遊戯王BELIEVER ~遊戯王の新作シリーズをフラゲしてきた(笑)~ 作:ミスタータイムマン
―在府東高校・空き教室―
「私は皆さんに話さなければならない事があります」
放課後、アイナ先輩に集められた俺達に先輩はいきなり、そう話を切り出した。
みんながいるから、ビリーバーの話はないな。正体がバレた素振りもないし。
デュエルフェスタが終わって数日、月が変な感じになっている間は憔悴しきっていたし。どこか探るような感じはなくなっていたな。
この間、ステイルを謝らせに行った時はおっかなびっくりしていたか。
俺のデッキの精霊がテラー化しているとは夢にも思うまい。
でも、元気なさそうな感じがあったな。
今は違うか。活力のオーラが半端ない。
「この2週間、私達の成績はどうだったでしょうか」
「・・・」
俺達は押し黙るしかなかった。
チーム、A.ギートが2部リーグで戦ったのは2回。
「2回、負けたな」
悟、それは全敗という。勝ち星は0である。
「私達は他のチームと比較しても弱いチームとは思えません。寧ろ、個々人の実力は2部リーグトップクラスと言っても過言ではないと思います」
「確かに。特にアイナ先輩と遊士は別格だ」
「翔太、先輩はともかく俺はそこまででもないぞ、この前の試合も負けたし」
【空牙団】はトッププロとやりあえる程の完成度ではない。
「いや、1対2で粘っていただろ。俺達ではもっと持たないぞ」
でもアイナ先輩だったら何とかなりそうなんだよな。【空牙団】自体、耐久力がなく多人数相手では分が悪いのもあるだろうが。
ちなみに先輩はこの2試合、デュエルをさせて貰えなかった。
2チームとも先輩を徹底的に回避する作戦だったのだ。
とても不完全燃焼だろう。
「本題に戻ります。私達に足りないのはフラッグデュエルの経験に練度、それからチームワークです」
具体的にどうすれば良いんだろうか。
アイナ先輩のコネで練習試合を申し込みまくるか。
「次の土日で合宿をします!」
そう来たか~。
瞳をキラキラ&メラメラさせているアイナ先輩を止める者は誰もいなかった。
―――――
合宿と聞いて、どこに行くかアイナ先輩のご自宅(おそらく大豪邸)かと、テンションが上がったが違うとのことだった。ソウ・ハンの双子メイドさん達に立ち回りを教えてもらうたら、ずいぶん助かるのだが。
先輩的には、家のみんなが喧し過ぎて合宿した気分じゃないらしい。
俺達は残念がった。
向かったのは山奥の神社。山道から石畳の高い階段が見えたことからその大きさが推し量れる。
多分、他の3人も『先輩、ガチだ・・・!』と思っている筈。
参道の階段前まで来たが、境内を見ようと頭を上げても入口が少し見える程度だった。
改めてこれから上る階段の高さにゲンナリする。
「友灯神社へようこそ。白砂様、チームA.ギートのご一行」
修験僧のようながっしりとした体格の男性。それに隠している決闘者としての圧。
俺はこの人に会ったことがある。
「よろしくお願いします。岩崎住職」
「岩崎文里さん!?チーム大地の会の元リーダーの・・・・!」
ぺこりとお辞儀をする先輩を余所に興奮したようにまくしたてる翔太。
この人はデュエルフェスタでハイテラーだった人だ。道理で見覚えがあるわけだ。
「昔の話です。立ち話は何ですから道場までご案内します」
随分穏やかになったな。あの時のように怒りを押し殺している感じがない。
どこか泰然としている感じだ。多分、あの時よりも今の方が強い気がする。
皆、お喋りしながら各々のペースで階段を上る。
アイナ先輩は岩崎住職と談笑しながら。悟たちは岩崎さんに会って興奮したとか往年のチーム大地の会の話をしていた。
『ふむ、こういった雰囲気悪くないな』
『うん、マンガで見た修行っぽい感じだね』
ザンブとステイルが念話してきた。
『お前ら人前で話しかけてくるな、気づかれるだろ』
『ちょっと離れているし大丈夫だよ』
『修行といえば、滝に打たれるとかだろうか。オレも強靭な外皮を獲得するために火山口に潜ったものだ』
『え、君そんなことやっていたの・・・。同じ精霊としてビックリだよ』
『お前ら、ホントに仲良くなったな』
しばらくは険悪で喧嘩を繰り返していた。
はっきり言ってテスト勉強の邪魔だったので、映像端末に入れていた漫画を自動スクロールモードにして放置した。
