西側諸国召喚   作:RIM-156 SM-2ER

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皆さまどうもSM-2です。
一応今日で連続投稿は一旦終わりです。
では、本編どうぞ。


EP31 はるか西方での戦い

グラ・バルカス帝国より東にある第2文明圏の国家、レイフォル帝国の西方の海上を43隻の帆船からなる艦隊が航行していた。

その理由は、グラ・バルカス帝国である。突如として現れたこの国は、周辺の文明圏外国に次々と侵攻し、版図を広げていった。

当初、蛮族の国と侮っていたレイフォルであったが、グラ・バルカス帝国が第2文明圏全体に宣戦布告し、レイフォルの西側にある小さな島国でレイフォルの保護国であるパガンダ王国に侵攻したことで状況は変わった。第20代レイフォル皇帝、パング・レイフォル3世の逆鱗に触れたのである。

彼は、グラ・バルカス帝国を懲罰せんとの号令の下、レイフォル海軍が有する最新鋭の飛竜母艦や100門級戦列艦を多数動員して、パガンダ沖に展開している敵艦隊を撃滅後、陸軍を総動員してパガンダを解放することにしたのだ。

 

 

艦隊は「風神の涙」と呼ばれる魔法具の力で、帆に追い風を受けると、帆船としては高速な12ノットで航行していた。

そんな艦隊の指揮を執る西方艦隊提督、クレヴィス・バル伯爵のもとに一人の水兵が走ってきた。

 

「提督!偵察中の第3海上竜騎士団より報告です!本艦隊より西方37㎞地点にて、敵艦を発見とのことです。敵艦は1隻だけですが全長は250mを超え、巨大な砲を多数備えていると・・・・」

「わかった。全艦に通達、これより本艦隊は敵艦の撃沈に向かう。竜母2隻には50門級戦列艦3隻を護衛に残し、残りの艦は敵艦に進路をとれ。それと、竜母には戦列艦隊に6騎、竜母艦隊に6騎の直掩竜騎士を残して、全騎を敵艦攻撃に向かわせるように伝えろ」

「わかりました」

 

水兵は提督の指示を魔信の通信士に伝えるべく足早に去っていった。バルは敵艦のいるであろう方を見ると闘志を燃やす。

 

「待っておれ!必ずや撃沈してくれようぞ!」

 

―――――――――――――――――――――――――

 

一方、グラ・バルカス帝国海軍東方征伐艦隊*1第2水上打撃群に所属する戦艦「グレート・アトラスター」は護衛の駆逐艦や巡洋艦を一切つけないという、運用上ありえない編成で航行していた*2

しかし、46㎝3連装砲を3基9門、副砲の15.5㎝3連装砲2基6門という重火力とその主砲にすら耐えられるように設計された分厚い装甲、そしてこれから対峙する敵との技術格差が、その行動を可能にしていた。

さらに、船の側面には多数の12.7㎝連装高角砲が設置されており、装填されているのは近接信管付きの対空砲弾であった。また、それを補助するように25㎝3連装機関砲や連装機関砲が高角砲の間や城のようにそびえたつ艦橋の側面に取り付けられており、ワイバーンなどという時速300㎞前後で飛行する目標に対する防空能力は万全といえるものであった。

主砲にもレーダー照準射撃を採用しているおかげで、対水上戦闘において絶大な命中率を叩ぎだすことが可能であった。

その艦橋で、艦長のエイフィー・ラクスタル大佐は前方の海を眺めていた。

 

『レーダーに感あり!レイフォル艦隊より多数の飛行物体が、時速350㎞で本艦に接近中!』

 

レーダー室から伝声管を通して、ラクスタルのもとに報告が上がる。

おそらくワイバーンだろうとラクスタルは思った。パガンダ王国での王国近衛竜騎士団と呼ばれる部隊との交戦がワイバーンとの初交戦であったが、結果は敵機全機撃墜、友軍戦闘機部隊に損害なしという、まさしく完勝であった。

その時に戦ったワイバーンと比べると、今回の個体はかなり早いようだがそれでもグラ・バルカス帝国の最新鋭艦上戦闘機、カルスライン アンタレス07式艦上戦闘機2型*3にかなうものではない。

