猫な彼女と傭兵と   作:ノア(マウントベアーの熊の方)

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唐突に書きたくなった物語です。
ごゆっくり見ていってください。


第1話

それは、ある雪の降る夜のことだった。

傭兵として生計を立てている俺、中野 拓也(ナカノ タクヤ)は、今日も人を殺した。

傭兵なのだから当たり前だろうと言われればそれまでだが、この世界に蔓延るバケモノどもを殺した時以外、終わってから相手の事を考えてしまうクセがあるのだ。

アイツには家族がいたのだろうか、そんな風に。

 

その事で今日もヤケになり、酒を飲んで自宅へと戻っていっていた。

そして、元は住宅地であろう廃墟を通っていると、箱に入って捨てられていた子猫がいたのだ。

俺と同じく、独りで。

 

俺には家族なんてものは無い。

それに俺には仲間なんてものもなかった。

どこか親近感を覚えた俺は、気がつけばその猫を拾って帰っていた。

 

猫を家に置き、近くの売店で猫缶を買って帰る。

ペットが大丈夫な自宅で助かった、そう思いながら子猫に猫缶をやり、身体を洗ってやる。

すると、見間違えるように綺麗になった。

白い毛色なので、その事を頼りにネットで調べる。

調べたところ、"ターキッシュアンゴラ"という種類らしい。

改めて顔を見てみると、どうやら右眼が青、左眼が橙色のオッドアイのようだった。

 

「もしかして…オッドアイのせいで捨てられたのか?」

 

そう問うと、その子猫は悲しそうに「なー」と鳴いた。

 

「そうか…こんなに可愛いのにな…」

 

そう言いながら、子猫を撫でてやる。

すると、手に甘えるように擦り寄ってきた。

 

「そうだ、名前をつけてやらねぇとな…」

 

そう言いながら、必死に考える。

名付けなんて滅多にしないので、こういう事は苦手なのだ。

唸りながら考え続けていると、10分以上経っていた。

未だに何も思いつかない。

仕方ないので、部屋の中でなにかいい案になるものは無いか探す。

しかし、必要最低限なものしかない上に、部屋のベッドや家具、一部の食器に至るまでオリーブドラブで統一されているので、可愛らしい名前になりそうなものは何一つなかった。

困り果てていると、唐突にひとつの案が浮かんだ。

 

「"ミーシャ"…なんてどうだ?」

 

そう膝の上に座っている子猫に問うと、今度は嬉しそうに「なー」と鳴いた。

どうやら、気に入ってくれたらしい。

とりあえず、明日は今の契約が切れて休みになっていたので、一通りの必要なものを買いに行くことにした。

 

次の日になり、起き上がろうとすると、隣で丸まって寝ているミーシャに気づく。

起こさないように撫でてやり、ベッドから降りて顔を洗って飯にした。

食べているとミーシャも起きてきたので、猫缶を開けて食べさせてやる。

食べさせてやってから、歯を磨いて着替え、近く―――と言ってもかなりの距離はあるのだが―――に自家用ハンヴィーに乗り向かう。

 

廃墟街を抜け、人の住む街へと出て、ペットショップへ向かう。

そこで大量の猫缶や爪とぎの道具、おもちゃなどを買い、ハンヴィーに詰め込む。

家に着き扉を開くと、玄関で座って待ってくれているミーシャがいた。

ただいまと言って、撫でてやり、部屋へと戻る。

 

戻ってから色々と買ってきたものを整理していると、夜になっていた。

猫缶を開け、ご飯をやり、自分も軽く作って食べる。

心做しか、すごく嬉しくなった。

そう言えば、性別はどっちなのだろうと思い、チラリと見てみても、ついていないことに気づく。

どうやら女の子のようだ。

ならば服とかで可愛くしてやった方がいいのか…?と思いつつ、ご飯を食べ終え、明日の準備をする。

明日は新しい契約先での顔合わせがあるのだ。

忙しなく動き、服の用意と銃の手入れをする。

その間にも、ミーシャは俺に甘えてきた。

撫でてやりながら、銃の手入れをしていると、いつの間にか膝の上で眠っていた。

銃を組みたて終わり、申し訳ないが起こしてベッドの上に乗せる。

そして風呂に入ってから、ミーシャと一緒に眠りについた。

 

