考を働かせて、クラスメイトを助け、状況を切り抜ける策を考えてそれを実行する決断力と判断力が南雲にはあった。
檜山のクソ野郎が火球を南雲に当てなければ全員生還できた筈だ。
だからそんな成長した子供を見る母親のような生暖かい目で俺を見るな。
「ふふ、そういうことにしておくね。それよりも南雲くんはいったいどこまで」
そこで不意に桜の言葉が止まり、何を血走ったのか壁に向けて風の矢を放った。すると壁が崩れてそこから別の通路がでてきた。
「もしかして……………」
そう呟いた桜はその通路に入って行く。俺も桜の後ろに続くように入ると広い空間にでた。
まさかこんな場所があるなんてな……………。
「戒! これを見て!」
驚きながら桜は地面に落ちているソレを俺に見せる。
「これは…………銃か?」
形は歪だけどそれは確かに銃の形をしている。それによく見れば辺り一面に鉱石や何かに失敗した残骸が落ちている。
「………………………………もしかして南雲の奴。錬成で銃を作ろうと、いや、作ってこの階層から脱出したのか?」
「きっとそうよ! 南雲くんは生きているのよ!」
心のどこかで死んだと思っていたクラスメイトが生きていることに喜ぶ桜に俺は安堵と嫉妬半分で頷いた。
南雲の天職は錬成師。それなら現代知識を使って銃を作り出せることも不可能ではない。
だが、問題があるとすれば……………今の南雲はまともかどうかだ。
この一帯に落ちている失敗作。その数は数え切れないほど存在している。この階層を生き抜く為に強い武器は必要だ。特に南雲は非戦系。戦闘系の天職を持っている天之河達でもこの階層で生き残れるかはわからない。南雲なら更にそれ以上だ。
生き残る為に銃を作った。それだけならまだいいが、この数は狂気に似た執念が感じられる。
俺はその残骸に銃を向ける。
「
魔弾を撃って対象が有する過去の記憶を俺に伝える。
すると記憶のなかにいる南雲は俺の知っている南雲ではない。黒髪は白くなり、左腕が無くなっている。表情も顔つきもまるで別人。本当に南雲かと疑うほどだ。
なにより邪魔する敵は殺すという強い意思と覚悟が伝わってくる。
「…………………戒? 南雲くんは?」
「………………………恐らく南雲は下に降りた。この迷宮を攻略する為に」
今の南雲ならそう簡単に死ぬことはないだろう。だけどまさか、魔物の肉を食べて生き残るとはな……………。魔物の肉って喰えないんじゃなかったけ? いや、食料がないここでは魔物を喰うしかないとは思うが……………。
呆れ半分感心半分といった具合に頷く。
「それなら私達も降りよう。急げば南雲くんにも会えると思うし」
「そうだな。だけどその前に、へレス」
《はい。私の力を存分に振るってください」
クロノスの力である双銃を消して漆黒に覆われた大剣を手にし、同じく漆黒の鎧を見に纏う。
数度剣を振って調子を確かめる。
「よし、問題はねえな」
《うぅ~私では駄目なのですか? マスター》
駄目じゃねえが、時を操る能力なだけあってお前の能力は消耗が激しいんだよ。それにここからは突破力が必要になるかもしれない。それならへレスの力の方が適している。わかったか? わかったんなら少し休んでいろ。
《はぁ~わかりました。ですがいざという時は呼んでくださいね?》
ああ、その時は頼む。
クロノスとの会話を終えて俺と桜は更に下の階層を目指す。
そこから魔物との激戦を繰り広げる。ということはなかった。
毒の痰をを吐き出す巨大なカエルを剣で両断、麻痺や鱗粉を撒き散らす蛾を風を纏った矢で纏めて殲滅。密林のような階層に出てきた巨大なムカデは身体の節ごとに分離して襲ってくるも
この程度の戦闘は既に経験済み。だから苦労するほどではない。
順調に魔物を倒しながら階層を降りては南雲を探すもまだいない。
ちなみに俺達の今のステータスは……………。
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時橙戒 17歳 男 レベル:76
天職:
筋力:17140
体力:18670
耐性:17430
敏捷:18543
魔力:17877
魔耐:17284
技能:
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柳生桜 17歳 女 レベル:76
天職:
筋力:14214
体力:18943
耐性:14785
敏捷:15342
魔力:21378
魔耐:21222
技能:精霊使役[+
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真の【オルクス迷宮】もそろそろ百階層で俺達のステータスは既に一万を余裕で越えて桜に至っては一部は二万を超えている。
まさに俺達の存在はこの世界にとってのバグだな。チートってレベルじゃねえわ……………。
まぁ、元々が化け物だったから更に化け物になったと思えば大した違いもないか。
そう考えながら先に下の階層に降りて行くと、そこにはこれまでとは違う広い空間なのだが、壁は壊され、柱は折れ、激戦を繰り広げた後が残されている。
そしてその空間の中央には血塗れで倒れている男と金髪の少女がいた。
金髪の少女は俺達の存在に気付くと血塗れになっている男を庇う様に立ち、警戒する。
「………………………………だれ?」
短く警戒するように訊いてくる少女に俺は血塗れとなっている男を指して尋ねる。
「その前に確認だ。そこに倒れているのは南雲ハジメか?」
「!? ……………ハジメを知っているの?」
「クラスメイトと言えばいいが、まずはそいつの治療をさせろ。そのままじゃ死ぬぞ?」
そう言うも少女の瞳から警戒の色は消えない。
そこで桜が一歩前に出る。
「私達は南雲くんを助けにきたの。だからお願い。彼を助けさせて」
「………………………………本当に?」
「信じて」
「…………………………………………………………んっ」
頷く少女に桜は南雲に駆け寄って治療を施す。
「……………酷い傷。それに魔力も枯渇している。急いで治療しないと……………
技名を唱えると南雲は水に包まれる。それを見てぎょっとする少女だけど水の中で南雲の傷が癒されているのを見て安堵する。
水の精霊の力で傷を癒し、魔力も回復させる。俺も何度も世話になった精霊魔法だ。
数分して傷が癒えた南雲だけど目を覚まさない。肉体よりも精神的疲労が激しいのかもしれないが、こればかりは自然回復で目を覚ますのを待つしかない。
「ふぅ、これで大丈夫」
「……………………ありがとう」
傷を治した桜に礼を言う少女。俺は南雲を背負って少女に言う。
「とりあえずは南雲が目覚めるまで休戦でいいか? 南雲が目を覚ましたら俺達のことについて話す」
「…………………………んっ」
「ところで名前はなんて言うの? 私は桜。こっちは戒」
「………………………ユエ。ハジメがくれた大切な名前」
奈落の底で南雲を発見してユエと名乗る少女と出会い、俺達は【オルクス迷宮】を攻略した。