プロローグ
世界中を騒がせ、あわや誰もが望まぬ第3次世界大戦になりかけた日中尖閣紛争から15年の月日が流れた。世界は平和を取り戻し世界の人口増加も収まってきた。
ある日、冷戦時代に西側と呼ばれた国々が世界から突如として消滅した。ロシアや中国などは欧州や北米大陸を衛星で偵察したが、そこにあるのは海であった。
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中央暦1637年1月24日
クワ・トイネ公国の竜騎士であるマールパティマは自身の愛騎たるワイバーンを操り公国より北東約100㎞を飛んでいた。公国の北東には何もなくただエメラルドグリーンの美しい大海原が広がるだけである。新天地を求める冒険者が北東の方角に向かったが帰ってきたものはいまだ一人としていない。
さて、マールパティマは雲一つない青空を心地よく飛んでいると違和感を覚えた。違和感の正体をつかむべく、その違和感があった方に視線を集中させるとと何かが見えた。
そのなにかは烏のように真っ黒でひどく巨大で羽ばたいていなかった。
「なんだ!あれは!」
ワイバーンや鳥ではない何かが自分しかいないはずの空を飛んでいた。マールパティマは魔信機のスイッチを入れると司令部に連絡した。
「我、未確認騎を発見!これより要撃を行う」
相手は相当早いらしくすでに輪郭がはっきりするほどまで近づいた。その飛行物体は翼の先をピカピカと光らせキィーーンという甲高い音を発していた。
未確認騎とすれ違うと反転し一気に距離を詰める・・・・はずだった。だが相手はマールパティマの予想よりもはるかに速く時速235㎞を誇る史上最強の生物ワイバーンをいともたやすく離して行く。
「くそ!なんなんだ!あれは!」
マールパティマは驚愕しつつも司令部に連絡を入れた。
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マールパティマとすれ違った未確認騎は何だったのかそれはアメリカ空軍所属のRF-15E戦術偵察機だった。この乗員2名の偵察機は、F-15E戦闘爆撃機の機体設計をベースにアビオニクスや偵察機器の更新、無人機運用能力を付与したものである。
「ファック!!何だ今のは!」
パイロットのポール・M・ベンソン空軍大尉は飛んできた方向を見ながらそう悪態をついた。
「陸地は見つからんし、ロシアや中国の電波も拾えない!!どうなっているんだ!くそっ!!」
偵察機器を操作するガンナーのカール・ジョンソン空軍大尉はそういうとキャノピーを叩いた。彼らは、元々不機嫌だったのだが本来あるべき陸地が見つからず、架空の生物であるはずのドラゴンが存在するなど、意味不明な現象が彼らをイラつかせていた。
彼らが不機嫌な理由だが、今日は本来、非番でポールは家族とともにフロリダのディズニーリゾートへカールはラスベガスのカジノへいく予定だったが、突如として衛星との通信が取れなくなり、西側諸国以外と通信が出来ず、アフリカや中東など西側諸国以外に派遣していた米軍がアラスカに出現するなど異常事態が発生したため、休暇はなくなり、2人は駆り出されることとなったのだ。
「おい!カール!前方にカメラをフォーカスしろ!」
ポールの指示に従いカールはタッチパネルを操作して高性能カメラのレンズを前方に集めた。黒い芥子粒のようなものが画面に映る。カールは気になって画面を拡大すると先ほどのドラゴンと同じような飛行生物がいくつも映っていた。
「シット!!さっきのトカゲ野郎だ!!数は1……2……3…………12だ!!人が乗ってるぞ!」
「
ポールはチャフとフレアの射出ボタンを押すと、サイドスティックを引いて機体を上昇させた。するとカールがとあることに気がついた。
「ポール!下を見ろ!街があるぞ!」
「なに!!」
ポールは言われて、下を覗き込むとそこには確かに街があった。とたんにポールは嬉しそうな顔をする。
「ビンゴだ!しっかり写真を取っておけ!後で上の方々が見るんだからな!ぶれないようにしろよ!」
「ラジャー!!」
カールはカメラの撮影ボタンを押す。機体のあらゆるところに搭載されている高性能カメラが作動し連続で街の写真が撮られていく。何枚かとるとカールは嬉しそうにこう言った。
「もう十分だ!基地に帰るぞ!」
「ああ!」
ポールは機体を基地の方角に向ける。
その日、海外に哨戒機や偵察機を飛ばした西側各国からの報告は異世界に転移してしまった事を表していた。各国は共同で発見した国家と国交を結ぶとともに、写真から異世界の技術レベルは中世ヨーロッパほど、と判明したため異世界技術流出防止条約の締結を進めるのだった。
いががでしたでしょうか。
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次回 EP1 派遣
お楽しみに