信頼性の高い1,100馬力級の空冷二重星形14気筒エンジンと新型軽量素材である超超ジュラルミンを使って徹底的に軽量化、空気抵抗の削減がなされた低翼単葉の機体は、550㎞という高速と複葉機に匹敵する旋回性、今までの航空機とは比べ物にならない航続距離を手に入れた

火力にしても命中率、信頼性共に高い7.7㎜機関銃と、高火力で対爆撃機戦において非常に高い効果を発揮する20㎜機関砲が2門づつ搭載されていることからかなり高い*4

それに比べて350㎞ほどの速度しか出ないワイバーンは、帝国飛行兵からしたら訓練の標的よりも当てやすい的に他ならない。加えて、口から炎を出してくるものの弾速は遅く、単発であるためよけることなどたやすい。あんなものに落とされるのであれば戦闘機乗りなど勤まらないだろう。

 

「艦長、あと8分で目視圏内に入るかと」

 

そばにいる副長がそういう。

 

「私は上の対空指揮所で指揮を執る。ここを頼んだぞ」

「わかりました」

 

そういうとラクスタルは、昼戦艦橋を出て階段を上がって防空指揮所に上る。

正直、近接信管付きの対空砲弾や射撃管制レーダーを多数搭載しているとはいえ、エアカバーなしでどれだけできるか、ラクスタルは不安であった。

特に射撃管制レーダーは脆いもので、航空機からの機銃弾1発で使い物にならなくなってしまう。そのため、このグレート・アトラスターには予備含めいくつかの射撃管制レーダーのほか、旧来の防空指揮所も設置されていた。

ラクスタルが防空指揮所に上がると、そこにいた見張り員が敬礼をする。

 

「職務を続けてくれ」

 

ラクスタルがそういうと見張り員らは再び目の前の大きな望遠鏡に張り付いていた。その時、見張り長が時計を見てラクスタルに報告する。

 

「まもなく目視できます」

「うむ。対空戦闘用意!!」

 

伝声管を通じて艦内に対空戦闘用意が告げられ、兵士たちは水密扉を閉め、自身の配置につく。

見張り員は敵が現れるであろう方向を望遠鏡を使って見ている。

 

「きた!」

 

一人の見張り員がそう声を上げる。ラクスタルも自身の持つ双眼鏡で、東の空に芥子粒のような点が見え始める。

 

「主砲はHE-CTV弾を装填せよ」

 

HE-CTVとは近接信管付き榴弾のことで対空射撃などに使用される砲弾のことだ。

 

「1番、2番主砲攻撃用意!」

 

ラクスタルの指示で主砲発砲を示すブザーが鳴り、甲板上にいる兵士らはその巨砲から放たれる衝撃波から逃れるため、艦内や高角砲の防盾の中に逃れる。

敵機との距離は30㎞。主砲は射撃管制レーダーに制御され、砲の向き仰角を調整する。そして主砲射撃管制所にいる砲術長から報告がきた。

 

「主砲用意よし!」

「撃て!!」

 

ラクスタルが伝声管で発砲を命じるとその2基6門の主砲が火を噴いた。

 

 

レイフォル海軍西方竜母機動艦隊所属の竜騎士団40騎は、敵がいるであろう方に進んでいた。

敵航空戦力による攻撃に備えて、20騎づつ分けて密集陣形で飛んでいた。

 

「なんだ?」

 

先頭を飛ぶ竜騎士団長が、その並外れた視力で異変に気が付く。何か黒い点が6つほど見えるのだ。

他の竜騎士も異変に気付き始めたときだった。ものすごい爆炎が彼らを襲った。

前方低空を飛んでいた20騎の竜騎士は一瞬で爆炎にのまれ、落ちていく。後方の20騎の竜騎士の指揮を執る竜騎士団長はすぐに指示を出した。

 

「全騎、散開しろ!!!いそげ!」

 

密集陣形は危険と判断し、竜騎士団長は陣形を解いた。ちょうどその時、前方の海上に白い線のようなものが見えた。

それは船が航行するときに出るウェーキであった。であればその白い線の先頭に敵艦がいる。竜騎士団長は目を凝らす。そしてそれを見つけた。

 

「で、でかい!それに、帆がないだと!?」

 

彼の常識を超える大きさを持つその船は、若干の恐怖心を抱かせる。しかし、彼らは栄えある列強レイフォルの竜騎士である。この程度で臆することは許されない。

 

