猫な彼女と傭兵と   作:ノア(マウントベアーの熊の方)

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ねこかのではお久しぶりです、ノアです。
久々にこの世界を書けてやっぱり楽しかったです…
では今回もごゆっくり、見ていってください。


第3話

「ごっしゅじーん!ご飯ですよー!」

 

「了解、すぐ行く」

 

俺があのPMCに入ってから、早くも4ヶ月がたった。

あのジメジメとした梅雨の時期もそろそろ終わろうとしている。

そんな7月の初め頃、俺の元に職場から一通の手紙が届いた。

内容は『知り合い、家族巻き込み型合宿をするので参加予定の方は予定を空けておいてください』というものだった。

 

「うーん、ミーシャは行きたいか?あの合宿」

 

「行きたいですけど…私猫ですし」

 

「だよなぁ…」

 

これはもう社長にでも打ち明けてなんとかするしかないか、そういう考えも浮かばせつつ、ミーシャの作ってくれた料理を頬張る。

最初の頃に比べて、元が猫だとは思えないほど料理の腕が上がっており、いつの間にか俺の料理の腕を抜かされてしまっていた。

特に魚料理が得意なようで、捌くのが難しい魚まで調理できるようになっていた。

…まあ今の時代海にもバケモノがいるので魚は高いのだが。

 

「今回の料理はどうですか?ご主人?」

 

「うん、美味しいよ、本当に上手くなったよな」

 

「えへへ…ありがとうございます」

 

そう言いながら、本人は気づいてないだろうが、尻尾を振ってるのを見る限り、本当に嬉しいのだろう。

人間と違って猫耳や尻尾もあるので、無意識のうちに感情がよくミーシャは出てしまっているのだ。

それを言うと顔を真っ赤にして恥ずかしがりながらぽかぽかと殴られるまでがオチなのだが、可愛いので良しとする。

…決してドMなどではない。

 

「そうだ、もしミーシャが猫じゃなかったら合宿行ってみたいか?」

 

「そうですねぇ…確かにご主人の職場の人とか気になりますし、行ってみたさはありますね」

 

「…そうか、ならうちの社長にその事を相談してみようと思うんだが、いいかな?」

 

「その事…って、私が猫ってことですか?」

 

「ああ、多分既にバレてる気がするんだけどな…」

 

そう言うと、ミーシャは少し不安そうな顔をしてから、

 

「ご主人が大丈夫って思うなら、私はご主人に任せます」

 

と、笑顔で言ってくれた。

 

「…わかった、何かがあれば絶対に俺が守ってやるからな」

 

「はい!信頼してます、ご主人!」

 

そうミーシャがはちきれんばかりの笑顔で言ってくれたので嬉しくなり、気がついたらミーシャの体を抱きしめていた。

ミーシャも最初は驚いていたが、後に抱きしめ返してくれたので、しばらく抱きしめあっていた。

 

「…さて、食器片付けるか」

 

「…そうですね、片付けましょうか」

 

そう抱きしめた後、お互いに恥ずかしくなり、お互いに微笑み合ってから、食器を片付けた。

それからは、2人してテレビのコメディ番組をみて笑ったり、ニュース番組を見て天気予報などを見たりしていた。

…その間ずっと足の間にいられたのでなかなか動けず体が痛くなったがまあ言わないでおこう。

 

その後はなんの疑問も持たなくなっていしまっていた2人での入浴を済ませ、パジャマを着て布団に寝っ転がり、寝落ちるまで色々とどうでもいいような話をしていた。

 

次の日になり、目覚ましの音で目を覚まし、いつも通り遅刻ギリギリになるにもかかわらずスヌーズを入れて、二度寝をしてしまっていた。

二度寝をしてしばらく経つと、唐突に何者かに上に馬乗りにされ、その衝撃で目が覚めた。

 

「ごーしゅーじーん!あさでーすよー!」

 

そう言う声が聞こえ、慌てて体を起こし、そのままの勢いでミーシャを押し倒す形になってしまった。

 

