西側諸国召喚   作:RIM-156 SM-2ER

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皆様どうも、SM-2です。
本当にお久しぶりです。生きてますよ。リアルが本当に忙しくて、小説が書けない状況だったんです。許してください。
では、本編どうぞ


EP17 ビーズル会戦(中編)

キィンというジェットエンジン特有の甲高い音とバタバタというヘリコプター特有の空気を叩くような音が響き渡る中、アメリカ陸軍第1騎兵師団第1航空騎兵旅団「ウォーリアーズ」第1大隊所属アレックス・ポッツ大尉は、AH-64G*1を操りながら、敵を発見すると前に座っているガンナーに報告する。

 

「右にも敵だ。ボブ!30㎜でぶっ飛ばせ!」

「OK!」

 

前に座るボブと呼ばれたアフリカ系のガンナーも、アレックスの言った敵を素早く見つけると30㎜機関砲の照準を付ける。森の中に身を潜めているつもりなのだろうが、残念ながらこのAH-64G アパッチ・フォートレスに搭載されたTADS(目標捕捉・指示照準装置)PNVS(パイロット暗視センサー)から逃れることは出来ない。

FLIR(前方監視赤外線装置)によって、モニターに白く映る敵に照準を合わせるとボブはトリガーを引く。

 

タタタタタタ

 

軽快な射撃音とともに、現代戦車の天板装甲を貫徹可能な30㎜機関砲が放たれる。FLIRの映像に白く映る敵が、土煙につつまれる。土煙が晴れたとき、そこには人ではない何か熱を持っていたであろうものが白く映される。30㎜機関砲の直撃を受けて、人間の姿を保つことなど不可能だ。

しかし、FLIRによる白黒映像では人を殺したという実感はわかない。加えて、アレックスとボブは転移前に中東でともに戦ったこともある歴戦の兵士である。これくらいで動じることはない。

アレックスが再び索敵を開始すると、何やら大きなクロスボウのような物に張り付く複数の敵兵が見えた。それが向いているであろう方向には味方のAH-64Eがいる。

 

「ッ!2時の方向!敵対空兵器!ジャガー3-1注意しろ!」

 

それに気付いたアレックスがボブに敵位置を報告するとともに、味方に警戒を促す。

しかし、味方が行動するよりもボブが攻撃を開始するよりもロウリア軍の攻撃の方が早かった。大きな槍のような矢が放たれ、AH-64Eに襲い掛かる。矢じりの部分には爆裂魔法が組み込まれた、魔導矢であった。

しかし、25㎜砲弾を食らっても飛行可能なAH-64が相手では、それは力不足だった。ボロン・カーバイト製装甲とセラミック装甲で守られた最も硬い操縦席付近に当たり、爆発するも塗装が少し焼け焦げた程度であった。

 

『こちらジャガー3-1。敵対空砲による攻撃を受けた。機体に異常確認できず。飛行継続可能だが帰還する』

『こちらCP。了解した。至急、帰投しろ。ジャガー全機に警告、敵対空砲に注意されたし。オーバー』

 

攻撃を受けたヘリから無線が入り、地上の管制官が警報を発する。その報告にアレックスはホッとする。いくら装甲で守られたAH-64と言えど、敵地のど真ん中に落ちればパイロットの命が危ない。

なにより今のはAH-64の最も硬い部分に当たったからよかったものの、エンジンの空気取り入れ口付近やローターの付け根部分で爆発すれば、エンジンに異物が入り破損してしまったり、ローターが取れてしまうことが考えられる。攻撃ヘリはエンジンに異物が混入しないような装置が付けられていたり、ローターとの付け根は頑丈に作られているが、撃墜される可能性は0ではないのだ。

バリスタを脅威と認識した今、すぐにでも排除する必要がある。

 

「こちらジャガー2-4。敵対空砲を攻撃する」

 

アレックスは無線でそれだけ言うと、ボブの方を見た。

 

「さぁ、奴らにお仕置きをしてやろう。ハイドラをくらわせるぞ!ユーハブコントロール」

「アイハブ。了解!」

 

回転砲塔ではなく、また誘導装置を持たないロケット弾を撃つには機体を敵の方にきちんと向ける必要がある。

そのためアレックスは、ガンナーであり副操縦士でもあるボブに機体の操縦を譲る。すでに武装は30㎜機関砲からハイドラ70ロケット弾に切り替え済みだ。照準もそれにあったものに代わっている。

ボブはロケット弾の照準を合わせるべく機体を操作する。そしてAH-64Gの機体がバリスタの方を向き、照準を合わせる。

FLIRの向こう側では、バリスタの周りにいる兵士たちが必死に次弾を装填しようとしている最中だった。だが、次の攻撃を許すわけにはいかない。ボブはロケット弾発射スイッチを押し込む。

