理由はちゃんとありますが、それはまだ言えませんので悪しからず。
さてと、31話を始めまするね。
「しばらくここで勉強させてほしいの」
朝食中に舞衣が口を開いた、てかご飯粒を飛ばすな!行儀悪すぎだぞ。
六月になり少し暑さが出てきた。向こうは山も多かったからそれなりに涼しかったけど、東京はどうなんだろうな?
そして舞衣からお願いされた。確か舞衣は中学時代それなりに成績は良かった筈だけど?
「今住んでるとこでやれないのか?それに舞衣、お前は中学の全国模試は上位だったよな?」
「そうだけど…今いるところはとてもじゃないけど落ち着いて勉強なんて出来ないのよ!それに…色々あって」
箸を握りしめながら訴えるように舞衣は言った、が。
「色々?」
なんだろう?
「志吹には関係ない事だから気にしないで!」
ピシャリと言い切られた。気になるけど追求はしなかった、どうせ話してはくれないだろうし。
「まあ勉強くらいは向こうも大目に見てくれるだろ?」
「そうね‥こればっかりは仕方ないものね」
お互い納得すれば問題なし、か…
「それより昨日のあれは知ってるわよね?アイドルバンドのライブ…いえ、あれは」
「言うな、俺はその場にいたからな」
そう、昨日のあれはなんとも言えなかった。
蘭達の出たガルジャムの翌日の日曜日に、俺は日菜の初ライブ…もといPastel*Palettesの初ライブを見に行く(行かされたとも言う)事になったのだが。
「千聖さんやイヴまでいる…ん?あれは、丸山さん‥なのか?」
ライブ会場の規模はそれなりだけど丸山さんの格好がいつもと違いすぎる、ステージ衣装も髪型までも前に見た時よりも想像つかないくらいにな。
「女子って衣装と髪型変えるだけでもこんなに違うんだな」
そしてドラムには知らない人だな。つぐみみたいに茶色のショートヘアーは誰だろうな?
スベった話?MCってのが終わると演奏が始まったが‥
「…………?」
誰も演奏をしてない。いや、音は出てるけどそれは彼女達からではないのは一目瞭然だ。回りの人達は気づいてなさそうだが、俺にはわかる。
丸山さんは、なんか辛そうだな。ボーカルはフリでとてもキツいだろう。
「バレたら大問題だよなこれ?ドッキリであればまだ笑える話ではあるが…」
そう思っていたら突然音が止まった。彼女達も止まった。会場の人達は動揺している、音が出てないだの何だので…
そりゃ気づくか、千聖さんが機材トラブルと言ってはいるが観客はそうは思ってはないだろうな。これはヤバいぞ?
「てな事があったからな、何したかったのか俺にはわからん」
SNSでPastel*PalettesのHPは大炎上だったらしい。日菜達は大丈夫なんかな?
「正直わたしはガッカリした…かな。先輩達がエアバンドだなんてね」
珍しいな、舞衣がしょげているなんてな。
「何だ舞衣、パスパレのファンだったのか?」
「そうではないけど…どことなくわたしと似てるなと勝手に共感したから。本当にどことなく、ね」
どこに舞衣との共感があるのやら?俺にはわからん。
「この話はもうおしまい、というか志吹は早く食べないと遅刻するよ?」
「やべ」
俺はまだ一口も朝食に手をつけてなかった、一気に食うかな。
ーーーーーーーーーーーー
昼休み
日菜からLI○Eで『天文部の部室に来て』とメッセージを送られてきたから、そこに向かっているのだけど…
「何か視線を感じるな」
俺が何かしたんかな?まあいいか。
「ここか」
ドアの上のプレートに天文部と書かれていたから、ここで間違いないだろう。
「失礼しますー」
一応ノックしてから入った。部屋の中は机があるだけの狭い一部屋だった、天文部だから機材とかあると思ったけど何にもない。
「あ、ブッキー来てくれたんだね…」
「日菜が呼んだからね、来ないと何言われるのやら」
「てへっ♪」
奥の机に座っている日菜、舌を出して誤魔化していた。弁当があるから昼飯中だったのかな?
俺はもう屋上で済ませたけどな、蘭達と。
「それで、用件はなんでしょうか…いや、それは野暮でしたね」
「あはは‥うん。ブッキーの思ってる通り、かな」
間違いなく昨日の事だろう。だから日菜はいつもみたいに元気がない。
「昨日はごめんねブッキー。騙すみたいな事になっちゃって」
「……」
「実はね、まだあたし達はライブなんかとても出来る状態じゃなかったんだ。でも事務所の意向でさ、あたしと麻弥ちゃんは演奏に関しては問題なかったけど彩ちゃんとイヴちゃんに千聖ちゃんは
まだ、ね。るんっ、ってこなかったし」
「………」
やっぱり理由はあったんだな、後で舞衣に言わないとな…要は練習不足なのね。てか麻弥ちゃんって誰?あのドラムの人かな?