「ご主人…朝から大胆ですね…♪」

 

そう頬を赤く染めながら、どこか嬉しそうにミーシャが言ったので、今自分がしてしまっている行動がわかり、急激に顔が熱くなってくる。

 

「す、すまん、勢い余ってだな…」

 

「いいんですよ、わかってますから…その代わり、今晩お願いしますね♪」

 

「…大胆になったのはミーシャなんじゃないのか?」

 

「さあ?なんのことでしょう?」

 

そんなやり取りを終え、机の方を向いてみると、その上には美味しそうな朝食が並んでいた。

 

「わざわざありがとうな、早かったろう?」

 

「えへへ…ご主人が喜んでくれると思ったんで、頑張れました♪」

 

「ありがとう、さて、食べようか」

 

そういい、机の近くに座り、2人そろって"いただきます"と言い、食べ始める。

食べてから時計を見て、急いで準備をする。

そしてその後に軽くキスを交わし、"いってきます"と言って職場へと向かった。

 

職場に着くと、俺の入社面接の時にいたアジア系の男―――名前は入社後に聞いたが、山本 来夢(ヤマモト ライム)と言うらしい―――がちょうど同じ時間に出社してきていた。

 

「あ、中野さん、おはようございます」

 

そう山本さんに言われたので、こちらも"おはようございます"と返す。

ついでにもしかしたらこの人に聞けば社長に会って話ができるかもしれないと思い、社長に会いたいことを伝える。

すると、

 

「別に誰を通さないと会えないとかないんで、いつでも好きな時に行ってやってください」

 

と、言われた。

 

「えっ?で、でも社長…なんですよね?」

 

「まあ…一応。でもこの会社で社長を社長と思ってる人いないんじゃないですかね?あと敬語やめてください、中野さんの方が歳上なんですから」

 

「えっ?でも俺はまだ20で…」

 

「ああ、今の立場は成立当初からの古参だからですよ、会ったことがあるであろう人なら…俺と明石も同じ19です、あとの幹部職はそれより上ですけど」

 

「へぇ…でもそれって、荷が重く感じたり…」

 

そう半分心配になりつつ尋ねてみる。

すると、軽く微笑みながら、

 

「大丈夫ですよ、幹部職って言ってもお互いに持ってる部隊指揮ですから、それに…」

 

そこで山本さんは軽く上を仰ぎみつつ、そこで言い淀んだ。

 

「…それに?」

 

「この会社はお互いに助け合える会社です、それぞれの役職だけじゃなく、その他も見てくれる人がたくさんいる…つまりそういうことです」

 

そう少し照れくさそうに、山本さんは言った。

 

「あとこれから呼ぶ時はライムとでも呼んでください、みんなからもそう呼ばれてるんで」

 

「…わかった、これからもよろしく、ライム」

 

「こちらこそよろしくお願いします、中野さん」

 

「俺の事もタクヤとでも呼んでくれればいいよ、その方が呼ばれ慣れてる」

 

そう言うと、ライムは笑顔で"わかりました"と言った。

その後はそれぞれの部隊への部屋へと向かい、俺は部隊メンバーとの連携訓練をして、その日の業務を終えた。

荷物をまとめ、愛銃のSCAR-Lを手入れしていると、同じ部隊の茶色のショートカットの髪型の、小さな女の子に声をかけられた。

 

「それ、FNハースタル社のSCARっすよね!私もFNハースタル社のP90使ってるんすよ!同じメーカーですね!」

 

「そ、そうなんだ…」

 

そう俺が気圧され気味に言うと、そのまま話はそこで終わってしまい、なんとも言えない空気になった。

そのまましばらくの間、俺は手入れを終え、ふと一息ついた。

そして、流石に帰ったろうとふと周りを見てみると、部屋に配置されているソファに座っているさっきの女の子と目が合った。

 

「あ、終わったっすか?お疲れ様っす」

 

そう女の子は言い、立ち上がってこちらへと向かってきた。

 

「あ、うん…」

 

「さっきは集中してたのに話しかけちゃって申し訳ないっす…私、そういう空気読めないとこあって…」

 

