今回から、いよいよパ皇編に本格的に入っていきます。
では、本編どうぞ。
地球から転移してきた国家群の一番西側にあるのは日本であった。その日本からさらに西に500㎞ほど離れたところに、2つの国があった。それがガハラ神国とフェン王国である。
これらの国家は国土が小さく、大した資源もないことから西側諸国にとって外交優先度は低く、ガハラ神国は西側諸国が転移して1年後に日本、イスラエル、アメリカ、イギリスなどとの国交を締結したものの、依然として重要視されていなかった。
しかし、ロデニウス戦争が終結しパーパルディア皇国の脅威が明らかになったことで、この2国の立ち位置は以前と変わることとなったのである。ガハラとフェンの位置は、ちょうどパーパルディア皇国と西側諸国の中間地点にあり、ここを緩衝国家もしくは西側諸国よりの国家にすることによって、今まで以上の防御縦深を確保可能で、より早期に西側諸国へ接近するパーパルディア皇国艦隊を探知し殲滅することができるからだ。
しかしながら、この方針が決定された後もフェン、ガハラへの交渉は後回しにされることとなった。それは、西側諸国唯一の柔らかい下腹部といえるロデニウス大陸を守る緩衝国家として、アルタラス、シオスの2か国が優先されていたからだ。
フェン、ガハラがなくとも、パーパルディア皇国の矢面に立つのは、西側屈指の海軍国であるイギリスと日本なのだ。多数の水上戦闘艦艇と哨戒機・戦闘機を有するこれらの国は、最悪フェンとガハラがなくとも、一方的にパーパルディア皇国艦隊をなぶることが可能であるとの判断であった。
しかし、だからといって交渉をさぼっていたわけではない。日本やイギリスとしては、わざわざ本土近くでパーパルディア皇国艦隊を殲滅するよりも、本土より遠くで殲滅したほうが株価や為替など経済面での悪影響が少ないとの判断であった。パーパルディア皇国艦隊を殲滅するのは当たり前、問題はいかにして経済への影響を小さくするか、2国政府の頭にあったのはそれだけであった。
そしてついに中央歴1639年6月4日に日本政府は在ガハラ日本領事館を通じて、フェン王国政府に接触。代表使節団の派遣通達を行い、わずか4日という速さで、フェン王国政府は代表使節団の受け入れを表明した。
早速、特命全権大使や外交官、護衛の海兵隊員などからなる代表使節団は、海上保安庁の巡視船の警護のもと同月20日に日本を出発し、翌日にはフェン王国首都アマノキに到着した。
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一方、当のフェン王国は危機に立たされていた。原因はフェン王国の近くにある第3文明圏の列強、パーパルディア皇国である。
フェン王国国王のシハン4世は居並ぶ幹部を前に真剣な顔で口を開いた。
「パーパルディア皇国と紛争状態に入るかもしれん・・・・」
彼の言葉に、居並ぶフェン王国政府首脳陣に緊張が走る。
何度も言うようにパーパルディア皇国は列強である。ただの文明圏内国家であっても文明圏外国家のフェンとの国力差は覆せないほどあるのに、それよりもさらに国力のある列強相手である。
その国力差は圧倒的であり、フェン王国の人口が70万人に対してパーパルディア皇国は100倍の7000万。海軍も、フェン王国はバリスタを主武装とする手漕ぎ船21隻がすべてであり、パーパルディア皇国は対魔弾鉄鋼式装甲を有した最新鋭の魔導戦列艦422隻を中心にワイバーンを海上で運用する飛竜母艦や補助艦艇を多数有している。航空戦力にしても絶望的で、フェン王国は隣国のガハラ神国に風竜というワイバーンよりも強力な竜が生息していることからワイバーンが寄り付かず、また風竜が生息できる環境でないことから、一切の航空戦力はない。パーパルディア皇国はワイバーン500騎に加え、その改良種であるワイバーンロードを350騎ほど有している。
加えて、フェン王国には魔法がないこともパーパルディア皇国との差を大きなものにしていた。フェン王国の人間は、どういうわけか魔力の少ないものばかりで、魔法技術がない。これで、何より致命的なのは魔導師による支援火力攻撃できないことではなく、魔法通信による迅速かつ円滑な情報伝達ができないことであった。
いつの時代も戦闘は情報を制したものが勝者になるのだ。戦争の勝敗を分ける兵站と情報伝達、どちらも文明圏外国であるフェンはパーパルディアに及ばない。
シハンを除いて唯一、事態を知っていた宰相が口を開く。
「現在、ガハラ神国をはじめ、各方面に応援をお願いしているところだが、どれも返答は芳しくない」
当たり前である。たかが文明圏外国家であるフェン王国と列強であるパーパルディア。戦う前から勝敗は見えているし、なによりどちらの味方をした方が利益があるかなど明白である。
「現在我が国が置かれた状況は、控えめに行ってよろしくない。が、希望を捨てず各自、戦に備えてほしい」
その言葉に、居並ぶ首脳陣はシハンに首を垂れた。
