お久しぶりです。SM-2です。
昨年は学業やその他の私事で忙しく、あまり投稿できず申し訳ありませんでした。
ただし、今年こそはある程度、投稿していきたいと思っておりますので、なにとぞ応援のほどよろしくお願いいたします。
それでは、本編どうぞ。
さて、このトルメス城は神話の時代に魔王軍へ対する備えとして建造されたと伝えられる、歴史ある集中式城郭の城であった。その歴史ある城の中を、アルパインマルチカムの迷彩服とボディーアーマー、ヘルメットを身に着け、カスタマイズされたアサルトライフルなどで武装した8名の兵士が、中世ヨーロッパの騎士のような鎧を身に着けた兵士に案内されて歩いている
事前ブリーフィングで、ここトルメスが魔王との戦闘の最前線であると聞いていたので、司令部に向かう百田たちも常に武装している。
全員が、光学照準器とサプレッサー、フォアグリップなどが付いた36式6.8㎜自動小銃とレーザーサイトとドットサイトを付けたFN PHP*1を持っている*2。
彼らは現役の石造りの城など見たことがないため、物珍しさのあまりあっちこっちを見回していると、遠くから人の叫びと剣戟の音が聞こえてくる。ここが最前線なのだと改めて認識させられる音であった。
「ほんとに最前線なんだな・・・・」
中隊本部付通信軍曹である
百田らが通されたのは、最上階の1個下にある会議室であった。
そこには、魔王討伐軍の指揮官にして、国王軍第2軍団の指揮官であるペンドレー・アジズ将軍と彼の副官数名がいた。
アジズ将軍は筋骨隆々とした色黒の40代後半の人間族の男であり、白い髭と短髪が特徴的ないかにも勇猛そうな人間であった。魔物に対して強力な防御力を発揮する銀の鎧と赤いマントを身に着けた状態で、会議室中央に設置された円卓の入り口から正反対の位置に座っていた彼は、日本国海兵隊の7人が入ってくるとスッと立ち上がった。
「日本国の方々ですな。私はトーパ王国軍魔王討伐軍司令官のペンドレー・アジズといいます。よろしくお願いします」
「日本国海兵隊第31両用強襲偵察中隊中隊長兼トーパ王国臨時偵察隊隊長の百田太郎です。こちらこそ、今回はよろしくお願いいたします」
自己紹介を終えると、アジズは侍従に地図を持ってこさせて、百田をそばに呼んだ。
百田と各小隊長、中隊先任曹長、中隊本部付通信軍曹の7人は、ガンスリングで体の前にかけていた小銃を肩にかけなおして地図を覗き込む。護衛である中隊長伝令の上等海兵は、小銃を前にかけたまま7人の後ろにいた。
アジズが持ってこさせたのは、トルメスや世界の扉などのある王国北部全体を記した地図であった。そして、北部守備軍の司令官が説明を開始した。
「まず私から現在の状況を説明させていただきます。今月2日に、グラメウス大陸より魔王とそれに率いられた魔王軍が出現しました。翌日には世界の扉が突破され、魔王軍はフィルアデス大陸に侵入。同地守備隊は全滅し、守備隊は2名を残して戦死したと思われます。魔王軍は道中の村々を襲いつつ、6日には魔王軍はトルメスに到達しました」
そういうとアジズの侍従によって、トルメスの上に赤いチェスの駒のようなものがおかれる。
「8日にトルメス北部のミナイサ地区が陥落。同地にいた民間人600名が取り残されたとみられています。13日には、魔王討伐軍1万5千のうち、国王軍第2軍団の6千名と貴族軍2千が到着。16日には1万5千全軍が集結完了しました。この間に、騎士歩兵、民間人合わせて2千8百名が死亡しましたが、何とか魔王軍の進行を食い止めているのが現状です」
北部守備軍の司令官は、青いチェスの駒のようなものをトルメスの上において、説明を終了した。
すると、日本側から出席している百田が地図から視線を上げると質問をした。
「民間人の状況は、どうなっているのですか?」
「民間人は3か所に集められており、毎日数十人が魔王や魔物の餌にされているため、現在は200名ほどに減らされていると思われます。過去に3回奪還及び救出作戦を行いましたが、甚大な被害を受けて撃退されました」