「全騎!突入せよ!!」

 

全体を鼓舞するために竜騎士団長が先頭に立って、敵巨大船―グレート・アトラスターに突撃していく。しかし、グレート・アトラスターとの距離が6㎞ほどまで近づいたとき、一騎の竜騎士のそばで爆発が起こった。

グレート・アトラスターの装備する127㎜高角砲の最大射程は15㎞ほど、有効射程は半分の7㎞ほどであり、高角砲から放たれた接近信管付き対空榴弾が竜騎士のそばで爆発したのである。

 

「くっ!全騎、ジグザグに飛行しろ!単純に突っ込むといい的だぞ!!」

 

竜騎士団長の指示で、彼らはジグザグに飛行するも次々と爆炎に飲まれていく。グレート・アトラスターとの距離が3㎞にまで近づいたとき、彼らの数は11騎まで減っていた。

加えて、赤い光弾が光のシャワーのごとく飛んでくる。爆炎と光弾にからめとられ、彼らはグレート・アトラスターに被害を加えることなく全滅した。

 

――――――――――――――――――――

 

バルは自身の乗る乗艦の魔信室で竜騎士隊からの報告を待っていた。

しかし、彼の目の前にある巨大な魔法通信機を扱っている通信士は驚愕の表情を浮かべる。その表情の意味が分からず、そばにいたバルや他の幕僚たちは困惑した。

通信士はヘッドセットのようなものを取り外すと、慌てた様子で報告する。

 

「りゅ、竜騎士隊との通信途絶!全滅したようです!」

「な、なんだと!?確かか?」

 

ワイバーンを改良したワイバーンロードが、たった1隻の船に全滅させられるとは思っておらず、その報告は彼らを驚かせた。

 

「提督。ここは一度撤退して、様子を見るべきです」

 

横にいた艦隊参謀がバルに進言する。しかし、バルは少し考えた後首を横に振った。

 

「いや、ダメだ!栄えあるレイフォル海軍がワイバーンが全滅したくらいで撤退するなど許されん。何より、ここで敵巨大船を放置すれば敵巨大船は我が国の沿岸を焼き払うかもしれん。ここで沈めねばならんのだ!」

 

バルは敵艦をここで撃沈することを決意した。

 

――――――――――――――――――――

 

『敵艦隊、もう間もなく全艦が副砲射程圏内に入ります』

 

対空戦闘が終わり、防空指揮所から昼戦艦橋に降りてきたラクスタルは、電探室から報告を受ける。本来、木造の船舶というのはレーダーに映りにくいので、グレート・アトラスターが搭載しているような初期のレーダーでは探知不能である場合が多いのだが、レイフォル艦隊の船は外周に対魔弾鉄鋼式装甲という鉄に似た装甲材を張っているため、グレート・アトラスターのレーダーでも十分に探知することができた。

 

「まだ命中率が悪いからな・・・・。そういえば敵艦の砲の最大射程は2㎞ほどだったか?」

 

ラクスタルは横にいる副長に尋ねる。

 

「はい。しかし、列強を名乗るだけあって砲弾は炸裂砲弾です。火薬とは違う原理で爆発するようで、詳細は分かっていませんが、威力は黒色火薬ほどだと」

「それでは、本艦のバイタルパートどころか非装甲区画の壁すら貫通できんな。ならば、撃沈される心配はない・・・・・」

 

ラクスタルは彼我の戦力差を正確に判断すると、指示を出した。

 

「敵との距離6000で面舵いっぱいで敵艦に横っ腹をさらす!全主砲並びに副砲で攻撃する。弾種は榴弾。左舷高角砲は対空砲弾から榴弾に切り替えさせろ」

「了解しました」

「敵は単横陣か。目標は1番主砲は本艦からみて敵右端、2番は中央の突出した艦、3番は左端。1番副砲は1番主砲の目標の左横、2番副砲は3番の右横を狙え」

 

伝声管を通じて、艦内すべてにラクスタルの指示が伝わる。その46㎝砲には揚弾機を使って榴弾が装填される。

目標指示にしても、本来であればありえない指示であったが、わざわざ木造船舶に主砲と副砲のすべてを使う必要はないことから、このように各砲塔で目標を変えていた。

そして、見張り員が報告してきた。

 

