今年最後の投稿は西側諸国召喚となります。新年早々に「ストライクウィッチーズの世界に日本が転移」を投稿したしますので、ご覧ください。
では本編どうぞ。
次の日に開かれた会議は暗い空気に包まれていた。
「・・・・もう、無理だな」
パタジンが絞り出すように言った言葉は、その場にいる全員の心境を代弁していた。
重装騎兵や重装歩兵に加えて残存する全ワイバーンなど、ロウリア軍の持ちうるありとあらゆる兵力を投入した作戦であったが、それによる攻撃はいともたやすく跳ね返され、逆に作戦に参加した部隊の戦闘能力をことごとく壊滅させるという化け物じみた敵である。
もはや、王都にいた有力貴族でさえも勝てると思っている能天気な人間は少ないだろう。大多数の人間は、NATO側にどうやってすり寄って戦後に生き残るかの算段を立て始めている。むろん、王族らを捕らえるなり暗殺するなりしてそれを手土産にNATO側に寝返ろうという考えの人間も少なからずいるため、王都にいる有力貴族の妻子や親族は、国王の勅令により片端から拘束され、人質にされていた。
すると、宰相のマオスがその場にいた謎のローブの男に声をかける。
「ヴァルハル殿。今一度、貴国の・・・・パーパルディア皇国の援助を願えないだろうか?五大列強国たるパーパルディア皇国軍の力があれば、もしやしたら一矢報いることも可能かもしれない・・・・」
しかし、ローブの男は首を横に振った。
「もうすでに多額の資金援助だけでなく数万近い義勇軍の派遣、兵器の供与も行っている状況です。これ以上の援助は難しいですし、何より戦闘記録を本国に送ったところ、精神疾患だと決めつけられてしまったようで、私の口添えでは無理でしょう」
その言葉に会議室内の全員ががっくりとうなだれる。
今回のロデニウス統一戦争(ロウリア側呼称)では、ロウリア王国は近隣の列強国であるパーパルディア皇国から20億パソ*1、日本円にして約102億円ほどの資金援助を受けていた*2。
加えて万単位の義勇軍と装備の供与も行っているため、パーパルディア皇国の国家予算の1%、約82億パソの支援がロウリア王国に行われていたのである。
国家予算の1%と聞くと大したことないように見えるが、日本の一般会計予算の1%は1兆円であるためどれほど多額の援助が行われていたかわかるだろう。
これ以上の援助は予算的にも非常に難しいと言わざるを得なかったのだ。
「やはりだめか・・・・」
パタジンがそうつぶやくと頭を抱えた。結局、この日の会議では具体的な対応策などは決まることはなく、そのまま終わった。
――――――――――――――――――――
会議の翌日。
パタジンやマオスをはじめとした降伏派の人間がひそかに集まっていた。これは第1王子のジプトスをはじめとした徹底抗戦派の目を避けるためであった。
その数は減ったとはいえ、徹底抗戦派は一定の勢力を有しており、下手に降伏を表立って進めようとすれば王族ですら暗殺の危険性があった。
「やはり、降伏しかなかろう・・・・」
パタジンは会議の時と同じくらい声でそう言った。するとマオスが心配そうな声を上げる。
「しかし、徹底抗戦派はいかがしようか。なにより徹底抗戦派の頭目がジプトス殿下では、離反派に騙されてクーデターを起こし、降伏派の粛清をやる可能性がございますぞ」
「うむ。その可能性は大いにあるな」
パタジンはそれに頭を悩ませた。
現在、ロウリア王国内は3つの勢力があった。とっととNATOに降伏するべきと主張する「降伏派」。NATOに対して徹底抗戦すべきという「徹底抗戦派」。国王を含め、王族や宰相のマオスや軍司令のパタジンなどの戦争を主導した立場の人間の首を手土産にNATOに降伏し、戦後のロウリアの実権を握りたいという「離反派」である。
ジプトスが降伏派を粛清したところで、そのあとに離反派が裏切りジプトスを処刑ないし拘束し、彼の身柄を手土産にNATOに降伏するであろうことは明白なのだが、ジプトスは目の前の利益につられてそこまで考えが及ばない可能性があった。
すると急にドアがギィと開いた。
「ッ!?何者だ!」
パタジンが剣の柄に手をかけて誰何すると、扉から出てきたのはアルレンスであった。意外な人物の登場にその場にいた全員がぽかんとする。
