最近、グロックのガスガンを買って大はしゃぎをしております。いつまでたっても心は少年のままのようです。
それでは本編どうぞ。
中央暦1639年9月
エストシラントにある第3外交局庁舎は、大騒ぎであった。原因は、フェン王国に派遣した皇国監察軍があろうことか大損害を被って敗北したことであった。
フェンはワイバーンはおろかろくな魔法技術がない国家であり、いくら旧式装備で構成されているとはいえ、十分なワイバーンによる支援と複数からの戦列艦で構成された艦隊は、決してフェン王国軍で勝てる相手ではないはずであった。
しかし、実際にはワイバーンは全騎未帰還、戦列艦も半数近くが帆や風神の涙を破壊され、死傷者も出ていた。この結果を受けて、第3外交局では緊急の会議が開かれていた。
「オーレル君、報告を頼む」
第3外交局長であるセドール・フォン・カイオス侯爵の言葉に応じて、第3外交局で監察軍による懲罰攻撃などを担当する軍務部の部長、エリワ・オーレル子爵が書類を片手に立ち上がる。
「まず我々は、8月に不遜なるフェン王国に懲罰を与えるために、フェン王国に監察軍を派遣しました。しかし、結果は知っての通りで、懲罰攻撃は失敗し監察軍は損害を被りました」
「そう、それがなぜかが問題だ・・・・」
フェン王国周辺の国家への外交を担当する東部担当外交部長のウーバン・タール伯爵は属領産の高価な葉巻をふかしながら、とても不機嫌そうな声でそう言った。
フェン王国への懲罰攻撃が失敗したことで、カールはかなりの苦労を強いられているからだ。第3文明圏外東部の国家は、どこも少なからずフェンと繋がりがある。この懲罰攻撃失敗が伝わることで、皇国に抵抗してくる可能性があるとして、緊張を強いられているのだ。
「ポクトアール提督などに聞き取り調査をしましたが、信憑性が限りなく薄い話しか・・・・。詳細は資料の12ページに」
オーレルの言葉を境に、会議室は紙をめくる音でいっぱいになる。そして、だれもが一様に顔をしかめた。
「ふん。こんなことがあるわけないだろう。大方、幻覚魔法でも見せられていたのではないか?」
南方担当外交部長は、内容を鼻で笑うと資料を雑にテーブルに放り捨てて、葉巻をうまそうに吸った。他の参加者もみな同じような反応である。
無理もない話であった。パーパルディア皇国どころか、第3文明圏内国家にすら劣っているはずの第3文明圏外国家が、皇国の戦列艦の何倍もの大きさの船を持ち、それが皇国製の対魔弾鉄鋼式装甲を貫通できるだけの光弾を連続で発射してくるなど、にわかには信じがたい話であったからだ。
「こんなこと、ムーやミリシアルの艦でもない限り不可能だ。負けた言い訳か、幻覚魔法を見せられていたかのどっちかだろう」
カイオスもそう言って、報告書の内容が荒唐無稽だと切って捨てた。そして、頬杖を突くと参加者全員に告げた。
「各々、情報収集をしっかりとしてくれ。少なくとも監察軍が負けたというのは事実だ。早急に情報を収集して、今後の対応を決めねばならん」
―――――――――――――――
その数日後、第1外交局にはのサンラス・ムーゲ在パーパルディアムー大使が訪れていた。
突然の訪問に第1外交局の職員は仰天したものの、すぐにムーやレイフォルなどとの外交を担当する第2文明圏担当部の、担当主任のダニク・ニソール準男爵と部下2名が対応にあたることとなった。
「お待たせしてしまい大変申し訳ございません」
ムーゲの待つ部屋に入るなり、ニソールはそう言った。本来ならアポなしの訪問をしたムー側こそ責められるべきはずであるが、列強第2位の国家であるムーに対して、列強第4位のパーパルディア側は慎重に対応せざるを得なかった。
「こちらこそ突然の訪問に、対応してくださりありがとうございます」
「いえいえ。それで本日はどういったご用件でしょうか?」
書類をテーブルに置きつつ、ムーゲの対面のソファに腰かけると、ニソールは開口一番そう言った。
「ええ、本日・・・・というか今回の件は、我が国は仲介を頼まれた立場でしてね」
「仲介?ミリシアルにでしょうか?それともエモールでしょうか?」
ムーを仲介に使える国家など、二ソールには列強くらいしか思い当たらなかった。しかし、次の瞬間ムーゲの口から聞いたことのない国家が出てきた。
「いえ。日本からです」
「にほん・・・・?」
「ええ、貴国より東にある島国です」
ムーゲの言葉に、ニソールは表情にこそ出さないものの、内心では疑問でいっぱいであった。
パーパルディアより東には文明圏外国家しかない。第3文明圏の雄たるパーパルディア皇国ですら、あまり知られていない文明圏外国家のために、列強2位たるムーがわざわざ動くということは不可解極まりないからだ。
ちなみに、日本の名前はパーパルディアにとって初めて聞く国名ではなかった。以前、ムー政府がNATOの勢力圏拡大をパーパルディアに通達したときに、ムーがまとめた書類に日本の名前はあった。しかし、報告書では「アメリカを盟主としたNATOという国家連合」という書かれ方がされており、また担当は第1外交局ではなく第3外交局であったために、ニソールの記憶に残っていなかったのだ。
――ムーがなぜ第3文明圏外国家のために動いているのだ?