 

そして、翌日からの日々は、見間違えるように変わって行った。

いつもは億劫だった帰路も、なんだか楽しく変わって行ったのである。

帰ってから思う存分可愛がってやり、ご飯をやる。

そんな生活をし始めてから、気がつけば1ヶ月が過ぎていた。

新しい契約先でもなんとかやれて、今日まで生き残れている。

それもきっと、ミーシャのおかけだ。

今日は久々に飲み会があり、呑んでから帰宅した。

まさか飲み会に未成年が2人誘われているとは思っていなかったが、なんとか未成年飲酒は避けることができて何よりだった。

ドアを開けて元気よくただいまと言って玄関へ入るが、そこにミーシャの姿はなかった。

寝ているのだろうと自分に言い聞かせながら部屋へとはいると、そこにはベッドの上で気持ちよさそうに寝ているミーシャの姿があった。

まさかの事態になっていなかったので胸をなでおろし、風呂へと入る。

やはり飲みすぎたのか、頭が痛くなってきた。

もしかしたら今晩の記憶は無くなってそうだ、そうなんとか思考を巡らせ、ベッドへと潜り込む。

直ぐに眠りに落ち、次の日になっていた。

 

日光が差し込み、眩しく感じて目が覚める。

目を擦りながら身体を持ち上げ、周りを見回す。

すると、隣で何かが動いたことに気づく。

ミーシャが起きたのかと思い、その方向を見てみると、見覚えのない1人の19くらいの見た目をした銀髪のロングヘアの少女が、一糸まとわぬ姿で横たわっていた。

見覚えなどあるはずがない。

第一、俺は昨日は酒を飲んで帰ってきてからさほど時間もかけずに寝たはずだ。

一体いつ入ってきてこうなったのだろう。

何も覚えていないし、覚えているはずもない…はずだ。

まさか本当に酒に吞まれて記憶が無いだけなのだろうか、そう思っていると、その少女は目を覚ました。

目を覚ましたその少女は、右眼が青、左目が橙色のオッドアイだった。

どこか見覚えのある少女を見つめていると、少女は首を傾げてこちらを見てきた。

非常に可愛らし…いや、なんでもない。

どうしたもんかと考えていると、少女は猫のように擦り寄ってきた。

その少女が服を着ていないので非常にまずい。

色々と。

とりあえずコミュニケーションを取らねばなるまいと、会話をすることにした。

 

「君…誰?一体どこから?」

 

そう質問すると、その少女は、

 

「私の事忘れたんですか!?あんなに優しくしてくれてたのに!?」

 

と言ってきた。

全く記憶にない。

それどころか俺は女性耐性がなく、会話もなかなかできないのだ。

とりあえずあんなに優しくってなんだ。

俺が何をしたんだ。

服着てないしそういう事なのか…?

そう軽くテンパっていると、あることに気づく。

 

「…あれ?君、その耳と尻尾はどうしたの?」

 

そう、人間にはないはずのネコミミのような耳と猫のような尻尾があったのである。

まさか俺にはそんな趣味があったのだろうか。

確かに獣耳っ娘は好きだが人にやらせてまでする男だったのだろうか。

そう考えていると、

 

「?何か変ですか?」

 

と首を傾げて少女は聞いてきた。

いや、変ではないのだ。

普通に似合っているのだ。

そう思っているが、なかなか言い出せずにいると、ミーシャが居ないことにようやく気づく。

 

「…あれ?ミーシャ?どこ行った?」

 

そういって辺りを見回すが、どこにもいない。

窓も閉まっているし、扉も閉まっている。

どこからも出ることはできないだろう。

焦りながら探していると、さっきからいる少女なら何か知ってるのではないかと思いつく。

 

