ありふれた世界に異幻者を   作:ユキシア

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七大迷宮を攻略する為に新たな旅が始まった俺達は【オルクス迷宮】から外に出る為に魔法陣で転移したのだが……………。

「なんでやねん」

転移した先は洞窟内。無条件で陽の光や自然の風を目一杯感じられると思っていたハジメは関西弁でツッコミを入れた。

「………………秘密の通路……………隠すのが普通」

ユエの言葉に納得するハジメ。壁に刻まれた七角形の紋様に【オルクス迷宮】攻略の証をかざすと、壁が左右に開き、その奥に通路を晒した。

一応警戒しながら進んでいくと光が見えてきた。その光にハジメとユエは駆け出して俺と桜もそれに続く。

そして俺達は地上へ出た。

そこは地上の人間にとって地獄の処刑場。断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪の魔物が生息している【ライセン大峡谷】。

その谷底にある洞窟の入口に俺達はいた。

地の底とはいえ頭上の太陽から燦燦と暖かな光が降り注ぎ、風は大地の匂いを交えて鼻腔をくすぐる。

数ヶ月ぶりの地上。ユエにとっては三百年ぶりの地上の二人は。

「よっしゃぁああーー!! 戻ってきたぞぉおおおおおおっ!!」

「んっーー!!」

大いにはしゃいでいた。

ユエを抱きしめたままハジメはくるくる廻り、地面に転倒しても二人は大の字に横たわって笑っている。

その二人の喜びに桜もつられて笑っている。

それはいいのだが……………。

「魔物が近づいているぞ?」

ぞろぞろと近づいてくる魔物。だけど二人はそんなことお構いなしに喜び合っている。それを見て俺は仕方がなく魔物を倒しに行く。

まぁ、二人にとって求めてやまなかった地上だ。余韻に浸かる暇ぐらい与えてやるか。それに俺も新しい銃の性能を試すとしよう。

桜に二人を見てもらい、俺は魔物に近づきながら腰にある四丁のうち二丁の拳銃を手にする。

「行くぜ」

左右にある拳銃を発砲。直撃した魔物が一体が燃え尽き、もう一体が凍りつく。

「…………………悪くはないな」

何が起きたのか理解していない魔物に続けてもう二丁の拳銃に持ち替えて撃つ。すると、一体は上半身が消し飛び、もう一体は着弾と同時に内側から岩の棘によって串刺しとなる。

「悪くはないが、まだ練習が必要だな。精霊銃は」

ハジメの錬成と生成魔法。それと桜の精霊魔法が加わった四丁の拳銃。〝精霊銃〟。それぞれの拳銃に火、水、風、土の四属性が付与されている。

精霊魔法だけではなく魔力操作で魔力弾も撃つことも可能だ。

本当は二丁か一丁にして欲しかったが、そこはハジメの技量が足りなかったから断念した。

桜の精霊魔法よりかは劣るもクロノスの代理武器としては十分。後は撃つ際のイメージをどうにかできるようになれば問題はないだろう。

《こんな玩具より私の方が凄いですよ》

不貞腐れながら文句を言ってくるクロノスに呆れながら言う。

わかってるよ。だけど何度も言うがお前の力は強力な反面消耗も激しいから通常の戦闘では極力控えていざという時の為に温存しておきたいんだよ。

《それはまぁ、わからなくはないですが……………》

《クロノス。主を困らせるものではありません》

《うぅ………いざという時は使ってくださいよ? マスター》

ああ、頼りにしてる。

精霊銃の試し撃ちを終わらせて魔物を討伐。俺は三人の所に戻るも二人はまだ笑い合っていた。

「おい、いい加減にやめて動くぞ」

「…………………たくっ、もう少し余韻に浸からせてくれよ」

「…………………………ん、空気を読んで欲しい」

「読んだし、喜ぶ時間もくれてやった。さっさと〝宝物庫〟からバイク出せ」

「わぁーたよ」

起き上がるハジメは宝物庫から魔力駆動二輪〝シュタイフ〟を取り出す。エンジンの代わりに魔力の直接操作によって動かす。俺は普通にバイクって呼んでいる。

二つのバイクを取り出して俺達は互いの恋人を乗せて動き出す。

「異世界でバイクに乗れるなんてね」

「これもハジメのおかげだな」

まぁ、似たようなものなら元の世界でも乗っていたけど、基本的に俺達が乗ることは少なかったからな……………。普通に電車の方が早い時もあったし。

しばらくバイクを走らせていると、それほど遠くない場所で魔物の咆哮が聞こえてきた。バイクを走らせて大きくカーブすると向こう側に大型の魔物、頭が二つあるティラノサウルスモドキ……………それに追われている兎耳の少女。