「アルレンス殿下!どうしてここに?」
「王国の危機とあっては、じっとしていることなどできるものか。ところでおぬしら、面白い話をししておったな。その話、私に案があるのだが聞いてくれるか?」
そういうと、アルレンスは部屋の中に入ってきて、適当な椅子を見繕うとそれに座った。それを見て、降伏派の人間らは顔を見合わせるも、アルレンスの案を聞いてみようとみな席に座る。
全員が席に座ったことを確認するとパタジンがアルレンスに尋ねた。
「して、案といいますのは?」
「まぁ、まて。その前に一つ聞きたい」
「何でございましょう」
「徹底抗戦派と離反派の人間はだれかわかっておるのか?」
アルレンスの問いに答えたのはマオスであった。
「はい。徹底抗戦派はジプトス殿下ともともとジプトス派の中心にいた中小貴族連中でございます。離反派はジプトス殿下を見限った、ジプトス殿下の叔父にあたりますベレン侯爵を中心とした有力貴族の大多数でございます」
「なるほど・・・・。では私の案を話そう」
その場にいた全員の注目がアルレンスの話す案に集まる。
「私の見る限り、父上は降伏派に近い考えを持っている。となれば、明日の会議で父上に降伏を促すことは容易いだろう。問題は、徹底抗戦派と離反派をどうするかだ。そこでパタジンの力を借りたい」
「はっ。私の力を、でございますか?」
「そうだ。おぬしは近衛兵の将軍にも親しいものがいる。そのものらに頼んで、明日の会議では徹底抗戦派と離反派を会議の場に入れぬようにしてほしい。そして、父上に降伏と徹底抗戦派と離反派を国家反逆罪で拘束する勅命を取り付け徹底抗戦派と離反派を国軍の力をもって拘束する。別に全員を捕らえる必要はない、主要なものさえ捕らえてしまえば頭を失った彼らには何もできないだろう」
「なるほど・・・・・」
十分、一考に値する作戦であった。というより、これ以外にいい案は彼らの脳裏には浮かばなかった。パタジンは少し考えた末、うむと決意を固めた表情になった。
「やりましょう。王国を救うためであれば、私の命、殿下にお預けいたしましょう」
「この老骨めも、微力ではございますが協力させていただきます」
宰相であるマオスもアルレンスの案に乗ることにした。降伏派の2トップが提案に乗ったことで、次々と賛同の声があがった。
――――――――――――――――――――
翌日。
この日開かれる会議に出るために、ジプトスや離反派の面々は王城に登城していた。
しかし、彼らは王城の中ほどまで行ったところで思わぬ対応を受ける。
「何の真似だ・・・・」
行く手を阻む槍を見て、ジプトスはその持ち主である近衛兵を忌々し気ににらみつけた。するとロウリア国王親衛隊隊長のランド・エトークマンが現れた。
「殿下。いかがなさいましたか?」
その声は、状況を完全に理解したうえで言っていることが明白であったが、ジプトスにはわからなかったようだ。
「エトークマンか。こやつらを何とかしろ!王太子たる俺に、この先に進むなと言っておる」
「それはそれは・・・・。ですが殿下、貴方様を通すわけにはいかないのです」
その時、ランドはスッと手を挙げて合図をした。
「なに?それはどういう・・・・。ッ!」
ランドの言うことがわからずにジプトスが尋ねようとしたとき、陰から国王親衛隊の近衛兵らがぞろぞろと出てきてジプトスや彼の周りにいた徹底抗戦派、離反派の面々を囲んだ。
「エトークマン!貴様、いったい何の真似だ。王太子たる俺にこのような真似をしてもいいと思っているのか!」
「いえ。殿下以下そちらにいる皆々様には反逆罪の嫌疑がかけられております。真偽がはっきりするまで、我々の監視下で軟禁させていただきます・・・・。おい、丁重に案内して差し上げろ」
ランドの言葉に近衛兵らは徹底抗戦派、離反派を取り囲むと剣と槍をちらつかせながら彼らを別室に連れて行った。
ジプトスは一応王族であるため、剣や槍をちらつかせるようなことはなかったが、それでも完全武装の近衛兵数名に囲まれては何もできなかった。
ジプトスは自身を拘束する近衛兵の合間からランドをにらみつけた。
「国家反逆罪など片腹痛い!俺の無実が証明された暁には貴様も、貴様の一族もみな罰してやるからな!」
「おい、早くお連れしろ」
