それでは35話をどーんです。
「なあ舞衣」
「何よ?」
ドタバタした土曜が終わって、日曜の朝。
「ギターはいつからやってたんだ?」
昨日地下室でギターを見つけて誰のかと思ってたが、どう考えても舞衣しかいないからな。
だけど向こうにいる時は一言もギターやってるなんて言わなかったよな?
「一年前くらいかな、友達に影響してわたしもやってみたくなったのよ。ギターはヴィンテージ品だけど安かったわ」
「ほう」
「ほう…じゃないわよ?志吹も知ってるからね?」
「ほう?」
誰だろう?
「…………朝日六花、会った事あるでしょう?」
「んー?」
誰だっけ?
「覚えてない、いつ会ったんだ?」
「………はぁ~まずはそこからね。去年の夏に岐阜に神職の集まりで行ったのは覚えてる?」
「……一応な」
覚えてるが、あんまりいい気分ではなかったよ。もう俺はつま弾き者にされかけてたからな。
「あ…」
舞衣は何かを察したみたいに話すのをやめてしまった。あの時の俺を思い出したか?
「ごめん」
やっぱそうか、悪い全然記憶にない…訳じゃないが。
「あの時の俺は色々とやさぐれてた時期だったから殆ど覚えてないんだ。でもなんか訛りが強く眼鏡をしてた女子と話したとしかなくてな」
岐阜の街中の公園で舞衣と二人で会ったっけ。
「その子が朝日六花よ知ってるじゃない。わたしは何度か会いに行ってギターやってたから教えてもらったのよ」
「へぇ、何でまた?」
舞衣が日本舞踊以外に興味があるとは思わなかったな。
「志吹がドラムやったのと同じ動機よ。わたしも
「そうか……ってそれは薙刀もか?」
「そうよあれは元々護身の為だったらしいし、今はもう必要ないわ。それに……詩音がいるお陰でわたしは頂点に立てそうにないから」
「舞衣……」
お前もそうなんだよな、俺も舞衣も詩音には敵わないんだよな。
てか舞いは嫌々やってたのか?
「で、ギターの腕はどうなんだ?」
どれほどか見てみたい。
「ん……じゃあ食べ終わったら一緒にやる?」
「おう」
朝食食べ終わった後、俺と舞衣は地下室でお互いに演奏して、音も合わせてみた。
「すげえなこれは」
「うん、凄い」
お互い語彙力がない言い方だったが、それほどまでにピッタリと合っていた。ドラムとギターなのに。
「キーボードとか、ベースとか欲しいな」
「そうね」
「そしたらバンドできるな」
「うん…」
どうしたんだ舞衣のやつ、返事に覇気がない。
「舞衣…どうした?」
「なんでもない、わたしこれから用があるから」
唐突に逃げられた、何だってんだ?
「とりあえず片付けして昼飯はつぐみのとこでいいか」
なんか昼は作る気が起こらないんだよなぁ、何でだろう?
ーーーー
「新作メニュー?」
つぐみの店に着くなりいつもの席で注文しようとしたけど、マスターが何か奥の机でノートやらノートパソコンで調べものをしているようだった。
「うん。お父さん今新作料理の研究してるみたいだから、以前に志吹くんのが教えてくれたパエリヤはお客さんには不評だったみたい」
「だろうな」
あれはここには合わないだろうと思ってたよ。
「今回も何も考え付かないかな。いつもそうだし」
「いつもって…てかここは珈琲店。食事じゃなく珈琲がメインだからその線でいいんじゃないのか?」
食事方面に偏るとそれは最早珈琲店じゃないよな。
「私もそう言ってるんだけどね…売り上げも特に悪くはなってないのに」
「パエリヤを教えたのは完全に失敗だったな…」
「志吹くんは悪くないよ。お父さんいつも美味しそうな料理見るとすぐ真似しようとするから…だから気にしないで」