「あれは兔人族か?」

「なんでこんなところに? 兎人族って谷底が住処なのか?」

「ううん、確か図書館で読んだ文献だったら【ハルツィナ樹海】に棲息しているはずだよ?」

「じゃあ、あれか? 犯罪者として落とされたとか? ライセン大峡谷は便利な処刑場としても有名だろ?」

「…………………ん。悪ウサギ?」

逃げ惑う兎人族を俺達は首を傾げていると、桜が戸惑いながら言う。

「えっと、助ける?」

「別に助ける必要はねえだろ? むしろ面倒事に巻き込まれる前に退散するぞ」

「そうだな。ハジメに一票。こっちにメリットがあるとは思えない」

「………………………んっ。ハジメと戒に同意」

三対一の多数決で兎人族は見捨てるという選択になった。

すると。

「みづけだぁ!! やっとみづけましだよぉ~~! だずげでぐだざ~い! ひぃいいい、死んじゃう! 死んじゃうよぉ! だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」

兎人族に見つかった。それもこっちが引くぐらいの滂沱の涙を流して、顔をぐしゃぐしゃにしてこっちに駆けてくる。

「……………〝やっとみつけた〟? おかしなことをいう奴だな。しかも、モンスタートレインかよ。関わっちゃいけないタイプか」

「…………………ん。迷惑」

「Uターンするか」

ハジメ、ユエ、俺は兎人族の必死の叫びにも動じることなくそう話し合っていた。

「南雲くんもユエも戒もなに言っているの!? とにかく助けて事情を聴くぐらいはしなさい!!」

迷いもなく見捨てるという選択を取った俺達に桜は怒りながらバイクの上に立ち上がって弓を構えて火の精霊(サラマンダー)の力で形成された火の矢を番える。

火精霊の咆哮(サラマンダー・ローア)!!」

放たれる火の矢はティラノサウルスモドキに突き刺さり、爆炎を巻き起こす。

本来、ここ【ライセン大峡谷】では発動した魔法に込められた魔力を分解され散らされてしまう場所だが、桜は〝全属性耐性〟の派生技能に〝環境適応〟がある為に魔力が分解されることはなく、俺も〝異常無効〟の派生技能に〝適応〟があるから問題はない。

隣で「………………やはり規格外。チート」とユエが言っているが無視。

「きゃぁああああーーー! た、助けてくださ~い!」

ティラノサウルスモドキを倒した爆炎の余波でこちらに吹き飛んでくる兎人族をハジメは受け止める。

「アホか。図々しい」

「へぶぅ!?」

ことはなく、一瞬でバイクを後退させて避け、兎人族は顔面から地面にダイブした。

両手両足を広げうつ伏せのままピクピクと痙攣している。気は失ってはいないが、痛みに堪えて動けないみたいだな。

「………………………なんて残念なウサギさん」

「ユエ。そう言うことを言っちゃダメ」

「………………………………ごめんなさい」

頭を下げて謝るユエ。すると兎人族は起き上がり――――

「先程は助けて頂いてありがとうございました! 私は兔人族ハウリアの一人、シアといいます! 取り敢えず、私の家族も助けてください! ものすっごくお願いします!」

中々図太い懇願をしてきやがった。

取り敢えず俺はその図々しい懇願の返答を魔弾(威力低)で返した。

「あぶっ!?」

「戒!」

「悪い、イラっとしてつい」

思わず撃ってしまったことに怒る桜。だけどハジメとユエはその気持ちわかる、みたいに頷いていた。

呻き声を上げ、「頭がぁ~、頭がぁ~」と叫びながら額を押さえながら地面にのたうち回る兎人族は涙目になりながらも再度叫ぶ。

「お願いです! お願いしますっ。私の家族を助けて下さい!」

叫びに似た懇願が峡谷に響く。

ハジメにひっつき、必死の表情で懇願する兎人族を見て、ハジメは仕方がないように肩を竦める。思いが通じたのかと、表情を輝かせる兎人族にハジメは〝纏雷〟を発動させた。

「アバババババババババババアバババババ!?」

「南雲くん!?」

「ウザイからやった。反省も後悔もない」

「反省も後悔もして!!」

一応は死なない程度に威力は調整されたようだが、焼きウサギとなった兎人族は痙攣している。そんな兎人族に桜は優しく手を差し伸ばした。

「私の仲間がごめんなさい。良ければ事情を話してくれる?」

優しい微笑み、優しい言葉に、兎人族の瞳から滝のように涙が出て桜に抱き着いた。

「うぅぅぅ~~~~良かったです~~優しい人もいました~~~~ひぐ、ぐす」

「よしよし。大丈夫、もう大丈夫だからね」

泣きつく兎人族を抱きしめて優しく背中を撫でる桜。胸の中で子供のように泣き崩れる兎人族に俺達は深いため息を吐きながら仕方がない、と割り切って話ぐらいは聞いてやるかと思って泣き止むのを待つ――――

「このお胸、母様を思い出します」

「それがお前の最後の思い出だ。クソウサギ」

のはやめて、銃口をクソウサギに向ける。

人の女の胸を存分に堪能してんじゃねえぞ? クソウサギ。執行猶予抜きの即死刑だ。

「ぴぃ!?」

「戒!!」

桜の後ろに隠れるクソウサギに俺を怒る桜。それを見たユエは桜の自分の胸を見比べてへこみながら隣にいるハジメを見上げて。

「…………………おっきい方が好き?」

「………………………………ユエ。大きさの問題じゃない。相手が誰か、それが一番重要だ」

ハジメはふわっとした回答を選択した。

クソウサギの事情を聞いたのはそれから数分経った後からだった。

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