壊尽のプリンシパル ─落第騎士の英雄譚─   作:嵐牛

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第68話

 「やられた・・・・・・っ!」

 

 思わず手で口を覆い呻く一輝。

 《蜃気狼》とは緩急あるステップで残像を発生させて相手を欺く技。そう、()()()。考えてみればダンス由来の蹴りやステップなど足技に特化した彼との相性は抜群。

 相手の攻撃を全て受け切って捻じ伏せる印象が強すぎるため頭から抜けていたが、こんなうってつけの技を彼と戦い続けた1年間で盗まれていないはずがなかった。

 

 (あ、かん、やられた。モロに喰ってもうた)

 

 『こっこれはどういう事だぁああっ!? 確かに諸星選手の槍に貫かれたかに見えた王峰選手まったくの無傷! リングに倒れたのは諸星選手です!』

 

 『今のは黒鉄選手の《蜃気狼》・・・・・・! どうやら王峰選手は破軍にいた時に技を盗んでいたようです。挑発に乗ったと見せてのフェイント、隠し球を出すタイミングとしてはこの上ない物であったかと』

 

 しかし諸星の獣の如き戦闘本能は凄まじかった。

 貫いたはずの槍に手応えがないと見るや彼は全身に魔力防御を展開、どこからか飛んでくるかもしれないカウンターに全力で備えており、そして機能したその備えは確かに一真の蹴りを受け止めた。

 では何故それをモロに喰ったと表現したのか?

 単純な話。

 同じように魔力で強化された一真の蹴りを、彼の防御は到底防ぎきれなかったからだ。

 

 「ぐううう・・・・・・っ!!」

 

 倒れているという無防備な体勢から起き上がろうとするのは武人の本能だ。どれだけダメージを受けていようとその行動だけは身体が反射的に行う。臓腑を杵で餅がわりに突き回されたような苦痛を押して立ち上がろうとした瞬間、諸星の上空には既に一真の脚が張り上げられていた。

 

 『再び強烈な踏み付けぇええっ! 諸星選手ギリギリ転がって躱す! しかし王峰選手止まらない! 立ち上がろうとする諸星選手にローキックの雨霰!!

 低く屈んで槍でガードするもまったく勢いが止まりません、彼の脚は何で出来ているんだぁっ!?』

 

 立ち上がれない。

 ガードの上から叩き潰されるような、いや、このままだと確実に叩き潰される重さの蹴りの雨。

 ただでさえ腹にキツいのを貰ってゴッソリ削られた体力が根刮ぎ持っていかれようとしている。

 槍と激突した蹴り足が引き戻されると同時、諸星は盾にしていた槍の石突きで下から振り上げるように一真の股間を狙う。

 だが窮屈な姿勢から出される攻撃は手段も狙いも限られる。

 一真は引き戻そうとした足で股間を打とうとしてきた槍を踏んで地面に縫い付け、踏んだ槍を足場に逆の足で諸星の顔面を撃ち抜こうとした。

 踏まれた《虎王(とらおう)》は防御に使えない。砲弾のように迫る一真の爪先を、諸星はしゃがんだまま遮二無二仰け反って回避した。掠った鼻先から皮膚が焦げる匂い。

 だがそこで一真の攻撃は終わらない。極限まで戻りの隙を削ぎ落とした一真の蹴りは諸星が回避を成功させた時には既に逆の足の発射態勢を整えている。

 そして叩き込んだ。

 まるで腕の神経が槍と繋がったように感じるような衝撃。

 槍が解放され辛うじて防御が間に合った諸星が、凄まじい勢いで後方に吹っ飛んだ。

 ─────いや、吹っ飛び過ぎていた。

 

 『王峰選手の蹴りを諸星選手ギリギリでガード! とんでもない威力です、身長180を超える鍛え抜かれた偉丈夫がボールのように宙を舞う!!』

 

 『いえ。あれは確かに恐るべき蹴りですが、あそこまで吹っ飛んだのは彼自身の意思によるものかと』

 

 「なるほどね。()()()()

 

 「ええ。本当に追い詰められてる証拠だけど、冷静さは無くしてないわ」

 