百田の質問に対して答えたのは、北部守備軍の司令官ではなくアジズの副官であった。その返答にある「餌」という単語に、日本側の8人は顔をしかめた。
次に質問をしたのは、中隊先任曹長の
「魔王軍の現状は?」
その回答をするためか、アジズの副官は再び侍従に新たな地図を持ってこさせる。王国北部の地図の上に広げられたそれは、トルメス内部を細かく記した地図であった。
アジズの副官は、指揮棒のようなものでそのうちのある地点を丸で囲って示す。
「魔王軍はミナイサ地区全体に展開しています。しかし、魔王の位置はわかりません。しかし・・・・」
アジズの副官は、もう一枚の地図を広げるとある地点に赤い駒を置いた。そして、それを指さして言った。
「このミナイサ地区中央広場にレッドオーガかブルーオーガと、オークやゴブリンなどの魔王軍主力がおり、奪還はおろか、民間人の救出すらままなりません」
その説明を聞くと、立山海曹長は、百田に作戦の意見具申をする。
「中隊長。クイーンエリザベスに要請して、オーガと魔王軍主力を空爆してもらうのはどうでしょう。敵に多大な損害を出させれば、その後が楽になるかと」
「そうだな・・・・」
百田もその作戦がいいと思ったが、トーパ側から待ったがかかった。声を上げたのは、北部守備軍の司令官である。
「いや、待っていただきたい!」
「なんでしょう」
「くうばく、というのがいったい何なのかはわかりませんが、この地点の近く、この大講堂には取り残された民間人の約半数がおります。下手に攻撃すれば、民間人へも被害がでます」
「その情報はどうやって?」
情報の精度というのはとても重要なものである。それが誤った情報であったり、欺瞞情報であった場合には、それに基づいて作戦を立ててしまい、味方に甚大な被害を生み出しかねないからだ。
その質問を想定していたらしく、アジズの副官は青い駒を地図の2か所に置く。
「ミナイサ地区とその他の地区は、この城壁によって隔てられており、この2か所には監視塔を兼ねた櫓があります。この2か所からの報告で、住民がここに連れ込まれるのを確認したと」
1か所であれば誤認の可能性もあるが、2か所からの報告とあれば情報の精度はかなり高い。国防軍側の6人は、その情報を信用して頭に敵情報を叩き込む。
「うーん。なかなかに厳しいな」
百田が唸ると、アジズもそれに同意した。
「ああ、特に2匹のオーガが厄介でな。奴らめ、オークと同じように力が何十倍もある上に、疲れを知らないようなのだ。しかも、防御力も高くて耐刃性が高いから、半端な攻撃じゃダメージを与えられん。バリスタならやれるかもしれんが、人並みにすばしっこく動くから、有効打をなかなか与えられん」
オーガというのは、そこらの魔物やエルフよりも魔力が高いから、その魔力を使って微弱な回復魔法を継続的にかけることで、筋肉の疲労を回復しているから疲れは感じないし、軽微な傷ならすぐに回復していしまう。加えて防御力も高いから厄介この上ないのである。
バリスタならやれる、という言葉に百田と作戦士官らは、オーガくらいなら撃破可能ではないかと考えた。
というのも、彼らはバリスタよりも攻撃力が高い機関砲や対戦車ミサイル、戦車砲を持っているし、これらは時速100㎞で動く車両相手でも撃破可能なのだ。それに機関砲であれば弾幕を張れば、避けられる敵はほぼ皆無だ。
オーガ2体であれば、撃破は十二分に可能であるというのが、彼らの判断だ。
本隊も待つにしても物資集積や移動が終わるには、もっと時間がかかる。その間に、現在囚われている民間人がすべて食われてしまうし、食糧が尽きる前に大規模な攻勢がある可能性が高い。
どこに攻撃するのか、部隊をどの程度集中させるのかなどの主導権は、攻勢側に握られてしまう。火力では勝るが、防衛線の厚みを確保するのに必要な数が少ない臨時偵察隊は、戦闘の主導権を渡すわけにはいかないのだ。であれば、先制攻撃を仕掛け敵の主力であるオーガを撃破することで出鼻をくじきたいというのが臨時偵察隊の考えだ。
「オーガ程度であれば、撃破可能か?」