「なあ、俺の家にいた猫しらないか?」

 

そう聞くと、少女は驚いたような表情をして、

 

「え?私以外にも誰かが…!?ご主人最低です…!」

 

そう言って、少女は目を潤ませ始めた。

 

「ちょ!待って!泣かないで!」

 

そう言って、なんとか泣かないように引き止める。

なんとか落ち着いたところで、さっきから疑問に思っている事を聞こうと決心する。

 

「君…名前は?」

 

「わ、私の名前忘れたんですか…!?ミーシャですよぉ!」

 

「…えっ」

 

思わず、そういう声が出てしまう。

 

「み、ミーシャって…俺の飼い猫なんだけど…」

 

「だーかーらー!そのミーシャですぅ!」

 

思わず、俺はそこまでのシチュが好きな人間だったのか、そう考えてしまう。

しかし、どこを探してもミーシャがいなく、いるのはミーシャに似た少女だけという現実があるので、頭がこんがらがってきた。

 

「なんでだ…?まさか本当にミーシャが人間に…?」

 

「え?人間って…?」

 

そう言って、その少女は自分の身体を見始めた。

 

「うわぁ!?本当だ!?ご主人と同じ身体だぁ!?」

 

そう驚いたと思えば、今度は嬉しそうに俺の近くへと来た。

 

「ご主人と同じ…えへへ…」

 

そう言いながら、甘えるかのように擦り寄ってくる。

可愛いが、服を着ていないのでとてつもなくヤバい絵面だ。

とりあえず、服をなんとかするしかないだろう。

そう思い、急いでタンスから着れそうな服を探し始める。

とりあえず、男向けなので少し大きいが、緑色の無地のパーカーを取り出した。

急いでそれを着せると、やはりぶかぶかだったが、色々と隠れる事にはなったのでよしとした。

 

「うう…ちくちくします…」

 

「我慢してくれ…」

 

そう言いつつ、これからどうしたもんかと考えを巡らせる。

誰かこういう事態になっても笑わずに信じてくれそうで、なおかつ女性の服について知識のある人に頼るしかない、そう思い、ケータイをいじって誰かいい人がいないか探す。

しかし、今まで人付き合いが無さすぎるのもあって、なかなかいい人を見つけることはできなかった。

 

半ば諦めつつSNSのグループなどで知り合いを探していると、昨日の飲み会で出会った未成年の2人がいることに気づいた。

確かこの2人はペアを組んでいるはずだし、その片方は女子だったはずだ。

とりあえずダメ元で男の方にメールを飛ばし、救援を頼んだ。

 

しばらくすると、返事が届いた。

どうやら助けてくれるらしい。

家の位置を教え、来てもらうことにして待っていると、インターホンが鳴った。

急いで出ると、そこには例の2人がいた。

入ってくれと一言だけ伝え、部屋に入ってきてもらう。

やはりというかなんというか、ミーシャの姿を見て2人とも固まっていた。

 

「…本当だったんですね」

 

そう男の方が困惑気味に言ってくる。

 

「…ああ、今朝起きたらこんな事になっていた…えーと、ごめん、君ら、名前なんだっけ」

 

「八雲です、んでこいつは二宮です」

 

「二宮です、よろしくお願いするっす」

 

そう2人が自己紹介してくる。

 

「ああ、思い出した…よろしく、2人とも、で、この子がその言ったミーシャで…」

 

そう言って振り向くと、丸まって寝ているミーシャの姿があった。

 

「…猫ですね」

 

「ああ、未だに信じられないんだがな…」

 

「そりゃぁそうっすよ…」

 

