西側諸国召喚   作:RIM-156 SM-2ER

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皆様どうもSM-2です。
最近、再びWTにはまり始めております。夏休みももう間もなく終わろうとしておりますが、学生の皆様方は宿題はすでに終わっておりますでしょうか?
私は夏休みの宿題は最終日までやらないタイプの人間でしたね・・・・。



EP57 トーパの動揺

魔王―それははるか昔に、突如として現れた伝説の生き物であった。

本来は知性がなく、組織的な行動をとることなどない魔物を束ね、強大な魔力を備えた魔物の軍勢の長。その本来の名は「ノスグーラ」といった。

グラメウス大陸の奥地より現れたそれは、フィルアデス大陸に歩を進め、人類を蹂躙していった。むろん、人類側は必死に抵抗したものの、魔力では魔王軍に劣る上に多勢に無勢であった。

そこに至ってようやく人類は今までの軋轢を超えて、種族間連合軍を結成し、魔王軍に抵抗を開始した。しかし、種族間連合軍も善戦できたのは最初のみであり、敗北を重ねて人類はフィルアデス大陸から追いやられてしまった。

魔王軍は、種族間連合軍の中でも魔力が高く、最も激しく抵抗したエルフを絶滅させるべく海を渡ってロデニウス大陸に侵略してきた。種族間連合軍は奮戦するも敗北を繰り返し、エルフの神が住まう森にまで追い詰められてしまった。

エルフの神は人類の絶滅を防ぐために、最上位神である太陽神に祈りを捧げ、太陽神はその願いを聞き入れ自らの眷族「太陽神の使い」をこの世界に招いた。

太陽神の使いは、空飛ぶ神の船と鉄の竜、そして雷鳴とともに大地を焼き払う魔導を用いて強力だった魔王軍を蹴散らした。彼らの協力を得ることに成功した種族間連合軍は、魔王軍をロデニウス大陸より追い出し、ついには奪われたフィルアデス大陸を奪還することに成功した。

そこで太陽神の使いは、この世界から去ってしまった。

残された種族間連合軍は、自力でも魔物が侵入することを防げるように「世界の扉」と呼ばれる強力な砦を築き上げ、魔王にとどめを刺すべく4人の勇者を中心とした討伐隊をグラメウス大陸に派遣した。

討伐隊はイエローオーガとホワイトオーガと呼ばれる強力な魔力を備えた魔王の側近を討伐することに成功するも、魔王の討伐には失敗してしまう。代わりに勇者3人の命をつかうことで魔王を封印することに成功した。

しかし、封印の結界は時とともに弱まっていき、いつの日か魔王は甦るだろう。

 

―――――――――――――――

 

4人の勇者のうちの一人、獣人族のケンシーバによって伝えられたとされるこの話は、世界で知らない人間はほとんどいない有名な伝承であった。

そして、その伝承が今まさに現実になっていたのだ。魔王軍との戦闘の最前線であるトーパ王国の王都ベルンゲンにある王城ニーベル城は、一言でいえば大混乱、という言葉がぴったりな状況であった。

一応、事前の取り決め通りに、魔王が世界の扉に出現した翌日には、城塞都市トルメスからの援軍要請に基づいて、国王直轄の精鋭である国王軍6千とその他の貴族の軍や傭兵など9000名からなる1万5千の兵士を魔王討伐軍として派遣することは決定していたものの、それ以外は何も決まっていなかった。

 

「よりにもよってわしの治世に神話の存在が復活するとは・・・・。そもそも、魔王とは誠なのか?いったいどのように確認したのだ?」

 

ニーベル城内に設けられた会議室の上座で、トーパ王国国王ラドス6世は、重臣たちを前にしながら頭を抱えていた。その国王の問いに、世界の扉、そしてトルメスからの報告を真っ先に受けた軍務卿が答えた。

 

「はっ。世界の扉に駐在していた騎士の一人に王立大学に保管してあったケンシーバの魔写の石板を見たものがおります。そのものが魔王の姿をはっきりと確認したと。同様に魔王の側近たるレッドオーガとブルーオーガらしき魔物も確認しており、世界の扉との通信も途絶していますから、まず間違いなく・・・・」

「魔王軍で間違いないというわけか・・・・」

 

見間違いや強力な魔物の群れという可能性は、この時点でほぼなくなった。そもそも世界の扉は、オークが10体、100体来ても跳ね返せるだけの軍備が整えられていたのだ。その砦から通信が途絶したということは、それ以上の強力な何かがきたということの証左に他ならない。

この報告に白髪頭の外務卿は、慌てた様子で発言した。

 

「ともかく、これは我が国のみならずフィルアデス大陸全体の危機です。すぐさま周辺諸国に連絡したいと思いますがよろしいですか?」

「うむ。よろしく頼む。それと軍務卿!」

 

ラドス6世は、外務卿の問いにコクリと頷くと、今度は軍務卿の方を向いて問いかけた。

 

「ははぁ!」

「援軍はいかほど必要と考える」

 

