死んだと思ったら目の前にホウオウがいて配達便やることになったんだが 作:ベルセリア
「なんで俺がこんなことを……」
「ショオオ」
翌日の早朝、早速行ってこいと自分の家のはずなのに跳ね出されてやむ終えずジョウト地方の南にあるアサギシティに向かってホウオウが飛んでいるのだがいまだに納得いかない。
何が嬉しくてこんな早朝から寒い空を飛行しないといけないのか。あいつもあいつでなんで自分でやらずに俺に投げてきたのか意味がわからない。薬をもらうとこまでやったのなら自分で渡せばいいじゃん。
「ショオ」
「そう思うよな? 俺間違ってないよな」
理由を聞いても仕事が終わったらの一点張りで全然教えてくれないしルギアに聞いてもゾロアークに聞いても沈黙を貫き通してる状態でこちらの選択肢は言われた通りこの薬の入った瓶をアサギの灯台でデンリュウを看病してるだろうミカンに渡す以外の選択肢がないのだが。
「主人公の仕事をなんで俺がしないといけないんだ」
そもこれは金銀またはHGSSの主人公がやるべきことで俺がやるべき仕事ではない、俺に関してはジム戦してるわけでもないのでもはや全くの無関係ですらある。それをどうして俺がやらなくちゃいけないんだ。
「ショオオ」
「もう見えてきた? どれどれ」
ホウオウの背中から顔を出して地上を見ると無駄にでかくそびえ立つ塔が見える。現在朝の五時、周りはまだ朝日が登っておらず暗いにも関わらずあの灯台から光が出ていないあたり達也の言っていることは本当なのだろう。
「じゃあ適当なとこ探して降りるか、どこがいいかな……」
とりあえず上から降りれそうでかつたいしてバレなさそうな場所を探す。不幸中の幸いか朝だから少し気をつけていれば特にバレる心配もないし。
「砂浜の端っこあたりにしよう。人もたいしていなさそうだ」
「ショオ」
俺の指示に従いスピードを緩めつつ砂浜に向けゆっくりと降下を始めるホウオウ。降下し始めたおかげで見えて来た砂浜はやはりというべきか人がいない。海岸沿いになれば朝釣りしている人たちはいるだろうが距離があるし朝なだけに視界もよろしくないのでバレはしないだろう。
「ホウオウ、じんつうりき」
ある程度降下して降りても平気な高さでホウオウのじんつうりきで降ろしてもらった後ホウオウをモンスターボールに入れる。達也の見張りとしてロップさんは家に待機してもらっているので今回は俺一人だ。夜の砂浜を一人で歩くのってなんか寂しいな。
「さて、さっさと終わらせますか」
というわけで早速灯台に向け歩き始める。
今降りたのがアサギシティの西側にある砂浜に対してアサギの灯台は東側であり反対のため結構時間がかかる道のりだ。とはいうものの同じ町内なので大した距離には感じない。
「ここで釣ったコイキング進化させてギャラドスにしてたなあ」
最初ワニノコ以外を選ぶと波乗り要員って大抵ウパーとかになるが残念なことにゲットもしてなかったのでコイキングをふしぎなアメで無理やり進化させてギャラドスにしてた思い出がある。が、悲しいことにもう少しストーリー進めると赤いギャラドスが出てくるからそこでお別れするという。
『ショオオ』
「バカじゃないやい!」
いやしょうがないじゃん子供の頃なんて強い方に惹かれちゃうってレベル高くて色が違う方に惹かれちゃうって! 男の子に人気な赤色な方に行っちゃうって!
『ショオ』
「単純っていうけどお前も赤なんだからお前好きなやつも単純ってことになるんだぞ!? 嫌だろ!」
『ショオオ』
「……くそう、否定できない」
思えば俺赤いポケモン好きなのかあ、そういえば俺最初の御三家だいたい炎ポケモンな気がする。違うかったのBWぐらいか……?