「たははっ、そりゃ料理を作る者としてはわからなくはないんだがな」
マスターには悪いが料理の腕はそんなにないんだな。コーヒーだけでやってきたって感じか。
今思ったんだがこの時間は営業中だよな?何でマスターは……いや、それは野暮だったな。
「つぐみ…あれは大体どれくらいで終わ」
俺が最後まで言う前にマスターはノーパソを閉じて溜め息をしていた。
「もう終わるよ志吹くん、今回も成果ないみたい」
「…………」
マスターはしょんぼりした顔で厨房に戻っていった。俺がいることにも全く気づく事なく。
「しばらくすれば立ち直るから、それまで待っててね志吹くん」
「そうするかな、昼飯時までまだあるしな」
マスターが立ち直るまでつぐみと談笑していた。
ー 羽丘神社 ー
午後一時
つぐみの店で昼食をとった後は当初の目的の場所へと来ていた。
相変わらず東北へ出張している神主さんと遥さん、依然として連絡がないから心配になっているらしい、俺も心配だよ。
いつものように許可を貰い最近やってない笛の練習をする事にした。毎日やるアレは欠かさずにやってるが。
「と、いってもどうせ途中で何か起こるんだよなぁ」
そう言いつつ俺は笛の練習を始めた…がすぐに止めた。何故なら雨が降ってきたからだ。
「ちっ、空めっちゃ暗いじゃねえかよ…帰るか」
俺は羽丘神社を後にした。傘もないからな。
階段降りた辺りで雨が強くなってきていた。これは家に着くまでにずぶ濡れになりそうだ。
「笛も濡れるなこれは、全く…ついてないぜ」
ブツブツとぼやきながら帰途についた。
ーーーーーーー
ピンポーン
家のインターホンが鳴ったので出てみたら
「ブッキー…来ちゃった」
日菜だった。雨が凄く強くなってきていたからなのか全身ずぶ濡れでいて目が赤かった…目が赤い?
そんな事を考えているより先に日菜にタオルを貸してあげる方が先だった。
「ちょっと待っててください日菜、今タオルを持って来るので」
「うん、ありがと」
いつもの陽気な日菜ではなく、まるで今朝の舞衣と同じ感じだ。一体何なんだ?
数分後
リビングにて髪を下ろした日菜と俺。
「お風呂ありがとねブッキー。服まで借りちゃって」
「六月とはいえ濡れた服のままでは風邪引きますからね、あとその服は俺のじゃないですが」
全身ずぶ濡れになっていた日菜にタオルで拭いた後、風呂に入らせて着替えも用意した。
舞衣のだろうけど乾燥機の外に置いてたままだったから日菜に着せてあげた。サイズもほぼ同じくらいだから丁度よかったな、てかなんでまだ俺の家に舞衣の着替えが置いてあるんだよ!?
「ブッキーが女装用として使うんだと思ってた」
「…………」
誰が女装するか!それにそれはレディースダウンだから俺が着たら一発でわかるだろうが!
「同居人の忘れ物ですよそれは」
「女の人だったんだね…ううん何でもない!」
「…?」
俯く日菜、何なんだ?そして俺は今座っているソファーの後ろに一瞬だけ目をやってすぐに日菜の方に向きなおしな。
「ココアもありがと」
漫画や小説とかでもこういう状況の時はココアを差し出すのが定番らしい、俺もそれに倣って日菜に出したがインスタントでよかったのだろうか?まあそれよりも…
「日菜の服が乾くまでまだ時間がかかりますし色々と聞きたい事があります。最初に俺の家はどうやって知ったのですか?」
俺は日菜に家の場所は言ってないはずだ。それなのに何で知ってるんだ?
「リサちーから教えて貰った」
「さいですか、それでここに来た理由は…」
リサはどうしてこう人の……ん?待てよ何で日菜は俺の家の住所なんかを聞く必要があったんだ?