軽蔑しきった眼でジプトスを見た後、ランドは部下にジプトスを連れて行くように命じた。
近衛兵に連れられてジプトスの姿が見えなくなると、ランドはこのはかりごとを仕組んだ友人がいる部屋の扉を見た。
「パタジン、アルレンス殿下・・・・頼みますぞ・・・・・」
――――――――――――――――――――
「―という状況であり、ビーズルも敵の包囲下、援軍のめども立たない状況であります」
パタジンは報告を終えると、上座に座るハーク・ロウリア34世に一礼して着座した。
ハーク・ロウリア34世は頬杖をついてうつむいており、その表情はうかがえない。パタジンの報告が終わって、少し経つとやっと絞り出すように口を開いた。
「・・・・これに対して、何か提案があるものは挙手せよ」
その声はとても沈んでおり、ハーク・ロウリア34世の心境を表していた。
宰相のマオスは、事前の打ち合わせ通り手を挙げて発言許可を求める。
「マオスが・・・・。なんだ・・・・申してみよ」
「ははぁ」
マオスは立ち上がって、恭しく一礼する。
「まず、我が国は危機的状況です。このまま戦争を続ければ、亜人絶滅とロデニウス統一どころか、我が国が亡国となりかねません」
ハーク・ロウリア34世はウームとうなる。彼も正確に現状を把握できているのだ。
「加えて、離反派の行動も気になります。彼らは、今回の戦争を主導した陛下や閣僚の首を手土産にNATOに降伏し、彼らに取り入ろうとしております」
「まさしく内憂外患だな・・・・」
ハーク・ロウリア34世のつぶやきに、マオスはコクリと頷いた。
「はい。このままでは我が国はNATOによって亡国となるか、反乱によって亡国となるかです。これを防ぐ方法はたった一つです」
「それはなんだ?」
「陛下のご聖断をもって、NATOに降伏することにございます。そうすることで離反派の企みを防ぐことが可能です」
マオスは強い決意を持った目でハーク・ロウリア34世を見据えながらそう断言した。
ハーク・ロウリア34世の目は明らかに迷っていた。確かにこのままでは、ロウリアという国が亡国になるのは明らかであったが、降伏すれば国民はともかく王族がどのような目に合うかがわからないからだ。
彼だけならば、降伏という決断もできたかもしれない。しかし、アルレンスなどの子供達にまで危害が及ぶかもしれないとなれば、ハーク・ロウリア34世はすぐに決めることはできなかった。
「・・・・父上もわかっておられるはずです。もう、それ以外に道はないのです。迷っている場合ではございません」
「このマオスも、王国のために身命を賭して交渉に臨みまする。ですから、どうかご聖断を」
アルレンスとマオスにそう言われたことで、ハーク・ロウリア34世は目を閉じてじっと考える。
そして数分にわたる熟考の末、口を開いた。
「・・・・マオス。降伏の準備をいたせ。パタジンは城外の敵軍に軍使を送るのだ。それと、アルレンスら、子供たちの脱出の準備をせよ」
くやしさがにじみ出た声で、ハーク・ロウリア34世はそう言った。
「わかりました。パタジン将軍、至急軍使の用意を・・・・」
「はっ。直ちに・・・・」
そういうとパタジンはそばにいた副官に合図を送った。それを見たアルレンスは、視線を自身の父親に戻す。
「父上、その前に勅令をいただきたいのです」
「勅令?なんのだ?」
「ジプトス兄上他、徹底抗戦派の主要貴族およびベレン侯爵ら離反派の主要貴族を国家反逆罪で逮捕する勅令です。彼らを野放しにしておけば、必ず反乱を起こし、父上の身すら危険にさらす可能性があります」
「なるほど・・・・。わかった、よかろう。彼らの逮捕を命ずる勅令をここで出す。好きにやるがよい」
「わかりました。ではパタジン将軍。頼んだ」
アルレンスにそう言われたパタジンは、スッと立ち上がると勅令を実行するべく会議室から出て行った。
開戦から1か月とかからずにロウリア王国は降伏を決定した。
いかがでしたでしょうか
今年も残すところ1時間。今年は皆様にとってどのような年でしたでしょうか。
私は皆様の応援のおかげもありまして、特に怪我無く、健康に小説投稿を続けることができました。
来年も変わらぬ応援をよろしくお願いします
では、また来年。さようならぁ
次回 EP27 終結
お楽しみに