そう女の子は申し訳なさそうに謝罪してきた。

…そうじゃない、集中してた訳では無いのだ。

ただ会話をどう続ければ良いのかがわからなかっだのだ。

特に女子相手だとテンパり、余計に会話が続かなくなってしまう癖がこちらにはあるのだ。

 

「いや、いいよ、たいして集中してた訳でもないし…」

 

「そうっすか?ありがとうございます、あ、私、高砂 クルミ(タカスナ クルミ)って言います、よろしくお願いするっす…あ、クルミって呼んで欲しいっす」

 

そう言い、唐突にクルミと名乗った女の子はお辞儀をしてきた。

 

「あ、ああ…よろしく、俺は中野 拓也だ、適当に呼んでくれ」

 

「了解です、タクさん!」

 

そういい、こちらに満面の笑みを向けてくる。

…少なくとも、悪い子ではないようだ。

これは、コミュ障を治すいい機会…なのかもしれない。

そう思い、勇気を振り絞って会話を続けることにした。

 

「…そういえば、なんで急に話しかけてきたんだ?」

 

そう言い、返事を待っていると、クルミといった少女は少し照れながら、

 

「いやぁ、入社前の射撃試験の時からずっと話しかけようと思ってて…私、実は話しかけるのとか苦手なんすよ…」

 

と言ってきた。

なるほど、この子も勇気を出して話しかけてきたという訳か。

そう思うと、唐突に親近感が湧いてきた。

 

「そうなのか…俺も、会話とか話しかけたりとか苦手でな…」

 

「そうなんすか!同じっすね!いやー、良かったっす、なんとかお互いに会話できて…」

 

そう言い、クルミは胸に手を置き、ほっと安心したような動きをしていた。

…にしても、いつぶりだろう。

ミーシャ以外の女の子とこうしてまともな会話ができているのは。

幼かった頃ならまだ簡単に会話できていたが、いつの間にか男女問わずコミュニケーションが苦手になってからというもの、人付き合いも減っていったのだ。

 

…そういえばよくミーシャが人になった時、八雲達と会話できたな俺。

それほどにテンパっていたのだろうか。

そんなことを考えていると、唐突に"マッチョ・マン"が流れてきた。

…完全終業時間の音楽だ。

曲選が謎すぎるが、恐らく社長が決めたのだろう。

 

………ん?社長?

 

「あっ!やっべ、社長に会いに行くんだった!」

 

そう思い出し、座っていた椅子も吹き飛ばしつつ椅子から立ち上がる。

クルミは何が起こったのか把握出来ていないのか固まってしまっていた。

俺はクルミに"すまん、また明日な"と一言伝えると、急いで荷物をまとめて部屋を飛び出した。

 

「社長ォー!いらっしゃいますかぁ!」

 

そう社長室のドアを突き破るかの勢いで、社長室のドアをノックする。

すると中から返事があったので、そのテンションのまま入ってしまった。

 

「どうした自分、何があった」

 

そう社長にサングラス越しにもわかるほど目を丸くされ、はっと思い急いで落ち着く。

 

「…すみません、伝えたいことがありまして」

 

「自分の嫁の事か?」

 

そう社長が椅子に座りつつ聞いてきた。

なんでわかってるんだこの人は。

 

「…はい、実はミーシャは―――」

 

「元は猫、なんやろ?俺もにわかに信じられんが…まあそういう事もこの世界ならあるやろな」

 

「……なんでそれを?」

 

「この前スーパーで君らがイチャイチャしながら買い物してるの見た時に尻尾がチラッと」

 

「でもそれだと元は猫って事の根拠にならないんじゃ…」

 

「ワイの妄想力なめんな、アパッチが女になった妄想で1年は余裕で過ごせた男やぞ、ちなみにコブラバージョンやと4年な」

 

「あっ、はい…」

 

なんだ、ただの変態か。

…いやでも元は猫と当てられていたので馬鹿にはできない…のだろう。

 

「で、それがどうしたんや?」

 