 

ファイヤ(発射)!」

 

シュウシュウシュウシュウ

 

連続した発射音とともに機体横のスタブウィングに4つ搭載されたM261ロケット弾発射機から、M151ハイドラ70ロケット弾が連続して4発発射される。

機関砲よりは遅く、それでいてワイバーンやヘリなんかよりはよっぽど早い速度でロケット弾は飛翔し、バリスタ付近でに着弾するとM440着発信管が作動する。

1㎏の高性能爆薬が爆発し、あたりに外殻の破片や仕込まれていた金属片をまき散らし周囲にいた兵士を殺傷する。バリスタも1発のロケット弾の至近弾を受けてばらばらになった。

 

ターゲットデストロイ(目標破壊)!よくやった!」

 

バリスタが完全に破壊されたことを確認したアレックスは、うれしそうにそういった。周囲を索敵するが、同じような兵器は確認できない。いや、正確にはそうであったのであろう残骸は確認できるが、最初のA-10による爆撃や攻撃ヘリ隊による攻撃ですでに破壊されているらしく脅威になりえない。

今なお、地上を逃げる兵士たちに攻撃ヘリの機関砲やロケット弾が襲いかかっている。こうなれば、もはや演習と何ら変わらない。ロウリア軍には個人携帯の対空ミサイルのような物は確認されていないからだ。

 

「これだけ叩けば、地上部隊の脅威にはならないな」

 

地上を走る友軍機甲部隊を見ながらアレックスはぽつりとつぶやいた。

 

――――――――――――――――――――

 

その日の夕方にはNATO軍ビーズル軍集団の4個機甲師団、1個機甲旅団はビーズルから東に3kmほどの地点に到着。有刺鉄線と重機を作って迅速に作られた塹壕陣地を構築し、ビーズルにいるロウリア軍とにらみ合いとなった。

 

「敵の状況は?」

 

陣地のほぼ中央に設置された指揮天幕の横で、ビーズル軍集団の指揮官である佐野は、双眼鏡でビーズルの方を見た後で近くにいた参謀に話しかけた。

参謀は持っていた軍用タブレット端末を佐野に見せる。

 

「はい。森にこもっていた敵は攻撃ヘリとA-10の空爆であらかた片づけました。残存した敵兵力はビーズルに逃げ込んだようです。敵主力はビーズルに閉じこもり、出てきません」

 

本来、NATO軍側にとって城塞都市に逃げ込まれることは、市街地戦を誘発するので避けたいことのはずだが、居並ぶ幕僚らの顔はなぜか満足げだった。

アメリカ陸軍第1騎兵師団長も満足そうにうなずく。

 

「うん。それでいい。我々の任務はビーズルの敵主力を王都の部隊と合流させないことだ。わざわざ市街地戦を演じて、こちらの被害を出すよりもにらみ合いの方がよっぽどいい」

 

確かに、彼らの任務はビーズルに展開する敵主力の殲滅であるが、それは絶対ではない。むしろ、敵主力を誘引し、王都を守護する部隊と引き離すことで王都攻略部隊の手助けをする方が目的であった。

市街地戦を取れば、確かに敵を殲滅することも可能であろうが、一般市民にどうしても被害が出てしまう。一般人への被害はNATO軍にとって是が非でも抑えなければならない。しかし、そればかりに集中してしまうと、今度は味方への被害が予想された。特に彼らは機甲部隊だ。戦車や装甲車は市街地での行動が苦手である。加えて魔法という不確定要素もある。昼間の空爆時にAH-64が爆発する矢の攻撃を受けたことで、NATO軍はより慎重になっていた。

 

()()の状況はどうなっている?」

「明日には行動を開始するとのことです」

 

イスラエル軍第36機甲師団長の質問に、参謀は答えた。ロウリアとの戦争終結は、確実に近づいていた。

 

 

*1
AH-64G アパッチ・フォートレス。G型は、E型から装甲、電子装備が改良されており、レーダーの索敵範囲が強化され、装甲も25mm砲弾が当たっても最低1時間飛行可能と「要塞」の名にふさわしい防弾性がある




いかがでしたでしょうか?
今回はかなりの自信作です。wikiのアパッチが攻撃する動画を見ながら書いていました。
夏休みに入るから、その間にかなり進められればいいなと思っています。
ご意見ご感想お気に入り登録お待ちしております。
ではまた次回。さようならぁ

次回 EP18 ビーズル会戦(後編)

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