「あ、麻弥ちゃんは知ってる?」
「いや…でもドラムの人でしょう」
だってそれしか残ってないし。
「そそ、ここの学校にいるよ。あたしとは違うクラスだけどね」
「……」
「その、ブッキー…もしかして怒ってる?」
日菜はちょっと声のトーンを落として俺に聞いてきた。
「別に怒ってはいませんよ。ただ、どうして練習不足なのにライブやろうとしたのか気になったのでね」
「う~ん、そこはあたしもよくは知らないんだよね。でも本当にごめんねブッキー…」
手を合わせて謝る日菜はなんか痛々しかった。
「理由がありましたから俺は何も、いや最初から何も思ってはなかったけど。他の人はどう思うのでしょうね?」
「そこなんだよねー、ブッキーは話さないといけないけど、他の友達にはちょっとねぇ。みんなブッキーみたいに理解があると良いけど」
「るんっ!とこないから話したくはないよ」
「はぁ」
だからるんっ、って何だよ?
日菜が俺を買ってくれてる?のは何か嬉しいな。やっぱりあいつとは違うよな、日菜と詩音は。
そして……
「そこの人はいつまでそうしてますのですか?」
そしていつまでもドアに張り付いている人に向かってこう言った。
「っ!?」
俺がそう言ったらドアが開いた。
そこにはつぐみと同じショートで眼鏡をかけている人がいた。まさにその人はPastel*Palettesのドラム担当の大和麻弥さんだった。今は眼鏡をかけてるけどな。
「貴女は、大和麻弥先輩…ですよね?」
「…………そうッスよ」
「麻弥ちゃん?どうしたの?」
「その、日菜さんと一年生の知り合いがどうこう言ってましたので…あの、ジブンは気になったッス」
「俺の事、ですか?」
「まあ噂の一年生ですとは思いましたが、やっぱりそうだったッスね」
だったらもう自己紹介はいらないかな?
「えっと、神子さんはジブンの事はご存知でしたか?」
「ええ、日菜と同じ事務所でドラムの大和麻弥先輩ですよね。あの時は眼鏡はしていませんでしたが…普段はしてるのですか?」
「それはですね…」
説明すると元々スタジオミュージシャンのつもりで事務所に入って来たらしいのこと、でも千聖さんが眼鏡を外したら相当美人だったからそのままパスパレに入れたのこと。ドラムもいなかった事もあり、すんなりと決まったらしい。
そして上から読んでも下から読んでも同じ名前になるから、それがキャッチフレーズ(?)にしたとかないとか。
ともかく先輩とか後輩とか関係なしで読んで頂いてもいいからと懇願された。仕方なく麻弥さんと呼ぶ事に。あと変な笑い方してたのはなんだ?
俺って先輩方になんて思われてるのやら、でも普通に男とは思ってはいたみたい。花音さんやりんりんさんとは大違いだ。男物の制服着てても男装って言われるしな。
▼▼▼▼▼▼▼
ブッキーが部屋を出た後あたしと麻弥ちゃんの二人だけになった。あーあ…もっとブッキーに言う事あったのにな~
「で、神子さんとはどういう関係なので?」
今度のテスト勉強一緒にやらないとか言って、ブッキーの家に行ってみたかったのに。
「日菜さん日菜さん、聞いてますか?」
もっとブッキーの事知りたいし
あとおねーちゃんとは、まだうまく話せてないから相談にも乗ってほしいし。
「ひーなーさーんー?」
「あ…ごめん麻弥ちゃん!そ、それで何かな?」
ブッキーの事で考えてたら麻弥ちゃんがずっとあたしを呼んでたのに全然聞こえてなかったよ。
「はぁ…もう一度言いますッスね。その、神子さんとはどういう関係なんすか?」
「えっ」
ブッキーとの関係?何だろ…るんってくる後輩、じゃなくて!あたしにとってブッキーは…
「日菜さん?顔が赤いっすよ。ま、まさか!?」
「え、え、え…?」
わわわわわ…!あたし、一体どうしちゃったの?ブッキーの事考えたら、何これ?
