今日から夏休み?お盆?企画ということで、15日まで毎日投稿します。皆様、ぜひご覧ください。
それでは本編どうぞ。
中央暦1639年3月11日
昨日からムー政府は、第3文明圏外からやってきた超大型船のことで上から下まで大騒ぎであった。
第3文明圏外国が、ムーの最新鋭戦艦である「ラ・カサミ」をも上回る超大型空母を持っているのだ。ミリシアルの支援を受けているだとか、実は第2文明圏に手を伸ばしつつあるグラ・バルカス帝国の艦だとか、そんな噂が立つのも無理はなかった。
ムー国統合軍本部情報部分析課に所属している技術士官のマイラス・ルクレール技術中佐も、そんな超大型空母に興味を持つ人間の一人であった。
彼は、今日も自身の仕事場で情報収集で得た各国の兵器に関する分析を行っていた。各国とはいっても、最近はもっぱらムーの隣国であるレイフォルを手に入れたグラ・バルカス帝国の兵器の分析やロデニウス戦争に勝ったNATO軍兵器の分析ばかりであった。とはいっても、数少ない写真や絵、伝聞だけでは具体的な性能、運用方法などを正確に分析することは難しく、部下らとともに日々頭を悩ませていた。
「なぜ、この艦は砲を一門しか積んでいないのだ?」
そういうマイラスの前にある一枚の写真。商人に化けてロデニウス大陸に潜入していたムー工作員が、出国直前にハーク港で撮った写真であった。
その写真には、嫌に角ばった見た目で船体は巨大であるも、砲を一門、時代遅れのガトリング砲らしきものを2門だけ装備していると思われる、彼らから見て珍妙な構成の艦艇―アメリカ海軍アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦フライトⅢが映っていた。
終戦後、ハーク港警備のためにやってきた米海軍第7艦隊第15駆逐隊戦隊所属のDDG-139「テレスフォロ・トリニダード」の写真であった。
「これだけ大きな船体に、海防艦程度の火力。設計思想が謎ですね」
横にいたカーナ・ハスペロ技術少尉が写真を指さして、さらに続けた。
「しかも、艦橋と主砲塔の間にある、このスペースと後部甲板のこのスペースが謎です。これだけの大きさがあれば、この艦は最低でもあと2基、普通は3基同じ主砲塔を置けるはずですが・・・・」
工作員が撮ってきた写真はどれも港から撮った物ばかりであり、現代の駆逐艦に必要なVLSが映っていなかった。また、ヘリコプターも格納庫の中にいたために映っておらず、後部飛行甲板の役割がわからなかったのだ。
そのため、マイラスらにとっては、その空間はただのデッドスペースとしか思えなかった。
「もしかしたら、この間であらゆる任務をこなせるようにしているとか?このデッドスペースも貨物を乗せるにはちょうどいいだろう」
「なぜ、軍艦にそのようなことを?」
マイラスの立てた仮定に、カーナはそう聞き返した。
「軍の予算を確保するためとか?このNATOという国家連合は、別世界から転移してきたといっているようだ。これが本当だったとしたら、転移前の世界は平和で、その中で軍隊の予算を確保するために軍隊があらゆる活動をせねばならなくなったとしたらどうだ?」
「なら、これの説明が付きませんよ」
横にいた男性将校が指さしたのは、まったく別の写真であった。無限軌道を備えた車体に、軍艦のように全周式砲塔と思われるものを積んだ何か―日本国防軍海兵隊31式戦車が4両映ったものである。
終戦後に王都に駐留している日海兵隊第12戦車大隊所属のものを撮ったものであった。
「周りの人間の大きさを考えると、この謎の兵器の積んでいる砲の口径は130㎜ほどです。我が陸軍が所属する主力重カノン砲や榴弾砲よりも大口径です。しかも、この兵器はバリスタの攻撃を一切寄せ付けなかったという話もありますし、強力な防御力と砲火力を備えた陸戦兵器であることは間違いありません。こういった兵器があるということは、必ずしも平和な世界と言い切れなかったのでは?」
男性将校のいうことにも一理あるのだ。マイラスの言う仮説が正しい平和な世界から転移してきたというのであれば、このような陸戦兵器は必要ない。
