盾の勇者が廃人   作:宵影

11 / 12
ネタは沢山(脳内に)あるんだ!連投だ連投!


廃人式卵ガチャ

前回と同じく、10時ごろに俺達は謁見の間に通された。

たく、配るのが翌日だったのならさっさと言えば良いものを……この生ごみは俺への嫌がらせに国でも掛けているのかってんだ。

ただでさえ顔を合わせるのも気まずい奴等と一緒に居るんだ。顔に穴が空いたらどうするんだ。

 

「では今回の波までに対する報奨金と援助金を渡すとしよう」

 

 報奨金?

 ツカツカと金袋を持った側近が現れる。

 

「ではそれぞれの勇者達に」

 

金袋の方に視線が向う。

確か、月々の援助金は最低でも銀貨500枚は確定しているはず。

既に使いきれないほどの金を持つ俺ならともかく他の勇者は大変だな。

 

「やりましたね」

 

ラフタリアが俺に向って微笑む。

 

「そうだな()」

 

今回の金をどう使うか。

とりあえずラフタリアの防具あたりが妥当か? それとも、この際だから良い素材を買って自分で作るという選択もある。

ああ、でもそろそろ薬の調合で使う材料の新調もしたい所だしなぁ。材料は普通に痛むから、定期的に集めるか買うかしないと。

ジャラジャラと金袋の音に、何を買うかの夢が広がる。

俺は金袋を手渡され、中身を確認した。

ひーふーみー……うん。500枚ある。

前回みたいに乱数調整しなかったからこれは固定だな。

 

「モトヤス殿には活躍と依頼達成による期待にあわせて銀貨4000枚渡しておくとして」

 

ん?

文句を言ったらそれこそ、何倍もの嫌味を言われそうだから黙っているが。

お?なんだ?また俺だけのけ者でクエストでもあったか?

 

「次にレン殿、やはり波に対する活躍と我が依頼を達成してくれた報酬をプラスして銀貨3800枚」

 

お?

クールを装っているが、元康に負けているのが悔しいような顔つきで錬が金袋を持っている。

しかも小声で「なぜ昨日無様にやられたやつより……」と呟いている

 

「そしてイツキ殿……貴殿の活躍は国に響いている。よくあの困難な仕事を達成してくれた。銀貨3800枚だ」

 

樹に至ってはこの辺りが妥当でしょうと呟きつつ、やや死んだ目をしているのがわかる。

やっぱクエストか。

 

「ふん、盾にはもう少し頑張ってもらわねばならんな。援助金だけだ」

 

誰が盾だ。俺だ。

嫌われているのは知っていたがここまでとは。

いやしかし昨日あんだけ我侭をほざいたお前が言うのか。

 

「あの、王様」

 

ラフタリアが手を上げる。

 

「なんだ? 亜人」

「……その、依頼とはなんですか?」

 

ラフタリアも察しているのだろう。報酬が少ないのは目を瞑って、別の所から尋ねる。

 

「我が国で起こった問題を勇者殿に解決してもらっているのだ」

「……何故、ナオフミ様は依頼を受けていないのですか? 初耳なのですが」

「フッ! 盾に何ができる」

 

一撃で国を5個灰にできます。

 

謁見の間が失笑に包まれる。

ああ、一回暴れて身の程解らせようかな?。

と思ったらラフタリアの方から拳を握り締める音が聞こえて来た。

見ると怒りを押し殺していて震えている。

……ㇶェ。

 

「援助金を渡すだけありがたいと思え!」

「ま、全然活躍しなかったもんな」

「そうですね。波では見掛けませんでしたが何をしていたのですか?」

「足手まといになるなんて勇者の風上に置けない奴だ」

 

お前らが気絶してる間に国灰にできるやつと戦って地形変えてたよ!

 

「民間人を見殺しにしてボスだけと戦っていれば、そりゃあ大活躍だろうさ。」

「ハッ! そんなのは騎士団に任せておけば良いんだよ」

「その騎士団がノロマだから問題なんだろ。あのままだったら何人の死人が出たことやら……ボスにしか目が行っていない奴にはそれが分からなかったんだな」

 

元康、錬、樹が騎士団の団長の方を向く。

団長の奴、忌々しそうに頷いていた。

 

「だが、勇者に波の根源を対処してもらわねば被害が増大するのも事実、うぬぼれるな!」

 

あれお前生きてたの!?

だがいい感じに忘れているようだ、都合がいいな!

 

「まぁ報酬も受け取ったし、俺達はいろいろと忙しいんでね。金さえ貰ったらここには用がないんで行かせてもらうぞ」

 

まぁここですることもないしこの位で立ち去るのが妥当だろう。

 

「まて、盾」

 

誰が盾だ。

 

「なんだ。俺は貴様と違って暇じゃないんだ」

「お前は期待はずれもいい所だ。それが手切れ金だと思え」

 

つまり、これから波の後の報酬として援助金は無い! という事を言いたいのだろう。

まぁこんな「それは良かったですね、ナオフミ様」……え?