「麻弥ちゃん…この事はみんなには秘密にしてくれるかな?」
「りょ、了解ッス!」
この気持ちが何なのかよく知らないけど、あたしは不思議と嫌じゃなかった。おねーちゃんとは全然違う何かが。
ーーーー
放課後になり、俺はちと商店街のほうへ足を運んだ。理由は簡単だ。
「俺もドラムやろうと思っても、まずは実物を見てからかな」
巴には聞かなかった、驚かせたいし。
「ん?商店街から少し外れるのね」
目的の場所を地図アプリを使いながら歩いていく。これがあれば迷う事は多分…ない。
「ん、ここだ」
国道沿いにあるその店の名前は『EDOGAWA GAKKI』と書かれていた。さっそく入ってみた。
「狭…人一人か二人が通れる通路の壁にギターが沢山掲げていたり、ベースまで分けているんだな。あと左利き用まであるとは」
それだけじゃない、よくは知らないがパーツみたいなのもある。あ、キーボードもドラムセットもあった。
「俺の目的はドラムだからちょっと見ていこう」
そのドラムを見てみると色々と種類があってマジ初心者には困る。
「なになに…シンバル、太鼓みたいのと、何種類あるんだこれ?」
よくもまぁ巴やあこちゃんはこれを苦もなくやるなぁ…太鼓とは全然違うわな。
「だからこそ面白いか…本当にそうだな!」
やべえ燃えてきた…!今日は見るだけの予定だったけど、こりゃもう買ったほうがいいな。値段はどれどれ…?
トレーニングドラムセットか本格的なので随分差が出てるな、これはちょっとわからん。
「ドラムに興味がおありかい?」
などと考えていたら後ろから声をかけられた。
「ふむ、その制服は羽丘だね。そして一年生で音楽は初心者とみた!どうだ、合ってるかね?」
やたら的確に言い当ててくるその人は、どうやらここの店員のようだ。花咲の制服に緑色のエプロンをしていて胸の名札は『鵜沢リィ』と書かれていた。
左手に変なぬいぐるみ?を持っていたがな。
「ええ、そうですよ。ドラムをやってみようと思いまして」
「ほほう、それはどうしてかね?最近はドラムの人口が減ってきていてね。初心者でドラムをやるんは珍しいんのよ」
マジか。
「そんでチミは決めたのかんよ?」
「まだどれかは決めかねています、一番値段が高いドラムセットも買える資金はありますが」
一番高いので十万ちょいする、色彩がちょっと気にくわないから買わないが。
だけど店員さんは少し考え混むと、これを勧めてきた。値段も高いのと安いのと中間での商品だ。全身に緑色で俺の一番好きな配色だ、だから俺はそれを一目で気に入った!
「店員さん、これ買います!」
「わぉ」
俺は即決した事に驚いたのか、非常にビックリしたそうだ。
「店員さんじゃないよ、リィと呼んでくれるかな」
「わかりました…リィさん」
この人見た目は俺より年下に見えそうだけど、威厳と凄みがあってとてもそう思わなかった。
「まいどあリィー、それじゃあデペコを触らせてあげよう」
そう言ってあの変なぬいぐるみを出してきた、デペコって名前なのかそれ。
「いや、結構です…」
「残念ー」
そんなリィさんとのやり取りが終わるとドラムセットはそのままお持ち帰りは無理なので配送して貰うことにした。
「神子志吹君って言うんだ、私の二つ下とはね」
「さっき一年生とか言ってませんでしたっけ?」
「そだったねぇ、で明日には届けておくね。時間はどうするの?」
「この時間なら…」
「おっけー」
これで全て完了したので、ちょっと店内を見てみる事にした。リィさんはハウツー本もあるからとは言ってたけど。
「じーーー……」
リィさんと配送手続きしてる時からずっといた人が俺を見ているのだけど?