「今度の合宿、ミーシャは行きたいらしいのですが、変な人にバレたらと思うと…」

 

「なんや、そんな事かいな、安心しい、その辺は大丈夫や」

 

「…その根拠はどこから?」

 

「合宿予定地へはヘリで向かう、それに俺らのPMCしか入れないように常時監視しとるからな…多いんや、このPMCには他人にバレたくない秘密を持ったやつが」

 

そう言うと、椅子から立ち上がり、近くの厳重に保管された金庫から、1つの書類を取り出した。

 

「本人から許可は貰っとる、ほれ」

 

そう言うと、その書類を俺へと渡してきた。

 

「これって…」

 

読んでみると、そこには、ライムの写真と詳細が書かれた、履歴書のようだった。

 

「ライムの履歴書や、今のアイツからは想像もできん経歴やろ?」

 

そう言われ、上から順に読んでいくと、そこには"孤児院卒"だの"元殺し屋"だの、今のライムからは想像もできないような経歴が書かれていた。

 

「アイツが初めて殺したのはガールフレンドのためだそうだ、そこから殺しに抵抗がなくなり、殺し屋になったらしい」

 

それを聞き、俺は言葉が出なくなっていた。

あの優しい今の姿からはそんな事を感じさせないのは、並ならぬ苦労もあっただろう。

そのことを思うと、さらに何も言えなくなっていた。

 

「…ちなみに、面接の時にワイ言ったよな?"このPMCには誰か守りたいヤツがいる"ということが第一の入社条件や、って」

 

「…はい」

 

「ライムの場合は、こんなに人間として腐っちまっても、それでも愛し続けてくれるガールフレンドを守るために金が必要になった、だがもう道は間違えたくない、そういう理由があった。…この世の中にはそういう奴もおる、だからワイはそういうヤツらのためにこのPMCを作った」

 

その言葉に、俺は何も言えなくなっていた。

むしろ、そんなPMCに俺なんかがいてもいいのか、そう考えてしまうほどに、この人は他のPMCメンバーの事を理解し、そして信頼しているのだと、俺は感じることが出来た。

 

「…ちなみに、第一にそういうのがある事となってるが、なくてもぶっちゃけええんや、その場合は俺がしっかりとまともなヤツやと判断して入れることになっとる、やからそんなに気負わんでええんや」

 

「…わかりました、頑張らせていただきます」

 

「やから頑張らんでええんや、あくまでも自然体で、このPMCのメンバーは家族も同然なんやからな…さ、はよ帰ったれや、待っとる人がおるんやろ?」

 

そう言われ、家で待つミーシャの事が頭に過った。

きっと家で心配している事だろう。

 

「はい、では失礼します」

 

そう言い、社長室から出ると、一目散に車へと走っていき、出せる限りの速度で家へと帰って行った。

 

家へ帰ると、やはり待ってくれていたらしく、玄関で仁王立ちしながら頬をふくらませて怒っている、ミーシャの姿があった。

 

「ご主人!遅れるなら連絡くださいよ!」

 

「悪い、待たせちまったな」

 

そう言い、荷物を置き、ミーシャを抱きしめる。

すると、ミーシャからもハグが帰ってきたので、しばらくそのまま幸福感に浸っていた。

 

「さ、ご飯できてますよ、ご主人」

 

「ありがとう、ミーシャ」

 

そう言い、ハグをやめ、リビングへと行き、荷物を置いて一緒に"いただきます"と言ってから食べ始めた。

…その晩は、朝に言われた通りミーシャに襲われ、濃厚な夜を過ごしたのは言うまでもない。

 

 

 

その日から数週間後、俺達は合宿予定地へのヘリに乗るため、朝早く、日の登り始めた頃に車に乗り、PMCの所有するヘリ基地へと向かっていた。

駐車場に車を停め、指定された建物へと向かう。

すると社長を含め、幹部陣と見られる人数名が、既に建物の中で待機していた。

 