この質問の裏には、援軍の数を最低限で押さえたいという国王の希望があった。

軍隊というのは、平時であっても莫大な物資を消費する。そのくせして、何も生産しないのが軍隊というものなのだ。だから平時においては軍縮が叫ばれるし、トーパや数多くの文明圏外国家は、平時の常備軍を少なくして、戦時に傭兵を雇うことでその戦力を補うことを基本としている。当然、戦時ともなれば物資の消費量は跳ね上がる。

補給路や兵站部隊が貧弱なこの世界において、その物資を調達し補給するのは、戦場を持つトーパなのだ。必要な物資を調達できなければ、援軍による略奪などによって治安悪化が避けられず、加えて援軍は戦力として期待できなくなってしまう。本末転倒もいいところである。

しかし、当然トーパの補給能力にも限界はある。その能力の限界を一番よく知っているのは軍務卿であるし、魔王討伐に必要な戦力が最も正確に予想できるであろう人間も軍務卿なのだ。

当然、軍務卿もこの国王の意図をすぐさま理解して答えた。

 

「ははぁ。まずゴブリンやオーガですが、我が国の戦力のみで十二分に対抗しうると愚考いたします。しかし、魔王とその側近には我が国以上の軍備を持つ国家。パーパルディア皇国軍や東にあるNATOの戦力が必要であると思われます」

 

実を言うと、トーパはフェン王国領海内衝突事件の以来、日本との関係強化をひそかに図っており、フェン王国領海内衝突事件で一躍有名になった日本との安全保障条約の締結すら検討されていた。当然、軍務卿は日本や日本と同盟関係にあるNATOの戦力に関しては十分に理解があったため、パーパルディア皇国軍とともにNATOの名を並べたのである。

 

「なるほど。して、その数は?」

「正直、魔王らの能力が正確にはわかりかねますゆえ、なんとも。しかし、どちらともに自前の補給部隊があり、かなりの数であっても我が国で対応可能かと思われます」

 

軍務卿は勇ましいことを言っても仕方がないと、正直に国王の問いに答えることにした。

 

「そうか・・・・。では、外務卿。このパーパルディアとNATOに援軍を要請してくれ」

「かしこまりました」

 

この日のうちに、魔法通信で駐パーパルディアトーパ大使館と駐日トーパ大使館に魔王復活の報と援軍要請が伝えられ、それぞれの大使はその国の政府と交渉にあたることとなった。

 

 

―――――――――――――――

 

中央暦1639年11月4日

 

ちょうどニーベル城で会議が行われているころ、世界の扉から数キロほどトーパ王国に侵入したところに魔王軍は野営をしていた。

松明が焚かれ、醜い魔物の大軍が暗闇の中に映し出されていた。その中心には、明らかにゴブリンやオークとは違う、筋骨隆々とした高い魔力をもつ魔物が3体座っていた。その周りには、彼らが食べたのであろう人間の骨が散乱しており、その光景はさながら地獄そのものであった。

 

「劣等種どもめ。少しは学んだと見える・・・・。とはいえ魔帝様にかなうものではないがな」

 

そう言って、おぞましい笑い声をあげる魔物こそが、この魔王軍を率いるノスグーラであった。そのノスグーラの言葉に、隣にいた青い体のオークに近い顔つきの魔物―ブルーオーガが同調した。

 

「ええ、すでに用意した4万のゴブリンのうち2千もやられました。なのに人間どもは300足らずしかやれておりません」

 

知性が低い魔物であるが、魔王とレットオーガ、ブルーオーガの3体は、人類並みの思考能力と言語能力をもつ魔物であった。

 

「まぁよい。我々の使命は、魔帝様が復活する前に少しでも征服地を広げて、統治をしやすくすることだ。魔物がいくらやられようが知ったことではないわ!」

 

そういって豪快に笑うノスグーラであるが、その横にいるレッドオーガは何かに怯えたような態度をしている。

 

「ところで魔王様。前回、我々は"太陽神の使い"に敗れてしまいました。あのブーンという音を立てて飛ぶ神の船、大地を焼き払う魔導、爆裂魔法を放つ鉄の竜、250mの大きさの魔導船。そのどれもが強く、我々は敵いませんでした。魔帝様の力を疑うわけではございませんが、我々は魔帝様をあまり知りません。本当に"太陽神の使い"に勝てるのでしょうか?」

「レッドオーガよ。それは杞憂というものだ。魔帝様が駆る対空魔船は音の速さで飛ぶのだ!その半分の速さもない神の船など敵ではない。鉄の竜も魔導船も誘導魔光弾の攻撃で倒すことができる。安心せよ」

 

レッドオーガは魔王の言葉に安心したようで、どこか肩の荷が下りたような雰囲気を出す。それを見た魔王は、傍らから人間の肉をつかんで口に頬りこむと吠えた。

 

「時は近いぞ!われらは必ず勝つのだ!」

 

それと同時にオウ、という歓声が魔王軍の中心から上がるのだった。

 

―――――――――――――――

 

中央暦1639年11月5日

 

