今回から戦間期編は一回終わって、しばらく魔王編に入ります。
それでは本編どうぞ。
EP56 出現
トーパ王国は、パーパルディア皇国が存在するフィルアデス大陸の北東部にある四国ほどの大きさの国である。
この国は、グラメウス大陸と呼ばれる国との境目にあり、この大陸にいる魔物*1がフィルアデス大陸に侵入することを防ぐという役割を果たしていた。
これを可能とするのは、同国のさらに北西部にある城塞都市トルメスとグラメウス大陸とのつながりである地峡部にある世界の扉と呼ばれる城塞である。
その世界の扉は、穏やかな朝を迎えていた。
「ふぁぁあ・・・・眠いなぁ。ちょっと寝ちまおうかな・・・・」
城壁の最上部にある監視塔の窓で、非常勤の傭兵であるガイは、けだるそうにグラメウス大陸の方を眺めながらそう言った。
すると、彼の幼馴染で騎士であるエルフのモアが、監視記録を書く手を止めて外の頭を後ろをチョップする。
「まじめにやれ。グラメウスの監視は、人類の生存に関わるんだぞ?」
ガイは頭を痛そうに抱え、涙目になりながら言う。
「んなこと言ったって、この城壁は20mもあるんだぞ?それにここ最近の魔物の襲来といえば、迷い込んだゴブリンが10匹程度。ゴブリン程度ならいくら来たってこの城壁を超えられはしないぜ?」
彼の言い訳を歯牙にもかけないといった様子で、モアは再び監視記録を書きながら応答する。
「ここ100年で見れば、オークだって来てる。お前ひとりでオークを倒せるなら別だけどな」
そういわれて、歴戦の傭兵であるモアはオークとの戦いを思い出して身震いする。
「た、確かにオークは騎士10人いてようやくだけど、そんな100年単位の話をされてもな・・・・」
そういってポリポリと頭を掻きながら、モアは立ち上がってウーンと伸びる。
城壁からグラメウス側は、木もほとんどない見通しの良い平原が広がっており、今の時期は雪が降り積もって白銀の世界が広がっている。
いつも通りの美しい光景だ。今日も、何事もなくあくびが出るような退屈で平和な日となるはずであった。
それに気が付いたのは誰であっただろうか、ゴゴゴと遠くから地面が揺れる音がする。火山でも噴火したかと思うような振動に、城壁の兵士は不安を感じていると誰かがグラメウス大陸の方を指さす。
「お、おい!あれ見ろ!」
先ほどまで広がっていた白銀の世界が、徐々に黒く染まっていくのだ。ガイは、机の上にあった単眼の望遠鏡をひったくるようにとると、グラメウス大陸の方を覗いた。
レンズの先には、醜悪な見た目をした緑色のなじみ深い魔物がひしめき合っていた。
「ゴブリンの・・・・大群・・・・・」
「そ、それだけじゃねぇぜ・・・・。オークもいやがる・・・・」
横にいたモアも、望遠鏡で覗き息をのんだ。ゴブリンとオークという魔物が、地上の色を変えるほどひしめき合っているのだ。
監視所にいた2人以外の兵士もにわかにざわつく。特にオークが多数いるのは厄介だった。しかし、次の報告が最悪だった。
前衛のゴブリンの集団、その後ろにいるオークの集団。しかし、どうやらその後ろにも何かがいる。モアは望遠鏡の倍率を挙げて、それの正体を探る。
「あれは・・・・レットオーガとブルーオーガ?」
モアは、この世界の神話に登場する伝説の魔物の名を口にする。名の通り、赤と青の巨体を持つそれは、オークをも上回る魔法力とパワーを誇り、そこらの兵士では束になったところで敵うものではない伝説の魔物であった。
しかし、神話ではこれらがいるときには、もう一つ伝説の魔物がいるはずである。レットオーガとブルーオーガをも上回る魔法力、知力、パワーを有する魔物の王。
「なら、後ろにいる赤い竜に乗ったあいつは・・・・魔王ノスグーラ!!!!」
ガイがその名を口にした瞬間、監視所にいた防衛隊長が叫んだ。