彼らはますます頭を悩ませる。彼の所属する分析課の課長である大佐が部屋に入ってきて、マイラスに声を変えてきた。
「マイラス!ちょっといいか?」
「はい!」
マイラスはガタッと立ち上がると、早速大佐の机に向かう。大佐は、あまり話を聞かれたくはないのか、何やら机から書類を一つ持つとマイラスを手招きして奥の会議室に向かう。
当然マイラスもそれについていく。会議室の中に入り、大佐が適当な椅子に腰かけたのを見てマイラスは口を開いた。
「どうしたんですか?」
「うん。ちょっとアイナンクまで飛んでくれないか?」
「アイナンクまで?別にいいですが、いったいなぜ?」
すると、大佐は持っていた書類をマイラスに渡す。マイラスは「失礼します」とだけいって、書類を受け取ると、早速それを読み始めた。
大佐は、スッと立ち上がって窓の方に向かうと、話し始めた。
「そこに書いてある通りだが、アメリカの技術水準について調査してほしいのだ。話はすでに聞いているよな?」
「はい。"ラ・カサミ"を上回る大きさの超大型空母を持った謎の国家ということと、NATOという国家連合の盟主のような国家であり、第3文明圏外での影響力を高めているということは」
大佐はマイラスの回答に満足したように頷いた。
「そこまで理解しているならいい。知っての通り、"ラ・カサミ"は我が国の技術の粋を集めた戦艦だ。そしてアメリカはそれを上回る船を持っている。十中八九、造船技術において我が国を上回っているだろうし、その他の科学技術についてもしかりだ」
くるりと体を回して、窓を背に大佐は話を続ける。
「明日、アイナンクでアメリカの代表使節団とのわが国外交団との初の会談がある。交渉前の資料受け渡しと互いの実務者の確認のようなものだ。アメリカ代表使節団は、そこに飛行機で向かうそうだ。そこで、マイラス君には、本格的な交渉が始まる4日後までその飛行機やアメリカの船を可能な限り調査し、その技術水準を図ってきてもらいたい」
「私がですか?」
「そうだ。君が、だ。ただの文明圏外国家だと思って交渉に臨めば、アメリカに外交的主導権を握られる可能性もある。そうなれば、我が国の国益を大きく損ねる可能性もある。心してかかってくれ。これは、君にしかできん仕事だと確信している」
大佐の言葉と視線に、マイラスは自然と背筋が伸びた。
それは緊張からくるものであった。大佐の言う通り、アメリカはムーをも上回る科学技術を持つ可能性がある。もしそうであった場合、それらを把握しないままにアメリカと関係を持てば、経済や軍事などの面で大きく国益を損なってしまう。このムーの今後をも左右する可能性がある非常に責任重大な仕事に、マイラスは人生で最も緊張していた。
しかし、それと同時にどこかワクワクした感情も湧き上がってきた。まるで初めて遊園地を訪れた子供のような感覚である。マイラスは、初めて見ることができるかもしれないムーよりも進んだ科学技術の存在に、一人の技術者として心を躍らせていた。
「わかりました!ムーのため、この仕事引き受けさせていただきます!」
不安と期待を胸に、マイラスは見事な敬礼をして見せる。大佐も彼のその様子に安心したようで、再び満足そうにうなずいた。
「うむ。任せた。輸送機は6時間後の16時にでる。車を出してやるから、いったん家に帰って荷物をもって北オタハイト空軍基地に向かいたまえ。それと一人では荷が重たかろうから、2,3人連れて行っても構わんぞ」
「はっ!お心遣い感謝します。では、失礼します!」
マイラスはそういうと会議室を出ていく。
そして、2人の部下に声をかけると荷造りのために、大佐が用意してくれた軍の公用車を使って家に帰った。
6時間後、北オタハイト空軍基地よりマイラス以下2名の技術士官を乗せた人員輸送機が、アイナンク空港に飛んだ。
ムーとアメリカの会談の、ちょうど20時間前のことであった。
皆様いかがでしょうか。
あと3話くらいムー編が続きます。こうしてみると、かなり原作と流れが違うし、ムーもまぁまぁ強化されている気がする。
これ、グ帝もまぁまぁ強化しないとつり合い取れないなぁ。どれくらい強化しようか・・・・。
ではまた次回、さようならぁ!
次回 EP38 世界2位の大国(前編)
お楽しみに。