「ブッキー…あたし、またやっちゃったんだ」
また紗夜さんと揉めたのね、わかってたけど聞かないといけないから。俺は少し胸が痛んだ。
「おねーちゃんとギターについて話をしたんだけど、何か途中からこじれちゃって」
「………」
「あたしはおねーちゃんと楽しく話したいだけだったのに、どうしてこうなっちゃったのかなぁ…」
どう答えればいいのか言葉に出来なかった。詩音も同じ台詞を言っていたのを思い出したから。
そして俺はまた後ろを向いていた。
「どんな内容か教えて貰えますか?」
「えっとね…」
日菜は紗夜さんとの会話の内容を俺に言ったが…
「紗夜さんの音が変わった?」
「うん、るんっ!ってするくらいのいい音になったって言ったの。何かあったのか聞いてみたらそこからおねーちゃんはあたしにこう言ってきたの」
『私は私、日菜は日菜の音があるというのをある人から教えて貰ったのよ』
「っておねーちゃんは言ってて」
俺の事だよなそれ、でもそれだけじゃ拗れる理由にはないからまだ続きがあるのだろう。
「その後にあたしはそれってブッキーの事って言ったらおねーちゃんが…」
日菜は話を続けようとしたが
「やめて!」
紗夜さんが俺の後ろにあるソファーから出てきた。
「おねーちゃん…」
「日菜…」
何で紗夜さんがいたのか回想に入ろうか。
ーーーーーー
時は少し遡って
「雨が強くなってきたな、はよ帰ろう」
雨が降り始めたから俺は笛の練習を諦め、神社の階段から降りてきた時にはもう雨は本降りになってきていた。
「笛は懐へ入れて…よし、走るか」
走り始めて数分、自宅が見えてきた。
「……ん?」
何かおかしい。俺の目の錯覚だろうか?俺の玄関前に人がいる。しかもその人は…
「紗夜さん?」
「っ、!」
やっぱり紗夜さんだ。しかし傘がないからか全身濡れている…六月とはいえ長袖でいるが寒いだろう。
「どうしたのですか紗夜さん、俺の家の前でなに…を?」
そもそも紗夜さんは俺の家の住所は教えたっけ?色々聞きたい事があるけどまずは家に入れて服を乾かしたりタオルも用意しないとな。
俺は紗夜さんを家の中に入れた。
………
リビングにて待っていると風呂場から紗夜さんが出てきた。
「タオルありがとうございます神子さん」
「どういたしまして、でもタオルだけでいいのですか?」
乾燥機とかあるから服を乾かそうと提案したけど、動揺した紗夜さんに断られてしまった。
「大丈夫です、神子さんにそこまで迷惑をお掛けする訳にはいきませんので」
風邪引くといけないからなのにな…よくわからん。
「それに、ギターケースを上にしてましたので」
紗夜さんは背負っていたギターケースを俺の前に出してきた。
「そですか……それで紗夜さん」
「は、はい!」
ビクッとしていた、色々聞きたい事があるからな。
「その前に座りませんか?立ったままではお互いツラいですから」
「はい……」
俺と紗夜さんはテーブルの椅子に座った、お互いに向かいだ。さて、と
「どうして俺の家を知ったのですか?確か教えてはいなかった筈ですが」
まず第一の疑問だ。
「先週今井さんから教えて貰いました。Roselia全員にですけど」
「……リサめ、明日文句言ってやる」
つまりはあこちゃんやりんりんさんも知ってしまったのね。まあ来る理由はないだろうが。
「では次に、俺に用があったのですか?ギターを持ってきましたという事はまさかとは思いますが…」
「ええ、神子さんに私の音を聴いて貰いたかったのです」
なるほど、訪ねる理由としては十分かな。
「以前とは違う音を出せるようになったのですね?」
俺は確かに紗夜さんだけ音の指摘…いや、合ってないと言った。その理由も紗夜さんから聞いた。つまり紗夜さんは日菜と?
「日菜と仲直りを出来ましたのですね」
あれだけ日菜に劣等感を抱いていた紗夜さんはもう乗り越えたのか。
やっぱり俺とは違うよ紗夜さん、貴女は強い人だ。
「いえ、その‥違うのです以前よりは日菜とは話せるようにはなりましたが…」
「???」
なんか紗夜さんが変だな、何というか…恥ずかしがっている?
「紗夜さん?」
「すいません…その…先程まで日菜と家で話していましたのです」
「ええ」
日菜と話しているのに話の内容が言えない事なのかな?
