西側諸国召喚   作:RIM-156 SM-2ER

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皆様どうもSM-2です。
明日で夏休み企画は終了ですが、8月いっぱいまで水曜日に毎週投稿しようと思ってます。
では、本編どうぞ。


EP39 世界2位の大国(後編)

2時間ほどで外交官らの会談が終わるとアメリカ使節団らは合流して、マイカル市内にある高級ホテルに連れていかれることとなった。

マイカル市は、首都ではないもののムーの玄関口としての役割を果たしており、神聖ミリシアル帝国海軍の魔導戦艦も入港可能な港湾設備や民間空港などが整備され、外国の商人らも多数いるムーの商業の中心地でもあった。

そのため、市内には外国から来た外交官や商人向けのホテルが多数用意されており、今回ムー政府が手配したのはマイカル市でも1,2を争うほどの高級ホテルであった。

 

 

使節団を連れていくために、ムー外務省が手配した黒塗りの公用車が、アイナンク空港の建物前に止まる。運転手が出てきてドアを開けると、アメリカ使節団は特段驚いた様子もなく車に乗り込んだ。

普通、文明圏外国家からやってきた人間というのは、自動車を初めて見たとき、馬もなく走る鉄の塊をいぶかしんだり、不気味がったり、驚いたりするものであるが、アメリカ使節団の人間はそんな様子が一切ないので、ムー外交官らは驚くが、マイラスらは「やっぱりか」と思った。

聞いた限り、アメリカの航空機技術はかなり高いことは間違いない。当然、航空機技術のみが発達するということはありえないから、そのほかの技術もそれ相応に発達しているのは間違いない。

また科学技術の発達とは、軍事技術の発達と同義である。特に砲牽引車や輸送用トラック、部隊の機動性向上には自動車産業が深くかかわっている。であればアメリカの自動車技術は、ムーよりもかなり発展していると考えて間違いない。

 

 

マイラスらは、ホテルに向かう黒い車列を見送るとドッと疲れがきた。

 

「まさか、アメリカがそこまで進んでいるとは思わなかった」

「ブラフ・・・・の可能性はやっぱりありませんな」

 

マイラスのつぶやきに、トビルクはそう言った。ティマスの言葉にカーナはコクリと頷いた。

 

「ブラフならもっとマシな嘘をつくでしょうし、今回アメリカは空母で来ています。当然、戦闘機も持っているでしょうから、彼らが乗船を許可している以上嘘かどうかはすぐばれてしまいます」

「外交においてばれる嘘ほど、自国が不利になるものはないからな」

 

マイラスらは、これまで出ている状況証拠からアメリカ軍将校が言っていたことは真実であると結論付けた。

 

―――――――――――――――

 

翌日、アメリカ使節団のトマスとフレデリックらはマイラスの案内で、マイカル市の防備のかなめであり、ムー海軍第2艦隊*1司令部やマイカル方面艦隊司令部が設置されているマイカル海軍基地に訪れていた。この間、その他の外交官らはマイカルにあるムー国国立歴史資料館を訪れていた。

 

「わが海軍には戦艦16隻、装甲巡洋艦16隻の計32隻の主力艦を中心として、その他に巡洋艦や突撃艦などの艦艇を備えており、神聖ミリシアル帝国海軍に次ぐ、世界第2位の海軍力を有しています」

「かなりの海軍力を備えているのですね。ところで突撃艦というのは?」

 

トマスは、戦艦や装甲巡洋艦など聞いたことのある艦種の中に、聞いたことのない艦種があることに気が付いた。

少なくとも、彼の記憶の中に地球において過去に突撃艦という艦種があったことはなかった。

 

「突撃艦というのは、外洋戦闘艦艇では最も小型な艦艇です。ちょうどあそこにある艦がそれです」

 

そう言ってマイラスが指をさした先にあったのは、米海軍が建造したサンプソン級駆逐艦から魚雷発射管を取り外したような見た目の小型艦艇であった。

 