『このブリーフの男は主人公ではないのか?』『影を吸収して闇を晴らす、カッコイイ!』『遊士もやってみないか?』
仲良くはなったが、うるささはあんまり変わらなかった。
流石はこの国が誇る最高の文化の1つだ。
「ブリーフの男は濃すぎるモブだ!その主人公は後でもっとカッケェ能力になるから、ちょっと黙って見ていろ!」
『ネタバレしないでよー』『良いではないか。しばらく見てみようじゃないか』
そんなことをしていたら、境内の道場にたどり着いた。
悟達はクタクタになっていたが、アイナ先輩はどこ吹く風だった。
病弱設定はどこに消えたのだろうか。みんなが疲労困憊なのが幸いである。
―友灯神社・道場―
「《終焉の王デミス》の効果を発動!」「《スーパー・ウォー・ライオン》が・・・」
「フン、《剣の御巫ハレ》で《怒炎壊獣ドゴラン》を攻撃!」
「みんな、手を止めてくれ。客人だ」
パンパンと岩崎住職が手を叩くと、一瞬にして喧騒が止んだ。
道場の門下生たちが集まってきた。
「今日から2日間、道場体験をすることになったチームA.ギートの皆さんだ」
道場はアイナ先輩-白砂カンパニーの令嬢の登場に騒めきだつ。
「2日間という短い時間ですが、少しでも実力を伸ばすきっかけになればと思い修行に加わらせていただきます」
パチパチパチ
「修行は男女に分けて行おう。白砂様は加納、お願いできるか」
「了解しました、師範」
岩崎さんが声をかけたのは道着を纏ったツインテールの黒髪の女性。
切れ長の瞳のストイックそうな女性だ。先輩と同じくらいの年齢だろうか。
「まずは道着を取りに行こうか。男性陣は私に着いてきてくれ」
「わかりました」
「いよいよ修行が始まるって感じがするな」
「翔太、浮かれ過ぎだぞ」
それにしても加納って人、どこか不機嫌そうなんだよな。気のせいだろうか。
「遊士、早く行くぞ!」
「ああ」
―――――
「着替えは終わったかしら?それじゃあ行きましょう」
着替えを終えた私を待っていたのは
道すがら食堂や浴場等の場所へ案内していく。
「ここの道場は女性はあまりいらっしゃらないんですね。加納さんはいつからここに?」
「4歳の頃からよ」
「そんなにも前から」
男性に囲まれていても物怖じせず、毅然とした態度はカッコいい。
しかも彼女はこの道場で1・2を争う実力者だという。
「昔はもっと女性もいたの。でもみんな辞めていった。何故かわかるかしら」
「やはり、相当厳しいからなのでしょうか」
「正解です。お嬢様の貴女が付いていけるか、甚だ疑問を感じます」
「・・・」
「ここの修業は男女は関係ない。軽い気持ちでいるなら後悔することになりますよ」
「それはどうかしら。この2日、よく見ていてください」
「この2試合何もできなかった人がどこまでできるか見てあげますよ」
―――――
「もうそろそろ白砂先輩が来るな。きっと道着姿も様になっているだろうな」
「ふっ、こういうのもチームの特権だよな」
確かに。俺達だけじゃなく、道場の人達もソワソワしている。
「あ、そろそろ来・・・」
一陣の冷たい風が吹いていた。
アイナ先輩も、加納さんも剣呑とした表情だ。
一戦交えてきた後だったか・・・。
「みんな、何をぼさっとしているの!早く次の組み手に取り掛かりなさい!」
「「「「「「はい!!!!!!」」」」」
門下生達にそう命じた後にキッと此方を見据える。
「あなた達は山で走り込みです!まずは体力を見させていただきます!大山、宍戸一緒に来て!」
「「「「「「「「はい!!!!!!!!」」」」」」」
この言葉を皮切りに地獄の特訓が始まった。
高低差があり、視界が悪いランニングは中々キツかった。
先輩の話によると、実際のフラッグデュエルでも高低差がある場所を走ることが多いため、理にかなった練習らしい。
その後は疲労状態の中での石避け。珍しい課題だと高志が言っていたが、極限状態で周囲に注意を向けるこの課題は逆境でのデュエルに役立つからいい特訓だと伝えておいた。
良く知っているな、と加納さんを含めみんなびっくりしていた。
ちなみに昔やった事があるから知っていた、と言ったらみんな引いていた。
他にもいろいろ行って、最後に来た道を覚えているかと尋ねられ、道場までの道のりを思い出しながらのランニング。
しばらくは皆に任せていたが、道を外れていたので正しい道を教えた。