 

満面の笑みでラフタリアが答える。

 

「……え?」

「もう、こんな無駄な場所へ来る必要がなくなりました。無意味な時間の浪費に情熱を注ぐよりも、もっと必要な事に貴重な時間を割きましょう」

「あ……ああ」

 

なんかラフタリアが頼りになってきている気がする。

ギュッと手を握られると顔に血が集まっていくのを感じた。

 

「では王様、私達はおいとまさせていただきますね」

 

と軽やかな歩調で俺をリードし、俺達は城を後にする。

 

 


 

ラフタリアに引っ張られるままにいると、見覚えのあるテントに連れてこられた。

 

「これはこれは尚文様。今日はどのような用事で?」

 

テントに顔を出すとあの紳士の奴隷商がもったいぶった礼儀の掛かるポーズで俺達を出迎える。

 

「おや?」

 

奴隷商はラフタリアをマジマジと見つめて関心したように声を漏らす。

 

「驚きの変化ですな。まさかこんなにも美しく育つとは」

 

そう言いながら俺の方を何かガックリ来るように肩を落とす。

 

「……なんだよ」

「もっと私共のような方かと思っていたのですが期待はずれでしたな」

 

残念ながら格が違うんだよ!

 

「ただ痛めつけるだけでなく時々飴を与え、徐々に品質を上げるのが良い奴隷使いだと、俺は聞いている」

 

やや声を低めにして答える

 

「だが、お前の言う奴隷は使い捨てなのだろうな?」

「な、ナオフミ様?」

 

ラフタリアが上目使いで心配そうにこちらを見上げた。

自分でもちょっと調子に乗っていると自覚はある。

なんというのか以前より少し余裕ができた。

 

「……ふふふ。そうでしたか、私ゾクゾクしてきましたよ」

 

紳士は、俺の答えが気に入ったのかこれでもかと笑みを浮かべる。

……っとあれは?

 

「あれはなんだ?」

 

一応紳士に尋ねる。

 

「ああ、あれは私共の表の商売道具ですな」

「お前等の表の仕事ってなんだよ」

「魔物商ですよ」

 

なんかテンション高めに答えられた。

ふむ。

 

「じゃああれはなんだ?」

 

「銀貨100枚で一回挑戦、魔物の卵くじですよ!」

「100枚とはなかなか」

 

俺達の所持金(貯蓄抜き)は銀貨508枚、かなりの大金だ。

 

「高価な魔物ですゆえ」

「一応参考に聞くが、フィロリアルはお前の所じゃ平均幾らだ?」

「……成体で大体200枚からですかね。羽毛や品種などで左右されます。ハイ」

「成体という事はヒナはもっと安いのか。更に卵の値段だけで、育成費は除外……これは得なのか?」

「いえいえ、あそこにあるのは他の卵も一緒でございます」

「なるほど……くじだからな」

 

ハズレもあれば当たりもあると言う奴か。

ハズレを引けば目も当てられない。当たりを引けば元より高め。

 

「で、あの中には当たりが無いって所か」

「なんと! 私達がそんな非道な商売をしていると勇者様は御思いで!?」

「え?」

「私、商売にはプライドを持っております。虚言でお客様を騙すのは好きでありますが、売るものを詐称するのは嫌でございます」

「なかなかいい性格してんな……」

 

廃人になったらきっと上位には食い込むタイプだ。

 

「よし、じゃあ一個買おう」

「ありがとうございます!」

 

ゲーム時代と同じ位置にある、右側にある一個を選び、取り出す。

 

「では、その卵の記されている印に血を落としてくださいませ」

 

言われるまま、卵に塗られている紋様に血を塗る。

カッと赤く輝き、俺の視界に魔物使役のアイコンが現れる。

奴隷と同じく禁止事項を設定できるようだ。

 

まぁ万が一抵抗されても被害ないし特に禁止しなくていいかな?

 

 

「もしも孵化しなかったら違約金とかを請求しに来るからな」

「ハズレを掴まされたとしてもタダでは転ばない尚文様に脱帽です!」

 

奴隷商の機嫌も最高潮に達している。まったく、潜在的な被虐願望でもあるんじゃないかコイツ?

 

「口約束でも、本当に来るからな。白を切ったら乱暴なうちの子が暴れだすぞ」

「私に何をさせるつもりですか!?」

「心得ておりますとも!」

 

紳士すっげー機嫌が良い。

 

「明日ごろには孵るな?」

 

「勇者様のご来場、何時でもお待ちしております」

 

こうして俺達は卵を持って、テントを後にするのだった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。