『ショオ』
「え? もうついた?」
嘘だろホウオウさんいくらなんでも早すぎますって……まじ? もうついてんだけど。
「俺そんな早く歩いてた?」
『ショオオ』
「まじか全然気づかなかった」
今からこれ登んのかあ、でかいなあ長いなあ。しかも中は迷路構造でトレーナーの修行場だ。俺今回ホウオウしかいないからバトルできないよ。こんなので何時間かければ最上階にたどり着けるんだろうか。面倒だなこれ、秘技ホウオウを使いたくなる高さ。
「使うか」
『ショオ!?』
「すぐ飛んでじんつうりきであげてくれれば万事OKすぐひっこめればバレはしないでしょ。てなわけでほい!」
出るなり空高く飛翔してすぐに俺をじんつうりきで引き上げる。これが人間版空を飛ぶ(他力本願ver)。楽しいけどホウオウの背中から見下ろすのとは全然違って恐怖しか感じないので下を見てはいけません、七色配達便との約束です。
「はい到着!」
とはいうものの全面ガラス張りの前に立っただけなんだが。確か裏の方に中に入るための扉があったはずだ。内側から鍵を閉められてるだろうから真っ先にやることはミカンに気づいてもらう事なんだが……どうやらその心配はないらしい、中からこちらに気づいてくれたようでこちらに手を振ってくれてる。そんでもって降り終えた後裏口に向けて歩いていくあたり俺の要件も理解してくれたようなので俺も裏口に向かう。
「おはようございます」
向かうと既に扉は開いておりミカンが出迎えてくれた。
実はというか大抵の主要人物とは面識がある。これでも全国回ってるような身だし、なんやかんやで人と関わる職なので意外と顔が広いのです。
「おはよう、元気にしてた?」
「はい。ところで今日は何のご用ですか? 私今……」
「デンリュウの看病、だろ? そのために来た」
「え?」
「はいこれ」
バッグから昨日受け取った透明の瓶を彼女に渡すとふしぎそうに受け取った。
「これは?」
「タンバシティの薬じゃない? 俺が直接受け取ったものじゃないからよくわかんないけど」
盗んだものじゃないとしか言われてないからわからないが普通に考えればタンバシティの薬なのだろう。むしろタンバシティ以外でデンリュウ直せる薬があるのだろうか……誰かさんの燃えかすなら一発で治るか。
『ショオオ!』
そんなすごいものをたかが風邪を引いた俺に空中散歩してほしいからなんて理由で使わないでほしい。
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「俺がもらって来たわけじゃないけどどういたしまして。さて俺はこれで」
「あ、少し待ってください。朝ごはんまだなんじゃないですか?」
「そういえばまだだったな」
野郎に起きるなりある程度の準備したらすぐ出されたので当然食べてない。しかも道中は文句をぐちぐち言ってたもんだから空腹なんて感じなかった。
「なら食べていってください。ちょうど今作ってたところなんです。ホウオウの分のフーズもありますよ」
『ショオオ! ショオオ!』
「本当? ならお言葉に甘えて」
やったあ、最近自分で作る料理に飽きが来てたところなんだよなあ。んでもってそこ、俺もそうだからわかるけどストレートに飽きてたからすごく嬉しいなんて言わない、俺泣くぞ。
「はあ、ほい、本日三回目の登場です。カモンホウオウ」
「ショオオ!」
嬉しいのはわかるけど翼を広げて感情表現しないでほしい。灯台のライトルームは家ほど広いわけでも高さがあるわけでもないんだから。
「久しぶり、ホウオウ」
「ショオ!」
「元気にもほどがある」
下心満載かよそういうのダメだと思うよ。女の子に嫌われちゃうよ。
「ショオ!」
「今奥に風邪引いてるデンリュウいるんだから静かにしてくれ」
デンリュウもこんな大きい声を朝っぱらから聞かされてたまったもんじゃない。ホウオウの声無駄に響くから風邪引いてる頭には辛い。実体験済みなのでよくわかる。
「先にアカリちゃんに薬をあげてくるのであちらで待っててください」
「了解」