「通信兵!!至急、トルメスに連絡を入れろぉ!!!!!!」
その瞬間、世界の扉が揺れた。
ドォン
そんな大きな音と揺れで、兵士たちは魔物の集団が世界の扉に衝突したのだと察した。
長いこと、強力な魔物の襲撃がなかったことで、この砦にいる守備戦力は150名ほどである。対して魔物は地面を埋め尽くすほどである。
防衛隊長のみならず、城兵はみんな生き残ることをあきらめていた。それはモアとガイも同じである。
すると防衛隊長はモアとガイの近くに言って、命令を伝える。
「モア!貴様はトルメスに向かい、将軍に詳細を伝えよ!魔信だけでは、詳細はわからん!魔物にも詳しい貴様が向かえ!」
すでに仲間とともに果てる覚悟を決めていたモアは、その命令に抗議する。
「しかし、今は一人でも多く戦うべき時では!?自分も残ります!」
「黙れ!これは命令である!ガイ、貴様はこいつを連れてトルメスまで引くのだ!モアに傷をつけさせるなよ!足が速い馬でいけ!今は速度が肝心だ!」
「・・・・わかりました」
ガイも一瞬不服そうであったが、今なお抗議しようとするモアの襟をつかんで監視室から出て行った。2人は、厩舎に向かうと隊長に言われた通り、ここにいる馬の中でも足の速い2頭を選ぶと、それにまたがってトルメスに向かった。
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2人がトルメスにつくと、すでにトルメスにいたトーパ王国軍北部守備軍主力5,000名は臨戦態勢を整えつつあった。
またトルメス近郊の都市などにも駐留している北方守備軍の全部隊が徐々にトルメスに集結しつつあり、その数は今なお増えつつあった。
このトルメスは、フィルアデス大陸とグラメウス大陸をつなぐ地峡部の出口に当たる位置に存在しており、フィルアデス大陸に入ろうとすればトルメスを落とさなければならないため、北部守備軍は全兵力をここに集めることに決定していた。
ガイとモアは、近くにいた馬匹係に馬を預けると案内の兵に従って、トルメスの中央部にある城に設置された司令部に通された。
すでに中には多数の通信兵と、北部守備軍の将軍と副官らなどが集結しており、地図を囲んで会議をしていた。
将軍は入ってきた2人に気づくと、呼ぶ時間すら惜しいらしく報告を求めた。
「来たか!詳細を報告せよ!」
「はっ!発見時は先に通信で連絡した通りであります。敵数はゴブリンが4万、ゴブリンロードが4千、オークが600程度と思われ、集団の中にはレットオーガとブルーオーガと思わしき魔物を確認。またそのさらに後方には赤竜に乗ったノスグーラと思わしき魔物も確認しました!」
すでに魔信で聞いていたことであったが、伝令から直接聞くとやはり違うらしい。将軍と副官らは苦い表情になる。
「魔物の大群のみならず、ノスグーラまでとは。何たることだ・・・・」
「嘆いていても仕方があるまい。通信兵、王城にはすでに?」
嘆く副官を将軍が励ますと、通信兵の方を向いた。どうやらすでに増援要請を出しているらしい。
「すでに出しております。国王軍*2を中心とした増援部隊を送ると返答が」
ちょうどそのときであった、別の通信兵が絞り出すような声で報告をした。
「し、将軍・・・・」
「なんだ!」
「城壁守備隊との通信途絶・・・・。おそらく全滅したものと・・・・」
その瞬間、その場にいた全員が世界の扉を突破されたことを察した。
いかがでしたでしょうか?
この魔王編では日本国国防軍海兵隊が主役となります(頑張って編成設定考えたから出したかったんや)。NATOの存在感は少な目かもしれません。
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次回 EP57 ドーパの動揺
お楽しみに