猫な彼女と傭兵と   作:ノア(マウントベアーの熊の方)

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大変長らくお待たせしました、ねこかのの5話となります!
今回、プロットの書き方を少し変えてみております。
書きやすくなっていいゾ^〜これ

…え?なぜ本連載してる方も投稿が遅いのか、ですって?
ポケモンが悪いんです、ポケモンが。(責任転嫁)
はい、すみません、本連載の方もできるだけ早めにしますね…

では今回も、ごゆっくり見ていってください。


第5話

「ミーシャァァァ!!」

 

そう叫びながら必死に手を伸ばし、庇おうとする。

しかし、やはり圧倒的に距離が、そして届くまでの時間が足りなかった。

 

ブラッディウルフの太い四肢がミーシャへとのしかかろうとし、俺は思わず目を閉じつつ、けれどもその足は止めずに助けに行こうとすると、唐突にミーシャの方からズダダダダッと銃を連射する音が聞こえ、ハッとその目を開いた。

すると、そこには返り血をかぶりながらも肩で息をしつつ、片手にMP5を持ったミーシャの姿が、そこにはあった。

 

「ミーシャっ!…よかった…本当によかった…」

 

そうミーシャ抱きつきながら、ミーシャの頭を撫でてやる。

対するミーシャはと言うと、やはり怖かったようで、震えて泣きながら俺の体を抱き締め返してきた。

 

「タクさん!ミーシャちゃんは!?」

 

そう外からクルミが飛ぶように帰って来て、俺たちの姿を見る。

一瞬返り血もあってか殺られてしまったのかと思ったようだが、俺の体からヒョコリとミーシャが顔を出したのを見て、ホッと一息ついていた。

 

「ミーシャ…よかった、よくあそこで銃を使えたな」

 

「はい…気づいたら体が勝手に…私のせいでオオカミさんが…」

 

「そんな事は別にいいんだ、コイツはミーシャを殺しにかかってた、コイツの自業自得さ」

 

そう言って、俺は手でミーシャの顔についた返り血を拭き取ってやっていた。

 

「さて、と、クルミ、外のヤツらは?」

 

そう立ち上がりながら尋ねると、クルミは満面の笑みにサムズアップしながら、

 

「あのくらい、余裕っすよ!ちゃちゃっと片付けてきたっす!」

 

と、言ってきた。

 

「そうか、流石クルミだ」

 

そう言ってクルミの頭にポンと手を置き、わしゃわしゃと頭を撫でてやりった後、俺はミーシャの横に横たわって息絶えているブラッディウルフを担いで、外へと出た。

 

 

「さて…コイツらを血抜きしてから解体して…あ、そうだ火がねぇや…」

 

そう言いながらポリポリと頭をかいていると、ポケットに入れていた端末に、一通のメールが届いた。

何かと思ってみてみると、送り主の所には『運営』と書いており、題名も『インフォメーション』とだけの簡素なものだった。

気になって内容を見てみると、『戦闘経験のない方はシステムアシストにより、戦闘が可能になっております。』と書かれていた。

つまり、あの時咄嗟にミーシャが射撃できたのは、システムアシストとやらのおかげ、ということになるのだろう。

つまり、先程、花瓶で思い知らされたが本当にここはゲームの中だということだ。

 

「まあ、ミーシャに戦闘させる訳にはいかないけどな」

 

そんなことを言いつつ、なにか火種になりそうなものが無いか探す。

危険だが銃弾の発射薬を使って火を起こそうかとも考えたが、そもそも弾頭を外せないので諦めることにした。

そう色々と考えていると、廃屋のドアを開けてこちらを覗き見てくる、2人の存在に気づいた。

 

「…2人ともなにやってるんだ?」

 

そう聞くと、2人は廃屋から訝しむような表情を浮かべながら出てきた。

 

「タクさんこそなにやってるんすか?さっきからブラッディウルフの死体の山をジロジロ見て…」

 