『距離6000!!』

 

その報告を聞いてラクスタルは声を張り上げる。

 

「面舵いっぱい!!」

「面舵いっぱい!!」

 

操舵手が復唱しつつ、思いっきり舵を切る。

しかし、このグレート・アトラスターは追従性が最悪で、転舵後に舵が聞き出すまでたっぷり80秒はかかる代物であった。これは艦の形が関係しており、グレート・アトラスターの巨大なタライのような艦形が追従性を劣悪にしていた。

しかし、一度舵が利き始めると運動性は非常に良好でその巨体はすんなりと曲がってくれる。そして、グレート・アトラスターが完全に90度転舵し終えたとき、ラクスタルは声を張り上げた。

 

「全主砲、副砲、交互撃ち方!攻撃はじめ!」

 

主砲発砲を知らせる長いブザーの後、全9門の主砲と6門の副砲のうち、5つの砲塔の左右の2門、計6門の46㎝砲と4門の15.5㎝砲が火を噴いた。

 

――――――――――――――――――――

 

レイフォル艦隊からもグレート・アトラスターの巨体は見えていた。

遠近感が狂いそうなほど巨大な船体であるが、たった1隻では100門級戦列艦を多数有するレイフォル艦隊にかなうわけがない。

バルはそのまま突撃を命じる。

 

「我が国の最新爆裂砲弾をたっぷりと食らわせてやるわ!」

 

彼我の距離は6㎞。あと4㎞でレイフォル艦隊の最大射程にとらえられるというときであった。敵艦が突然右に回頭し始める。

 

「なんだ?」

「て、敵艦の砲門が本艦隊に向け指向中!」

 

マストにいる見張り員が大声を張り上げて報告する。バルも望遠鏡をのぞいて敵艦の様子をうかがうと、確かに前部に2つ、後部に1つついた巨大な砲塔と、前部後部に1つづつついたやや小ぶりな砲塔がこちらを向いているのが見えた。

 

「まさか、この距離で届くのか?」

 

バルの乗る艦の艦長がぽつりとつぶやくと、バルは鼻で笑った。

 

「まさか。列強たる我々の砲すら届かない距離だ。ただのコケ脅しにすぎん!」

 

しかし、バルの予想は外れ敵艦は艦体を隠すほどの大きな発砲煙に包まれた。

 

「て、敵艦発砲!!」

 

5㎞という近距離なため見張り員が報告するよりも先に6発の46㎝榴弾と4発の15.5㎝榴弾がレイフォル艦隊に襲い掛かった。

射撃管制レーダーを搭載しているとはいえ、現代艦艇であれば必ず搭載している高性能FCSによる攻撃でないため、初弾は46㎝5発が遠弾*5、1発が近弾*6、15.5㎝砲も2発が遠弾、2発が近弾という形であった。

うち一番近くに着弾したのは46㎝榴弾であり、レイフォル艦隊右端64門級戦列艦の700ほど前方に着弾した。着弾時の衝撃と榴弾の爆発によって上がる赤い水柱*7は彼らの持つ前装式砲とは比べ物にならない威力を物語っていた。

 

「な、なんて威力だ!」

 

バルは背中にうすら寒いものを感じた。

すると着弾から若干の間をおいて、発砲せずにいた46㎝砲3門と15.5㎝砲2門が火を噴いた。

 

「敵艦発砲!」

 

今度も見張り員の報告よりも先に砲弾が着弾した。左端を航行していた戦列艦と中央を航行していた戦列艦の100mほど横に赤い水柱が上がる。

余りにも早い諸元修正にバルも舌を巻いた。

 

「ここまで砲撃が修正されるとは」

 

するとすぐに2基の副砲塔から発砲がある。このほうもかなり散布界が修正されているようで、1発目2発目に比べてかなりの至近に着弾する。

 

―あの小ぶりな砲は装填が早いのか!

