不健康やな。
それはともかく22話、いっくよぉ!
五月四日、GW二日目に入った。
「10時には蘭達が来るから、地下室の掃除と昼食も用意しないとな」
今の時刻は7時。これから地下室の掃除、その後に24時間営業のスーパーで買い物してから準備しないと間に合わんな。
「来たら蘭に文句言わないとな、それと…」
合鍵を渡してやるか、いつでも入れるようにな。
「さ、掃除掃除」
俺は地下室の部屋の掃除を始めた。
ーー
掃除も買い物も済ませ、調理の下ごしらえをしていると。
ピンポーン
チャイムが鳴った。時計を見ると10時前だったから蘭達が来たのかな、と思い玄関に向かった。
「しーくん来たよ~~」
モカが来た、後ろに巴、ひまり、つぐみもいた。
「お~いらっしゃい。って蘭はどうした?」
蘭だけいなかった、どうしたんだろう?
「蘭は家の用事があって少し遅れるってさ、本人から聞いてないのか?」
「いいや全く」
なんせ昨日夜10時に来るって連絡きたくらいだしな。
「変だね、なんだかいつもの蘭らしくないよ」
「うん…蘭ちゃん何かあったのかな?」
ひまりとつぐみが考え込んだ。
「考えても仕方ないわな、さ上がって上がって」
「「「「お邪魔しまーす」」」」
「で、どうするんだ?俺は昼飯準備してるとこだが、練習するのか?」
リビングに四人いて俺はキッチンにいるのだが。
「蘭来るまで待とうよ」
「そうだな、アタシもそれがいい」
「蘭ちゃんいないと全体で合わせられないから、待ったほうがいいよね」
「Zzz……すぴー」
「結論は出たようだな、てかモカは人の家に来てすぐに寝るなよ…」
モカはソファーの上で寝てやがる、全く!
「あはは…モカちゃん気持ちよさそう」
「ひまり、これをモカに被せといてくれ」
毛布を持ってきた、風邪引かれても困るからな。
「志吹くんがやったらどうかな?」
仮にも男なんだがな、こいつらは…
「わかったよ」
俺はそっとモカの上に毛布を掛けた。
「モカちゃんいいなぁ……」
「何か言ったかつぐみ?」
「えっ!?な、なんでもないよ!!」
つぐみは顔を赤くして手を振っているが、その横にいるひまりと巴はニヤニヤしていた。
「つぐも寝たらどうだ~?」
「そうすればつぐも毛布を掛けてもらえるよ?」
「し、しないよぉ!もぉ…二人とも何を言ってるの!?」
そんなやり取りを見ながら俺は調理をしに戻りつつ。
「そういや志吹、舞衣は居ないのか?」
「あれ、言わなかったっけ?舞衣は昨日から実家に帰ってるよ」
「志吹くんも一緒に帰らなかったの?」
「あー……俺は帰る意味はないからな」
あんなとこに二度と帰るか!ましてや詩音には会いたくない。
「そうだったな、悪ぃな志吹」
「気にすんな巴、それよりもまた電子ドラム持ってきたのか」
「まあな、志吹の家にドラムセットあれば最高なんだけどな。志吹もドラムをやったらどうだ?」
「あるわけねーだろ!それにバンドには興味はないし、やりたくもない。俺は笛と太鼓だけでいい」
「太鼓の経験あるのか志吹!?」
「ああ、あるよ。太鼓もお手のものだ」
「だったら志吹、アタシと一緒に祭りの太鼓叩かないか?といってもまだ先の話だけどな」
「構わないが、いいのか?」
「勿論さ!最近太鼓を叩く若いのがいないって町会長が嘆いていたからさ」
「巴ちゃんは太鼓すごい上手だから」
「そうそう!巴の太鼓を叩く姿はとてもカッコいいからね、志吹くんも一度見たほうがいいよ」
「なんだよつぐ、ひまり…照れるじゃんか」
お、巴が珍しく照れてるな。これはチャンスだ。
「だったら巴の実力を見てみたいから、今度太○の達人を一緒にやらないか?」
「言うねえ志吹…いいぜ!アタシと勝負だ!」
「おう、負けねえぞ」
巴との太鼓の勝負を取り付けたのはいいが、巴が何かを思い出したかのような表情をして。
「そういや思い出した、昨日あこが言ってたな。駅近くのゲームセンターでカッコよくて女みたいな男が難度おにの太○の達人をフルコンしたとかでギャラリーが多く出来てたって」
ガラン!