彼女に言われた通り部屋に入った後デンリュウがいる場所とは反対にある人間が暮らせるスペースの方に足を向ける。
ミカンの好みゆえなのか灯台ライトルームなのにそれなりに可愛くデザインされた部屋。キッチンを見ると調理された具材が見えるあたり料理をしていたのは本当のようだ。
「ショオオ」
「待ちきれないのはわかるけど待とうな」
ミカンにとってはデンリュウの方が優先なのである。なんせ自分が守っているジムからすら離れてこんな場所でずっとデンリュウの治療に専念しているほどだ。アサギシティが港町でかつそのデンリュウが彼女以外からの施しを受けたくないという性格なのでしょうがないといえばそうなのだが。
かくいうそのデンリュウは彼女からもらった薬をもらって元気になっていた、すごい効き目だなあの薬。ゲームでもすぐに元気になってたし効き目はお墨付きなのだがさすがは秘伝の薬である、その後の副作用もお墨付きなのか朝早いのとが合わさってぐっすりし始めたんだけど。
それを見て一息ついた後ミカンがこちらに向かって来た。
「デンリュウはもう大丈夫そうだな」
「ショオオ」
「はい、ありがとうございます」
「あ、いえ、どうも」
改めて一礼されたのでなんでかこちらも一礼してしまった。
「それでは料理を作るのでもう少し待ってくださいね」
「ショオオ!」
お前が返事をしてどうすんの。
心の中で突っ込んでいるうちにミカンは早速料理を開始していた。
徐々に部屋に広がるいい匂いに心が躍る。早く食べたいなあ、空腹だの匂いだののせいで欲求が深くなっていく。あの料理はさぞ美味しいんだろうなあ、あれだ、空腹は最高のスパイスってやつだな。
「はい、出来ました」
「ショオ! ショオオ!!」
お待ちかねの料理がテーブルに並んでいく。
その料理は俺が元いた世界で言う所の洋風のものだ。パンにスープ、サラダは普通の野菜刻んだものの横のマカロニサラダが少々、更にベーコンエッグと朝食のど定番だ。やばいうまそう。
「はい、ホウオウもどうぞ」
「ショオオ!!!」
目の前に置かれたフーズの山に我慢の限界だったのかすぐに食いかかるホウオウ、行儀が悪いにもほどがある。せめていただきますとか言いなさいな。
「ふふ、それでは私たちもいただきましょう」
「いただきます」
「いただきます」
とりあえず喉を潤すためにスープを一口……オニオンスープか、素直に賞賛できる味。冷え切った体にはさらに効いていく。続いてマカロニサラダ、俺前の世界から結構好きなんだよなこれ、ということでまた一口。
「うまい」
しつこくない味の中にあるマヨネーズのまろやかな旨味。一緒に口に入れる野菜によっていろんな食感も味わえる。これだよこれ、マカロニサラダはこれがいいんだよなあ。
「そういえばジム戦大丈夫なの?」
もう治ったとはいえデンリュウが風邪をひいていたってことはすでにライバルと仕事を奪ってしまった主人公が待っているはず。普通なら謝罪ものだったりするはずなのだが。
「チャレンジャーはいないようなので大丈夫です」
「へ? そなの?」
「はい、ここ三日間アカリちゃんの看病をしていましたがジムからの連絡はありませんでしたから」
「それで? 説明してくれるんだろうな、達也」
「あ、終わった? OKOK」
朝ごはんを食べ終えた後日が昇る前にさっさと帰ってきた俺とホウオウ。帰ってきたらまたゲームをしている達也に問うた。
「ジムの状況は? チャレンジャー云々聞いたか?」
「いないって言ってた」
おかしいのだ。
デンリュウがああなってしまった以上イベントが起きているのは確定。まして三日前ともなれば既にライバルはもちろんのこと主人公も訪れてはいるはずだ。そこから主人公は一度あの灯台を登りミカンと会うはずなのに聞けばそんな人はきていないときた。これじゃまるで。
「主人公がいないんだ」
「……なんて?」
「だから、金銀の主人公がこの世界にいないんだって」
主人公がいない? 他の地方の主人公たちは存在するのにジョウトの主人公はいないっていうのか?
