今年の夏は少し寒い日が続いたかと思ったら熱くなったりと、寒暖の差が激しかったですね。皆様も体には十分気を付けてお過ごしください。
では本編どうぞ。
ロウリア王国王都 ジン・ハーク
広い平原のど真ん中にある丘陵を利用して作られた城塞都市。それがロウリア王国の首都、ジン・ハークであった。広く遮るもののない平原は、より遠くの敵を見つけることに適しており、3重に巡らされた石造りの城壁はいかなる攻撃をも防ぐ。
町の中にも至る所に敵の侵入を妨害する罠が仕掛けられており、長期の籠城にも耐えうるように至る所に倉庫が設けられている。
3重の城壁の中心にある王城の一室では、戦争が始まってから何度目かもわからない会議が開かれていた。会議に出席しているのはロウリア王国軍最高司令官たるパタジンをはじめ、宰相マオスなど名だたる面々であったが、その顔は一様に暗い。それもこれもすべて、この会議が開かれる理由となった一つの連絡が原因であった。
「作戦が失敗するとは・・・・」
パタジンはそう言って唇をかんだ。
そう、ビーズル方面で展開されていたNATO軍を迎撃する作戦が、NATO軍による空爆と後方に展開した空挺部隊によって失敗したことである。
正直、パタジンも自信をもってこの作戦を採用していた。森に隠れた兵を見つけ出すことはワイバーンをもってしても困難であるし、ましてやそれらの大半を壊滅させるなど神業に近いことであった。
しかし、敵はいともたやすくそれらをやってのけた。正直、敵がどれほどのものなのか彼らには想像がつかない。いかなる策を弄そうともすべてを覆されてしまう。そんな考えが彼らの頭の中にあった。
重苦しい沈黙が会議室を支配する。
「・・・・正直、敵がこれほどのものとは思わなかった」
沈黙を破ったのはパタジンであった。その場の全員がパタジンの方を向く。
「敵の強さの上限が分からない。下手をすると、この国の国土すべてが焦土と化す・・・・」
彼の言葉は、この場にいる全員が思っていたことであった。この場にいるのは国を動かす頭脳を持った優秀な人間なのだ。今までの戦況を聞いていて、その程度のこと想像できない人間はいなかった。そして、次にパタジンがいうであろうことも容易に想像ができていた。
「・・・・降伏を陛下に奏上しようと思う」
会議場にいる誰もが言葉を発さなかった。しかし、内心はパタジンが言ったことと同じことを思っていた。
最初から頓挫したギム攻略戦。4400隻の大艦隊を組織してもなおかなわなかったマイハーク包囲戦、そしてロウリア軍主力を集結させ、念には念を入れた作戦を立てて臨んだものの失敗に終わったビーズル会戦。このまま戦えば、ロウリアという国が残らなくなってしまう。
「各々方、それでよろしいか?」
パタジンがそういうと、会議室にいる面々はお互いに顔を見あわせてこくりと頷いた。
国をなくしてまで戦おうという狂人は、幸いにも
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翌日。パタジンら重臣は、国王や王族出席のもと再び会議をしていた。
「――以上が現在の状況であり、ロデ二ウス大陸併合は失敗いたしました。それどころか、我が国は危機的状況であり、速やかな降伏が必要であると思われます・・・・」
パタジンがそう言って締めくくる。上座の豪奢な椅子に座ったハーク・ロウリア34世は腕を組み苦渋の表情を浮かべていた。
状況は正確に理解できているようだ。しかし、ハーク・ロウリアが何か言う前に、横にいたジプトスが声を張り上げる。
「パタジン!!貴様、何を言っているのかわかっているのか!降伏するということは国はクワ・トイネの蛮族どもに併合され、王族はことごとく処刑され、民は皆奴隷とされるだろう!長い歴史を誇る我が国が無くなるということだぞ!」
まるで裏切り者を見るかのような形相でパタジンをにらみつけるジプトス。すると、その横にいた宰相マオスが声をかける。
「殿下。落ち着きくだされ。第3国経由で聞くところによりますと、クワ・トイネに加担するNATOなる者どもは奴隷制がない模様です。民が奴隷となることはございませんし、ロウリアが併合されることや王族の皆様方が処刑される事態は、この老骨めがどうにかして防ぎますゆえ。どうか、落ち着きくだされ」
