死んだと思ったら目の前にホウオウがいて配達便やることになったんだが   作:ベルセリア

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一通目 想いを運ぶ七色配達便 一枚め

 七色配達便。

 それはつい最近現れた謎多き配達者の名だ。

 

『その荷物(想い)、必ず届けます』

 

 そう言って依頼された物を例え大雨だろうが台風だろうが依頼された日時に必ず届けるという実績を多く持っており今や世界中から注目を集めているその存在はあろうことかただ一人で運営しているらしい。

 

 配達ルートは不明で彼がどうやって荷物を何百kmも先の場所に持っているのかを知るものは少ない。ただ言えることはただ一つ。

 

 彼が届けた場所には必ず虹が現れる。

 彼の名前の由来はこれであり、七色の虹は彼がくる合図。

 

「さあて、今日も運ぶかな」

 

 今日も彼、カナタは腰に一つのボールをぶら下げ、頭に小さな虹の描かれたサンバイザーと少し大きめなショルダーバッグを肩にかけ、今日も想いの運び人は歩き始めるのだ。

 

 

「待って待ってすごい寒い超寒いなにこれなんでこんなに雪降ってんのおかしいんじゃありませんかねねえちょっと」

 

 俺は今、人生の危機に陥っているのかもしれない。

 場所はシンオウ地方。噂に聞く限りでは創造神がいる地方だとかなんとか。他の地方よりも神話が色濃く残る場所、なのだが。

 

 なあにこれ、なんでこんなに降ってんの。そりゃ()()()()()()()してたら降ってるのにもうなずけるけど今日は一段と降りすぎじゃないですかねえばっかじゃない俺今薄着なんだけど。やべえ手足の感覚が麻痺してる気がする。

 

「と、とりあえず届け先の家に……ぶぇっくしっ!」

 

 ……決めた、今日は帰ったら風呂入って暖かくしてすぐ寝ようそうしよう。悪いけど今日は空中散歩無しで。すまんな相棒、俺の未来の為なんだ今日は諦めてくれ。

 

『ショオオ!!!』

 

 まるで心の中を覗いていたような完璧なタイミングで俺の脳に直接響くように聞こえるかん高い鳴き声。嫌な予感がして左腰につけている赤と白の二色ボールをみると若干揺れている。どうやら俺に訴えかけてきているようだ。

 ちなみにこの鳴き声の意味は多分『空中散歩しろ』であると思われる……わっつ? 

 

「マジで言ってるのそれ俺を殺す気!? 殺す気なのか!? みろよ俺の肌もう鳥肌なんてレベルじゃないんだけど!? それでも空中散歩しないと怒ると申すか!?」

 

『ショオ!』

 

 こういう時に限って嬉しそうに鳴きやがる! 

 

「なんて奴だ! 俺はお前をそんな奴に育てた覚えはないぞ!」

 

『ショオオ!!』

 

「くそう! わかったやい! これで明日風邪引いても知らないからな俺! 明日の散歩無くなっても知らないからな!」

 

 ま、どうせ風邪引いたとしても秒で完治させられてる自信があるんだけど。今までだってそうだったし。

 

「なんでこんなにわがままなんだ、いいのか幸福の象徴……」

 

 まあぐうたら言っててもしょうがない、とりあえず進もう。

 今現在シンオウ地方にある三つの湖のうちの一つシンジ湖の目の前だ。そして目的地はコトブキシティのとある一軒家。なぜ距離のあるここに降りたかというと人目につかないようにするためだ。となると基本人気のないところになるからこうなってしまうのが玉に瑕なのだが逆に言えば目的地までは観光気分で歩いて行ける為割と気に入ってたりする。

 

 さて、最初はルート確認から始めよう。

 現在シンジこの手前、つまり今いる201番道路を抜けまずはマサゴシティへ、そのあと北を目指し202番道路を超えてコトブキシティに到着しお届け先であるカレンという女性の子供のもとに俺のバッグの中にある荷物を届けるのが今日の仕事だ。

 内容物はピッピ人形だ。これは現在カントー地方在住のカレンという女性の母、つまりお婆ちゃんが孫に物を送りたいという依頼である。子供に人気だもんねピッピ人形。寝るとき抱いてると気持ち良さそうだ。

 

「コトブキシティかあ、確か腕時計型の……なんだっけ。名前忘れたけどそれのアプリ開発をしてるシンオウ一発展した眠らない街、とかなんとか」

 

 観光にはおあつらえ向きなのでは。今回は当たりを引いた気分だ。

 

「お、ミミロルにビッパだ。懐かしいなあ。ポフィン食べるかな」

 

 バッグからポフィンの入った箱を取り出してその中から二つ水色のポフィンを取り出して差し出してみる。ビッパは案外すぐに、ミミロルも最初は警戒したものの恐る恐る取ってくれてひとかじりしたあと効果音が聞こえそうなぐらいの笑顔を見せてくれた。

 

「遠慮しないで食べてね」

 

 おおっとこんなところで道草食い過ぎてる場合じゃない。この荷物のお届け指定時間まで後数刻しかない。観光はその後にしよう。

 

「あ、ついでだし研究所にも寄ろっかな。行く用あるなら持っていってくれって言われてるのあるし」

 