「そうですよ、さっきから端末見てなんか納得したかの表情を浮かべたと思ったらオオカミさんの死体を見てうーんだのいや無理かーだの言ってんですよ?」

 

「…それは不審者感あるな」

 

「でしょ?で、どうしたんすか?」

 

そう言われ、今まで考えていたことを話してみる。

最初は俺のやりたい事がすぐに分かってくれていた表情だったが、すぐに2人とも熟考し始めた。

 

「あー…うーん…火っすか…起こせないこともないっすけど…」

 

「私はお肉の調理法くらいしか思いつかないです…ああ、でも塩もコショウもないんですよね…」

 

「だろ…?なにか使えるものがあればいいんだが…」

 

そう言い、3人揃って再度熟考を始める。

気がつくと、もう少しで夕方になりそうになってきていた。

もし火を起こすなら日のあるうちがいいだろう。

それにこんな場所、夜に出歩くのは流石に危険極まりない。

本当に困った。

 

そう焦りつつ考えていると、クルミが何かを思いついたらしく廃屋の中へと戻り、何かを探し始めた。

俺とミーシャは突然の事に目を合わせてから首をかしげあい、クルミが出てくるのを待った。

そしてしばらくすると、クルミが1枚の透明度の高いビニール袋を持って、こちらに笑顔を浮かべて走ってきた。

 

「タクさん!これ使いましょうよ!」

 

「ビニール袋ぉ?そんなもの使えるわけが……いや、待てよ?そうか、そう言うことか!でかした!」

 

そう言い、クルミからビニール袋を預かり、急いで川へと走り、その袋の中に水を汲む。

そしてこぼさぬよう急いで戻り、用意して無駄になるところだった火種の元へと光を集め始めた。

しばらく当て続けると、次第にもくもくと煙がたち始め、それに風を送り、その煙の元を強くしていく。

そしていつの間にかクルミが用意してくれていた別の火種の元に移し、そのまま風を送り続けていると、小さな火がついた。

その火を絶やさぬように燃えるものをくべ、風を送り続けてを繰り返していると、いい感じのたき火ができた。

 

「よし!これで暖かいものが食べられるぞぉ!」

 

「やったっすね!これでレーションも温めれるっす!」

 

「ああ、冷たいレーションは正直辛いからな…」

 

そんな事を言いながら、石などを使い上に物をおけるようにし、事前に見つけていた鍋を洗い、使えるようにしておいた。

その後は俺がブラッディウルフを捌いて、クルミが手頃な木の棒を洗ってナイフで研いで串にし、たき火に当てて肉をただ焼いただけというシンプルな料理を作り、晩御飯に取っておいた。

 

そんな事をしてしばらくすると、日も次第に暮れてきた事により、改めて火をおこせたことで起こる安心感に包まれていた。

火をおこしてからはその火が絶えないように枝や枯葉などを集めてそれをくべ、各々火にあたって温まっていた。

その後しばらくすると、クルミのお腹がぐぅーと鳴り、みんなして事前に作っておいたブラッディウルフの肉の串焼きを再度たき火に当てて温め、皆でかじりついて食べていた。

 

「ふう…レーションを支給されてるけど、しばらくこの肉で足りそうだな、まだまだあるぞこの肉」

 

「そうっすねぇ、全部で何匹でしたっけ?」

 

「15匹だ、食えるとこは基本もも肉の部分だから1匹につき2つ食えるとこがあるから1人につき10個食えるぞ」

 

「しかも大きいですよねこのお肉…1つか2つで私はおなかいっぱいです…」

 

そう言うミーシャに同感しつつ、俺は串に刺さった肉を頬張っていた。

ふと他のチームのことが気になり端末を見てみると、火がつけられずにつけ方を聞くチームや、今日仕留めたモンスターの食レポなど、様々な話題で盛り上がっていた。

その中でも社長チームの"上級モンスター狩り"の話題は凄く、どんな武器を使っているのかと興味津々な人や、どうやって仕留めたのか考察している人、そもそもその話はデマだと聞いて疑わない人など、その話題は多岐に渡っていた。