「前ヒワダタウンに行ったらちょうどロケット団が居たんだよ。ヤドンのしっぽ目当てのやつらな。それで主人公見れるかもって思ったらもうガンテツのおっさんが井戸に突っ込んで行くから俺が止めたんだよ」
「それも主人公の」
「そうなんだよ。それでおかしいなって思ったからワカバタウン行って聞き回った結果──今年旅に出た十歳の少年なんていないって事だったんだ」
「どういうことだ? だって現にイベントは各種ちゃんと起きてるんだろ?」
「多分だけど、本来主人公が捕まえるはずのルギアとホウオウが俺たちを引っ張ってきて俺たちの手持ちになったしまったことが原因じゃないかって思うんだ」
「とまあそういうことでこれから起きるだろうチョウジタウンとラジオ塔ジャックその他諸々の被害が出る系のイベントは俺たちで潰すってことだ、OK?」
台風の接近に注意してください。
テレビの向こう側のアナウンサーさんがそう告げる。
なんでも突如として出現した特大規模の台風が現在カントーに接近してるんだとかなんとか。
「珍しいこともあるもんだな」
本当に突然現れた通常じゃあり得ないほどの台風は現在ジョウト地方屈指の難所シロガネ山付近まで接近し現在はスピードを落としているようだ。これだけでもこの台風が異質なものだというのがわかってしまう。
「台風だってホウオウさんや」
「ショオオ……」
話をテレビを一緒に見ていたホウオウに振ってみるが肝心の法王はテレビから視線を外さずじっと見つめている。
もしかしてこのアナウンサーさんが好みなの? 意外な一面があるもんですなあホウオウさんよ。
「ショオオ!!」
「へ?」
なんか急に叫んだと思ったら俺をじんつうりきで持ち上げて背中に乗せたと思ったら天井を突き破って空に出て方角を確認し始めある方向を向いた。
「待て待て待て待てその方向は台風のほうこ──」
「ショオオ!!!」
「なんでえええええええええ!!!」
俺を落とさないようにじんつうりきで固定した上でいつも運送するときのスピードではない超高速飛行。
「いや幾ら何でもこのスピードで突っ込むのはまずいってもう目の前なんだけどおおおおおおおお!!!」
目に見えるほどの大竜巻を目視した途端さらにブーストするホウオウ。死ぬ! 絶対死ぬって幸福の象徴さん自分で生き返らせたのに殺す気ですか!?
「ショオオ!!!」
「しっかりつかまってろっていう前に突っ込むのやめようぜ! な!?」
そんで無視しながら突っ込むなああああああああ!!!
あ、死んだな、さよなら俺の第二の人生、さよならホウオウとロップさん、楽しかったよ……
「ショオ!」
と思ってたらいつのまにか台風を抜けていた、というよりはこれ台風の目ってやつか?
「ショオオ」
「下を見ろって……あれって」
降下し始めたホウオウに言われた通り下を見て真っ先に目に入ったのは白い巨体とその前に何かが転がっている状況だ。転がっているのはもしかしなくても人間?
「ギャオース!!!!」
「ショオオオ!!!!」
ホウオウを見て咆哮を上げた白い巨体に答えるようにホウオウも声を上げた。
やっぱりだ、間違いない。あの白い方はルギアだ。でもなんでルギアが人なんか……って待て。
「この人、やばいぞ」
一目見ただけでもわかるほど異常なのがわかるほどの容態、とても人間とは思えないほど白く顔は青ざめており、息はかろうじてしているようだがよく保ってるな、普通なら病院の中でやっとつなぎとめられる命が外にあるのだ、長く保つ筈がない。
「ギャオス」
「お前なら出来るだろって、まさか」
「ショオオ」
わかったと返事をしてホウオウは自らの身体を炎で包んだ。
前の世界でいうとこのフェニックスとか鳳凰が行う体を焼くことで転生するのだがホウオウもそれと似た行動をする、そして焼け焦げてできた灰こそが聖なる灰なのだが、もしかしなくてもこの人を助けたくてホウオウを呼んだのか? あの台風はここにいるということをホウオウに伝えるためのものだったのか。
「ショオオ」
無事に終えたホウオウは自らの足元に落ちた聖なる灰をじんつうりきで今にも死にそうな男の体に振りかけるとまるでさっきまでのが嘘のように健康体の体になっていく。
「ん……んー」
体が治ったからかゆっくりと目を開ける男。
「おはようございます、でいいんだよな?」
「ショオオ」
「……は? ホウオウ? おいおい冗談だろホウオウなんて現実にいるわけが」
え、その反応もしかして。
「ギャオース!!!」
「は!? え、ルギア!?」
「懐いなあ初めて会ったあの日。もう何年前だよ」
「はいはい」
「流し方が適当すぎる!」
「お前のせいで死にかけた身にもなってほしい」