 

毎分5発という速度で砲弾を食らい続けるレイフォル艦隊。そして、ついにその時が来た。先に夾叉弾を出していた第1、第2主砲塔が斉射を行い、目標を夾叉したのである。加えて、3番砲塔から放たれた主砲弾2発のうち1発と第2副砲塔から放たれた2発が目標を夾叉したのである。

斉射するということは、目標と散布界が完全に重なっており高い命中率が見込まれるということだ。そして砲撃開始から3分たった時、ついにそれがきた。

 

「が、ガオフォースに被弾!轟沈!」

 

艦隊右端の横を航行していた80門級戦列艦「ガオフォース」に第2副砲塔から放たれた15.5㎝榴弾1発が命中。そのまま対魔弾鉄鋼式装甲を貫き、艦内の弾薬庫で爆発したのである。

レイフォル海軍の兵士たちはキールが叩き折られ、真っ二つになっていくガオフォースを茫然と眺めることしかできない。

しかし、その間も砲撃が続く。3基の主砲塔が火を噴く。そのうちいくつかの砲弾が狙われた戦列艦に命中し、1tの重量を誇る榴弾の重さと炸薬の爆発で、船体が折られて沈んでいく。

 

「トラント、ペルシール轟沈!れ、レイフォルも轟沈!」

「な!レイフォルが!!」

 

レイフォル海軍の乗組員たちに動揺が走った。

100門級戦列艦「レイフォル」はレイフォル帝国の最新鋭技術を詰め込んだ新鋭戦列艦であり、レイフォルの強大さを示す船であったからだ。

それが、たった1発の砲弾で轟沈したのだ。動揺しないほうが無理というものだろう。しかし、無慈悲にも砲撃は続く。

このころには高角砲の射撃も加わっており、レイフォル艦隊はただの1発の砲弾を撃つことなく、次々と轟沈していく。近づこうとしても、風神の涙を使ったレイフォル艦隊よりも敵戦艦のほうが高速であり、射程圏内に収めることができない。

 

「ちくしょう!蛮族めが!!」

 

バルは怒りとくやしさでわなわなと身を震わせながら、この惨劇を引き起こしている敵戦艦の方をにらみつける。

気づけば、残るはバルの乗船するレイフォル級100門級戦列艦「ホーリー」しかいなかった。

 

「・・・・降伏旗を掲げよ」

 

バルは砲をこちらに向けつつ、悠々と航行する敵戦艦をにらみつける。

ホーリーのマストに、この世界で降伏を示す旗が掲げられた。どうやら敵戦艦もそれを確認したらしく、ホーリーに接近してきた。

しかし、このまま降伏するのは列強国の軍人たるバルのプライドが許さなかった。

 

「敵戦艦が有効射程圏内まで近づいてきたら、全砲門を斉射し、敵艦を撃沈せよ」

 

これに慌てたのは参謀であった。良心がある参謀はバルの決定に反論した。

 

「お待ちください!降伏後の攻撃など、栄えあるレイフォルの名を汚すことになります!どうかご再考を!」

 

しかし、それに対するバルの返答は、言葉ではなく鉛玉であった。

バンという音とともに、参謀の体は糸が切れた操り人形のごとくドサッとその場に倒れこむ。その向かいに立つバルの手にはフリントロック式の拳銃が握られていた。

そして艦長やその場に居並ぶ兵士を見渡してひとこと言った。

 

「参謀は、敵艦からの攻撃によりたった今戦死した。いいな?」

 

そしてバルは弾がなくなった拳銃を捨て、参謀の胸ポケットから新たな拳銃を取り出すと、それをもって艦長に迫った。

 

「安心しろ。我が国の砲弾を至近距離でくらって無事な船などいない。ここには敵と我々の2隻しかおらん。我々のうちだれもしゃべらなければ、ばれることはない。やれるな?」

 

艦長もこのまま降伏するのは癪であったので、バルの指示に従うことにした。

 

「・・・・・砲撃準備」

 

艦長の言葉に兵士らは攻撃を準備するために走った。そんな水兵らを横目に、バルはいまだ近づいてくる敵戦艦を忌々し気ににらみつける。

 

「わが艦隊を蹂躙してくれおって。必ずや撃沈してやるぞ」

 

そしてついに敵戦艦との距離は、戦列艦の砲の必中距離である1㎞まで近づいた。バルは思いっきり息を吸うと、大声を張り上げて指示を出した。

 

「うてぇええええ!!」

 

彼の叫び声とともに、片舷50門の砲が一斉に火を噴いた。

他とは隔絶した技術を持つ列強レイフォルの誇る主力戦列艦から放たれた炸裂砲弾は、敵戦艦の装甲に着弾すると次々と爆発する。

 

