「なぁボス、今日の集会は何人来ると思う?」
「四人来ればいいほうだろ」
「だよなぁ〜全く、集まりの悪いヤツらだぜ」
ここは存在しないはずの東京24区。“プロテアの夜”の本拠地。たまに喰種捜査官がモグラ叩きとか言ってこの辺りまで来る事があるが、その時はしっかりと叩き潰して肉塊に変えている。
たまに独特過ぎる喰種が攻めてくる事もあるが正直そんなに強くない。
だから俺達にとっては、ここ24区は他とは比べ物にならない程過ごしやすく、それでいて憎き喰種捜査官共を殺せる最良の地になっている。
カツンカツンと靴音を響かせてとある建物の中に入ると、中には大きな円卓のテーブルとその周りに控える百人程の喰種達、そして円卓に座る三人の喰種。
どうやら今日はそれなりに来たらしい。いつもなら一人か二人ぐらいしか揃わない事に比べたら、十分な人数が集まっていると言えるだろう。しかし彼らはこっちを見向きもしない。一応俺がボスなんだけどなぁ。
俺達二人が座れば、空いている席は三つのみ。まぁ今回はそれなりに出席した方かな。
手を叩いて注目を集める。
「ハイハイ注目、会議始めるぞ〜」
そこでようやく席に座っていた喰種達がこちらを向く。全員マスクは付けておらず、素顔を晒している。
「やっほ〜ボス! 最近元気?」
「それなりだな、お前はどうだ? 『人形師』」
「最近は絶好調だよ! お人形も増えてきたしね〜」
早速話しかけてくるのは背中の部分を大きく開けたワンピースを着ている十三歳の少女。しかしこの天真爛漫な笑顔を浮かべる少女は鳩から『人形師』と呼ばれて恐れられている“レートS+”に認定される程のかなりの実力を持った喰種。名は
出会ったのは一年前、まだなんの力も持ってないただの弱小喰種だった頃、彼女は複数の喰種達の穢れた欲望の餌食になる寸前だった。そこにたまたま通りかかった俺がその喰種達の首をはねた。
助けたのは複数の赫子の匂いを感じ取り、これから化けるかもと思い、そばに置くことにしたのだ。
しかしリコは、たった数ヶ月の修行で赫子を使いこなし、さらには俺に対する憧れからか、俺の
「めぇぇぇぇぇぇしぃぃぃぃぃぃぃいいい!!!」
「騒ぐな『タンク』、うるせぇんだよ」
椅子からはみ出る程太った男、鳩からは『タンク』なんて呼ばれてる。レートは“A+〜”であり、赫子は甲赫を操る。
理性が飛んでいるから、名前は知らないが、それなりに強いからとても重宝している。
俺達の組織に入った経緯は、偶然24区に紛れ込んだところを俺達が保護して、それ以来指定の地点に投下して暴れさせる爆弾のような扱いをしている。それでも生き残っているのが、コイツのしぶとさを物語っているだろう。
「どうでもいいけどさぁ〜そろそろ大規模な作戦とかないの? 僕超暇なんだけど?」
「喜べ、今日はその話をしに来た。内容もお前好みだぞ『ベルセルク』」
「やったね!」
子供のような無邪気さで笑いながら、数本のナイフでジャグリングをして遊んでいる青年、鳩から、『ベルセルク』と呼ばれて恐れられている“SSレート”喰種。
誰よりも残虐であり、人を殺すことが誰よりも好きな男であり、『ハートレス』とかなり仲がいいらしい。
よく二人で、どれぐらいの拷問なら人間は死なないとか、ここを傷つけたらこういう反応をするとか、趣味の悪い会話を嬉々として話す“プロテアの夜”の二大イカレ喰種の一人。
他にも今日は来ていないが、
かなり濃いメンツが揃っている俺の組織だが、団結力はそれなりにある。どいつもこいつも人間を殺す事になんの躊躇もない正しき喰種達。人間を餌だとしっかり理解できている彼らは、積極的に人間を狩り、軟弱な喰種を喰らい、東京の闇を暗躍する。
俺達こそが東京の闇、喰種の見本。とはいえ別に喰種にも狩りが苦手なヤツがいることは知ってる。問題なのは人間を喰う事を嫌がり、自分はただの肉を食べていると、自己暗示をかけてる馬鹿共。
俺達は人間を食べなくちゃ生きてはいけない。それすら拒否するのは今まで鳩に殺されてきた全ての喰種に対する侮辱でしかない。
だから思い知らせてやるのだ。喰種の正しき姿を、喰種に生まれたという意味を。この世のほとんどの喰種が、喰種として生まれたことに思うところがある。いったいどれだけの喰種が、人間に生まれたかったと涙を流して死んでいったのか。
だからこの作戦は
「これから16区侵攻作戦について説明する! いいかよく聞けよ! 16区侵攻作戦だ!」
俺の言葉が建物の中を嫌に響く。それは静寂、ここにいる全ての喰種が徐々に俺の言葉を理解していく。そして一拍、────大歓声。
平和ボケした人間達に、死の鉄槌を下せるのだと、同胞達の仇を討てるのだと、遠くない未来、自分達が中心となって起こる殺戮に、今から猛っているのだ。
『人形師』も、『ベルセルク』も、『ハートレス』も特に叫ぶ事はしないが、双眸を爛々と、好戦的に輝かせている。『タンク』はいつも通り。
「作戦内容は追って伝える! 各々いつでも人間を殺せるように準備しておけ! “家畜小屋”と“食料庫”の肉はしばらくの間大解放だ! 好きなだけ食え!」
「「「「「ぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!」」」」」
「今日来てない幹部にも連絡しておけよ! “プロテアの夜”初めての総力戦だ!」
平穏な16区に破滅が迫る。
行き着く先に平穏はない。