 一輝やステラたちは理解していた。

 諸星雄大は一真の蹴りの力も利用して自分から大きく後ろに跳んだのだ。

 狙いは場外への落下。

 リングの外に出た選手は10カウントまでに戻らないと敗北の判定を下されてしまうが、リングアウトしたその選手に対する追撃も許されていない。

 この10秒は即ち不可侵。それを利用して諸星はリングの外でゆっくりと息を整える算段なのだ。

 それだけの時間があれば仕切り直しには充分。

 ひとまずは芯に喰ったダメージを抜かねばならないと宙を舞いつつ10秒間の使い方を考えていた諸星だが、結論から言えばその考えは彼の前では甘すぎた。

 まさに場外に落下しようとしていた瞬間に、ガクン、と諸星の身体が引っ張られる。

 吹き飛ぶ力と引かれる力が拮抗し一瞬空中に静止した彼は恐ろしいものを目の当たりにしていた。

 自分がわざと大きく吹っ飛んだと見るや、王峰一真は低く身を屈めて地面に両手をついて回転しつつ前進。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「《躰道(たいどう)》!!」

 

 刀華が叫んだ。

 師匠の南郷寅次郎と姉弟子の西京寧音、古武術を主体とする者たちに共に鍛えられているからこその理解だった。

 しかし厳密には違う。確かにこの体捌きは躰道(たいどう)────体軸の回転やフットワークに大きな特徴が見られる古武術の動きだが、躰道に相手の足首を掴む技はない。

 これは()()()()()()

 バレエを基礎に置く蹴り技偏重のスタイルの弱点を補うために、共通点が多く相性の良い躰道の技術を師と姉弟子に叩き込まれた結果。

 諸星がその身に受けたのはその一端なのだ。

 

 前に身を大きく乗り出すように諸星の足首を掴んだ一真は、そのまま重心の操作と筋力で身体を起こし強引に諸星を空中から引っこ抜いた。

 そのまま大きく一回転。ハンマーのように振り回された諸星を強烈な遠心力が襲う。

 そして横の回転は勢いそのまま縦の回転に変わる。

 回転により増幅した破壊力を諸星に乗せてリングに叩き付ける瞬間、一真は自らのしかかるように跳び上がり自分自身の重量すらプラスした。

 普通の人間には不可能な動き。

 それは並外れた体格とそれに由来する筋力、そして『回る技術』を突き詰めた彼にのみ実現可能な『投げ技』。

 

 「《迫投鷲(はくとうわし)》──────ッッ!!!」

 

 鉄にスライムをぶつけたような音。

 筋力プラス遠心力、加えて巨漢の質量というおよそ人の身で出し得る最悪の破壊力で諸星は石のリングに叩き付けられた。

 臓腑どころか筋肉まで潰れた。

 肋骨が圧壊する音が体内から聞こえてくる。

 食い縛った歯の隙間から血を噴きながら、しかしそれでも諸星は耐えていた。

 

 (受け身、が、機能、せん・・・・・・・・・・!!!)

 

 『無慈悲! 無慈悲な打擲ッッ!! リングアウトすら許しません!! 場外に出ようとしていた諸星選手を恐るべき剛力で釣り上げてしまいました!!』

 

 『うわ大丈夫か!? 凄い嫌な音したぞ!!』

 

 『骨イッとんちゃうんかアレ・・・・・・!?』

 

 「投げ技。驚いたけどそうね、ダンスが由来なら()()()()()()()()()()()()は持っていて当然だわ。・・・・・・というかあの動き、あの距離とスピードに追いつくのね」

 

 「最小限の動作で最長距離を移動するために用立てられた動きというのもあるけど、同じ動きでもカズマの手脚の長さだと一歩一歩が馬鹿みたいに大きいんだ。実際に相手にすると、退くにも来るにも本当に瞬間移動されてるように感じるよ」

 

 呼吸すら儘ならない。

 ()()()()()()()()()

 とにかく地面を転がり、振り下ろされた脚を皮膚に掠らせながら気力だけで起き上がる。しかし出来たのはそれだけだった。

 これ以上被弾すると本当に終わるが、今の投げを喰らったのが本当に痛い。身体が呼吸機能を取り戻すまでの時間を稼がなければどうにもならない。

 そこで諸星が取った決断は──────

 

 「うおおおおおおおおっっ!!!」

 