その他にはまだ誰も来ていないので、ある意味狙い通りということになった。

というのも、ミーシャがしっかりとミヤ社長や、その他の幹部陣にしっかりと猫と伝えておきたいらしいのだ。

 

「なんやタクヤ、早いな、夜戦明けか?」

 

「ちーがーいーまーすー!…ミーシャが皆さんに挨拶したいらしいんで早めに来ました」

 

「そうか、おいライム!キョウヤ!ちょっとこっちきいや!」

 

そう社長が言うと、少し離れたところで談笑していた2人が、駆け足で近づいてきた。

 

「はいはい?なんでしょう?」

 

「コイツが嫁さん自慢…もとい嫁さんが挨拶したいから早めに来たんやと、今回のメイン幹部お前らやからな、自慢食らうんお前らだけでええやろ」

 

「ははーん…なるほどリア充死すべし慈悲はない、特にライム」

 

「なんでだよキョウヤ、目の前に婚約してるリア充いんのになんで俺なんだよ」

 

「そりゃあ…かなりの頻度で彼女さんとの楽しい話されたらなぁ…全くうらやまけしからん」

 

そう言って、また2人は談笑を再開してしまった。

結構2人は仲が良いようだ。

 

「おいアホンダラ、勝手にまた会話再開してどないすんねんアホ」

 

「「口悪っ」」

 

「悪ないわアホ、平常運転じゃ」

 

そう言って、今度は3人で会話を始めてしまった。

…ミーシャと2人そろって忘れられてる気がしてきた。

そんな事を思っていると、どうやら思い出してくれたらしく、社長が軽く"すまん、忘れてた"と言ってこちらを向いてきた。

…やっぱり忘れてたんかい。

そう思っていると、いざ明かすとなると心配になってきたのか、ミーシャが服の袖を掴んできた。

 

「大丈夫、この人たちは信頼できるよ」

 

そう言って、目線を合わせつつ頭を撫でて安心させてやる。

これで心配が取り除かれるか心配だったが、どうやら心配は取り除かれたようで、にこやかな笑みを見せてくれた。

そして、帽子を外し、耳としっぽを見えるようにしてから、

 

「…えーと、ターキッシュアンゴラ?の中野 ミーシャっていいます、見た目の通り、元は猫でした、皆さんよろしくお願いします!」

 

と言って、挨拶をしていた。

我ながらよく出来た妻だと思う。

そんな事を考えていたら、挨拶をされた3人はミーシャを見て固まっていた。

恐らく混乱しているのだろう。

 

「いやぁ…予想はついてたけどホンマやったんやな」

 

「こんなことあるんですねぇ…」

 

「本当に…ってか可愛すぎかよ」

 

そう三者三様の反応が帰ってきた。

約1名、キョウヤ辺りは俺と同じヤバいやつの雰囲気がしたが。

まあ確かに可愛いから仕方ないか。

…もしかしたら俺は親バカならぬ嫁バカか?

まあ可愛いのは本当の事だし是非もないよネ!

 

…頭がおかしくなってきたかもしれない。

そんな事を考えていると、急にキョウヤが、

 

「なんかあったらすぐに言ってください!協力しますんで!」

 

と言ってきた。

すぐにライムに"カッコつけたがり乙"と言われて反論できてなかったので本当にカッコつけたかっただけなのだろう。

…そういやキョウヤはいつの間にかキョウヤで呼んでるな俺。

まあいいか、脳内で呼ぶくらいなら誰も悪く言わないだろう。

そう思っていると、

 

「あ、俺もライムと同じでキョウヤとでも呼んでください」

 

と言ってきた。

…思ってることバレてた?

