死んだと思ったら目の前にホウオウがいて配達便やることになったんだが   作:ベルセリア

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一通目 想いを運ぶ七色配達便 二枚め

「思ってたよりも大きいなここ」

 

 ナナカマド研究所から数刻、俺は無事コトブキシティにたどり着いた。

 どの地方の都市もそうだが行ってみるとゲームで体験した時には感じられないほどに大きい。具体的に言うとタマムシシティはマジででかい。ゲームだと軽く歩いてるだけで街全貌が見られるが実際だと丸一日歩いた程度じゃ絶対回りきれない気がするぐらいには大きい。

 それは現在目の前にあるコトブキシティも例外ではなく入り口時点で既にその大きさを示されているようなインパクトがある。

 この大きさだと家探すのめんどくさそうだなあ、となるのが一つの決まりみたいになっていたりもするがまあ仕事だし。

 

「ギンガ団、ねえ」

 

 あの研究所で聞いた話、それはダイヤモンド&パール、およびプラチナに出てくる組織の名前だった。まさかタイミングが被るとは思いもしなかったが、まあ主人公たちがこの街で起こすイベントの手前だったりはしないはずだ。そうでない限り俺がギンガ団に遭遇することもないだろう。残念なことに俺は主人公たちではないので面倒ごとには手を出したくないのだ。

 

『ショオ』

 

「いや面倒ごとに突っ込まない理由の一つお前だからね? なんなら七割ぐらいお前だからね?」

 

 さっきナナカマド博士から聞いた限りではまあ当然のように人のものだのポケモンを奪う過激派組織。うろ覚えの中だと確か新世界の創造だとかを謳っていた気がする。そのために空間と時間を操る二匹のポケモンを呼び起こしそうとしているはずだ。まあ最後は主人公たちの手で終わるはずだがそれでも被害が出ていることには変わりない。

 とまあ話はそれてしまったがそんな組織にこいつを見せればほぼ確実レベルで狙われる。それだけは避けたい。

 

「穏便に、だな」

 

 俺はただの配達者、想いを運ぶだけの人間である。

 頑張れ主人公、心の中でエールを送って俺は街に入った。

 バッグの中からファイルを取り出しその中にある住所の情報確認。今回の届け先はこの街の北あたりの一軒家らしい。そうと分かれば善は急げ、早速向かおう。

 

「こういうとこくると折りたたみ式の自転車とか欲しくなるんだよなあ」

 

 なんせこんな広い街をただ歩いて探すとなるとそれなりに労力を消費する。誰かさんは大っぴらには姿を出せないから街の探索には向かないし。

 

『ショオオッ!』

 

「事実でしょうが。いいわけがありますか? 言ってみなさい?」

 

『ショオオ……』

 

「素直でよろしい」

 

 だから欲しくなるのだがいかんせん値段が高い、いやまじで。子供じゃなくてもあんな値段に早々手は出せないって。ゲームの最大所持金オーバーの値札まじで貼ってるんだもん。自転車ってそんな高価なものでしたか? あれですかサイクリングロードにいる人たちはみんな金持ちかなんかですか。

 

「世の中辛い、はっきりわかんだね」

 

『ショオ』

 

「そこは素直にうなずかなくていいから! 悲しくなるから!」

 

『ショオオ!』

 

「こういう時に限って! ……ん?」

 

 こいつに対して叫ぼうとした時、目の前のポケモンセンターの横の街路灯の裏に隠れている人物がいたのが見えた。なんか見覚えというか既視感があるというか、嫌な予感しかしないというか……

 

「ハ、ハッサム」

 

 あ、間違えた。ハッサムじゃなくて

 

「何!? なぜ私が国際警察のハンサムだとわかった!?」

 

 誰もそこまで言ってないんだよなあ、なんなら俺名前間違えてるんだよなあ。でもって本物なのかあ思ったよりも目の当たりにするとすげえ不審者っぽいことしてんなあこの人。

 

「私の正体を見破るとは……君は只者ではないな!」

 

「いいえ只者ですただの一般人ただの配達員ですので見逃してくださいいやまじで」

 

「改めて名乗ろう! 私は国際警察の者だ。皆私の事はコードネームのハンサムというよ」

 

