まずは長い期間更新しなかったことへの謝罪を
そして更新を待っていてくれていた読者方々に感謝を
城の庭は今、決闘会場と化していた。
辺りには松明が焚かれ、宴を楽しんでいた者達がみんな勇者の戦いを楽しみにしている。
しかし、奴らの中で決着がどう付くかは既に周知の事実となっているのだ。
攻撃する手段の無い()俺と、槍の勇者である元康の戦い。
盾の勇者一行と槍の勇者一行の戦い……ではなく、俺と元康の一騎打ちになった。
さすがに元康自身のプライドが許さなかったらしく、一対一になった。
結果は誰だって想像くらい出来る。俺にもできる。
現にこの手のお約束である賭博行為をする声がまったく聞こえてこない。
まあ城に居るのが貴族が多いと言うのもあるけれど、波で戦った冒険者だって居るのだ。
普通であれば賭博が行われないはずが無い。
つまりみんな分かっていて尚、俺に敗北を要求している。
錬や樹も城のテラスからこちらを傍観して笑っている。
だが相手は俺だ。
どうせお前らは俺が負けると思っているのだろう?そして俺がラフタリアを失う瞬間を楽しみにしているんだろう?
ふざけるな
また、また俺にラフタリアを失えと?
また俺から、この俺からラフタリアを奪うのか?
どいつもこいつも勇者としての、人の上に立つことの重要さを理解していない。
そもあいつらの世界で盾が弱かったのはどうせステ振りで火力を上げようとしたからだろう?
誰もマゾプレイだの基地外プレイだのしようとしなかったのだろう?
その程度で勝てるとでも思ってるのか?ポ〇モンじゃないんだぞ?
どうやら灸をすえる必要があるな、一度常識を、奴らがいかに愚かな考えをしていたか解らせる必要があるな。
そもそもこうなった原因は今目の前で開始を今か今かと待つ元康が原因だ。
「決闘だ!」
「いきなり何言ってんだ、お前?」
ついに頭が沸いたか?
よくよく考えてみればゲーム脳の馬鹿だ。
助けるべき人を見捨て雑魚に突して勝ち誇るゴミだからな、元康は。
「聞いたぞ! お前と一緒に居るラフタリアちゃんは奴隷なんだってな!」
闘志を燃やして俺を指差しながら糾弾する。
「へ?」
当の本人はご馳走を皿に盛って美味しそうに食事中だ。
「だからどうした?」
「『だからどうした?』……だと? お前、本気で言ってんのか!」
「ああ」
奴隷を使って何が悪いというのだ。
俺と一緒に戦ってくれるような奴はいない。だから俺は奴隷を買って使役している。
そもそもこの国は奴隷制度を禁止していないはずだ。
それがどうしたというんだ?
「アイツは俺の所有物だ。それがどうした?」
「人は……人を隷属させるもんじゃない! まして俺達異世界人である勇者はそんな真似は許されないんだ!」
「何を今更……俺達の世界でも奴隷は居るだろうが」
元康の世界がどうかは知らない。けれど人類の歴史に奴隷が存在しないというのはありえない。
考え方を変えれば、社会人は会社の奴隷だ。
「許されない? お前の中ではそうなんだろうよ。お前の中ではな!」
そうだよ
「生憎ここは異世界だ。奴隷だって存在する。あるもの使って何が悪い、もしかしてあれか?エリクサー症候群でも患ったか?」
「き……さま!」
ギリッと元康は矛を構えて俺に向ける。
「勝負だ! 俺が勝ったらラフタリアちゃんを解放させろ!」
「残念だがそれは無理だ、ラフタリアはうちの子だし解放したところで俺は手放さん」
「黙れ!」
「なんだこいつ」
俺は元康を無視して立ち去ろうとする。何故なら勝負しても俺には得が無い。
「モトヤス殿の話は聞かせてもらった」
人込みがモーゼのように割れて王様が現れる。
「勇者ともあろう者が奴隷を使っているとは……噂でしか聞いていなかったが、モトヤス殿が不服と言うのならワシが命ずる。決闘せよ!」
「却下だ、そも決闘なんかしてみろ、こんなちんけな城じゃ一合ももたん」
王様は溜息をすると指を鳴らす。
どこからか兵士達がやってきて俺を取り囲んだ。
見ればラフタリアが兵士達に保護されている。
「ナオフミ様!」
「……何の真似だ?」
塵を見ればいかにもな顔で笑っている。
「この国でワシの言う事は絶対! 従わねば無理矢理にでも盾の勇者の奴隷を没収するまでだ」
「……チッ!」
奴隷に施してある呪いを解く方法とか、国の魔術師とかは知っていそうだ。
そんなことするまでもなく既に俺用の物に変えてあるから解呪できるかは知らんが。
書面上、戦わなければラフタリアは俺のもとを去らないといけなくなる。
ふざけるな、やっと現実で出会えた相棒だ。
こんなくだらないことで離れるわけにはいかない。
「勝負なんてする必要ありません! 私は――ふむぅ!」
ラフタリアが騒がないように口に布を巻かれて黙らされる。
「本人が主の肩を持たないと苦しむよう呪いを掛けられている可能性がある。奴隷の言う事は黙らさせてもらおう」
「……決闘には参加させられるんだよな」
「決闘の賞品を何故参加させねばならない?」
「そうか」
「では城の庭で決闘を開催する!」
ゴミ屑の一声で決闘の場所が決まった
こいつ……まじか……俺の攻撃力は高すぎるんだぞ……どう手加減すればいいんだ……!?