そりゃあみんなそうなるか、そう考えつつ、この状況をどうしようかと考える。

そもそもがどこまで人間でどこまでが猫のままなのかすらわからないのだ。

食べてはいけない食べ物とかは猫のままとかの可能性すらある。

寿命とかもどうなのか心配だ。

しかし、食べさせて知ろうにもダメなままだと死んでしまうかもしれない。

でも流石に人の姿になって猫缶はいかがなものかと思う。

そしてまずは服をなんとかしなければいけない。

そこで、2人に頼んで服を選んでもらうことにした。

ミーシャに留守番を頼み、服屋へ向かう。

俺も八雲も女性の服なんてわからないので、二宮に似合いそうな服を選んでもらうことにした。

特に下着などは男子である我々には全くわからない領域だ。

合いそうなサイズを選び、買い物カゴに入れて購入して帰宅した。

家に帰ると、いつものように玄関で待っていたミーシャに抱きつかれ、コケそうになる。

頭を撫でてやり、買ってきた服へと着替えてもらう。

もちろん男の俺ら2人は後ろを向いて見ないようにしている。

しばらくして、着替え終わったと言われたので前を向くと、マルーン色をしたチェックのスカートにベージュの少し大きめのパーカーを着て、少し落ち着かないような動きをしている、ミーシャの姿があった。

 

「ど、どうですか、ご主人?」

 

そうミーシャが恐る恐る聞いてくる。

 

「…ああ、可愛いよ」

 

そう言うと、ミーシャが飛ぶように抱きついてきた。

落ち着くように頭を撫でてやりながら、2人にお礼を言う。

 

「いえ、お礼を言われるほどでは…特に俺は何もしてませんし」

 

「どちらかと言えば今回はあたしでしたもんね」

 

「アスカうるさいぞ」

 

そんなやり取りを見ていると、いい相棒同士なのだなと思う。

それと同時に、ひとつの疑問が浮かんだ。

 

「そう言えば2人って恋人関係だったり?」

 

そう聞いてみると、お互いに否定し始めた。

八雲の方は普通に焦っているようだったが、二宮の方は少し顔が赤かった。

もしかしたら、この発言よりも前から二宮は八雲に気があるのかもしれないな、そう思いつつ、今度は食事に関するひとつの疑問を聞く。

 

そう、ミーシャの食べても大丈夫なものだ。

いずれも食べてはいけないものは下手をすると死んでしまうかもしれないので、この件はなんとかしなければならない。

苦渋の決断として、少量のチョコをやってみることにした。

やってはいけないと知っているので心が痛むが、人間の姿となってまで猫缶というのも気が引ける。

それに人の姿になったなら同じものを食べた方が楽しいではないか。

そう思い食べさせてしばらく待ってみても、どうやら大丈夫なようだ。

…まあ少量なので本当に大丈夫かはわからないのだが。

 

しかし、ならばと思い、冷蔵庫から食材を出し、4人分の昼食を作る。

2人にも食べていけと言って、ミーシャと3人で待っていてもらう。

誰かのために料理を作るのはいつぶりだろう、そう考えながら、4人分のチャーハンを作り、器へ盛り付ける。

やはりミーシャはスプーンなどを使うのが慣れないようで、少しこぼしていたが、どうやら美味しく食べてくれているらしい。

…これで後々食べちゃいけないのは食べちゃダメでしたとならなければいいのだが。

2人も美味しいと言ってくれたので、内心安心する。

食べ終わり、食器を片付けて休んでいると、ミーシャと二宮が寝始めてしまった。

 

「すみません、うちの相方が」

 

「いいんだよ、食った後は眠くなるのはわかるさ…で、八雲、二宮のことどう思ってんだ?」

 

そう少しニヤニヤしながら、意地悪な質問をぶつけてみる。

すると、すぐにどういう意味で言ったか理解した八雲が、耳を真っ赤にしてテンパり始めた。

 

「ど、どどどうって…いい後輩ですよ」

 

そう言って逃げようとするので、更に意地悪な質問をぶつけてみる。

 

「そうじゃなくてだな、女としてだよ」

 

そう言うと、顔を赤くして八雲は黙ってしまった。

 

「ふ、普通に可愛いとは思いますよ…でも、俺なんかよりアスカには似合ってる人がいるはずです…そういう中野先輩はどうなんですか?」

 

「俺?俺か…」

 