これにはアメリカとムーとのファーストコンタクトでムーが受けた衝撃が関わっていた。異世界製の
ムー政府ではアメリカをはじめとした西側諸国を、表向きはともかく裏では最重要友好国としてミリシアルよりも重要視する始末であった。当然、今回の日本政府からの要請にもアメリカに次ぐ軍事力と経済力を有する国家であるとして、最優先で対処にあたっていた。
世界秩序を根底から破壊しかねないということでムー政府はこの報告書の公表には慎重であったため、ムーゲには本当の理由を話すことはできなかった。
「我が国の友好国であり、将来的には経済的に協力していきたいと考えている国家です。要請にもある程度対応しませんと」
ムーゲはそういった。
以前よりロデニウス大陸のクイラ王国とは、資源貿易で緊密なつながりがあり、これはパーパルディアも知っていることであった。ムーゲの発言は、日本がクイラと同じような資源供給国であると勘違いしてくれることを期待したものであった*2。
実際、ニソールはムーゲの思惑通りに勘違いした。
――なるほど、日本は資源供給国として期待しているということか。
ニソールはこれ以上の追及をしても何も出てこないと判断して、その話に言及するのをやめた。
「それで?その日本がムーに何を仲介してもらおうと?」
「貴国の監察軍と日本の艦隊がフェン王国沖で衝突したことはご存じですかな?」
「そうなのですか?あいにく、私は担当ではなく報告も来ていないので存じ上げませんでした」
ニソールは純粋に驚いていた。この時点で監察軍敗退は第3外交局の内部のみで留め置かれ調査段階であったため、他の政府機関はおろか第1、第2外交局にすら伝えられていなかったのだ。
「日本政府は、貴国に代表使節団を派遣し、関係改善を望んでいます。そこで我が国に仲介が頼まれたわけです」
「つまり、貴国に助けを求めた、と?」
ムーゲの言葉にニソールは身構えた。単なる文明圏外国家との衝突であれば、第3外交局にませて外交とも呼べないような恐喝をさせればおしまいだが、そこに列強が関わってくるとなれば話がややこしくなるからだ。
彼が一番警戒しているのは、ムーが日本側に立って問題解決に介入しようとすることであった。それにより日本政府に恩を売って、資源供給で融通してもらうなどは十分考えられるシナリオだった。
「いえ、仲介は頼まれましたが、それ以外では中立でいてほしいと要請されました」
この要請は、日本政府がムー政府に貸しを作ることを嫌ったためであった。今のところムーとの関係は良好であるが、貸しを作って将来的に外交カードにされることを極力避けたかったのだ。
ムーゲの言葉は、ニソールらパーパルディア側外交官に一定の安心感を与えた。
「わかりました。第3外交局に話は通しておきましょう。お知らせいただきありがとうございます」
「貴国と我が国との友諠が末永く続くことと、日本と貴国との問題解決がスムーズにいくことを祈っています」
こうして、ムーとパーパルディアとの会談は終わった。
第1外交局は、この会談の内容を第3外交局に通達すると同時に、軍などの関係機関や皇帝にも通達することにした。
マイラスらがまとめた報告書「アメリカ合衆国に関する技術・軍事力所見」は、士気低下を恐れたムー政府によって極秘文書とされたものの、その影響力はすさまじかった。ムー政府は、自国の次期戦闘機には最も速度性能が優れた航空技術廠案を採用。また回転式砲塔と装甲を備えた戦車や軽機関銃と重機関銃を統合した汎用機関銃、最高速度は500㎞後半で最終的に改良によっては時速600㎞を発揮可能な次期戦闘機の開発を始めていた。また、NATOが異世界国家向けに輸出しているSDWプロジェクトの兵器を購入するために、NATOへの加盟もしくはパートナーシップ協定の締結を検討するほどであった。
今回、仲介交渉を行うにあたりムーゲのみに報告書の閲覧が許可されたが、彼もマイラスやムー政府上層部と全く同じだけの衝撃を受けていた。
とはいえ、嘘ではない。実際、西側企業の工場を誘致したり建設会社によりインフラを整備してもらうことを計画するなど、ムー政府は西側諸国との経済的関係を含めた、あらゆる関係を強化する予定であった。
いかがでしたでしょうか?
また新生活が始まって、投稿が不定期になるかもしれませんが、失踪だけはしないと思います。
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