まもなく新生活が始まる時期となりましたね。新たな出会いに心を躍らせている読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?かくいう私もそのうちの一人だったりします。
では、本編どうぞ。
中央暦1639年8月28日
この日、日本の首相官邸では国家安全保障会議が開かれていた。議題はフェン王国領海で受けた攻撃についてである。
国家安全保障会議の主要メンバーが集まる中、フェン王国派遣艦隊が撮影した映像がほぼ無編集で流されている。すべてのビデオを見終わった後、最初に口を開いたのは大泉であった。
「・・・・国防軍に死者が出ずに本当に良かった。しかし、彼らは本当に正規軍の軍人なのか。あれではテロリストと一緒だ」
その言葉に、今現在パーパルディア皇国やNATO各国との交渉で多忙を極めている外務大臣がコクリと頷く。
「全くです。しかし彼らが正規軍であることは間違いありません。皇国は帝国主義的思想が強く、また我々転移国家群を未開の野蛮人と見下しているようで、これも要求を聞かなかった蛮族への懲罰と思っているようです」
その報告を聞いて経済産業大臣がハッと鼻で笑う。
「我々が未開の野蛮人?こんな行動を起こしていてよく言える。いったいどっちが野蛮人なんだか・・・・」
「いや、高度な自虐的なジョークなのかもしれんぞ」
財務大臣の冗談に、会議に参加している面々は「ハハハ」と笑みがこぼれる。
本来、この会議は紛争の後始末を話し合うものであるから、笑ったり冗談を言ったりというのは不謹慎なのだが、今回の件で国防軍側に死者がいないこともあって議場の空気は幾分か軽かった。
相手方にはそこそこの死者が出たようだが、相手から吹っ掛けてきた喧嘩である。それで返り討ちにあって、いくら相手が死のうが知ったことではない。今回の件はこちらには一切の責任はないのだから。
「ところで各国の反応は?」
官房長官の問いに、外務大臣は気持ちを切り替えて答える。
「どこもは我が国に対して同情的であり、むしろ我が軍の対応には称賛の声が上がっています。この映像を公開したのが効いたようです。米英に至っては今回の件の解決のためなら如何なる協力も惜しまないとのことです。EUやクワ・トイネ、クイラもそれとなくですが協力を申し出ています」
大泉はそれを聞いて満足そうにうなずいた。
この時、海外世論はどこも突然攻撃を仕掛けてきたパーパルディア皇国を「テロリスト」と呼び厳しく非難する一方で、攻撃されるまで一切武力行使どころか砲の指向すらしなかった国防軍側を絶賛する声であふれていた。無論これにはすでにパーパルディア皇国との対立を選択しつつある、各国政府の意図も含まれているのだろう。
海外メディアに至っては「ジャパンネイビーは最も規律高く、練度の高い軍隊の一つである」や
「世界で最も遵法精神の行き届いた軍隊」という報道までされた。また国防軍側に死者を出さなかったことも、その流れに拍車をかけていた。
この世論が形成されていることは、今後どのようなことがあっても日本側に有利に運ぶ。ほぼありえないが、日本側が軍事報復に出るとしても、賛同か、悪くても理解を示されることは間違いない。
「うん。それはいい知らせだ。引き続き各国と綿密な連携を行うように。それから防衛省と国家安全保障局からも人員を派遣して交渉にあたってくれ。それとパーパルディア皇国は信用ならんから、万が一に備えて特殊部隊員を護衛としてつけろ」
「了解しました」
「至急、準備させます」
防衛大臣と国家安全保障局長が真剣な顔でコクリと頷いた。それを見て大泉は外務大臣の方に向き直る。
「すでに皇国と国交がある国を通じて外交交渉を開始しろ。賠償と謝罪。この2つは絶対に飲ませるんだ。この2つだけは絶対に引いてはならない。いいな?」
「わかりました。使節団員には、しっかりと伝えます」
外務大臣も、真剣な顔で了承する。
「ところで、フェンはどう思う?」
財務大臣がそういうと、みな一様に顔をしかめた。この面倒ごとも、フェンが海軍艦艇を派遣してくれといったところから始まっているのだ。
外務大臣は、苦い顔をしたまま答える。
「かの国は知らなかったと言っていますが、本当のところは予想ぐらいはしていたのでしょうな。パーパルディアがどのような国かを正確に認識していたはずです。軍祭という最も注目される場で、パーパルディアが武力行使に走ることも容易に想像出来ていたでしょう」
「そして、ロデニウス戦争である程度知名度が上がった我々を巻き込もうと、フェンは軍祭への参加要請を出したわけだな」
大泉の言葉に、外務大臣はコクリと頷いた。一番割を食うことになった防衛大臣は、大泉の方を向いて聞く。
「この落とし前をどうつけさせますかね」
「まずは消費した武器弾薬、燃料費。これはどれくらいになる?」
防衛大臣は、即答せずに近くにいた海軍司令長官に小声で質問した。そして、彼が少しばかり手元にある資料を確認して教えると、防衛大臣は答えた。
「武器弾薬燃料、それと食料など全部合わせて20億円ほどになります」
「なら、その費用をすべてフェン王国に請求しろ。分割払いでも構わん。それと対パーパルディア戦に備えて、有事の際の海軍艦艇の航行と国防軍部隊の展開を認めさせろ」
その指示に外務大臣はコクリと頷いた。
この日の安全保障会議では、パーパルディア皇国に陸軍特殊作戦群から22名近い人員を護衛として含む、外務省、防衛省、国防軍、国家安全保障局からの代表者からなる代表使節団を事態解決のために派遣させることが決定された。しかし、パーパルディア皇国とは外交交渉すら始まっていないため、すでにある程度の国交があるムー政府を通じて、事態収拾のための外交交渉を行うことを決定。
また、フェン王国に対しては、派遣費用20億円の請求と有事の際に領域内での国防軍部隊の展開を要求することを決定した。
日本政府はアメリカ政府を介して、ムー政府と協議しフェン王国領海内衝突事件の解決に協力することに合意した。
いかがでしたでしょうか?
そういえば、近所の桜が満開になっておりました。もしかしたらTwitterの方で上げるかもしれません。
コロナによる行動制限も緩和され始めていますし、今年から花見も解禁されていますから、花見に行く方も多いのかもしれません。そういった方はぜひ楽しんできてくださいね。
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ではまた次回。さようなら。
次回 EP52 皇国の動揺Ⅰ
お楽しみに