西側諸国召喚   作:RIM-156 SM-2ER

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では、本編どうぞ


EP33 アルタラス王国

アルタラス王国はロデニウス大陸から北西に1000㎞ほど行ったところにある島国である。

地域分類上としては文明圏外国家に属するものの、世界有数の埋蔵量を誇る魔石鉱山を有する国家であり、これらを魔法文明国家に輸出することで経済的に非常に豊かな国家であった。

そんな国と、日本が国交を結んだのはロデニウス戦争中盤の中央暦1939年9月のことである。

日本としては、食糧などはなく、特に必要ない魔石以外にめぼしい資源のない国家であり、外交的優先度はそれほど高くはなかったが、来る者は拒まずということでひとまずは友好通商条約を締結し、大使館を設置した。現在は日本の仲介のもと、米国やイギリスなどのほかNATO諸国との国交締結に向けて交渉中である。

 

 

さて、そんなアルタラス王国の王都ル・ブリアスにある王城アテノール城に、在アルタラス日本大使の片桐(かたぎり)大使を筆頭とする日本外交団が訪問していた。片桐が高価な調度品に囲まれた応接室で待っていると、アルタラス王国の外交担当者らが入ってきた。

 

「これはこれは、ご機嫌麗しゅう。ルミエス殿下。本日は急な来訪に対応していただきありがとうございます」

 

スッと日本側の外交担当者らが立ち上がると、片桐は彼らを代表してあいさつをする。相手はアルタラス王国の外交官であり、アルタラス王国の第1王女でもあるルミエスであった。まさか、王族自らが対応するとは考えていなかったから、片桐らは内心動揺する。

 

「いえ、片桐大使。大した手間ではございませんよ」

 

ルミエスもにこやかにそう返して、着席するように促す。日本側外交関係者らが座ったことを確認したルミエスらもテーブルをはさんだ対面に座る。

 

「さて、今日はどういったご用件でしょうか?」

 

ルミエスは、顔こそ笑っているものの少しばかり警戒しながら日本側にそう尋ねた。

日本とアルタラスは、友好国でこそあるものの、お互いにさして重要視しあっているわけではないのだ。日本からすればアルタラスには欲しい資源はないし、アルタラスからすれば日本は国際社会で発言力があるわけでもなく、貿易を積極的にしてくれるわけでもないのだ。お互いを重要視しないのは当然と言えた。

それなのに、急に日本側が会談をしたいというのだ。警戒するのも無理はなかった。

 

「はい。本日は貴国にとって大変有益となりえるだろう提案を持ってまいりました」

「有益となりうる提案?それはいったい何でしょうか?」

 

片桐の言葉に、少しばかりルミエスは身構える。最近、日本の所属するNATOは地域強国であったロウリアに圧勝したのは、聞いていた。

基本的にこの世界は弱肉強食である。強国が軍事力を背景に弱国に対して「有益になる」と言いながらも領土の割譲・租借などを求めるのはよくある話であった。

ロウリアに圧勝した日本が、それに自信をもって拡大主義に転じたとしても不思議ではない。

 

「はい。我が国が貴国の産業、軍事力の発展を援助するということです」

「具体的には?」

「それについては、こちらの資料にまとめました」

 

そう言って片桐は横にいた書記官に目配せする。すると書記官は持っていたカバンからいくつもの紙の束を取り出して、アルタラス側の書記官に手渡す。アルタラス側の書記官は、それを受け取るとルミエスらに配る。資料が全員に回ったことを確認すると片桐は、再び話し出す。

 

「主に我が国が行う援助は、資料に書いてある通りです。貴国の産業・経済・軍事力発展のために必要な資金を無利子無担保無期限で融資すること。武器を提供し、軍事顧問団を派遣することで貴国の軍事力の増強に協力すること。貴国の安全保障に必要な情報を無償で提供すること。貴国の産業発展のために、港湾設備、空港施設の整備を行うことです」

「これは、非常に魅力的な提案ですね・・・・」

 

ルミエスは見間違いではないかと、資料を何度も見返す。

それほどまでにこの提案はアルタラスにとって有益であり、日本にとってはほぼ利益がないように見えたのだ。

ルミエスの横にいる外交官など、これの見返りとして後でとんでもないものを要求されるのではないかと気が気でない。

 

「これへの見返りなどは?」

「わが日本をはじめとして、NATO諸国との不可侵条約の締結。港湾、空港設備の使用許可といったところでしょうか。それ以外には、現在はこれといった見返りを要求することは考えておりません」

 