「最初はギターの話だったのです。音が変わってそっちのほうが日菜は好きって言ってまして…」
やっぱり音は変わったんだな、どんな音になったのか聴きたいな。
「その理由が…か、神子さんと話しましたらと言ったら日菜は」
「日菜は何て言ったのです?」
俺と話しただけで音が変わるのはちょっと眉唾ものだけど、余計な事は言わないでおこう。
「その…」
紗夜さんは物凄く恥ずかしそうにしていた。日菜が俺の事を言うのは気にはなるけど、無理には聞き出そうとはしない。
ピンポーン
「玄関のチャイム、ですね。ちょっと出てきます」
ーーーーー
と、いう訳さ。ちなみに紗夜さんにはソファーの裏に隠れていて俺と日菜の話をずっと聞いていたんだ。
「おねーちゃん…やっぱり居たんだね」
「「やっぱり?」」
俺と紗夜さんは同時に驚いていた。
「うん、洗面所におねーちゃんの髪の毛が落ちてたから。それに臭いもしたし」
「「………」」
恐ろしい、臭いだけでわかるとは双子ってすげーな。いや、日菜が凄いのか?
「日菜…神子さんに余計な事は言わないで」
「でも!」
「お願い…だからっ!」
「おねーちゃん…」
紗夜さんが涙ぐんで日菜に訴えてる、日菜も紗夜さんの気迫に押されていて何も言わなくなってしまった。
「ごめんなさい日菜、今はまだ…私の心の整理がついてないから」
「ううん、ごめんねおねーちゃん…ブッキーもごめんね」
「神子さん…ごめんなさい」
日菜と紗夜さんが俺に向かって謝ってきた。
「えっと…」
正直何の事かわかんないんだけど?
「二人が俺の何が原因なのかさっぱりわからないのですが…?もしかして俺が何か余計な事を言ったのでしょうか?」
さっきの話的には俺の事で揉めたのかどうかわからない…なんの理由でそうなるのか全然わかんない。
「「………」」
「えっ?何でそこで呆れたような顔をするんですか?」
日菜だけではなくて紗夜さんまで!?
「ねえ日菜」
「そうだね、おねーちゃん…」
二人して頷き合っていた。だから何なんだよ…
というか先程までの険悪ムードはどこいった?
「神子さん、私達はこれからCIRCLEでギターの練習をしに行くのですが」
「ブッキーも一緒に行こうよ、雨も止んでるし」
外を見たら確かに雨は降ってはいない。そういえば日菜もギター持ってきていたな、今は玄関に置いてあるが。
「それはいいのですが紗夜さん」
さっき紗夜さんは俺にギターを聴かせたいって言ってなかったっけ?
「すいません、先程の神子さんのは嘘でした。本当は日菜に聴かせるつもりでして」
「でしょうね」
「ブッキーも聴いたほうがいいよ!何かこう…るんっ!ってするし!」
「日菜、一緒に弾くって言ってたのはどうしたのよ」
「あはは…嬉しくて忘れてたよ」
何だよこのやり取りは…普通に話せてるって事はさ、もう大丈夫なんだよな?
さっきのは一体何だったんだ??
「紗夜さん、日菜、CIRCLEってもう予約入れました?」
「いえ、まだですが」
「でしたら、ここでやりませんか?」
「「ここで?」」
二人でハモらないでよ。
「リビングの隅に地下室がありましてね、そこなら騒音も大丈夫なので丁度いいのかと」
「地下室なんてあるのですか」
「いいねっ!るんってしそう」
紗夜さんも日菜も了承してくれた。俺は二人を地下室へ案内するとまあ予想通りの反応というか…驚きをみせてくれた。
「これって…」
紗夜さんが地下室の隅にあるドラムを見るなり
「神子さんはドラムをやってるのですか?」
「えっ、ブッキードラムやってるの!?」
だから二人同時に言うなっての!息ピッタリすぎだろこの双子は。
「そうですよ…もっとも始めて一週間とちょっとしかやってませんが」
昨日沙綾とモカは普通に上手いと言ってくれたが、俺にはまだ自信が持てん。
「神子さん、私達と一緒にやりませんか?」
「さっき言いましたよね!?一週間しかやってないぺーぺー以下って」
「そこまでは言ってないよねブッキー」
それはそうだが何で出たんだろう?