「あれが突撃艦ですか?まるで第1次大戦時の駆逐艦のようだ・・・・」

「くちくかん・・・・?」

「ええ、現在では海軍の主力水上艦艇の1種類でして、味方空母の護衛や通商護衛などを行う艦艇です」

「ほう。アメリカにも似たような船があるのですね。であれば、言っても問題ないでしょう。あの突撃艦は、砲火力こそ戦艦や巡洋艦には劣りますが、高速で機動性に優れているのが特徴です。その高速性を生かして、敵艦隊の攪乱や通商破壊、通商護衛に使用されます。また、維持費も戦艦に比べて安価ですから、他の文明圏国家などが多数配備する戦列艦などへの対応にも使用されます」

 

マイラスは突撃艦に関して説明をしつつ、前のNATOに関する分析会議で話し合われた奇妙な武装の艦が、NATOにおける突撃艦―いわゆる彼らが駆逐艦と呼ぶものではないかとあたりを付けた。

であるならば、もちろん彼らは主力艦たる戦艦や防護巡洋艦を持っているはずであるとも見当をつけた。今回のロデニウス戦争においては、主力艦は出てきていなかったようだが、それはロウリア海軍に対して戦艦などを動かすのがコストパフォーマンス的によろしくなかったからではないかと判断したのだ。

 

「また突撃艦は敵航空機などから主力艦を護衛することも任務としています。あれだけ大きな空母を保有している貴国のことですから、戦艦も相当強力なのでしょうね・・・・」

「いえ、我が国には現役の戦艦は1隻もおりません。我々が乗ってきた航空母艦をはじめとした、12隻の正規航空母艦が我が国の主力となります」

「く、空母が?」

 

このトマスの回答に、マイラスらは非常に困惑することとなる。

そもそもムーやミリシアル帝国における空母の役割というのは、主に3つで、偵察・着弾観測任務、エアカバーを形成しての偵察・着弾観測の妨害、上陸戦時の対地攻撃任務であり、対艦攻撃任務は主要任務には入っていない。なぜなら、航空機に搭載できる100~500㎏ほどの爆弾では、戦艦の水平装甲を貫通することはできず、せいぜいが小型艦の撃沈や敵艦隊の戦列を乱す程度であるためだ。

運がよければ、主砲を使用不能にするくらいはできるだろうが、それでも撃沈することはできないため対艦攻撃任務は主要任務ではなく、補助的なものとして扱われていた*2。つまるところ、ムーや神聖ミリシアル帝国において空母というのは戦艦とともに行動してこそ、真価を発揮できるのであり、空母自体を主力艦にするというのは常軌を逸した編成なのだ。

 

――どういうことだ?彼らは戦艦に必要な装甲材が作れないほど冶金技術が低いというわけではないだろう。それに彼らの乗ってきた空母のような巨大船を沈めるには、航空機の爆弾では威力が足りないはず。いや、爆弾の重さがけた違いなのか?

 

マイラスはあらゆる可能性を考える。

彼の推察は当たらずとも遠からずといったところであった。確かに、現在NATOが主力としているF-35やF-37戦闘機のペイロードは約8tであり、単純計算で1t爆弾を8発も搭載可能である。1tもの重量がある爆弾を食らえば、戦艦といえども被害は軽いものではなくなる。

しかし、彼らの主要な対艦攻撃手段は極超音速空対艦ミサイルであった。爆弾よりも、長射程で高速で命中精度の高い代物だ。加えて最新の対艦ミサイルは内蔵されたAIが敵艦のウィークポイントを判断し、そこに向かって突っ込むという凶悪極まりない代物であるのだ。1t爆弾などかわいいものである。

 

「戦艦は作らないのですか?」

「ええ、我が国も50年ほど前までは、戦艦を4隻保有しておりましたが、現在では戦艦はコストパフォーマンス的に非効率ですから」

 

マイラスとカーナはトマスのこの返答で、アメリカの航空機は戦艦をも撃沈可能な性能を有しているのではないかと考えた。

そうこうしているうちに、ムーが誇る最新鋭戦艦、ラ・カサミの前にやってきた。

 

「あれが我が国の最新鋭戦艦"ラ・カサミ"級1番艦の"ラ・カサミ"です」

 

40口径30.5㎝連装砲2基4門を主砲として、副砲には40口径15.2㎝単装砲14門、対戦列艦用として40口径7.6㎝単装砲20門、47㎜単装砲16門、対空用として7.92㎜連装機関銃を20基40丁備える、この世界の船としては強力な艦であった。