びくびくしている外交官を見て、何か愉快なものを見るかのような笑みで片桐はそう答えた。

そして、アルタラス側は片桐の返答にますます不気味さを覚えた。日本が要求した見返りなど、アルタラスにもたらされる利益と日本の追う手間に比べたら微々たるものだからだ。

 

「なぜ、急にこのような支援を・・・・?」

「我が国の急激な方針転換によるものとお考え下さい」

 

ここにきて、初めて片桐はルミエスの質問にあいまいに答えた。ルミエスも、日本側は援助を開始する理由は探ってほしくないのだと悟る。これ以上、探りを入れて日本側の機嫌を損ねても面倒なため、そこで引くことにした。

 

「わかりました。一度持ち帰って検討したいと思いますので、それでもよろしいでしょうか?」

 

ルミエスの質問に、片桐は大きく頷く。

 

「ええ、構いません。早い方が好ましいですが・・・・。ともかく良いご返答を期待しております」

「承知しました。今後とも貴国との友諠が末永く続くことを祈っております」

 

2人のその言葉で、その日の日本アルタラス間の交渉は終了した。

その翌日、シオス王国でも在シオス仏大使が同様の提案を行っていた。

 

―――――――――――――――

 

日本アルタラス間での実務者間協議の翌日。アテノール城では会議が開かれていた。

国王であるターラ14世は、外務卿から昨日の日本との交渉の内容を伝えられ、ウームと考え込んでいた。

 

「外務卿よ。日本の狙いは何だと思う?」

 

ターラ14世は、外務卿にそう質問した。白髪が目立つ初老の外務卿は、ゆっくりとそれに答えた。

 

「この提案は日本というよりも、かの国が属する国家連合の視点で見ると、非常に有益となりうることが一つあります」

「それは?」

「近年、拡大主義を続けるパーパルディア皇国との緩衝国家に、我が国を利用することです」

 

ターラ14世は外務卿の言葉に首をかしげる。

 

「我が国はかの国らの盾になりうるのか?」

 

ターラ14世の言葉は、つまりNATOの中心である転移国家群とパーパルディア皇国、そしてアルタラスの3つの位置関係を見て、パーパルディアに対する転移国家群の盾として利用できないのではないか?ということである。

しかし、外務卿は首を横に振る。

 

「かの国らが我が国を盾として守りたいのは、かの国ら自身というよりもその生命線たるロデニウス大陸なのでしょう」

「っ!なるほど・・・・・」

 

ターラ14世は外務卿の言葉に納得する。

クワ・トイネとクイラがNATOにとって生命線であることは、すでに周知の事実であり、昨年のロデニウス戦争を見ていてもそれがよくわかる。

しかしながら、クワ・トイネ、クイラの両国は経済・軍事の両面でもアルタラスに一歩及ばないくらいの国力でしかなかった。パーパルディア皇国が侵攻してきたら、2か国の身では対応しきれない。現在は、NATOが積極的に支援して強化に乗り出しているようだが、それも一朝一夕で終わるものではない。

だからこそアルタラスを援助して、緩衝国家としたいのだろう。

 

「では、どうするべきだと考える?」

「お受けなされたらよろしいのではないでしょうか。我が国はほぼ無償での援助を受けられるのです。悪いことはござりますまい」

 

外務卿がそういうと、今まで黙っていた陸軍卿がうーんと難しそうな顔でうなった。

 

「それは皇国への誤ったメッセージとなりませんかな?」

「うむ。それは確かに心配だが、港湾・空港設備の拡充はあくまでも商業目的のため。資金・情報提供は秘密裏に行い、軍事顧問団や武器供与もあくまで自国防衛のためという風に皇国には言えばよいだろう。何なら不可侵条約を皇国と結ぶというのも一手だ。万が一、皇国とかの国家連合が戦闘になっても、不可侵条約を理由に基地としての使用は断るという風に皇国には言えばよかろう」

「そうだな。では外務卿。その方針で進めてくれるか?」

 

ターラ14世は、外務卿の提案を受け入れることにしたようであった。

2日後、アルタラス王国は在アルタラス日本大使館に提案を受け入れる旨を通達した。このアルタラス王国の決断は、アルタラスの運命を変えることとなる。




いかがでしたでしょうか?
この作品、戦闘よりも外交とか裏話の方が実は多かったりするかも・・・・?と思ったりする今日この頃。
ご意見ご感想お気に入り登録お待ちしております。
ではまた次回、さようならぁ

次回 EP34 再会した旧友

おたのしみに
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