今回、いやぁ。最近風邪がひどくて咳が止まりません(-_-;)。PCR受けて陰性だったのでコロナではないみたいですけど、ここまで咳がひどいと心配になります。
では本編どうぞ。
NATO軍王都攻略軍集団司令部は混乱していた。
彼らは今日、イスラエル陸軍第89オズ特殊作戦旅団の投入とともに王都攻略を開始しようとしていた。しかし、ジン・ハークから出てきた1騎の騎兵が、彼らを混乱させたのである。
この騎兵を発見したのは、陣地前方で警戒をしていた日第1海兵師団第1海兵偵察大隊の隊員らだった。
敵の襲撃を警戒して、FLIRであたりを警戒していた偵察小隊所属の31式水陸両用偵察戦闘車*1が単騎でゆったりと近づいてくる騎兵を発見したのである。
「なんだ?」
小隊長の若い少尉は、偵察戦闘車の車長用ハッチから身を乗り出して双眼鏡で騎兵の様子をうかがう。逆さに掲げられた旗を片手にゆっくりと向かってくる騎兵に戦意はないように感じられた。
「戦意はないように思われますが・・・・」
横の砲手席に座る小隊陸曹がそう言った。
「わからん。そう言って近づいたところでドンッと自爆する気かもしれん」
「できますかね。だって自爆ベストなんてロウリアにはないでしょ」
「魔法があるだろ。どんなものかわかってない以上、最悪を想定して損はない」
とはいっても接触しなければ相手がどんな目的を持っているのかわからない。降伏を望む脱走兵ならば、保護して情報を聞き出すこともできる。
「2分隊。奴に接触しろ。それ以外はいつでも撃てるように準備だけしておけ」
少尉が指示を出すと、小隊に4台配備されている偵察戦闘車の機関砲が騎兵のほうを向き軽装甲機動車の上部に取り付けられた重機関銃や汎用機関銃も騎兵に狙いを定める。
そして、第2偵察分隊所属の軽装甲機動車が騎兵に接近する。数十mほどまで近づくと車内から3名の兵士が出てきて、持っていたアサルトライフルを騎兵に突き付けた。
「そこで止まれ!何の用だ!」
「ま、待ってくれ。ロ、ロウリア王国軍の軍使だ。国王陛下の命により、降伏を伝えに来た。そちらの指揮官に面会したい」
小隊の隊員らは、そのロウリア兵の言葉にざわつく。少尉も困惑してはいたものの、部下にロウリア兵をボディチェックするように指示した後、すぐさま司令部に連絡を入れた。
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ロウリア王国降伏の知らせは、王都攻略軍集団司令部に伝えられたあとNATO軍ロウリア侵攻軍司令部を経由してNATO軍事委員会に伝えられた。
軍事委員会は、NATO軍に全作戦の中止とロウリア軍との戦闘停止を命令。またNATO加盟国を代表して米英仏日より2人づつ外交官を派遣してロウリア側と停戦並びに講和に向けた実務者協議を開くことにした。
外交官はすぐに派遣された。いったん日本に集められた後、不整地での運用能力の高いC-2輸送機でNATO軍エジェイ基地*2よりCH-47Hに乗って、そのまま協議会場の近くにあるジン・ハーク郊外のNATO軍王都攻略軍集団第1軍司令部に向かった。
協議会場は双方の安全性を確保するため、ジン・ハークとNATO軍陣地の中間の中立地帯に設置され、ロウリア軍から100名の近衛騎士、NATO軍から43名の機械化歩兵およびIFV4台の警護がつけられた。
きらびやかな装飾が施された鎧に身をまとうロウリア側の警護の近衛騎士を見て、NATO軍側から派遣されてきた米軍機械化歩兵小隊員らは今は美術館でしか見られないような鎧に感嘆し、逆にロウリア側は小汚く見える迷彩柄のボディアーマーとヘルメットに身を包み、わけのわからない短槍*3を見て不気味がると同時に、彼らが使役する鉄竜*4を見て恐怖していた。
そのうち、ジン・ハークのほうからは馬車が、NATO軍陣地のほうからはJLTVがやってきた。むろん乗っているのは双方の外交官である。
どちらも案内役の将校を先頭に、協議会場として設置されたテントの中に入っていく。質素な長机とパイプ椅子、そしてLED電球が吊るされているだけであったが、テントの中にかけられているNATOの旗とロウリア王国旗がここが正式な協議会場であることを示していた。
双方の外交官が協議の場に座るとNATO側の上座に座った星条旗のバッチを付けた女性が立ち上がった。
「初めまして。アメリカ合衆国国務省ロデニウス紛争担当安全調整官*5のヴィルヘルミーナ・ホルツマンと申します。この会談がロウリア、ひいてはロデニウス大陸全体の平和と安寧につながることを希望します」
「ロウリア王国外務局ロデニウス担当部のヒューリー・ファン・ドルンテレン男爵と申します。今回の交渉の一切を、宰相マオス・ファン・エムセン侯爵より賜っております」
軽い自己紹介を終えて両者はがっちりと握手をする。現代的なスーツ姿の女性と13世紀の西欧貴族のような服にマントを羽織った男性という光景は現代人からするとあまりにもシュールだ。
2人は握手をし終えると席に着く。先に口を開いたのはヴィルヘルミーナであった。
「まず、我々のほうからロウリア王国への要求を述べさせていただきます。資料を用意いたしましたのでご覧ください」