確かに、武器や戦法は気になるし、その前に嘘だと信じたい気もわかる。

しかし、俺はその話題よりも、どのチームの誰も1度も死んでいないと言うこのPMCの練度の高さに驚かされていた。

間違いなくPMCに属していない一般の人、はたまたミーシャみたいに銃を撃ったことがない人もいるはずだが、低級から上級モンスターまで、様々なモンスターが蔓延るこのエリアで誰も死んでいないのは凄いことだろう。

 

そんな事を考えていると、ミーシャがうつらうつらと船を漕ぎ始めていた。

恐らく、お腹がいっぱいになって眠たくなったのだろう。

しばらくすると、横に座っていた俺にもたれ掛かるように眠り始め、しっぽも俺の腕に巻き付かせてきた。

 

「よかったっすね、タクさん、しっぽ巻き付かせてくるのって確か親愛の証っすよ」

 

「…そうか、嬉しいもんだな」

 

「うちの犬も、よく擦り寄ってきて眠るんすよ、いいっすよね、誰かに好かれるって」

 

「そうだな、本当に、嬉しいもんだ」

 

そう言い、寝ているミーシャの頭を撫でてやる。

…その俺たちの姿を見るクルミの顔は、どこか羨ましそうだった。

その事に気づいた俺は、クルミを手招きして隣に座らせ、その頭を撫でてやった。

最初は本当にこれでいいのか不安だったが、何も言わず嬉しそうに撫でられてきていたので、これで合っていたのだろう。

そう2人の頭を撫でていると、いつの間にかクルミも俺にもたれかかって眠ってしまっていた。

困ったなぁと思いつつ、ずっとこの平和な一時が続けばいいのにと思いふけっていた。

それからしばらくすると、2人の温もりでか、だんだん俺まで眠たくなってきて、必死に寝ないように努力する。

こんな遮るものもない、何が出るかわからない場所で、誰も見張りのないのは実にまずいと思ったからだ。

そうしばらく頑張っていると、クルミが目を覚まし、その安心感でか、すぐに俺の意識は夢の中へと飛び込んでいった。

 

 

どのくらい経ったか、空が色づき始めた頃、唐突にハッと夢の世界から意識が目覚め、思わず辺りを見回す。

すると、愛銃のP90を持ってふふっと微笑む、クルミと目が合った。

 

「…悪い、見張りずっと任せちまってて」

 

「いいんすよ、先に寝ちゃったのは私ですし」

 

そんな会話を交わしてから、ふと寄りかかって寝てきているミーシャへと目を向ける。

少し朝なのもあって冷えるが、そんな事を感じないほどに暖かく、幸せそうにまだ眠っていた。

困ったな…そう思いつつ、俺はミーシャの頭を撫でてやっていた。

 

「さて…どうしたもんか」

 

「どうします?私たちで狩りに行くもいいっすけど…それだとミーシャちゃんが1人になっちゃいますしねぇ」

 

「だな…とりあえずクルミはもう一度寝とけ、見張り変わるから」

 

「わかったっす…ふわぁぁ…」

 

そうクルミは大きなあくびをしたかと思うと、そのまま隣に座り、俺にもたれかかって眠ってしまった。

 

「…動けねぇ」

 

そうぽつりと呟き、俺はそのまま起きて見張りを続けていた。

 