俺は手に持っていたボウルを落としてしまった。中身は入ってないから大事には至ってはないが。
「し、志吹くんどうしたの!?」
「………なんでもないよつぐみ」
「なあ志吹、まさかとは思うけどさ…その女性みたいな男って」
「間違いなく俺だと思う。てかあこちゃんのお姉ちゃんって巴の事だったのか。名前聞かなかったから全然気づかなかった」
「やっぱり志吹の事だったか。あこの言う通り女らしいしな!」
「……巴に言われると凄く傷つくんだが。しかも二度目だろ、これ」
羽丘神社の時もまさしくお前が言うな!と言いたかったな。
「というかあこと会ったんだな」
「ゲーセン出たら声をかけられてな、女だと思ったから。もう制服で行ってやる。私服だと本気で間違えられる」
「髪切ればいいんじゃないかな?志吹くんってどうして髪伸ばしてるの?」
「それはだなひまり。神職は男でも長くないといけない決まりがあるんだよ。宗派によって違いがあるが俺のところは髪は最低50センチはないといけないらしい」
「へえ~そうなんだぁ」
髪の長さはどうにもならん。きっと切ったら俺は加護を受けられなくて死んでしまうだろう。そんな事言ったらまた心配されるし黙っておくか。
「モカやつぐみが羨ましいよ、短いのは好みだしな」
「え……っ?えええっ!?」
「おやおや志吹くん~?それは二人の事をそう思ってるのかな~~?」
「志吹、お前はとんでもない女たらしだな」
「あー、俺の髪型の事だから。決して、断じて違うからな?」
どう考えたらそう聞こえるのかなこいつらは…
「あぅ…はぅ!」
「……」
つぐみは顔真っ赤にしてうずくまってるし、モカはまだ寝て…
「おいモカ、起きてるんだろ?狸寝入りはバレてるからな」
「「「えっ?」」」
するとモカが起き上がった。
「うにゅ~~、バレでましたか~」
「モ、モカちゃん!?いつから起きてたの?」
「まーちゃんが実家に帰った辺りかな~」
「ほぼ全部じゃねーか!」
こいつ、最初から狸寝入りだろ。
「そうだしーくん、気になってたんだけど~」
「何だモカ?」
「まーちゃんって羽丘に来なかったよね?」
「それな!舞衣は羽丘だと思ってたんだが、花咲川のほうだったよ。俺はあの時に思わず笑っちまったよ」
「そこ笑うところかな?」
「ひまりちゃんの言う通り笑い事じゃないよ。舞衣ちゃん一人できっと不安だと思うよ」
「いやつぐみ、花咲にも知り合いがいるし問題はなかったらしい。あんな性格だけど友達出来まくったとかな」
唯我独尊、暴走特急は鳴りを潜め過ぎだなぁ。まさか問題起こしたら連れ戻されるんかな?ま、俺には関係ないわな。
ピンポーン!
チャイムが鳴った。
「ごめんみんな、遅れて」
蘭が30分遅れてやって来た。何か用事でもあったのかな?
「蘭ちゃん大丈夫だよ」
「ああ、問題ないぞ。アタシは志吹と大変有意義な約束を取り付けたしな!」
「…何の約束?気になるんだけど」
「た、太鼓だよ太鼓、志吹も経験あるからさ。深い意味はないからな!だからそう睨むなよ蘭」
「バカ巴……」
ひまりに馬鹿って言われたぞ巴?