「おそらく。
「敵も食料が尽きる前に攻勢に出ると思います。先に叩いて出鼻をくじくべきかと」
百田と立山海曹長、漆山一等海曹がそう話しあう。
しかし、その話し合いを横で聞いていたトーパ王国側の面々は、半信半疑であった。別に国防軍の兵士たちは強そうに見えないし、鉄竜も強力かもしれないがオーガの機動力に勝てるかどうかわからないからだ。
しかし、そんなことを知らない彼らは淡々と話を進めた。
「では、早速
「大丈夫です。ただ、こちらも敵に関する細かい資料を用意しますから、1時間ほど休憩としてもよろしいですかな?」
「ええ、構いません」
アジズの提案を、百田は了承した。
会議が休憩に入り、お互いが解散しようとしたときであった。突然、窓が割れて何かが部屋の中に飛び込んできた。円卓の中央に降り立った白い布をかぶった黒い人型の異形に、モアがその名をつぶやいた。
「貴様は、マラストラス!」
この時には、トーパ王国側の騎士たちは全員剣を抜き、日本側も護衛の4人は小銃を、中隊長や作戦士官などの4人は胸元のホルスターに収められたPHPを抜いて、ローディングインジゲーターを確認して初弾が薬室に装填されていることを確認しつつ、安全装置を解除して、マラストラスといわれた異形に銃口を向けた。
「何者だ!」
マラストラスのことを知らない百田は、ダットサイトに映し出される赤点をマラストラスの頭部に合わせつつ誰何した。
それに、マラストラスは鷹揚に話始めた。
「ほっほっほっ、私は魔王の側近、マラストラス!たかだか人間の将を一人を倒すためだけに私が足を運ばねばならないとは、永い時を経て人類もなかなかに進化したようだな。しかし、我が名を知らぬものがいるとは、まだまだ殺し足りなかったようだな?」
そういいつつ、マラストラスは手を百田の方へと向けた。その発言と行動から、敵であろうと百田は判断した。そもそも自分から、殺し足りないだとかや協力関係の将軍を害しようとしている発言をしている姿は、ヘルメットとボディーアーマーの胸の部分についているカメラとマイクでばっちり録音録画されている。
ここまでくれば、攻撃しても大丈夫だろうと判断したときであった。
「させるかぁ!!」
横からアジズの副官が切りかかった。
マラストラスは慌てる様子を少しも見せずに気持ち悪い笑みを浮かべたまま、百田に向けていた手をアジズの副官に向けると、呪文を詠唱して魔法を発動した。
「ヘル・ファイア・・・・」
「ギャァアアアアアア!」
その瞬間、魔力が集中した手の先から黒い炎が現れ、アジズの副官は鉄をも溶かす高温の炎に飲まれた。炎に飲まれた彼は、断末魔の叫びをあげてそこらに転げまわった。
その瞬間、百田は迷うことなく命令を出した。
「撃てっ!」
その瞬間、3丁のアサルトライフルと5丁の拳銃が火を噴いた。
彼らは、ダットサイトの照準をマラストラスの腹部や頭部に合わせると、引き金を引いた。3人のうち、セーフティーを連発にしている2人は引き金を引きっぱなしに、単発にしている漆山一等海曹は、細かく引き金を引いてセミオートで31式小銃の引き金を細かく引いて連射した。
「グァッ!」
甲高い破裂音が連続して起こり、良好なストッピングパワーと貫通力を誇る6.8㎜NATO弾と場合によってはボディーアーマーを貫通可能な5.7㎜NATO弾を食らったマラストラスは、苦悶の声を漏らしてその場に崩れ落ちた。
同時に、フルオートで撃っていた2人の小銃と幹部3人の拳銃が、ホールドオープンして弾切れを告げた。マラストラスも倒れたことで、百田はハンドサインと声で指示を出した。
「撃ち方やめ!撃つな!」
拳銃を右手で持ち、空いている左手で「撃ち方やめ」のハンドサインである手のひらを前に向けて、顔の前で腕を上下させる動きをした。
それと同時に、弾が切れた4人はマガジンポーチから新たな弾倉を取り出してリロードしつつ、残る全員は銃を横たわるマラストラスに向けたまま引き金を引くのをやめた。
百田も、拳銃用のマガジンポーチから20連のマガジンを出して、空のマガジンと交換しつつ、横にいた中隊長伝令に指示を出した。