 

~~~

~~

 

「ふわぁぁ…見張り交代お願いするっす…」

 

「了解、ゆっくり休め」

 

あのゲーム参加から既に内部時間で5日が経った。

リアルでの経過時間はわからないが、もしかしたら同じ時間が経っているのかも知れないな、そう思いながらもはや恒例となった2人にもたれかかられながらの見張りを続けていた。

あの日から襲撃してきたのを撃破する事だけをしており、その撃破回数は初日含めて2回となっていた。

その時襲撃してきたモンスターは初日と違い、クレイジー・ボアと言う大型イノシシ1匹だけだったので、初日の戦闘よりは楽に処理することが出来た。

ちなみに、ここまでのゲーム成績は五分五分で、社長チームに食らいつくかのように社員チームがポイントを稼ぎ続け、お互いもう少しで目標のポイントにたどり着くポイントにまで上り詰めていた。

なお、弾薬は要請すればヘリから投下してくれる親切なシステムとなっているため、なかなか無くなることはないだろう。

 

そんな事を考えつつ、動ける範囲で色々していると、唐突にミーシャの猫耳が動いた。

そのあとすぐに飛び起きたので何事かと思っていると、ミーシャがじっとある方向を見つめ続け始めた。

 

「…どうした?」

 

「いえ…なにか足音がした気がして…」

 

「その音は今もするのか?」

 

「はい…近づいてきてます…」

 

そう言うと、ミーシャは猫耳を後ろに向け、俺の方へと近寄ってきて怯え始めた。

急いでクルミを起こし、銃をコッキングして警戒し始める。

すると、しばらくしてガサガサッという音が俺たちの耳にも聞こえ始め、明らかに何かが近づいてきていることがわかった。

その音の方向に銃を構え、徐々に廃屋の方へと距離を詰め、ミーシャを廃屋の中に隠れさせる。

それと同時に、草むらから銀色の毛をした、巨大な獣―――中級モンスターの、プラチナムベアが現れた。

プラチナムベアは、俺たちを見るなり2足で立ち上がり、威嚇するかのように雄叫びを上げた後、俺たちに向かって突進し始めた。

それを急いでかわそうとするが、恐怖でなのか、全く体が動かなかった。

 

俺たちにその巨躯が直撃しようとした時、横からの衝撃と共に俺の体が吹き飛ばされ、プラチナムベアの突進コースから逸らされた。

かわせたことの安心感と同時に、俺にタックルして吹き飛ばしてかわさせてきたクルミへと目を向ける。

すると、クルミは諦めるかのように銃を下ろし、プラチナムベアを見つめていた。

咄嗟に叫ぶが突進の勢いは収まるどころか加速し、クルミに直撃しようとしていたその時、クルミが地を蹴って跳躍し、プラチナムベアを踏みつけて空中で一回転しつつ、その背中へとP90から放たれる5.7×28mm弾を撃ち込んでいた。

そのまま着陸したと同時に今度は後ろから銃弾を撃ち込み、プラチナムベアはよろけて体制を崩し、突進の勢いと相まって木へとぶつかっていた。

その事に呆気にとられながらも思考を切り替え、俺はクルミの方に合流しつつ、起き上がってくるプラチナムベアに向かって銃弾を撃ち込み続けていた。

 

「クルミ!大丈夫か!?」

 

「大丈夫っす!いやぁ…成功してよかったっす…タクさんは大丈夫っすか?」

 

「ああ、おかげでな…にしても、よく咄嗟にあんなことができたもんだ」

 

「たまたまっすよ、たまたま…流石にもう一回やれって言われてもできないっす」

 

そう言いながらマガジンを変えるクルミを視界の端に捉えながら、俺もマガジンを変え、未だに立ち上がり咆哮をしているプラチナムベアへと銃を構える。

静かに息を吐きながら照準を定め、クルミと同時に発砲し、弾幕を貼る。

流石に撃ち込みまくったからか、分厚い皮膚から手応えを感じる出血をし始め、よろりとその巨体が揺れた。

 

「リロード!」

 

「こっちもリロードっす!」

 

そう2人してほぼ同時にリロードし、すぐに間髪入れずに撃ち込み続ける。

すると、次第にプラチナムベアの四肢から力が抜け、その巨体がついに地に伏せた。

 

まだマガジンに数発残っている状態で新しいマガジンとチェンジし、ゆっくりと銃を構えながらその巨体へと歩み寄る。

そして至近距離から脳天を撃ち抜くと、プラチナムベアの巨体がビクンと震え、そして、動かなくなった。

 

「やった…!やったぞ!」

 

「やったっすねタクさん!」

 

そう2人でハイタッチを交わし、落としているマガジンを拾い集めて仕事着の防弾チョッキのマガジンポーチに仕舞い、ミーシャの待つ廃屋へと笑い合いながら戻った。

 