なんで、覚えているのよ!と加納さんが怒鳴っていたが、コレもやったことがあるからだ。
そんな感じで道場に戻ってきて、休憩。疲労困憊でメンバー全員が突っ伏していた。
ただし、アイナ先輩は座りこまないように頑張っていた。
手持ち無沙汰になったので加納さんに話しかける。
「加納さん、何か手伝うことはありますか。お茶を汲んだりとかしましょうか」
「貴方、なんでそんなに元気なの?それに訓練内容も全部知っているみたいだし、何者なの?」
「何者ってチームA.ギートのメンバーの1人ですよ。まぁ、昔住んでいたところで師匠に鍛えられたんですけど」
「師匠?」
師匠の名前を口にするが、知らない人らしい。
離れた都市の裏世界の人だから知らないのも当然だ。
「とにかく、その師匠は凄腕みたいね」
「そうですね。それと、加納さんの目から見てみんなはどうですか?ガッツがあると思うんですけど」
「男性3人は初めてにしては上出来ね。特に剛田君は我慢強いわね」
「ですよね。白砂先輩はいかがですか?」
「・・・悪くはないわね」
「先輩は滅茶苦茶、負けず嫌いで責任感がとても強い人です。例え命がかかったとしても、貫き通すでしょう」
「・・・」
「先輩は軽い気持ちでココに来たんじゃない事は知って欲しいです。俺達、チームA.ギートが最強のチームになるためにここにいるんです」
「よく分かりました。随分慕われているんですね、白砂さん」
「遊士君・・・」
しまった。大分注意散漫になっているな。
「貴方の言う通りです。私達は最強のチームになるためにココに来ています!」
突っ伏していた皆も集まってきた。
「ああ、先輩の言う通りだぜ。1部リーグに昇格して、打倒ユニティガーディアン!」
「ええ」
とか言いながら先輩の目はスンってなっていたのは見逃していない。
「っ」
こっちに目が合ったと思ったら、スイと加納さんの方に向いた。
「私達はいつでも準備はできています」
「そのようね。まずはお茶を汲んできて貰おうかしら」
―――――
私たちはお茶汲みをして一服した後、岩崎住職—師範がやってきて次の課題を言い渡した。
「一息付けたようですね。しかし、心身ともに疲労状態。この状況だからこその100人組手デュエルをしていただきます」
「「「「「「押忍!!!!!!」」」」」
門下生達は気合十分のようだ。
「へっ、良いじゃねぇか。それでこそ来た甲斐があるってもんだ!」
悟君たちもやる気十分だ。
遊士君をチラリと見やる。
遊士君がビリーバーだと知って、ある意味緊張してしまう。
「良いね、こういう類は久しぶりだ」
唇の端を歪め、静かに闘志を燃やしている。
そこに、どんな逆境でも戦い続けるビリーバーの背中を感じた。
「行きましょう、最初の相手をお願いします」
「では白砂さん、私がお相手しましょう。この【御巫】で」
~
「いきます、《大天使クリスティア》で攻撃!」
「《空牙団の英雄ラファール》でトドメだ!」
100人、相手はきつかったですが、勝率は9割程度ですか。
「先輩、流石ですね。俺は勝率80%位です」
遊士君は8割とはいえ、私と違って前半・後半通してパフォーマンスが全く落ちていない。
悟君たちは・・・。
「《オオヒメの御巫》で攻撃!反射ダメージは相手が受ける!」「マジかよーーー!」
「《マグネット・バルキリオン》で《風帝ライザー》を攻撃!」「うわぁぁああ!」
「《リトマスの死の剣士》でダイレクアタック!」「ぐぉおおお!」
「勝率4割・・・。みんな後半になる程負けているな」
「ええ、課題が1つ見えてきましたね」
みんな、極限状態ではパフォーマンスを保ち続けられない。
「みんなお疲れ様、昼飯の時間だ。昼食後はタッグデュエルをするから準備しておくように!では解散!」
「「「「「「はい!!!!!!」」」」」
~~~
昼食は精進料理。栄養の偏りもなく、バランスが良い。
「いやぁ、走り込みに100人デュエル。いきなり大変だったぜ」
「俺たちでは集中力が続かないな。それでもアイナ先輩と遊士はずっと勝ち続けていたな」
「2人とも流石だぜ。アイナ先輩はユニティガーディアンの面々に囲まれているから強さの理由はわかるんだけど。遊士は何でこんな強いんだ?」
遊士君の強さの根源、確かにそれは気になる。
「師匠がいるっておっしゃってましたね」