「牧野、確認しろ」
「了解」
牧野といわれた若い上等海兵は、リロードを終えると、36式6.8㎜小銃を構えたまま、セーフティを単発に変えてゆっくりと横たわるマラストラスに近づいた。
そして、マラストラスを半長靴で軽く小突いた後、頭部に2発の6.8㎜NATO弾を叩き込んだ。ピクリとも動かないマラストラスを見て、完全に事切れていることを確認した牧野は、百田の方を向いて頷いた。
「全員、武器を下ろせ」
その百田の指示で、全員が銃を下ろして安全装置をかけて、中途半端の弾数になったマガジンを新しいものと交換したりして、拳銃を使っていた人間は銃をホルスターにしまった。
その一連の光景を見て、トーパ王国の人間は言葉を失っていた。
――なんという・・・・
このマラストラスというのは、強力な魔法を扱うことができるだけでも厄介なのに、すばしっこく飛ぶことができるというのがワイバーンを持たないトーパ王国軍にはさらに厄介だったのだ。
この魔物一体で数百という人間が犠牲となったのだ。その中には百人以上の騎士も含まれている。
それを、百田らはたった8人で倒してしまうことに成功したのだ。ここまでくれば、彼らの力を疑う余地はない。
「百田殿、マラストラスを倒していただき助かった。貴殿らがいなければ、我々は全滅していただろう」
アジズはそう言って百田にお礼を言った。
その後、マラストラスの死体は片づけられたものの、酷寒のトーパ王国では窓を壊されてしまうと気温が一桁台まで下がって会議どころではないため、会議をする部屋を変えて1時間後に民間人救出と、オーガ退治に関する会議が行われた。
・FN PHP
種類:自動拳銃
装備部隊:国防軍全軍
全長:208㎜(F)
181㎜(S)
銃身長:121㎜(F)
97㎜(S)
重量:658g
口径:5.7㎜
使用弾薬:5.7×28mmNATO弾
有効射程:50m
銃弾初速:655m/s
発射速度:-
作動機構:ショートリコイル方式
ストライカー方式
概要:FN社がFN ファイブセブンの後継として開発した自動拳銃。9㎜パラベラム弾を使う拳銃に比べて貫通力に優れており、2034年に正式採用された。
ファイブセブンと同じ5.7㎜NATO弾を使用しつつ、近年の拳銃で主流のストライカー方式を採用。銃自体もポリマー製であり、FNファイブセブンに引き続き軽量となっているほか、近年主流のモジュール構造を使っている。
また、最新の人間工学を意識した設計で、操作系はアンビになっているほか、ファイブセブンからセーフティの位置が変わって、使いやすくなっている。またローディングインジゲーターが追加されており、薬室に弾が入っているかどうかも確認できる。
FNファイブセブンにおいて問題となっていたグリップの幅を改善するために、グリップを非常に軽量で頑丈な新型樹脂で作っているため、最も小さいタイプのグリップは、外側を薄くすることに成功しており、ファイブセブンに比べて握りやすくなっている。むろん通常の厚さのグリップやより大きめなグリップも選択可能となっている。
マガジンは20連マガジンが基本であるものの、24連あるいは30連マガジンも使用可能となっている。
兵の場合は拳銃がなかったり、擲弾兵であればフォアグリップの代わりにアンダーバレルグレネードランチャーを付けた36式小銃であったりなど、変わるものののこれは国防軍士官及び下士官の標準装備であった。
また、光学照準器も歩兵部隊であれば、レーザー測距機付弾道コンピュータ付ブースター付のダットサイトだが、自衛用に支給されている小銃であればただのダットサイトだったりする。
いかがでしたでしょうか。
久しぶりの投稿でしたが、何人の方が見てくださるのか(汗)
今年こそ、投稿ペースをもとに戻せそうな算段が付きつつあるので、お見捨てにならないでいただけると本当にありがたいです。
ご意見ご感想お気に入り登録お待ちしております。
ではまた次回、さようなら。
次回 EP61 作戦前
お楽しみに