 そういえばバッグに突っ込んだままだったなああの石。

 このシンオウにいる博士は進化の研究してるとかでこの石をぜひ持って言ってあげてくれとちょっと前の仕事の際に寄った研究所の博士から無理やり押し付けられた一品を今こそ渡すとき。

 

 バッグの中から紙袋を取りつつ歩いていると周りの草むらが少なくなっていることに気づいた。ということはそろそろ町が……あったあった、最初の目的地のマサゴタウンだ。

 早速町に入ってまずは町の案内図を確認する。青い大きな屋根の建物が研究所か、とりあえず書いてある通りにそれっぽい屋根を探してみると案外わかりやすいというか結構近い。

 

 善は急げ、最初の目的地ナナカマド研究所に向け歩を進める。

 ま、といってもすぐついてしまうような距離だったので軽くノックし扉を開いて俺は大きく口を開き渾身の声をあげた。

 

「すみませーん! 七色配達便でーす!」

 

 これぐらいしないと奥の人に聞こえなさそうだったので馬鹿みたいに大きな声で叫んだ。

 程なくして助手っぽい人が現れたので一礼してから近づいて、もう一度名乗る。

 

「初めまして、七色配達便というものです。本日はイッシュ地方在住のアララギ博士から預かりものがあり寄らせていただきました」

 

「ああ、それでですね。わかりました、博士のところまで案内します」

 

「ありがとうございます」

 

 さらに一礼。その後助手さんの後ろをてくてくとついて行く。そのついでに周りのものを見渡すがやっぱり研究所って場所によって本当に違うんだなあ、というのが素直な感想である。置いている本の題材はもちろん、研究に必要な機材や地方ならではのポケモンたちもあいまってでまさに十人十色だ。

 

「博士、お客様です」

 

「出迎えご苦労だったな」

 

「ではこれで」

 

 助手さんは頭を下げた後自分の仕事に帰ってしまった。

 それを見送った後咳払いを一つはさみ目の前の博士は口を開いた。

 

「ようこそ我が研究所へ、私の名はナナカマドだ。君の噂は常々耳に聞く」

 

「ありがとうございます。早速ですがアララギ博士からの贈り物です。どうぞ受け取ってください」

 

「ああ、礼を言うよ。ありがとう」

 

 手に持っていた紙袋を博士に手渡し、これでこの仕事は終わりだ。

 さてと、次の仕事さえ終われば今日はフリーだ。と言っても観光なんてしてる場合じゃないんだけど、一旦帰って散歩してあげないとだしなあ。

 

「君はこれからどこに行くのかね?」

 

「へ? ああ、これからコトブキシティの方に向かう予定です。もう一件仕事がありますので」

 

 突然の質問だったがなんとか答えれた。

 あっぶねえ、突然言われるとついテンパってしまうんだよなあ俺。

 

『ショオ』

 

 なに、もう慣れた? うるさいやい。

 

「そうか、最近妙な噂を耳に聞くのでな、気をつけてくれ」

 

「妙な噂?」

 

 この仕事柄結構情報量はあるのだがこの地方でそんな気をつけるような情報なんて聞いた事が……いや待てよ。

 

「ギンガ団、と言う組織団体を君は知っているか?」

 

 




それは漫画や小説でよくあるありふれた事故だ。
道路に飛び出した子供の目の前に信号無視をして突っ込む軽四の車。それを目の前で見ていた俺の体はいつの間にか動いていて数秒もすれば体は宙を飛んでいた、と言ってもその時にはもう意識なんてなかったんだろうけれど。

そう、ここで俺、篠崎奏多の人生は終わりを告げたはずだったのだ。

「ショオオ!! ショオオオオオオオ!!!!」

かん高く響く生き物の声、聞いたことのない何かの鳴き声。
死んだはずの俺には一生聞こえるはずのない生物の声で、俺はゆっくりとその瞼を開けた。

目を開けて最初にその瞳が捉えたものは、虹だった。
見たこともないほどにはっきりと、そしてこれまでにないほどに綺麗な虹の絶景が目に映った。

「ショオオ!」

先ほども聞こえた鳴き声は俺が目を開けたことに気づいたのかまたその奇妙な声で鳴いた。
なんなんだこの声は、そんな動物いたっけ……?

「え?」

赤い翼、虹色の羽。
その巨体で俺を上から覗く大きな真紅の巨鳥。まるでそれは俺が生前にやったあるゲームに登場する幸福の象徴。

「ショオーーッ!!!」

間違いない、これは嘘でもなんでもない真実だ。
俺のことを上から覗いているのは間違いなくホウオウだ。
生を司り、数多ある奇跡の体現者。海の神と言われたルギアと対をなすポケモン。
俺が生前、一番好きだったポケモンが今、目の前にいた。

「ショオ」

俺が覚醒したのを確認したのかホウオウは自分の後方にある何かをそのくちばしで噛んで俺の頭上に落とした。

「イッテ!? ってこれモンスターボールか?」

「ショオオ!」

おいおいまさか冗談だろ?
まさかお前を捕まえろとでも言いたいのか?

「ショオオッ!」

心の声に返事をするが如く鳴いたホウオウは我慢できないと言わんばかりに俺が握っているモンスタボールの中央のボタンをくちばしで押した。途端モンスタボールは開きホウオウを内包した後地面に転がり三回揺れた後ゆっくりと停止した。

「……まじで?」

これが俺とこいつの出会いにして冒険の一ページ目である。
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