そういきなり返され、言葉に詰まってしまう。

 

「俺はなぁ…そもそもモテねぇし、女性耐性ねぇし、コミュ障だしな…」

 

「…でも、優しいじゃないですか、ミーシャちゃんもきっと、中野先輩に恩返ししたくて人の姿になったんじゃないですか?」

 

そう言われ、照れくさくなり、言葉が出なくなってしまう。

今まで、誰かに"優しい"と言われたことが記憶にないし、ミーシャにはむしろこちらからお礼を言いたいレベルだ。

…それに、心のどこかでは今のミーシャを好きになっているのだろう。

ちゃんとしたヒトとは言えないかもしれないが、今はどう見ても人の姿をした人間だ。

そこに猫の耳や尻尾が生えただけ、そう思っている。

もしかしたら、人付き合いが苦手な俺に神様が送ってくれたのかもしれない。

それに、今は異形のモノと成り果てたヒトや生物がいる時代だ。

その原因物質か何かが変に作用した結果なのかもしれない。

 

「…そうかな、俺こそミーシャに恩返ししたいんだけどな」

 

「もういっそのことミーシャちゃんと付き合えばどうです?」

 

そう八雲がいきなり爆弾発言をした。

その発想は実はあったがまさかお前もか、そう思いながら寝ているミーシャを見る。

…確かに、俺の好きなタイプだ。

……確かに、猫だった頃から"お前みたいな彼女が欲しいよ"と何度か言ってしまってはいるのだが。

そんな事を考えていると、ミーシャが寝返りをうった。

とりあえず押し入れから寝冷えしないように掛け布団を出し、寝ている2人にかけてやる。

すると、ミーシャが寝ながら

 

「ご主人…大好きです…」

 

と言ってきて、ドキッとしてしまう。

やはり、そういう事も真剣に考えた方がいいのだろうかと考えてしまうが、恋愛感情ではない好きだと自分を言い聞かせる。

それを見て八雲がニヤニヤとこちらを見てくるが、視線でお前も人の事言えないぞと送る。

 

そこから、夕方になるまで八雲と傭兵らしく銃のことを話したり、現在護衛している仕事場の研究所の事などを話していた。

その後、2人が起き、八雲と二宮は帰って行ったので、また朝のように人となったミーシャと二人きりになった。

 

「…ご主人」

 

そう唐突に呼ばれ、咄嗟に振り向く。

 

「どうした?」

 

とだけ返し、返事を待っているとミーシャの顔が赤いことに気づいた。

 

「あのね、ご主人…私、ずっと、ご主人の彼女になれたらなって、ずっと思ってたんだ」

 

そう言われ、言葉が出なくなる。

 

「ほら、よくご主人が言ってくれたでしょ?私みたいな彼女が欲しいなって…私も、そういう気持ちだった、そして、やっと人になれてそれが叶えれるようになった」

 

そう言いながら、ミーシャは俯いた。

 

「でもね、私、元は猫だし…ご主人は人間だから、私じゃやっぱりダメだよなって思ったの、八雲さんと二宮さんみたいに、ヒトとヒトじゃないと、ご主人にも迷惑かなって」

 

「ミーシャ…」

 

「ごめんなさい、変な事言ってしまって、忘れてね」

 

そう、ミーシャは悲しそうにしながら、無理に微笑んできた。

 

「…ミーシャ、ひとつ言いたいことがある」

 

「…何?ご主人」

 

「恋愛に、種族は関係あるのか?…俺はないと思ってる、AIを積んだアンドロイド相手だろうがなんだろうが、恋愛感情をお互いが抱いているなら、それは立派な恋愛なんじゃないか?」

 

「…でも、私はなんで人間になったのかわからない猫なんだよ?また元に戻るかもしれないし…」

 

「こういう時の人化ってな、大抵は戻らないってのが多い…と思うぞ?あくまでもカンだけどな」

 

「…そう…なの?」

 

「…多分な、あとなんだ…その…」

 