「ドラム、やるなら…入らない?」
「へっ?」
じっと見ていたその人は突然俺に話し掛けてきた。
「私たちのバンド、入らない?」
唐突にバンドに入らないかと言ったその人は、黒髪のロングで花咲の制服を着ていた。
「え…あの、俺はまだドラムも触れてない初心者なんですが?それに貴女は誰なのですか?」
俺はその人に初心者って事を伝えた。あと初対面の人にいきなりバンドに入るとか無理だろ。
「そうだったね…私は花園たえ。おたえって呼んでいいよ」
「俺は神子志吹です。羽丘の一年生です」
「同い年なんだね。だったら話は早いね」
いや話が早いとか意味わからん。
「おたえーどうしたの?」
「香澄。この人バンドに誘ってた」
「ええっ!?って志吹くんだ!」
花園たえの後ろから、どこかで聞いたような声はりみの友達の戸山香澄だった。
「香澄、志吹と知り合いなの?」
「香澄、花園と知り合いなのか?」
俺と花園たえは同じような台詞を言った
「おたえ、だよ志吹」
「……わかったよ、おたえ…でいいのか?」
「うん、よろしい」
香澄はポカーンとしてたけど、話を続けてくれた。
「え~っと…そうだよ、先月に有咲の蔵で会ったんだ。あれから練習して上達したよ」
「へぇ、一度聴いてみたいな」
一ヶ月でどれだけなったか気になるな。
「だったら今から行かない?志吹にもメンバー紹介しなくちゃいけないし」
「俺が入る前提で進めないでくれますかね?」
「そうだよおたえ!志吹くんもまだ…え?バンド、やってたの?」
「ああ、明日からな。一ヶ月前の香澄と一緒だ」
「そうなんだよね。なんだか似てるね、香澄と志吹って」
「そうか?」
「そうかな?」
今度は香澄と俺で。
「香澄ちゃん、おたえちゃん…お目当てのはあった…の?」
香澄の後ろから声がした。
「りみもいたのね」
「志吹君っ!?どうしてここに…?」
「それはだな…」
俺はりみにもドラムをやり始めた事を伝えた。流石にりみも驚いていたけど、まるで自分の事のように喜んでくれた。
「で、俺は何でここにいるんだろーな」
「知らねー」
俺の隣にいる人こと金髪ツインテールは、ここの蔵の主?質屋のお婆さんの孫娘の市ヶ谷有咲と言って、香澄達のバンドに入ってるそうだ。あと名前はお互いに知っていた。
「まさか全国模試の4位と3位がここにいるなんてな、誰が思ったんだろうな」
「全くだな」
こうして俺は蔵の地下に連れてこられて市ヶ谷有咲にも会わされて、香澄達のバンドメンバーがいるとさ。
「香澄とおたえがギター、りみがベース、市ヶ谷がキーボード…だからドラムで俺を勧誘したって事ね」
「そゆこと、志吹はなんかピンときたから」
なんじゃそりゃ。
「あー、そいつの言うことはあまりアテにしないほうがいいぞ。本能で言ってるのか、わかんねーし」
「そうだな、市ヶ谷。おたえは正直言ってあれだな、電波か何かだよな」
「そーゆーこった」
それな。
「志吹君、本当にいいの?私達のバンドに入るっておたえちゃんから聞いたから」
「入るとは一言も言ってないがな」
「そうだっけ?」
「「「…………」」」
俺とりみと市ヶ谷は揃っておたえを見た。
「三人ともじっと見て私の事が好きなの?」
「「「…………」」」
俺たちは諦めてように項垂れた。
「志吹くんが入るか入らないは、ともかく!私達の曲を聴いて欲しいかな?」
香澄が言ってきた。ドラムいなくても大丈夫なんかな?
「そうだね香澄ちゃん」
「香澄、グッドアイディア」
どうやら俺に演奏を聴かせてくれる事になったらしい。
「お、おい…まだ私はやるって言ってねーぞ!」
市ヶ谷は反発した、あれ?まだ入ってなかったの?
「いいじゃん、やろうよ?お客さんが来てくれてんだし」
「連れられたとも言うがな」
「マジか」
呆れる市ヶ谷をよそに香澄とりみとおたえは演奏の準備をし始めた。
「ったく、しょうがねぇなあ…やるよ、やればいいんだろ」
諦めた口調で市ヶ谷も部屋の奥に移動してキーボードの前に立った。
「どれだけ上手くなったか楽しみだな」
正直俺は興奮していたかもしれない、だってこれはAfterglowの時と同じだから。
「それでは志吹くんをキラキラドキドキさせる演奏をいきます!」
香澄がそう言うと演奏を始めようとした。ところでキラキラドキドキってなんだよ?
「二度目のクライブになりますけど、今度はお客さんは一人しかいません!」
「そりゃそーだろ、突然香澄とおたえが連れてきたからだろ…」
「ううん、香澄ちゃんとおたえちゃんだけじゃなくて私も誘ったよ有咲ちゃん」
「有咲が変な事言ってる」
「おめーにだけは言われたくねー!」
「…………」
おいおい、MCだっけ?それだけでこんなカオスな空気になるなよな。本物のライブだったらどうなってるんだよこれ。あ、収まったみたいだ。
「コホン、では聴いてください!『私の心はチョココロネ』」
香澄の合図で演奏が始まった。って何だよその曲名は!!
俺は思わず笑いそうになってしまったよ。
冒頭の舞衣が言ってたのがぶっちゃけ私の現状なんですよね。内容はまだ言えませんけど。
日菜回なのか自分のバンド回なのかわからなくなってますがね。
感想でも指摘でもメッセージにて送ってもらっても構いませんので、なんでもごされですので、どうぞ