回想に浸っていると、俺と元康の間に審判が入る。
「では、これより槍の勇者と盾の勇者の決闘を開始する! 勝敗の有無はトドメを刺す寸前まで追い詰めるか、敗北を認めること」
手首が外れることなく上手く回るか試し、弾けないよう指を鳴らしつつ、俺は構える。
「矛と盾が戦ったらどっちが勝つか、なんて話があるが……今回は余裕だな」
元康に至っては鼻に掛けた態度で俺を蔑むように睨んでいる。
「では――」
元康、戦いは相手を倒すことだけじゃないことを教えてやる。
矛盾とは最強の矛と盾を売ろうとした商人にどっちが最強なんだと聞いた回りの連中から話が始まる。辻褄が合わない事を指す言葉だ。
だけど、この矛盾という言葉自体が、矛盾であると俺は思っている。
そもそも、何を持って勝負が決まるというのか。
W.A.S.Dと壺男で勝負するようなものだぞ。
だが、それでも勝負するなら持ち手はどうだ?
矛の目的は相手を殺す武器。
盾の目的は持ち手を守る防具。
ここまで視線を広げると、最強の矛から持ち手を守った盾の勝利、であるという考えもある。
根本的に目的が違うのだ。矛と盾では。
「勝負!」
「うおおおおおおおおおおおおお!」
開始とともに元康は俺のもとに一直線に走ってくる。
しかし、おっそい……。
え?まだそこなの?俺なら秒もかかんないぞ?
槍を構えながら走り寄る元康に向け、俺はテレフォンパンチの構えをし、そのまま虚空を殴りつけた。
「ショットガンナッコォ*1‼」
「は?ぐあぁ!?」
虚空を殴りつけた俺の右拳は粉々に砕け散り青白い弾丸と化して元康の全身を殴りつけた。
「てめぇ!何しやがった!いやほんとに何しやがった!?」
「ショットガンナックル、俺の世界で盾の勇者がまだ雑魚として認識されてた頃にあるマゾゲーマーがバグを利用して生み出した技だ」
「なんだそれ!?」
「さぁ、どうする?俺にはまだ左手と右足と左足があるぞ?しかも足の場合DPSは約3倍だ。」
「ただの自殺技じゃねぇか!」
そうだよ!もう使わんけどな!
「くそっ!だが弾丸ということは直線にしか飛ばないはず……なら!」
そうつぶやいた元康は今度は段丘付けながら不規則に動きながら近づいてくる。
何もせずに傍観していると何を思ったのか元康はにやりと笑いながら、槍を突き出してきた。
「おっと——!?」
元康の突きだした槍を危なげなく避けようとしたとき、左足の膝裏に、軽い衝撃が襲い体勢を崩した。
辺りを見渡すと、元康のパーティの一人がこちらに手ををかざしていたのだ。
おそらく、風の魔法だ。
確か、ウイングブロウという拳大の空気の塊を当てる魔法。
空気の塊故に見た目は透明。良く見なければ視えない。
そいつはしてやったりという笑顔を浮かべているが、それじゃあまだまだだ。
「そこだあああ!!」
「……何度も言うが」
体勢を崩した俺に元康が槍を振り下ろしてくる、が。
俺は体勢を崩したままその槍の穂先を握りしめた。
「遅いし、弱い」
「……は?」
呆ける元康を無視して俺はそのまま体勢を戻しながら続ける。
「そもそも、お前らは勘違いをしている、元康の攻撃力じゃ俺に傷をつけることはできないし、あまり知られてないが盾役のスキルの一つに防御力の何割かを攻撃力に変えるスキルがある」
「このっ!離せ!」
「聞いちゃいねぇ……」
しかしどうしたものか、このまま殴ってもいいがそれではつまらない、はっきり言ってこっちの勝ち確だったからあそこまでキレる必要もなかったのに、やっぱラフタリア好きすぎだな俺。
……あ、あれがあったか。
俺はおもむろに何もないところを力強く掴み、元康に振り下ろした。
「いってぇ!?」
「ククク、痛かろう?『無』の攻撃は?」
「は?は!?」
「何を言っているのかわからないようだな、安心しろ俺もだ。」
まさかほんとにできるとは思わなかった。
その後も元康は必死に攻撃してきたがその全てが意味をなさず、ただ一方的にダメージを受け続け。
「はぁ……はぁ……」
「そろそろ、限界か?」
「はぁ…まだだ!」
「言っておくが何しても無駄だぞ?諦めないのは感心だが、それで実力が埋まるわけでもないんだ、だから」
そこで言葉を区切り、少しのための後弓を引き絞るように左腕を引き、続ける。
「その諦めの悪さを称賛し、少しだけ、そうだな……10%位の力を見せてやる。」
そういって、動くこともままならない元康に向けてスキルを発動させる。
「『シールドバッシュ』!」
勢いよく放たれた一撃は元康を吹き飛ばし、轟音と共に城の壁の向こうへ吹き飛ばした。
死んでなければいいが、まぁこれであいつ等も少しはおとなしくなるだろう。
大人しくならなかったらもう少しやればいいだけだし。
……それはそうと元康の奴死んでないよな?
まぁいいか、さて俺が勝ったんだしラフタリア呼んで帰るか。
「帰るぞラフタリア!」
「はい!」
試合目とは別の意味で静かになった広場から俺たちは家に帰った。