~~~

~~

 

あの後、今後の食料候補として狩ったプラチナムベアを捌いていると、突然ポケットに入れていた端末が鳴り、見てみるとメールが届いていた。

内容はと言うと、『もう少しで目標ポイントに到達するので、全チームは3つのうちいずれか1つのポイントに向かえ』というものだった。

本音を言うとプラチナムベアの味が気になっていたので、渋々解体作業を中断し、廃屋の中でゆっくりしていた2人にそのことを告げ、あるだけの食料や水、弾薬などをかき集めてから、指定されたポイントを地図で確認してみることにした。

すると、ここから数十分ほど歩いた場所に指定されたポイントがあったので、必要な分の食料と水、弾薬を持ち、そのポイントへと向かった。

 

途中途中休憩を挟みながら、俺たちは地図を頼りに森の中を進み、しばらくすると開けた遺跡のような場所へと到着した。

しばらくその中を進むと、すり鉢状の広い闘技場のような所に、他のチームがちらほらと座り、談笑していた。

俺達もそれに倣って座り、歩いた疲れを癒していると、唐突に全チームリーダーの持つ端末に『3分後に大規模戦闘を開始します。各チームは準備を始めてください。』と、メールが入った。

 

言われるがままに銃を取り、コッキングして準備する。

そして全メンバーの最後方でミーシャを守るように闘技場のフィールドに立ち、スタンバイしていた。

 

「何が出てくるかは知らないが…遮蔽物は割と多いな、ここ」

 

「そうっすね、至る所に柱とか壁みたいなのがあるっす」

 

「アーチみたいになってる所もありますね…なんなんでしょうここ?」

 

そんな会話をしていると、一斉に全チームリーダーの端末が鳴り響き、闘技場にある出入口のような所の檻が開いた。

一瞬ざわっとしたかと思うと、各チームメンバーの一部は一目散に逃げ出し、そこそこいた人数が一気に減り、やっと俺たちにもその理由となる生物がくっきりと見ることができた。

俺たちは、その姿を見るなり、何も声が出せなくなっていた。

それも仕方ない、そこにいたのは上級モンスターとして名の知られている、"ケルベロス"という3つ首の巨大な獰猛さを隠しきれない犬の姿だったのだ。

恐怖のあまり動かなくなった体にムチを打ち、銃につけたスリングを肩にかけ、2人の手を引いて一心不乱に逃走を始める。

このPMCの腕利きなのであろう人達が攻撃してくれていたので、ひとまず距離を開けることができた。

だがしかし、それでもあの巨体ではすぐに追いつかれる距離なのは火を見るよりも明らかだった。

こうして距離を開け続けている間にも、後ろからは悲鳴と共に銃声や何かが崩れる音が聞こえ、逃げた人々へと攻撃の矛先が向くのは時間の問題にも思えた。

ここまでくれば2人を逃がせる方法はただ一つ、この3人のうちの俺が囮となることだけだろう。

そう思い、逃げる足を止め、後ろを向いて2人の顔を見た。

 

「タクさん、どうしたっすか?早く逃げないと確実に私らじゃ殺られちゃうっすよ!」

 

「…クルミ、ミーシャを頼む、端末もお前に渡しておくから、それで地図を見てなんとか逃げ延びてくれ」

 

「そんな!それって、ご主人と離れ離れになるってことじゃ…!そんなの嫌です!」

 