現代のステルス性に考慮した、すっきりした船体構造に見慣れたトマスらにとって、そのごちゃごちゃした感じのする構造は、また別の魅力を感じさせるものであった。

 

「前ド級戦艦か。現代艦とはまた違った魅力があるな」

「昔、日本の横須賀でみた"ミカサ"そっくりだ」

 

トマスは、ふむと顎に手を当てて、日本に派遣経験のあるフレデリックは「ラ・カサミ」をそう評した。

 

「ゼンド級・・・・?ミカサ・・・・?」

 

またもや出てきた聞きなれない単語に、再びマイラスらは首を傾げた。その様子に、トマスは再び苦笑すると、説明を始めた。

 

「前ド級とは、いわゆる戦艦の区分の一種のようなものとお考え下さい。イギリスで140年前に建造されたある戦艦が、世界中の戦艦の設計思想に大きな影響を与えました。そのため、その戦艦と同じ設計思想のもと建造された戦艦をド級戦艦、それを発展させたものを超ド級戦艦と呼ぶようになったのです」

「では、前、ということはその設計思想より前の設計で作られた戦艦ということですか?」

「ええ、そういうことになります。そして"ミカサ"というのは、我が国の同盟国日本が記念艦として保存している前ド級戦艦となります」

 

マイラスらはその言葉に驚愕した。140年前に建造された船よりも古臭い設計といわれたのだ。ムーが世界に誇る最新鋭戦艦が、である。

今までの会話で、ムーとアメリカとの技術格差は、埋め合わせがたい隔絶したものであることはわかっていたが、改めてそれを再認識させられると、マイラスらは恥ずかしいやら悔しいやら、よくわからない惨めさに襲われたのである。

 

 

その日、ムー側とアメリカ側はそれぞれ驚くべき事実が分かった。

ムー側は、アメリカとの技術格差が140年以上開いていることを認識し、またアメリカの航空機が戦艦を沈めることが可能な性能がある可能性があるということ。

アメリカ側は、ムーがもともと地球にあった国家であり、1万2000年前にこの世界に転移してきた国家であることが知らされた。

この日の交流は、双方にとって大きな衝撃を与えることとなった。

*1

ムーには4個主力艦隊と6個方面艦隊が配備されている。

【ムー海軍主力艦隊編成】(戦艦4隻/装甲巡洋艦4隻/航空母艦2隻/非防護巡洋艦8隻/突撃艦28隻)

・1個打撃戦隊:一等戦艦2隻、二等戦艦2隻

・1個巡洋戦隊:装甲巡洋艦4隻

・1個突撃戦隊

 >1個巡洋隊:非防護巡洋艦4隻

 >4個突撃隊:突撃艦4隻

・1個偵察戦隊

 >1個航空隊:航空母艦2隻

 >1個巡洋隊:非防護巡洋艦4隻

 >3個突撃隊:突撃艦4隻

 

【ムー海軍方面艦隊編成】(非防護巡洋艦2隻/突撃艦4隻/海防艦8~24隻)

・1個水上警備戦隊

 >1個水上警備隊:非防護巡洋艦2隻、突撃艦4隻

 >2~6個海防隊:海防艦4隻

・方面艦隊哨戒隊

・方面艦隊航空隊

・方面艦隊陸上警備隊

 

 ※突撃艦:史実における駆逐艦に相当する艦艇。突撃艦の任務は、通商破壊や通商防衛、海戦時には主力艦に先んじて突撃して、敵艦にダメージを与えたり戦列を乱すことで味方主力艦を有利にしたり、煙幕を張ることで味方を隠したりすることである。

      この世界には魚雷が存在しないため、駆逐艦の役割である主力艦を水雷艇や潜水艦からの防護することや、突撃しての魚雷戦は任務となっていない。

*2

これは、ムーの航空母艦に搭載している艦載機の比率からもわかることだ。最新型のラ・ヴァニア級航空母艦の最大搭載機数30機のうち、18機は戦闘機であり、5機が艦上爆撃機で、残る7機が偵察や着弾観測のために艦上爆撃機から爆撃機構を取り除き高出力通信機を搭載した艦上偵察機であった




いかがでしたでしょうか?
てか、最近SAOの新作2次執筆と私用で忙しくて、小説書く時間が少なるんですよね。
ではまた次回。さようならぁ

次回 EP40 ムーの衝撃

お楽しみに!
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