そう言って用意されていた紙の束から、『ロウリアへ対する要求』というタイトルが大陸共通語で書かれた資料を見つけ出しロウリア側の外交官らはそれをめくって中身に目を通す。
ヴィルヘルミーナは自身の資料を読みながら、すらすらと要求を述べていく。それは以下の内容であった。
1、ロウリア王国は今後すべての戦闘行為を停止し、北大西洋条約機構軍の進駐を認め、これに協力すること。
2、ロウリア王国は外交・行政・軍事の面において、北大西洋条約機構ロウリア軍事行政委員会の意向に従うこと
3、ロウリア王国は北大西洋条約機構加盟国との友好条約締結に向けてあらゆる努力をすること
4、ロウリア王国は今回の戦争の責任を認め、正式に謝罪し、賠償金174億4439万米ドルを同等の金に替え支払うこと。
5、ただし、前項は地下資源の採掘権などの譲渡によって賠償金の減額を検討するものとする
6、現ロウリア国王、ハーク・ロウリア34世を退位させること
7、クワ・トイネ公国並びにクイラ王国と永久的不可侵条約を締結し、その国境線を非武装地帯とすること
8、前項は別途条約にて再度規定するものとする
9、ロウリア王国はロウリア軍事行政委員会の指定する地区を100年間租借地として認めること。
10、ロウリア王国内で北大西洋条約機構の関係者による犯罪が起きた場合は、捜査権をロウリア軍事行政委員会に移すこと
11、将来的に立憲君主制民主主義国家へ移行すること
「以上が、我々からの要求となります」
ヒューリーは厳しい顔をして、資料を見つめる。そして口を開いた。
「まず、いくつか聞いたことのない用語があるからお聞きしたい」
「何でしょうか?」
「この立憲君主制民主主義国家というのはなんであろうか?私には立憲君主制の意味も、民主主義というものもわからない」
それもそうだ。ロウリアほどの文明水準であればそもそも憲法というものすら知らないだろう。であれば立憲君主制という意味も分からないはずだ。
ヴィルヘルミーナはにこやかな表情のまま答えた。
「立憲君主制というのは、憲法と呼ばれる最高法規によって君主の権利・権限を制限する体制のことです。民主主義国家というのは国家を運営するトップを国民による多数決で決める国のことになります」
「つまり、君主はお飾り、政治の主権を国民にゆだねると?」
「そういうことになります。当然、貴族制度は廃止になるでしょう」
するとヒューリーは持っていた資料と長机に置くと、身を乗り出す。
「あなた方はロウリアの内情をわかっているのか?平民どもは識字率が低く、政治なぞできやしないでしょう。そのような連中に政治の主権をゆだねるのは、非常に危険だと認識しております」
「それはこちらも重々承知しております。ですから、無用な混乱を避けるため20年から25年間という長い時間をかけて、我々主導で教育体制を整え、民主主義国家に必要なものをそろえていくつもりです。幸い、我々にはそのノウハウが十分にある」
彼らは半世紀以上、発展途上国への人道支援を行っている。当然、教育支援などお手の物であった。
「では、その間の政治はロウリア軍事行政委員会が行うのですか?」
「最初、講和条約並びに友好条約が締結されるまでは軍政を引きますが、その後はロウリア軍事行政委員会はロウリア王国政府を監視し、助言をするだけの組織です」
「では、だれが政治をやるのだと?お恥ずかしい話ですが王国政府といっても国王陛下がいなければ権力闘争で政治どころではないでしょう」
どうやらヒューリーはハーク・ロウリア34世の退位を無くしたいようであった。しかし、NATOはすでに次のロウリアの為政者を決定していた。
「アルレンス王子・・・・」
「ッ!」
「アルレンス第2王子殿下に置かれましては、非常に聡明な方とお聞きしております。アルレンス第2王子殿下を新国王とし、ロウリア軍事行政委員会の監視のもとロウリアを統治していただきたいのです」
ヒューリーが恐れていたのは、1に王族の処刑、2に現国王を退位させた後にジプトスを次期国王に据えるというルートであったが、どうやらNATOはどちらもやる気はないようであった。
ロウリア側が最も防ぎたいルートが回避されたことで、そのあとの交渉は比較的スムーズに進み、若干賠償金請求の関係でもめた程度であった。
この一週間後、中央歴1938年10月2日、ハーク・ロウリア34世から全権を委任された宰相マオスが、降伏文章にサインしたことでロデニウス紛争はロウリア王国の敗北で終わった。
NATO軍が各地の都市などに進駐し、ロウリアはしばらくの間NATOによる軍政下におかれることとなった。
IFV型を改良し、小型対砲レーダーや小型地上レーダーを搭載して、偵察能力をかなり高くしている。31式多目的ロケット弾発射機と呼ばれる対戦車ミサイルのほかに対地ロケット弾も発射可能な発射機を搭載しているほか、機雷探知装置も搭載している。
本車は上陸作戦時に、上陸部隊に先立ち上陸地点を偵察し、上陸部隊の障害となりうる機雷などをロケット弾等で排除して上陸部隊を掩護する任務がある。
いかがでしたか?
さて、ここで皆様にアンケートがございます。結果次第では、この後の物語がかなりっ変わります。
回答期限は2月1日とさせていただきます。
皆様、気軽にご回答ください。
ではまた次回、さようなら。
次回 EP28 降伏後
おたのしみに