「安心しろ、今いるのはゲームの世界らしい、最初のあの廃屋にでもいてくれたら俺が死んでも会えるさ…じゃ、クルミ、あとは任せたぞ!」

 

そう言い、2人の頭に手をポンと置いてから、肩にかけている愛銃のSCARを構え、来た道を走って戻り始める。

後ろから俺を呼ぶ声が聞こえてくるが、それも振り切り、気がつけばケルベロスの巨体が見える距離まで近づいていた。

数人の人が苦戦しつつも攻撃を加えているのを確認しつつ、射程距離に近づいて射撃を開始した。

周囲にある石柱などに身を隠しつつ攻撃を加え続けていると、突然、近くの森の中から巨大なワイヤー付きの鉤爪が2つ飛翔し、近くにあったアーチ状の石柱に絡みついたと思うと、今度はそれに引っ張られるかのように、2人の人影が飛び出し、そのアーチの上に飛び乗ってきた。

 

「みなさーん、大丈夫ですかー?」

 

「どう考えても大丈夫じゃねぇだろ…相手は数十人で本来戦う上級だぞ?」

 

「それもそうか、じゃあライム、社長の到着まで時間稼ぐぞ!」

 

「わーったよ、キョウヤ、足引っ張るなよ!」

 

そう聞き覚えのある声と名前が聞こえたかと思うと、その声の主たちは鉤爪のついた銃とは違う片手に持った銃で射撃を開始した。

 

「社長チームのライムとキョウヤだ!」

 

「なんだあの持ってる銃口から鉤爪生えましたみたいな銃!?お前なんか知ってるか!?」

 

「小隊長の腰のホルスターにいつもつけてる銃だ…あんなんだったのか」

 

そう2人が現れたことで多少の余裕が生まれたのか、どこからかそういう話し声が聞こえてきた。

いつの間にか俺もどこか安心し始め、自然と肩の力が抜け、いい力加減になっていた。

 

そして周りの戦闘要員も射撃を開始し、ケルベロスを翻弄し始めた時、唐突に森の中からキュィィィィンというモーター音が聞こえてきたと思うと、その音はブォォォォォンという音へと変わり、ケルベロスに向かって大量の弾丸が撃ち込まれ始めた。

 

「Hello,Muscle!今日も筋肉鍛えとるか!」

 

そう言いながら黒い筋肉の塊こと社長が、ミニガンをブッ放しながら森の中から出てきた。

現れて開口一番そのセリフという事にツッコミを入れたくなったが、終業時間の曲をマッチョ・マンにしたり初期リスポーン地点にマッチョ・マンのCDを仕込んだりするほどの筋肉オタク?なので仕方ないだろう。

そんなことを考えている間にも、毎分3000発という数の暴力がケルベロスを襲い続け、さらにそこにライムとキョウヤによる弱点狙撃が加わるという、もはやケルベロスに同情せざるを得ない攻撃が絶え間なく続いていた。

その場にいたほぼ全員が上級モンスターであるケルベロスが最早反撃できないという状況に呆気にとられていると、気がつけばケルベロスが地に伏し、物言わぬ骸となっていた。

 

「射撃やめ!筋肉の勝利や!」

 

「筋肉の勝利ってなんですかね…」

 

「やめとけキョウヤ、ツッコむだけ無駄だ」

 

そう3人が言い、銃を下ろしたと思うと、突如上空に『WINNER "社長チーム"』と書かれた文字が現れ、次の瞬間、俺達の視界は闇に包まれ、その意識を手放していた。




いかがでしたか?
今回、本文が8404文字なんですけど、プロットなしで1万文字超えた1話ってなんなんでしょうね…
今回かなり書いたと思ったんですけど…

とまあまた次回、お会いしましょう!

話の流れについて

  • このままで良い。
  • もう少し日常感を出して欲しい。
  • もっとハチャメチャでも良い。
  • もっとラブコメの波動を出して欲しい。
  • その他(コメントでお願いします)

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