優しく、子供を諭すように言うマオスであったが、その声はジプトスには届かなかったらしい。マオスも裏切り者とみなしたのか、ジプトスの怒りはさらに激しさを増す。
「黙れ!マオス、貴様も国を売ったか!この恥知らずめが!」
「国を売るなどとんでもございません。ただ、現実をご覧くだされ。このままではロウリアは本当に亡国となってしまいます!どうか、少しでもロウリアが助かるすべを探さねばなりません!」
「貴様!減らず口を!」
いよいよ我慢できなくなったのか、ジプトスはそばにあった剣に手を伸ばす。その時、会議室の扉が勢いよく開かれ、入ってきた一人の兵士にその場の全員の視線が集まる。
「か、会議中失礼します!ハーク港*1より通信が入り、現在、敵による攻撃を受けていると・・・・」
軍の最高司令官であるパタジンは、バタンと立ち上がった。
「なに!敵の規模は!」
「現場が混乱してをおり、詳細は不明です。だた、敵の海上・航空戦力による攻撃がある模様でハーク港守備隊からは航空支援の要請が来ております!」
パタジンはすぐにそれが大規模侵攻作戦の予兆だと察すると、すぐさま指示を出した。
「すぐに王都防衛竜騎士団を飛ばせ!制空権を確保するのだ!それと王都の守備隊にも緊急呼集をかけろ!敵の侵攻は近いぞ!」
「は!」
伝令兵はパタジンの指示を伝えるべく、すぐに会議室を走って出て行く。パタジンは会議に出席していた重臣、王族らを見渡す。
「敵の攻撃です。ここで会議を中断いたしましょう。陛下、よろしいですね?」
「ああ、構わん」
ハーク・ロウリアがそういうと、その場にいた全員が手元の資料を持つと自身の持ち場に向かった。
ジプトスは、忌々しげな眼でマオスをにらみつけた後、会議の資料も持つことなく不機嫌そうに会議室を出て行った。
そんなジプトスの後ろ姿を悲しそうな目で見るマオスに、アルレンスが後ろから声をかけた。
「マオス。大事ないか?」
「おお、アルレンス殿下。大丈夫でございます」
元気そうに振舞う老宰相をみて、アルレンスは少し悲しそうな顔をする。
「いつも兄上が迷惑をかけるな・・・・」
「いえいえ。殿下のせいではございません」
「そうか・・・・。大丈夫だ、父上もわかっておられる。降伏しか、この国が助かるすべがないことは。ただ、国内の意見の統一が必要だ。特に有力諸侯らは反対するだろう。時間が、必要だ・・・・」
それはマオスにもわかっていた。ロウリア王国というのは絶対王政的な中央集権国家というよりも、日本のヤマト政権のような私地私民的な側面が強い国家であった。そのため、国王であっても諸侯らの意見というのは決して無視できないものであったのだ。
しかし、それでも降伏という道を選ばなければロウリアは本当に亡国になってしまう。そんな板挟みの状態にマオスは頭を悩ませていた。
すると、アルレンスが何かを考えるそぶりを見せると、少しばかり小声で尋ねてきた。
「ところで、先ほどの話。本当なのか?」
キョトンとするマオス。
「どれのことでございましょうか?」
「奴隷制の話だ。NATOには本当に奴隷制がないのか?」
そういえばアルレンスは奴隷制や亜人排斥運動に懐疑的立場だったと思い出すマオスは、少し周りを心配そうに見渡した後、こくりと頷いた。
「はい。確かな話でございます。なんでもNATOに加盟している諸国には例外なく、奴隷や人身売買を禁じる法がある模様でございます。クワ・トイネやクイラも、NATOに倣って奴隷制の廃止を進めていると聞いております」
「そうか・・・・」
「殿下?いかがなさいましたか?」
「ああ、いや何でもない。・・・・さぁ、そろそろ行こう」
アルレンスはそういうと、そばに置いてあった資料を手に取って会議室から出て行った。
いかがでしたでしょうか?
実はロウリア編かなり書き終えているのですが、原作と結構流れが違って困惑している私がいます(-_-;)。
ロウリアの首脳陣が割とまともになってる・・・・。この後ロウリア近代化させたら面白そうだなぁ・・・・
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ではまた次回。さようなら
次回 EP20 王都攻略戦~前哨戦(前編)
お楽しみに