そう言い、急に照れくさくなって言葉に詰まってしまう。

後一歩のところまで言葉は出てきているのだ。

しかし、その後一歩が出てこない。

 

「その…あのだな……ミーシャ、俺もお前が好きだ」

 

やっと言えた、そう思ってホッとしていると、ミーシャの目から涙が出ていることに気づく。

 

「あれ、なんでだろ…嬉しいのに、涙が止まらないよぉ…」

 

そう言って、ミーシャは泣き始めてしまった。

そして、しばらく泣いてから、

 

「私で、本当にいいの?」

 

と言ってきた。

その瞬間、俺はミーシャへと抱きついていた。

すると、ミーシャはさっきよりも泣き始め、しばらく泣き止むことは無かった。

数分ほど経ってやっと泣きやみ、お互いの顔を見つめ合う。

そして、どちらからでもなく、ほぼ同時にそのままキスへと移り変わっていった。

しばらくキスをして、お互いに素に戻り、互いに赤面し、笑い合う。

お互いに照れくさくなったので、気を紛らわすために晩御飯を作ることにした。

 

晩御飯を作り終え、食べていると、前から思っていたあるひとつの疑問を思い出した。

 

「そう言えば猫って警戒心強いはずなのに直ぐにミーシャは俺に慣れてたよな」

 

「人間は好きでしたからねぇ…それにご主人いい人ってすぐわかりましたし」

 

「いい人、ねぇ…」

 

既に仕事とはいえ、何人もの人を殺している俺は果たしていい人なのだろうか。

そう考えてしまう。

それどころか、飼い猫にガチ恋をしてる時点でかなり一般的にはヤバいやつなのではないだろうか。

いや、本当に猫が好きな人なら恋くらいはするか、そう思いながら食べていると、気がつくと食べ終わっている皿をつついていたことに気づく。

ここまで深く考え続けているのはいつぶりだろうと思いながら、食器を片付け、テレビをつけた。

テレビを見ているとミーシャが横に擦り寄ってきて、もたれかかってきた。

そのまま一緒にテレビを見ていると、ミーシャが起き上がってこちらを見つめてきた。

 

「…どうした?」

 

「そう言えば…ご主人って、傭兵なんですよね?」

 

「ああ、そうだな、PMCにも入ってないから普通の雇われ兵士だな」

 

「って事は、いつか死んじゃうかもなんですよね…?」

 

そう言って、ミーシャは目を潤ませ始めた。

恐らく、ちょうどテレビのニュースでやっていた傭兵を含む兵士が大量に亡くなったのを見てそう思ったのだろう。

 

「…否定はできないな、でも、守るべきものができてるんだ、そうそう死ぬ気は無いし、そろそろどこかのPMCでも入って警備メインにでもなるよ」

 

「本当…ですか?」

 

「ああ、今の研究所警備が終わったらいいPMCでも探すさ」

 

そう言って、ミーシャの頭を撫でてやる。

今思えば、猫の割に犬系なところがあるやつだなと思ってしまう。

そもそも、犬は飼ったことがあっても、猫は初めてなので感覚が同じになってそれはそれでいいのだが。

 

「?どうしました?」

 

「なんでもないよ、さ、お風呂入って寝ようか」

 

「お風呂…!?水いやです!」

 

「いや、流石に人になったんだから入らないと…」

 

「うう…わかりました……」

 

そう言って、ミーシャはしょぼーんとしてしまった。

しかし猫の頃なら毎日入らなくてもいいが、人になったなら入らないと不味いだろう。

…いや待てよ?

猫の頃なら洗ってやっていたが人になったならどうすればいいんだ?

どこからどうみても人間の女の子なんだから一緒に入るのは不味くないのか?