「初心者でも私は神子さんの音も聴いてみたいですが…嫌、ですか?」
「うっ…嫌ではないですがまだ人に聴かせる自信もないですので」
「ブッキーなら大丈夫だよ、あたしにはわかるもん!」
「どこにそんな根拠が?」
グイグイと俺を引っ張っていく日菜。紗夜さんもギターを取り出しているし止める気は全くないようだ。
「とにかくやってみようよ!ねっ?」
「……わかりましたよ。下手でも笑わないでくださいよ?」
「笑うわけありませんよ」
俺はドラムセットを二人の間に入るように移動させて、色々試し打ちしていた。
「で、何の曲をやるつもりで?」
「これなんですけど神子さんは楽譜の読みはわかりますか?」
「それは大丈夫です、前に曲作りとかしてましたので」
「それでしたら問題なさそうですね。って今何て言いました!?」
紗夜さんは不思議そうな表情で俺に聞いてきた。
「ですから曲作りの経験はありますって。某音楽サイトで投稿もしてましたから、今はもうやってませんが」
今は某会社にスカウトされているからそのサイトのアカウントはもう消しちゃったけどな。今でも依頼来るし、ちゃんと作ってるよ。
「ふぅん……」
日菜は鼻で笑っていた。
「紗夜さん、もう覚えましたので大丈夫ですよ。テンポとかはちょっと自信ありませんが」
覚えたも何もこれって俺が作ったやつじゃん!
確かに双子をテーマにしたけどさ、何で紗夜さんがそれ知ってるの!?
「早いですね、神子さんはこの曲は知ってたのですか?」
「まあ」
「「…………」」
二人して黙ってしまった、さっきといい何だよもう。
「もう始めてもいいですか?紗夜さん、日菜」
「ええ、神子さんの号令でお願いします」
「ブッキーお願いっ」
俺は二人がギターを構えるのを見てから持っていたスティックをカウントに合わせて下ろした。
ちなみに曲名は「ツインズナイト」
「ふぅ、流石ですね二人のギターは」
曲が終わると、俺は
朝やった時の舞衣とは違う感じだ。何というか…
「おねーちゃん…」
「日菜……」
二人はお互いを見つめ合っている。
「あたしは……おねーちゃんと一緒にギターやっててよかったよ!」
「日菜っ!?」
日菜は紗夜さんに抱きついていた。
「おねーちゃん!おねーちゃん!」
「日菜…!!」
紗夜さんも日菜に抱きついた。あれ…?何か前にもあった気がするよ。
数分後
「落ち着きましたか?日菜、紗夜さん」
「はい…」
「えっへへ…」
二人とも泣きながら抱き合ってたから俺は落ち着くまで空気のように演じた。大変だったなこれ。
それにしても二人のギターの音は日菜は太陽だとすると紗夜さんは月だな。対極であり同調している、不思議だ。
「二人のギターはとてもいい音でした、日菜のは初めて聴きますが紗夜さんのは以前とは比べ物にならない程に良くなってますと言いますか、その…」
言葉に詰まった。
「るんっとするよねブッキー!」
だから知らんて。
「るーんってのは置いときましてこの音でしたら友希那…いえRoseliaの音は合うと思いますよ」
紗夜さんだけじゃないけどそれは気にしないでおこう。だ
けど聴いてみたいな。
「ふふっ、ありがとうございます」
初めてみる紗夜さんの笑顔、日菜も嬉しそうにしているのでつい俺も口元が緩みそうになる。
「ねえブッキーってドラム始めて本当に一週間なの?あたしからみたら麻弥ちゃんとは違うけどるーん?ってするなぁ」
だからるーんだか、るんだか俺に分かるように説明してくれ……
「私も神子さんのドラムは経験者そのものの音を出してましてとても素人には見えないのです」
「まあ太鼓はやってましたし、プロのドラマーの動画も視まくってましたからね…」
テスト前にも見たしな。
「和楽器の経験多いんだねブッキーは。あたしと初めて会った時も笛吹いてたし」
「あの時ですか…」
日菜との屋上での出来事は忘れる事がないくらい衝撃だったからなぁ…演奏中にどつかれるわいきなり笛吹かれるわで。ほんと詩音を思い出させるよ。
「神子さんは笛も…だとしましたらまさか!?」
紗夜さんは何か閃いたようにスマホを取り出して動画アプリを開いていた。
「神子さん、さっきの曲をもう一度やってくれませんか?今度は笛でやってほしいのです!」
「えっ?」
あの曲…ツインズナイトは笛がメインの和製曲なんだけど、二つの音を出してるんだ。
一つは音楽ツールからの笛、もう一つが俺の持ってる笛なんだ…この音は他にはでない低い音色なんだけど決して真似出来ないんだ。だから紗夜さんはそれを気づいたのか?