「……よく友人にお前は人の話を聞かないな、とか言われませんでした?」

 

「それはそうと君、人のものをとったら泥棒、という言葉を知っているかね?」

 

「本当に話聞かないよこの人」

 

 それはそうとこのセリフ、嫌な予感しかしない。どこかで聞き覚えというか見覚えというか、なんならこれって主人公たちに言うセリフなんじゃ。

 

「このシンオウにも人のポケモンや物を奪う悪い奴らがいるらしい」

 

 まじかあ、よりにもよってこのタイミング。フラグって折るためじゃなくて回収するためにあるんだなってことを今知った。

 

「君も何か情報を掴んだら私に連絡してくれ」

 

 それだけ言い残すと再び街路灯の陰に隠れてしまった。

 

「……まさかな」

 

 これがフラグじゃないことを祈りつつ、俺は家探索を続けた。

 

 

「見つかった、ここか」

 

 あれから数十分と案外早くお届け先は発見できた。

 ものをバッグから取り出してから早速ドアを数回叩く。程なくして目の前の扉ドアがゆっくりと開かれその奥から女性と女の子が姿を見せたのを確認して軽く一礼し挨拶する。

 

「初めまして! 私七色配達便です! 本日はジョウト地方在住のハナヨ様からお子様に向けてお届けものがあり寄らせていただきました」

 

「母さんから?」

 

「はい、こちらになります」

 

 先ほど取り出したピッピ人形入りの紙袋を手渡す。

 それを受け取り内容物を確認した後薄く笑った。

 

「母さんたら本当にヒナに甘いんだから。ヒナ、おばあちゃんからの贈り物よ」

 

「おばあちゃんから!? なになに!」

 

 母親の手から荷物を奪い取って中身を確認した途端効果音が聞こえそうな笑顔を見せてくれた。

 そうそう、こういう笑顔が見れるからこの仕事はやめられないんだよなあ、こっちも苦労して持ってきた甲斐があるって思えて次も頑張ろうってなるんだよ。

 

「遠路はるばるありがとうございます」

 

「ありがとうございます!」

 

「いえいえ、これが私の仕事ですので。それでは!」

 

 最後にもう一度頭を下げた後俺はその家を去った。

 

 

「疲れた、明日何があったっけ……」

 

 仕事も終わり後はやろうの空中散歩が終われば帰ろうと思っていたが思いの外疲れた。

 確か明日はフリーだったような気がするんだよな、バッグの中から手帳を取り出した明日の予定を見ても空白だ。よし、今日はコトブキシティのポケモンセンターに泊まろう。いや本当に助かる。なんせ宿泊費無料で利用できるのだ、俺みたいな人間にはとても優しい世界である。

 

『ショオ?』

 

「今日はポケモンセンターに泊まることにしました。ので今日は帰りません」

 

『ショオオオ!!!』

 

「明日には帰るから我慢してくださいいや本当に今日は疲れたんだって」

 

 これからカントーに戻ろうとかどれだけ遅くなると思ってるんですか? 絶対日は跨ぐ事になるから、夜中の空なんていまの服装でいたくないよ寒すぎて凍え死にそう。自ら死地に突っ込むほど俺は勇敢ではない。

 

「街がでかいだけあってでかいなここのポケモンセンター」

 

 まだ街路灯にひっついてる人はともかくしてたどり着いたポケモンセンターは昼間見た時も思ったがやはりでかい。これだけでかいと利用者も多いんだろうなあ。羨ましい。

 

「すみません、今日泊まりたいんですけど」

 

「はい、宿泊ですね。鍵はこちらになります」

 

「ありがとうございます」

 

 受付のジョーイさんに鍵を預かった後鍵についたタグの部屋に赴く。

 さて、部屋に着いたらまずは風呂に入ってこの冷え切った体を温めてそこから食堂でご飯食べてからゆっくりと眠りたいなと今後の予定を頭の中で組み立てつつ俺は部屋の鍵を開けて部屋に入っていった。

 

『今日のニュースです、コトブキシティにて強盗事件が発生しました。犯人は見つかっておらず被害は──』

 

 

 

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