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その翌日のことであった。
この日、シハンは日本という国からやってきた使節団と会見することになっていた。フェンの風習では、初めて来た他国の使節団は国王が謁見するためであった。
しかし、この日の会見相手である日本は、ほかの国と少し違った。
すでに文明圏外国としては頭一つ抜けた国力を持つロウリアを打ち破った話は聞いている。加えて、先に国交のあるガハラ神国からの話によれば、なんでも列強を超えるような超技術を持った国という話だ。さすがに列強を超えるというのはないにしても、それなりの国力を有する国であるのは間違いないらしい。
パーパルディア皇国と紛争状態に入るかもしれないフェンとしては、力のある国とは少しでも関係を持ちたかった。
「陛下、まもなくまいります・・・・・」
近くにいた小姓がシハンにそう言った。
しばらくすると、荘厳な太鼓の音とともにふすまが開き、見たこともないようなすっきりした服を着た日本の使節団らが入ってきた。
宰相が作法にのっとってシハンの前に来る。
「陛下。日本国より参りし、使節を連れてまいりました」
「うむ。ご苦労であった」
シハンがそういうと、宰相はわきにより日本使節団のほうに合図を送る。事前にフェン王国との実務者会談で打ち合わせていた通りに、日本使節団は挨拶をする。
「日本国特命全権大使の荒木と申します。本日は陛下にお会いでき、恐悦至極でございます」
「面を上げよ。フェン王国国王、シハン4世である。日本国の方々、よう参られた。今日は国交樹立の交渉で参られたという話だったな?」
シハンの言葉に、宰相や日本使節団は驚く。なぜなら、こういった国交樹立の交渉などに国王はいちいち口をはさむものではないからだ。
事前の打ち合わせでは、この後開かれる両国の実務者会談にて、国交樹立や各種条約に関する話し合いを行い。ある程度決まったら、シハンと日本の国会でそれらを承認してもらう手筈であった。
しかし、それらをすっ飛ばして、シハンの口から国交開設の話が出てきたのだ。内心、荒木は驚くが、さすがは外交官。見事なポーカーフェイスでそれにこたえる。
「はい。本日はフェン王国との国交樹立を求めに参りました。我が国としては、フェン王国とは友好的な関係を結びたいと思っております」
「ふむ・・・・。宰相。日本国が求める条約の内容をまとめた書類をこちらに」
「は、ははぁ・・・・」
宰相もかなり困惑しつつも、小姓に命じて書類を持ってこさせる。そしてそれをシハンに差し出した。
シハンはそれを受け取ると、大陸共通語で書かれた書類をぺらぺらとめくって目を通す。そして、一通り読み終えると日本使節団の方を見た。
「ふむ。貴国のいう通りであれば、貴国はかなりの国力を有している国なのだろう。我が国としても実に魅力的な話ばかりだ」
「はい・・・・」
シハンの言い方に、何かあると感じた荒木は身構える。
「しかし、我が国は貴国のことをよく知らぬ。特に国ごと転移という現象や鉄船などにわかには信じられん」
「それでございましたら、国交開設の前に使節団を派遣していただければ・・・・」
「いや。我が目で見てみたい」
荒木がすべてを言い終える前に、シハンはそう言った。シハンの言葉の意味がいまいち理解できずに荒木らは混乱する。
そんな彼らをよそにシハンは話を進める。
「貴国には強力な水軍があると聞いた」
「はい。国防海軍のことでしたら、確かにございますが」
「その力を見てみたいのだ」
シハンのその言葉に、思わず「は?」と言いそうになったのを荒木はこらえた。外交官として、他国の国家元首にそのような口をきいてはならないのだ。
「なに。難しい話ではないし、戦争をしようというわけではない。今年、我が国は水軍より廃船が4隻ほど出る。それを来年、我が国で開かれる軍祭で、貴国の艦隊に撃沈してもらいたいのだ。いうなれば実演だ。どうだ?」
「・・・・我々だけでは決めかねますので、一度本国へ連絡してもよろしいでしょうか」
妙な言質をとられないように、荒木はそういう。シハンは嫌な顔一つせずにコクリと頷いた。
「うむ。構わん」
イレギュラーな会見はその後終わり、日本国代表使節団は本国外務省に連絡。翌日の閣議で艦隊派遣が決定された。
防衛省と国防海軍は、未開拓の海域への大型艦派遣に難色を示すが、閣議決定ということで逆らえず、海洋観測艦隊から海洋観測艦AGS-2005「みょうけん」を派遣し、航路の安全を確保するとともに、護衛として国防海軍第5艦隊から汎用巡洋艦1、ミサイル駆逐艦1、汎用駆逐艦1を抽出して、臨時フェン分遣艦隊を編成し派遣することを決定した。
いかがでしたでしょうか?
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ではまた次回。さようならぁ
次回 EP43 西の列強
お楽しみに