いや、大丈夫だろう。俺が曲とか作ってるとか言わない限り…
あ
言ってたわさっき…やべ。
「……わかりました」
もうバレそうだけどいっか……
俺は首に掛けてる笛を取り出して演奏した。
「ふぅ、どうですか…って!」
一通り演奏終わると日菜と紗夜さんは泣いていた。
「すいません…その」
「ブッキーがいけないんだよ、あたしとおねーちゃんにピッタリの曲を作るから…」
「やっぱり神子さんが作ったのですね、その笛で」
バレてたか。
「結構な自信作ですからね、この音色を取り込むのは骨が折れましたよ。ですが双子をも意識して作りましたが今の二人には本当にピッタリかもしれませんね」
ツインズナイト…双子の夜って意味でやったしな。
「ありがとねブッキー…あたしとおねーちゃんを救ってくれて……相談にも乗ってくれて」
「今こうして日菜とのわだかまりをなくしてくれましたのは神子さんのおかげです」
涙を拭きながらだけど。
「……二人はもう大丈夫なんですね、紗夜さんが日菜を日菜が紗夜さんを大切に思っていますのでしたら」
もう大丈夫だろうよ…全く、俺とは大違いだ。
「でも何でこの曲を俺が作ったって分かったのですか?」
まさかバレるとは思いもよらなかった、そんなに特徴ある曲調でもないんだが‥笛メインだけど。
「それはねーおねーちゃんがこの曲を聴いてた時に、音色がブッキーみたいだな~ってあたしは思ってたんだ」
「私は神子さんが先程曲作りの経験ありますって答えた時と笛をやってると言ってほぼ確信に変わりました」
洞察力すげえなこの二人…そんな所も似すぎるなよな。
「あれ?でも今は聴けない筈ですけど?俺のアカウントは停止していますから聴けないのに」
「別の方がアップしていたみたいですね、神子さんの曲ほぼ全て。私は同一人物だと思ってましたが」
「マジですか…まあいいですわ」
削除依頼出すのも面倒だし。
日菜の服も乾いた時間なので、着替えてから二人は家に帰っていった。紗夜さんも日菜も笑顔でいたのでもう大丈夫だろうと……
はぁ…俺はどうするかな。
俺のスマホからLI○Eで詩音のブロックを解除した。ついでにSNSも。
「俺も、前に進まないとな」
空はすっかり晴れていて昼に雨降っていたのが嘘のようだ。
「ぶえっくしょん!」
忘れてたけど、俺も少し濡れてたのに何もやってねえわ、少し体が冷えるな。
「さて、また神社に行くかな」
その日の夜に詩音からの通知はなかった。
▼▼▼▼▼▼▼
氷川宅 紗夜の部屋
「もういいよね、おねーちゃん」
「……ええ」
紗夜の部屋で二人、神妙な表情でいる。
「ブッキーの事おねーちゃんはどう思ってるの?」
「…………っ、それは…!」
凄く動揺してる、やっぱりおねーちゃんは
「好き、なんでしょ?」
「…………」
俯いちゃった、もうバレバレだよ?
「あたしは好きだよ。ブッキーの事」
「……」
「でもブッキーは鈍感っぽいし、そういうのは全く関心なさそうだからねぇ」
さっきのおねーちゃんとのやりとりも全くわかってなかったし。
「日菜は」
「ん?なぁに」
小さい声で言ってくる、あたしじゃなきゃ聞き逃しちゃうね。
「神子さんの、どこが……好きになったの?」
「んー……あたしとおねーちゃんのように似てるからかなぁ?それに優しいし」
相談にも乗ってくれて、今はこうしておねーちゃんとちゃんと話せてる。あたしは感謝してもしきれないよ。
「私も…似てると思ってたから、そこから私も神子さんに」
結局あたしやおねーちゃんとブッキーって似た者同士だったんかな?
前に言ってたあたしと似た人にあたしは会ってみたいな。
紗夜日菜回まっしぐら
でもRASまで出しちゃうかも?
感想でも指摘でもメッセージにて送ってもらっても構いませんので、なんでもごされですので、どうぞ