「そうですね。俺が今あるのは、師匠の教えもありますね」
「それだけではないって言っているように聞こえるぜ?」
「流石は悟だな。まぁ、そろそろ話してもいいか」
遊士君は意を決したように口を開く。
「俺、昔は地下デュエルで腕を磨いていたんだ」
「ちょっと待って、地下デュエルって何?」
「ん、この都市にはないのか地下デュエル?」
「ねぇよ」
私も聞いた事がない。
「表の世界のデュエルに刺激が足りなかった
「何だその地獄!」
「危険すぎるじゃない!」
「そうですよ。俺はそこで生きるしかなかったんです。俺は良い感じに適合できたのか、ランカーまで上り詰めましたけどね」
「・・・」
「結局、高校に上がる前に燃え尽きちゃって。決闘、封印していたんです。でも、みんなの熱気に中てられて復活できました」
「想像以上にヤベェ話が出てきたな」
「あー、でもアレも今思えば楽しかったし、結果オーライさ。それから、みんなも知っているかもなヤツも、地下デュエルのランカーだぜ。しかも3位」
「誰だよ、それ」
コイツ、と遊士君は情報端末からインターネット記事を出して見せる。
「
私もCM等で見たことがある。ふんわりとした雰囲気なのに彼女も地下デュエルのランカーなの。
信じられない。
「このほんわかお姉さんがランカーなのか?嘘言うなよ」
「外面に騙されんな。相当な猫かぶりだからな」
「公式プロフィールにはデュエルは、苦手と書いてあるが」
「本人曰く、決闘狂人としての血が抑えきれなくなるらしいぞ。つまらないデュエルなら全力で潰しにかかるし、強敵でも全力で潰しに行っちゃうからって言っていたな。とにかく、表ではカードは持たないんだって」
「人は見かけによらないなぁ、ちなみに遊士との対戦成績はどうだったんだ」
「総合勝率はアイツの方が上だけど、直接の対戦成績は俺の方が上だぞ」
「つまり、3位の人に勝ち越したって事か・・・。遊士の力の一端が分かったぜ」
「ちなみに、1位の人ってどんな人なんだ?」
「あー、”占い師“さんか。顔をヴェールを被って隠していたから、よく分かんねぇんだよな。使うデッキも毎回変わっていたし。まぁでも強さで言うなら、あのアマツ位の強さはあると思うぞ」
アマツ―光導副局長レベルですって・・・。
「あのクラスかよ・・・」
「そうか、だから遊士はアマツと相対しても一歩も引かなかったんだな」
「正志、その通りだよ。2人とも必要な状況に応じて最善のカードが舞い込んでくる。そういう想定で最善を崩す感じで戦っていたよ。でも、あの人には唯華とのタッグデュエルで奇跡的に1回だけ勝てたんだよなぁ」
遊士君はしみじみとそんなことを呟いた。
今、聞き捨てならないことが聞こえてきたんだけど。
「え・・・」
「ヤベ・・・」
「待て、遊士。アマツって棄権以外、公式戦無敗だろ!そんなレベルの相手に勝ったってマジかよ」
「エ、そうなの?やっぱりアマツの方が強かったと思う!」
ハクアとして見ても、マスターテラーを打倒できる唯一の人物。
雲の上の相手だったからこそ、寝耳に水。
「ちょっと待って!アマツ位の実力者に勝ったってどういう事!」
加納さんまでやってきた。
「唯華が防ぎ妨害して俺が攻める。なんちゃってクロックパーミッションがうまくいったんだよ。アレは奇跡の嚙み合わせだった。つうか加納さん、なんでこっちに来ているんですか!?」
「流石にビックリする言葉が聞こえてきたからよ。こんな化け物が、なんで2部リーグにいるのよ!」
「なるほど、そのような強者とは。ここは私も一手試合を申し込みたいところだな」
岩崎師範も!?
「もう時間ですよね!早くタッグデュエルしましょう!後、今日の事は絶対誰にも言わないでくださいね。裏の刺客とか来ますから!」
~
「今日もお疲れ様。泊まりの者達は夕飯と風呂の準備に取りかかってくれ」
組み手タッグデュエルも終わって、掃除、夕飯、就寝って感じで残りの時間はあっという間に過ぎた。
これだけのデュエルをやったのは久し振りだ。
アイナ先輩と岩崎師範のタッグが1番キツかった。トッププロ2人じゃないか。
みんな疲れすぎて、遊ぶ余裕もなく寝入った。
昔の事を話せて心が軽くなった気がする。
読んでいただき、ありがとうございます。
評価や感想を頂けると励みになります。
デュエルを入れたら長くなりすぎたので分割しました。