そう思ってしまうが、そんな事はないだろう。

 

「あ、ああ、わかった、それじゃあこの事はできるだけ内密にお願いします」

 

「了解です、キョウヤ、勢い余って他人にバラすなよ?」

 

「バラさねぇよ、隠せと言われたらしっかりと隠させてもらうさ」

 

そう2人がやり取りをしているのを聞く限り、この2人なら大丈夫だろう。

そう思い、安心していると、

 

「おはようございまーっす!あっ!タクさん!」

 

と聞こえ、声の方向を見ると、そこにはクルミの姿があった。

慌ててミーシャの方向をチラリと見ると、安心しきっていたからか、帽子を被って隠すのが少し遅くなって、隠しきれていなかった。

 

「ほほう…最近テレビで見た獣っ子っすか」

 

そうクルミが言いながらミーシャへと近づいてくるのを、慌てて前に入りミーシャの近くに行かないように止める。

…ってん?最近テレビで見た?

 

「クルミ、今テレビで見たって言った?」

 

「言いましたよー?最近になって発見された異常現象で、『1度ヒトになるとその動物だった頃の面影を残しつつヒトとして生活する』って感じらしいっす」

 

「へー…ってえっ、割とみんな知ってる感じ…?」

 

「ワイは知ってたで?言わんかったけど」

 

「俺も知ってました、言いませんでしたけど」

 

「俺も知ってて『獣耳っ娘実現キター!?』って1人で興奮した覚えあります」

 

「…マジか」

 

どうやら、俺だけが知らなかったらしい。

いや、ミーシャも驚いているので2人だけか。

割とメジャーになりつつある現象、ってことは…

 

「ミーシャの事を必死に隠し続けなくても大丈夫な世の中が来た…?」

 

「ってことはご主人、私もご主人と一緒に色々な所に…!」

 

「ああ、そういうことになるな!」

 

そう言い、2人で周りの視線も気にせずに抱き合った。

…1人ほど妬ましい目で見てきている気がするが気の所為だろう。

それにしても、このおかげでさらにミーシャと一緒に色々な所に行けると思うと、途端にとても嬉しく思ってきた。

 

「あのー、興奮してるとこ悪いっすけど、まだかなり低確率らしくって、しばらく普及するまで珍しいものを見る目で見られると思いますよ?」

 

「それでも色々な所に堂々と行けるようになるんだ、それほど嬉しいことは無いさ、なあミーシャ?」

 

「はい!今までは近場とかにしか行けなかったので…」

 

「…まあ、そうっすね、タクさんが嬉しいならそれで私はいいっす」

 

そう言い、クルミは少し悲しそうにはにかんできた。

理由は俺にはわからなかったが、聞くのもはばかられ、その場では理由はわからなかった。

ミーシャはそれを見て何かを察したのか、なにか申し訳なさそうにしていた。

やはり、元は動物ということで人の心境を察するのが得意なのだろう。

 

そう思っていると、0800を過ぎた辺りから、たくさんの人々が建物へと集まってきた。

いよいよ合宿が始まるようだ。

 

そこからは社長自らが運転するUH-1Hや、UH-60Mなど、PMCに所属しているヘリを総動員し、編隊を組んで、海に浮かぶ無人島へと、つかの間の空の旅を満喫した。

それぞれの寝室となる部屋へと案内され、荷物を置いてリラックスする。

しばらくすると招集がかかったので指定された広間へと向かうと、メガホンを持ったキョウヤが壇上へと上がり、大人数を前にして立っていた。

 

「静かにしてくださーい!これから皆さんにやってもらう事を発表しまーす!」

 

そう言い、周りが静かになったのを確認したあとに、キョウヤは、

 

「皆さん静かになりましたね―――では皆さんにやってもらうことを発表します」

 

そう言い、キョウヤはいつものラフな表情から、唐突に真剣な表情を浮かべ、

 

「―――では皆さんには、"殺し合い"をしてもらいます」

 

と言った。

 

「…は?」

 

そう反応したのもつかの間、俺達は何者らかにより気絶させられたのか、人影を見た瞬間、唐突に意識を失った。




いかがでしたでしょうか?
今までのクオリティから下がってなかったら幸いです。
自分で書いててなんですが、ミーシャ可愛くないですかね?(親バカ)

話の流れについて

  • このままで良い。
  • もう少し日常感を出して欲しい。
  • もっとハチャメチャでも良い。
  • もっとラブコメの波動を出して欲しい。
  • その他(コメントでお願いします)

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