そう考えながらお風呂を沸かしていると、ミーシャも同じ考えだったらしく、

 

「ご主人、私はどうお風呂に入ればいいんですか?」

 

と聞いてきた。

 

「どう…なぁ…流石にその姿なら一緒にはヤバいと思うんだ…」

 

そう、どこから見ても人間な上、美しい形をした胸なども合わさり、ボンキュッボンの体ががそのまま具現化されたような姿なのだ。

むしろ朝の段階で理性が持っていたのは困惑があったからなのではないだろうか。

キスまでしてしまう関係になってる今なら理性が崩壊するかもしれない。

そもそも俺との子供ができてしまうのだろうか…って今の問題はそこじゃない。

まずはお風呂をどうするかだ。

普通に考えれば人間として入ったことがないのだから一緒に入って教えてやるのがいいだろう。

でも控えめに言っていい体つきの女の子と入ると理性が死にそうだ。

しかも可愛いと来た。

理性が大丈夫でも本能でアソコがガッチリしちゃわないだろうか。

タオルで隠しきれるかも不安だ。

そんな考えを巡らせていると、無情にもお風呂が沸いた。

仕方ないので、もう諦めて一緒に入ることにする。

晩御飯に酒を入れなくて良かったかもしれない。

とりあえず脱衣場へ行き、服を脱ぐ。

ミーシャはまだ服に慣れていないようで、まさか脱がしてくれと来た時は焦った。

いや本当に焦った。

 

それからは必死にミーシャの身体を見ないようにお風呂に入っていたのだが、家の風呂だ、そこまで広い訳でもない。

当たり前のように身体が密着してしまうのだ。

それだけならまだ平常心を保つのは仕事柄慣れているので何とかなったが、ミーシャが覆いかぶさるように甘えてきたのだ。

人になった事で水が大丈夫になったのは嬉しいことだが、人になったことで色々とヤバくなっている。

しかし、そのおかげて一つ、あることに気づいた。

 

「…あれ?ミーシャ、お前人間の耳もあんの?」

 

そう言いながら、ミーシャの髪をかき分けて見てみると、やはりそこには人間の耳もあった。

ケモノ耳と人間の耳もあるタイプのケモノっ子のようだ。

これは人によって有り無しが分かれそうだなと思ったが、可愛いのでまあいいかと思う。

 

「…聞こえ方どうなってるんだ?」

 

「一応両方同じくらいには聞こえてますね〜、うるさくはないので大丈夫です!」

 

聴力がただでさえいい猫なのだから耳が4つもあればうるさいのかと思ったがそうでもないと聞き、安心する。

そしてこれなら帽子かなにかでケモノ耳を隠せば何とかなりそうだとも思い、その面でも安心できた。

…しかし、一つ問題がある。

タオルで隠しているとはいえ、アソコが立派になってきてしまっているのだ。

必死に鎮めようとしているが、どうにも鎮まる気配がない。

当たられたりしたらバレてしまうだろう。

そんなことを考えていると、こちらに背中を向けてもたれかかってきた。

 

「…あれ?なんか背中に硬いのが当たってるんですけど…」

 

「き、気の所為だよ」

 

「そ、そうですか…?」

 

「あ、ああ、体とか洗って出ようか」

 

「ご主人、洗って貰えますか?」

 

「…前は自分で出来るんだから自分でやってくれよ」

 

「なんでかよくわからないですけどわかりました!」

 

流石にこの姿で正面も洗うのは無理があるので、理解してくれて助かったと思いつつ、背中を洗い、髪の毛も洗ってやる。

…しっかりと前はぎこちなくとも自分で洗ってくれたので助かった。

俺も体を洗い、湯船へと戻る。

そのまましばらく浸かり、上がってからミーシャ用に布団を敷くことにした。

本人は俺と一緒に寝たいと駄々をこねていたが、前までとは違って狭いからとなんとか納得してもらった。

…明日になれば横にいる気しかしないが。

にしてもなんだ、パジャマ姿も可愛らしいではないか。

ピンクに肉球のマークが入ったパジャマだが、実によく似合っている。

思わず見とれてしまいながら、頭を撫でてやってから1度キスを交わし、眠りについた。




いかがでしたか?
よろしければコメント、評価のほどをよろしくお願いします。

話の流れについて

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