「ふーん?まあいいよ。じゃ、バンド練習しにいくよ」
蘭は上がってすぐさま地下室に降りていった。
「蘭、なんか機嫌悪い~?」
「なんかそうみたいだな」
「へぇ、わかるんだな。俺にはサッパリわからんかったわ」
「伊達に幼馴染やってないからね。こんな事は何回かあるよ」
「でも、久しぶりだったかな?こんな蘭ちゃんは」
「確かになー、っと…早くアタシ達もいかなきゃな」
「おー」
四人も蘭の後に続いて地下室に降りていった。
「台風なやつらだな。いや、蘭が台風か。……合鍵は後で渡すか」
ーー
「もうそろそろかな?」
時刻は12時20分、羽丘の四時限目の終了時間だ。
だから俺もそれに合わせていたけど。
「来ないな。熱中しすぎてるんかな?」
そう思っていたら地下室からみんなやってきた。
「おっ、ナイスタイミング。みんなお疲れ、昼飯できてるぞー」
「志吹くん、もう用意してあるんだね」
「大体四時限目終了辺りに来るだろうと予測してな。見事にドンピシャだ」
「丁度キリのいいタイミングなだけなんだけどなー」
「巴、全然キリがよくないよ。ぶっ通しでやってても意味ないだけだから」
「二時間も休まずに練習してたのか、すげえな」
「それくらいあたし達なら余裕だよ」
「いやいや蘭、余裕じゃないし。モカを見てよ」
モカに視線をやると。
「もうお腹と背中がくっつきそうだよ~」
「うお、こりゃモカはバテてるな。やはり空腹には勝てんか」
バテ気味のモカをなんとかソファーまで連れていき、みんなで昼食にした。ちなみにメニューはチキンライスと謎肉スープ、そしてプリン。(蘭にはわからないようにグリンピースを混ぜていた。バレなかったが嫌そうにもしてなかったからこれは効果なかったかな?)
蘭たちは食べ終わるとすぐに練習を再開しにいった。五人分の飲料水を渡していったが大丈夫だろうか?そして俺は夕食も作るから買い物をしに家を出ていった。もちろんみんなには言ってある。
「さて、花咲のほうへいくか。時間もあるし」
俺はいつもの道ではない方向へ歩いていった。
▼▼▼▼▼▼▼
「つぐみ、今のところをもう少しテンポあげて」
「う、うん」
「モカとひまりは逆に下げて」
「「はーい」」
「巴は途中からテンポにバラつきが多いよ」
「あーバレてたか…どうも電子ドラムだとなぁ。やっぱ本物のドラムじゃないといつものテンポにするには難しいんだよ。こればっかりはアタシがなんとかするしかないよな」
「バイトして買うしか、ないよね」
「そうだよな、どこかバイトすっかな」
「ともちんがバイトねぇ~」
モカはパン代の為にコンビニでバイトしてるんだっけな。
「……一度休憩にしよう。あたしは外に行ってくる」
蘭は地下部屋から出ていった。
「何かいつも通りの蘭に戻ってるね」
「だな、朝のは杞憂だったかもな」
「モカちゃんもお外の空気吸ってくる~」
モカも出ていった。
「モカまで行っちゃった」
「二人ともお手洗いじゃないかな?」
「二人してか?そりゃ傑作だな」
「「あっははは!」」
巴とひまりは大笑いした。
ーー
地下室から出たあたしはしーくんの部屋に突撃します。彼の部屋に入るのは初めてだし、今出掛けてるからこれはチャンスだと思ったのだ。そして部屋の前に来るとドアが開きっぱなしになってるね、これはしーくん閉め忘れたのかな~?
