西側諸国召喚   作:RIM-156 SM-2ER

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皆様どうもSM-2です。
こちらの投稿は、久しぶりになってしまいました。申し訳ございません。
「ストライクウィッチーズの世界に日本が転移!?」の方の話を書くのに精いっぱいになってしまって。
では本編どうぞ。


EP13 揺れるロウリア

ロウリア王国軍は混乱の中にいた。

クワ・トイネ公国海軍との海戦は実に4400隻という圧倒的な数で挑んだにも関わらず、その半数以上の2800隻を喪失した。何とか生き残った1600隻はロウリア王国の3つの主要軍港に分散していたのだが、軍港の外に出ようとすると船が謎の爆発を起こし沈むという事態に見舞われたため作戦行動が出来なくなり、事実上の壊滅状態となった。

ロウリア王国王都にある王城の会議室では各軍の司令官を集めた何度目かの会議が開かれていた。

 

「敵は一体何なのだ!」

 

パタジンは半ばパニック気味にそうどなった。だが会議に出席する誰ひとりとしてパタジンの問いに明確に答えられる人間はいなかった。

分かっているのは「NATO」という国家連合*1が参戦してきたことと、彼らがとてつもない軍事力を保有することだけであった。

 

「・・・・前線からの報告では敵は強大な爆裂魔法を放ち、鋼鉄に覆われ馬が引かずとも走る奇妙な箱に乗っているとのこと。空に至ってはワイバーンを追いかける矢のような物を放つと・・・・・」

 

今まで前線から上がっていた報告は彼らは何度も聞いていた。最初は「負けた言い訳か。ばかばかしい」と思ってはいたが、こうも連戦連敗が続くと報告書も嘘と笑えなくなってきた。

 

「ヤミレイ殿・・・・何か思い当たることはありませんが?」

 

幹部の一人が魔導師のヤミレイに意見を求めた。

 

「ううむ・・・・追ってくる光の矢、強大な爆裂魔法・・・・・・はっ!!」

 

ヤミレイは何かに気がついたかのように声を上げた。そしてそのあと顔をサァと青ざめさせてがくがくと震えだす。その様子の変動っぷりに会議の出席者たちはヤミレイが何を思い出したのかが気になった。

 

「ど、どうしたのですか?ヤミレイ殿・・・・?」

「や、奴らは古の魔法帝国では!?」

「「「「ッ・・・・!!!」」」」

 

古の魔法帝国—正式な名前はラヴァーナル帝国。この世界において知らないものはいないといわれる古代に存在した強大な国。光翼人という絶大な魔力を誇る種族が構成する国家で、非常に高度な文明を築き、絶大な魔力を持ってた種族を奴隷もしくは家畜のように扱っていたという。その国は傲慢にも神々に弓を引いた。神々は怒り狂い、彼らの頭上に隕石を落とした。隕石の衝突を避けられぬと知った魔法帝国は未来に転移する魔法を発動させ、この世界から消えた。

その伝説をだれもが思い出していた。

 

「いや、そんなことは・・・・・」

「だがそうでもないと、この被害は・・・・・・」

 

会議場にいる面々は口々に感想を述べる。そんなことはないと否定するもの、それ以外に考えられないというもの、反応はまちまちであった。

 

「いや。伝承では魔法帝国は昼間に復活し、その際は空が夜のごとく暗くなると言われている。それに魔法帝国ならば国交の締結などしないだろう・・・・・」

 

パタジンの言うことは一理あった。他種族を奴隷のように扱う国が、国交を締結し尚且つ助けるなどありえないことだった。彼の言葉を聞いて会議場の混乱は収まっていく。

 

「それもそうだ。魔法帝国というのは早計だった」

「いや、いいのだヤミレイ殿。この被害では無理もない・・・・」

 

パタジンはヤミレイの言葉に一定の理解を示した。

 