「全弾命中!!」

 

見張り員からの報告に、バルはすっかり気をよくした。完全に敵艦を撃沈したと思ったのである。

 

「馬鹿が!列強たるレイフォル帝国に逆らうからこういうことになるのだ!・・・・・は?」

 

しかし、次の瞬間、砲煙と着弾煙を切り裂いて赤い光弾がいくつも飛来する。人に当たれば、人体がちぎれ飛び、船体や柱を穴だらけにしていく。

 

「て、敵艦健在!!・・・・ガッ!」

 

最後にそう報告した見張り員も光弾を食らって戦死してしまった。完全に煙が晴れたあと、そこには砲撃前と全く変わらない敵戦艦の姿があった。

 

「ま、全く効いていないというのか!?この化け物めぇえええ!」

 

バルが怨嗟の声を上げると同時に、グレート・アトラスターの127㎜高角砲が一斉に火を噴いた。6基12門の127㎜砲から放たれた榴弾は、9発がホーリーに着弾。内部で爆発を起こしホーリーを完全に破壊した。

 

――――――――――――――――――――

 

グレートアトラスターの艦橋で、敵艦が完全に破壊されたことを確認したラクスタルはあきれた様子で言った。

 

「降伏後に砲撃するなど、列強がこの程度ではこの世界の国々の品性が疑われるな」

 

ラクスタルは少し何かを考えたあと、伝声管で砲術長に確認をとる。

 

「砲術長。各砲の残弾数を確認したい」

 

しばらくして砲術長から報告が来る

 

『主砲は各砲門とも徹甲弾はそのまま残っていて40発。接近信管付き対空砲弾は29発、榴弾はばらつきがありますが、どれも20発前後です。副砲は各砲門とも徹甲弾は50発、通常弾は100発前後残ってます』

「副長、敵の首都は沿岸にあったな?」

「はい。ここから東に350㎞程です」

「よし。本艦はこのまま敵首都への艦砲射撃に向かう。護衛水雷戦隊には後方からついてくるように伝えろ」

 

翌日、レイフォル帝国の首都レイフォリアは沿岸に展開したグレートアトラスターからの艦砲射撃により、灰燼に帰した。

皇帝も居城のレイフォリア城に着弾した46㎝榴弾により死亡。生き残った軍部も無条件降伏を決意し、グラ・バルカス帝国に併合され、1週間後にはグラ・バルカス帝国軍の進駐が始まった。

列強レイフォルを1か月とかからず降伏させたグラ・バルカス帝国、そしてレイフォル艦隊43隻を一隻で撃滅し、首都を焼き尽くしたグレートアトラスターの名は世界に知れ渡ることとなった。

*1
今回の第2文明圏への侵攻にあたり、臨時編成された艦隊。本国の東部方面、西部方面艦隊より部隊が抽出されて編成されている

*2
戦艦1隻で航行していた場合、潜水艦による攻撃には一切対応できないうえ、航空機への対応や水雷艇などの高速戦闘艇への対処は難しくなってしまう

*3
現在運用中の2型は原型の1型から20㎜機関砲を長砲身化させることで、初速と命中率を上げている

*4
史実の零戦も20㎜機関砲は当てづらいから駄作といわれることがあるが、もともと対戦闘機戦というよりも中国戦線で猛威を振るっていたソ連製爆撃機に対処するものであったといわれている。対戦闘機戦のメイン武装は7.7㎜機関銃であり、これは当時中国軍が使用していたI-15やI-16などには十分有用で、当時の戦闘機の標準的な武装だった。ただ、米軍戦闘機の硬さが異常だっただけである

*5
目標を飛び越えて遠くに着弾してしまった砲弾

*6
目標手前に着弾した砲弾

*7
本来、艦隊行動をとる際に着弾観測がしやすいように砲弾には染料が充填されており、その色によってどの船が撃った弾なのかを判断できた。グレート・アトラスターの場合は赤い染料が充填されていた。




いかがでしたでしょうか?
これにてロデニウス編完結となります。いやぁ、長かった。ここまででこんなに話数使ってる日本国召喚ものに二次創作ないんじゃないか?
ご意見ご感想お気に入り登録お待ちしております。
ではまた次回。お楽しみに!

次回 EP32 安全保障政策
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