ダイナゲートは何を見た。   作:サマシュ

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なんかTwitterで投げて投げてと言われたから……基本pixivと内容は変わりませんが、どうぞ。

ダイナゲートをすこれ、崇めよ、そして奉れ(?)












案山子編

我輩はダイナゲートである。名前はまだない。ただ気がつけばこうやって記録を残せるぐらいにはAIが発達していたということだけは分かる。我輩が今とてとてと歩いている場所は鉄血工造というところであり、所謂我輩の故郷だ。いや、故郷というのは言い過ぎただろう、ここは我輩の自宅であると言い換えよう。家族が居り仲間が居る。そんな中に我輩は存在している。

 

それはともかく、我輩は今日も今日とて警備の為に施設周辺を歩き回っている最中だ。数多くの人形や機械、そして人間の職員とすれ違い挨拶代わりの会釈をしながら歩いている。我輩は工場を抜けた先、丁度広場になっている所へと抜け出した。ここは日当たりが良く、多くの職員が昼御飯片手に同僚と談笑しながら休憩している様をよく見掛ける。我輩がその中を通り抜けていると、職員たちは「ポチやポチや」やら「タマちゃーん」やら「ノッドー」だの我輩に向けてよくわからぬ事を言ってくる。再度言うが我輩はダイナゲートである。そんなもので呼ばれる筋合いなどないのだ。

 

我輩は職員達を無視して広場を少し抜けた後、ちょっと日陰が多い所へとやって来た。そこは余り誰も寄り付かない場所であり、一番不審者が潜みやすい場所である。我輩はここで休憩を兼ねて巡回も行っている。何かあったらすぐに仲間へ通報する為なのだ。

 

「ふぅ……」

 

ふと、日向と日陰が入り交じったベンチに座っている人影が見えた。我輩のアイカメラで凝視してみると、そこには黒髪のカールがかかったツインテールの女性が居た。我輩は彼女の名前を知っている、『スケアクロウ』だ。この鉄血工造が誇るハイエンドモデルなるものである。何時もはマスクをつけているのだが、今は何故か着けていなかった。

目の前の彼女は休憩でもしているのか、飲料水が入っているであろうペットボトルを両手で持ってぼんやりと空を見ていた。

 

「おや、貴方は」

 

スケアクロウが我輩に気が付いた。さて、どうしたものか。我輩はそのまま何処かへ行けば良いのだが、スケアクロウは何かを期待したような視線を投げ掛けている。そして彼女は我輩より上位の権限を持つ人形だ。もし彼女に何かお願いをされてしまえば拒否なぞ出来なくなる。

 

「こっちに来ますか?」

 

我輩のAIがスケアクロウの元へ向かえと命令を下してくる。我輩はそれに抗うことは不可能なため、膝をぽんぽんと叩くスケアクロウのところまで行く。

 

「ふふ、可愛らしい子だこと」

 

済まないがそれは貴方の指示に従っただけだ。という我輩の言葉は彼女に通じる筈もなく、抱き上げられて膝に乗せられた。

彼女の膝は我輩の感覚センサーが柔らかいと認識するぐらいには心地好い。もし我輩が猫であれば微睡みの中へ一直線だろう。

 

「本当、いい日和ね…」

 

彼女はそう感慨深そうに呟いた。我輩は体の構造上、上を向くことが出来ないため彼女の表情は伺い知れない。だが恐らくは穏やかな表情でもしているのだろう。

 

「……少し独り言をさせて頂戴」

 

我輩は彼女の言葉に上部の機銃を動かして反応する。彼女はそれを肯定と見たのか、話を始めた。

 

「時々仕事があって、時々何処かへ外出して……新しい趣味を見つけて。私が作られた当初では全く想像なんて出来なかったわね」

 

スケアクロウが我輩を撫で始めた。優しい手つきのそれは我輩を安心と快楽の狭間へと導いてゆく。我輩は機械であるから眠るということは定刻にならなければ出来ぬ行為であるが、それでも我がAIが定刻だと錯覚するような気持ちよさであった。

 

「最近なんて何処其処のケーキは美味しいとか、何とか先生の本は面白いとか、職員達と下らない事ばかり話してる…」

 

彼女の撫でる手が止まった。

 

「けれども」

 

ふぅ、と彼女は一息ついた。

 

「案外、悪くないものね」

 

私らしくはないですわね…。と言いながら彼女は我輩を抱き上げて地に降ろした。どうやら何処かへ行くつもりのようだ。我輩は彼女を見上げた。もう行くのかと。

 

「まだ撫でなれたりないのかしら?」

 

そうではない。

 

「……後でね?」

 

彼女はそう我輩に伝え、工場の方向へ歩いていった。その足取りは何だか軽いようなそんな風に見えたと言っておこう。

 

我輩はまた巡回を始める。何時も通りの日常へと戻るのだ。我輩はダイナゲート。多少の個体差はあれど、任務を放棄するのは禁止されているのだ。

 

もうそろそろ日が沈む。我輩は夜の巡回の為にも、早々と動き始めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイナゲートは何を見た。

ダイナゲートは新しい生き方を見つけた案山子を見た。

 

 









この作品の裏話。

ダイナゲート主体の作品ねぇかなって色々漁っても、全くと言っていいほど誰も書いてなかったから書くことになった。皆ダイナゲートをすこれ。
因みに作中のノッド呼びは会釈を和英してみたら出てきたので採用しました。
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