本国からの連絡を受け取った駐パーパルディアトーパ大使は、第3外務局を訪れていた。この対応に、ちょうど対日交渉を外されて暇になっていた第3外務局長のカイオスが当たることとなった。

 

「――というわけで、我が国は貴国の援軍を必要としております」

 

一連の事情を必死に説明したトーパ大使だが、カイオスは少し考えたうえでこれは無理だと判断した。

これはトーパへ対する嫌がらせなどではなく、単純に皇国軍の作戦能力が限界であったからだ。現時点で、パーパルディア皇国陸軍には28個歩兵軍団と18個騎兵軍団が存在しているが、そのうち9個歩兵軍団と9個騎兵軍団はパーパルディア皇国本国領の防衛戦力として、近衛、パールネウス、デュロ、クレンそして東西南北中央の9個方面軍に分割され、残る19個歩兵軍団と9個騎兵軍団のうち6個歩兵軍団と4個騎兵軍団はパーパルディア皇国属領群の国境警備に、2個歩兵軍団はアルタラスとフェン・NATOという異なる別方面への侵攻作戦に、6個歩兵軍団と3個騎兵軍団が属領警備に、残る3個歩兵軍団と1個騎兵軍団もフェン・NATO侵攻作戦の後詰として、2個歩兵軍団と1個騎兵軍団は戦略予備として用意されていた。

これらへ必要な糧秣と弾薬を提供する補給部隊は、フェンやアルタラス方面への侵攻作戦への物資集積と補給で手一杯であったのだ。戦時体制に移行していれば、平時に登録してある民間商船や馬匹の徴用によって補給部隊が強化されるが、現在は平時体制であるために補給能力が貧弱であったのだ。加えて、戦時体制にない皇国では、兵力が整っていても武器弾薬の製造ペースが低調で、属領及び国境警備や監察軍向けに必要とされる分しか生産されておらず、フェンやアルタラス方面への侵攻作戦にも事前に集積されていた物資を投入することとしていたのである。魔王軍討伐に投入する物資が、不足していたのだ。

もしこれが、皇国領内での防衛戦闘であればやりようがあったものの、補給路が整っていないトーパ王国に一定数の部隊を派遣することは不可能だった。

しかも、皇国軍は魔導マスケット銃や魔導砲で使う魔石や銃弾、砲弾などトーパ王国で現地調達不可能な物資も多数使用するために、補給部隊がなければ派遣できないのである。

 

「では、単刀直入にはっきり言おう。不可能だ」

 

カイオスのその回答に、トーパ大使は、まるでこの世の終わりかのような表情になる。

 

「な、なんとかなりませんか!我が国が魔王軍の手に落ちれば、次はフィルアデス大陸なのですよ?」

「詳細は言えないが、わが軍の補給部隊が手いっぱいでね。我が国の領内であれば、補給が容易であるから防衛も可能だろうが、貴国まで赴いての防衛戦闘は不可能だ」

「し、しかし!」

「話は以上だ。失礼する」

 

なおも食い下がろうとするトーパ大使であったが、カイオスはこれ以上の言及を避けるために部屋を出て行った。

 

―――――――――――――――

 

ちょうど同じころ、日本外務省に駐日トーパ大使が訪れていた。

突然のアポなし訪問ということで、日本側も困惑するも来るやもしれない対パーパルディア戦においてトーパ王国は橋頭保としても利用できる立地だ。無下には扱わずに、とりあえず対応することにした。

 

「――というわけで我が国は、貴国とその同盟国の支援を必要としているというのが現状です。確かにゴブリンやオークであれば我が国の軍でも十分対応可能なのですが、魔王やその側近が伝承通りであれば、その対応は厳しいといわざるを得ません。どうか、小規模でもいいので支援をお願いしたいのです」

 

この要請に日本外交官はウーンと考え込んだ。

 

「なるほど・・・・。状況は理解しましたが、軍や他国との調整が必要な問題ですから即答はしかねます。なるべく早くに回答ができるように努力はさせていただきますが・・・・」

 

日本外交官も、人類が捕食対象な知的生命体を倒すのに抵抗はないだろうと考えてはいたが、他国が絡む問題で「はい」といってしまえば大問題だ。とりあえず、この場はお茶を濁して、結論は延期することにした。

 

 

その翌日、魔王軍が要塞都市トルメスに至ったころに日本政府は、魔王討伐のための部隊派遣を決定。またその4日後にはNATOは支援部隊の編成と派遣を発表。すでに派遣準備を進めていた日本国防軍から、魔王の戦力調査と現地のインフラ・補給路調査を任務とした先遣偵察隊が派遣されることとなった。




いかがでしたでしょうか。
今回はほぼ、原作と同様の内容であったと思いますが、次回からいよいよ日本国海兵隊が出てきます。
国防軍は細かな設定まで長い時間をかけて書き上げたものなので、自分としてもかなり思い入れがあります。楽しんでいただけると幸いですね。
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次回 EP58 トーパ王国臨時偵察隊
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