「えっ…?」
開いてる隙間から部屋を覗くと。
「なに、これ…?」
部屋の壁には紋みたいなのが書かれてて、床にも同じような模様が書いてある。天井は全く書かれてないけど、これではまるで…
「精霊ババンボ様……?」
ある部族が風邪とかを悪魔の呪いと考えていて、それを精霊ババンボ様に祈りを捧げて治すらしいよ。
「しーくんはそこ出身だったのかな~?後で聞いていこ~」
モカは見なかった事にして部屋のドアを閉めた。
「さーて、蘭はどこにいるかな~?」
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橋を渡ってから住宅街を歩いていたら…
ー 質屋 流星堂 ー
と書かれた一般的な一軒家とは違う、屋敷みたいな家があった。
「ちょっと入ってみるか、時間はまだ余裕あるし」
時刻はまだ午後1時、寄り道しても全然平気だ。俺はそこの門を入って正面の建物に向かった。右にも建物があったが、扉が閉まっていたので気にもとめなかった。
「いらっしゃい。おや?若い子が来るとは珍しいね」
正面の建物に入ると、一つの部屋にアンティークと言っていいのかわからないが、沢山のショーケースにそれは入っていた。そしてここの主なのかは知らないが白髪のお婆さんが立っていた。
「すみません、ここって何か売っていますのですよね?」
「ええ、ここは色々な場所から取り寄せた珍しい物を集めて売っています。お客さんに何か気に入ったのがありましたらお売りしますよ?」
つまり、アンティークショップみたいなものだな、だったら俺の呪いが解ける物とかないかな?
そんな都合のいいのは流石にないよなぁ。
「…………む、これも違うか」
色々見たが、どれも違うな。こんなのに頼るなって証なんかな?
「すみません、求めているのはなかったみたいです」
「あら、そうなんですか。しばらくしたらまた商品が変わりますからその時にまたいらしてください」
「そうしますね、では失礼します」
俺は流星堂を出て門の前まで来ると…
「きゃっ!」
「わっ!」
人とぶつかってしまった。赤いケースを背負っていた人はそのまま倒れそうになったので。
「ほっ、と…大丈夫ですか?」
うまく腰に手を当てて支えたから倒れずにすんだ。
「あ…はい、大丈夫です!」
あ、女の子だったのか。それにしてもその髪型、猫耳?
「おっとすみません、すぐ離しますね」
俺は直ぐ様その人の腰に当てていた手を離す。なんか遠くからみてると抱きついてるみたいに見えてしまう。
「あ、ありがとうございます!助かりました!」
その猫耳少女は俺にお礼を言ってきた、なんか本当に猫みたいだな。
「香澄ちゃん、速いよ~~」
「あっ!りみりんー、ごめん先に着いちゃった、えへへ」
この猫耳少女は香澄と言うのか…てかりみりん!?
「りみじゃないか」
「え…志吹君、なの?」
「え?え?りみりん、この人と知り合いなの?」
なんだろう、りみといい香澄って子といい、何かケース持ってるんだけどまさかそれ、ギターケースじゃないだろうな?
「えっとね、香澄ちゃん。この人は私と同じ中学で…」
りみから俺の事を説明してくれた。そして香澄という猫耳少女は戸山香澄。
入学したての頃に出来た友達って言ってたな。
「そっか、りみが言ってた戸山さんはこの人の事だったんだな」
「うん!香澄ちゃんには感謝しかないんよ」
おい関西弁出てるゾ。黙っておくが。
「そ、そうかな?だったら嬉しいな。それと神子くん、私の事は名前でいいよ」
「だったら俺も名前で呼んでくれるかな、香澄?」
「志吹くん!これからもよろしくね!」
「おう!こちらこそりみの事頼むな!」
俺と香澄、二人は拳を合わせた。まだまだ今日は終わりそうにないな。
ついに香澄まで登場させてしまった。
一応全員出すつもりで頑張りますので!
感想でも指摘でもメッセージにて送ってもらっても構いませんので、なんでもごされですので、どうぞ