「ともかく。今は敵の正体ではなく国をいかにして守るかを話し合おう」

 

パタジンが居並ぶ将軍たちにそう言った。すると一人の若い参謀が手を挙げる。本来なら将軍に自身の案を述べ参謀自身は裏方に徹するため、こういった会議で発言することは許されていないのだが、少しでも案が欲しい今の状況で、パタジンは発言を許した。

 

「何か案があるのか?」

「はっ。まず奪還されたギムとこの王都の間には我が国の工業都市であるビーズルがございます。ここは我が国の軍を支える屋台骨。そして王都を防衛するための城塞都市でもあります。敵もここを避けていくことは出来ないでしょう」

 

参謀はテーブルに敷かれた地図のある一点を指してそういった。

参謀の言葉に、居並ぶ将軍はコクコクと頷く。参謀の意見は将軍たちの共通認識であったからだ。

 

「であれば、まず陸軍の残存兵力のうち首都防衛隊を除くすべての部隊をビーズルに向かわせます・・・」

 

そこまで行ったところで一人の将軍からヤジが飛ぶ。

 

「その程度のことは誰でも思いつく。だがそれで勝つのは難しいのではないか?」

「最後までお聞きください。ビーズルに配備した部隊のうち半分をひそかにビーズルの北にありますノーダアルバロ森林に身を隠します・・・・」

 

そこまで言うと参謀は持っていたもう一つの地図―ビーズル周辺の地図を広げた。

ビーズルというのは天然の要塞でもあり、西はオクデンタ川と呼ばれる大河が、北にはこのビーズルを支えるロウリア王国内最大級の鉄鉱山ビーズル鉱山を有するスーダ大山脈が広がっており、南は大森林が広がっている。

ビーズルは王都ほどではないが分厚く高い城壁に囲まれた城塞都市であり、これを突破するには破城槌やカタパルト、攻城塔などの大規模な攻城兵器が必要であった。だがそれを運用できるのは東に広がる平原のみであり残りの三方から城壁を突破することは不可能といえた。

 

「ご存知の通り、ビーズルは天然の要害でもございます。ここを攻めるには東に広がるオリエン平原からしかございません。すると敵はオリエン平原の最西端、スーダ山脈とノーダアルバロ森林に挟まれた長さ6km幅1kmのこの狭い地点に陣取るでしょう」

 

参謀がそこまで言うと、パタジンは彼の言わんとすることが分かった。

 

「なるほど。敵が陣取ったところに森に潜んでいた部隊が後ろから奇襲し、ビーズル城内にこもっている部隊と挟み撃ちにするわけだな?」

「はい。それに万が一敵がわが方より大軍であったとしても、この細長い地形では隊列も細長くなりますから大軍の利を十全に生かせず、寡兵でも満足に戦えると考えております」

 

参謀は自信満々にそう答えた。彼の案に、居並ぶ将軍たちは希望を見出した。パタジンは数日ぶりに笑顔を見せ、参謀をほめたたえる。

 

「なるほど、よく考えられた案だ!すばらしい。早速この作戦で行こう」

「ありがとうございます」

 

この日開かれた会議で決められたロウリア王国防衛の作戦は国王に伝えられ、了承されるとすぐさま準備が始まった。

この作戦は悪くはなかった。敵が大軍であっても大損害を与え、十分に勝率がある作戦であった。だが彼らにとって不幸であったのは、NATO軍との技術格差はその程度の作戦では損害を与えることは難しいほど開いていたこと。そして作戦の内容がすべて、会議場に仕掛けられていた盗聴器によってNATO軍に筒抜けであったことだろう

*1
実際にはワルシャワ条約機構に対抗していた軍事同盟




いかがでしたでしょうか?
情報がない中、ロウリアはよくやってると思う。ただ相手が悪すぎるんだよなぁ・・・・。
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ではまた次回。さようなら

次回 EP14 ロウリアの行く道

お楽しみに

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