 槍を盾のように前に構えて腰を落とす。

 次いで全ての魔力を放出する事で、身体を包む鎧を作る事だった。

 

 『な、何という事でしょう! あの《七星剣王》が! 日本で1番強く誇り高い騎士が! 意地も見栄も捨てての完全防御態勢だァァァッッ!!!』

 

 腹に喰った一撃と投げによる骨折含めた全身のダメージ。ゴッソリと体力を抉られた今の状態では、防御は当然として足を使っての回避すら困難だ。だから致命的なダメージが落ち着くまではこうやって凌ぎ切るしかない。

 諸星とて一真の破壊力は骨身に沁みている。

 かつて事故で失った両脚の再生手術から復帰する為の主治医の方がやめてくれと懇願するような地獄のリハビリを弱音ひとつ無くやり遂げた彼が腹に括った『受け切る』覚悟は、まず間違いなくどんな痛みにも折れはしないだろう。

 ただし相手は王峰一真。

 潰して折るのは彼の十八番(おはこ)

 諸星の意図を理解した一真は、完全に己の勝利を確信した顔をしていた。

 

 「せいぜい耐えろよ─────《轢威鳥(ひくいどり)》」

 

 まずは一撃。

 敵の反撃を考慮しない渾身の前蹴りが、盾にされた槍ごと諸星の砕けた肋骨にトドメを刺しにいった。

 

 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!?!?」

 

 まともに防御していたら槍の上から胸を潰されただろう。

 食らった力に逆らわず両足をリングに滑らせて衝撃を逃すことで辛うじて諸星は防御したが、それでもなお全身に駆け巡る交通事故じみた衝撃。

 残っていたダメージが共振して増幅されるような激痛に、諸星は全力で絶叫を飲み下す。

 当然それで終わるはずもない。

 今までの相手の動きと呼吸に合わせた攻撃ではなく、ただ物量で押し潰すための純度100の攻勢。

 夥しい量の瓦礫を呑み込んだ津波の如き蹴撃の群れが、暴風雨となって亀になった諸星を呑み込んだ。

 

 「あの投げが決まったのが決め手かな。カズくん相手に受けに回ったらこうなる。彼が能力で戦う事に拘ればまた違う決着もあったかもしれないけれど、─────こうなったらもう、終わりが近い」

 

 『蹴る! 蹴る!! 蹴る!!! 滅多打ちです、王峰選手の猛攻にまるで途切れる気配がない!!

 反撃できず戦意喪失か《七星剣王》、攻撃の密度に吹き飛ぶことすら出来ません!! 』

 

 『戦意喪失ではありません! 動ける範囲を超えたダメージを受けた《七星剣王》に出来るのは、防御に徹して息を整える事のみ。彼は尚も勝利に向けて死力を尽くしています!

 ・・・・・・しかしそれでもこの試合はもう止めるべきだ! 能力を縛った後の地力の差が大きすぎる!! それこそ勝負にならない程に!!』

 

 『何言ってんのよクソ実況!!』

 

 『星ィィ! 諦めたらあかん〜〜〜〜〜ッッ!』

 

 地元のファンによる応援団の悲痛な悲鳴。

 しかし状況が好転する気配は欠片もない。必死の思いで張り続けている障壁は凄まじい勢いで削られていく。

 これで終わるのか。

 去年の大会を制した《七星剣王》が、前人未到の2連覇まで期待された《浪速の星》が、何もできないまま終わってしまうのか。

 

 「どうする? 今ならまだ自分の足で退場できるぞ」

 

 「舐めとんのかボケェッッッ!!!」

 

 「いいじゃねえか」

 

 魔力防御と槍で防いでも削り殺してくる鑿岩機のような蹴りの雨、その中の1発の出が少しだけ遅れた。

 見れば初動の振り幅が他より大きい。諸星の消えない闘志に応えたか、大振りで威力偏重の『決める為の』1発だ。

 そんな針穴のような隙を諸星は見逃さない。

 刹那の間隙を縫って構えを防御から攻撃にシフト、そのまま一真の胸にカウンターの一撃を叩き込む。

 そうなるはずだった。

 その瞬間一真は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 高空から大きな弧を描いて飛来するハイキックではなく、低空からほぼ直線の最短距離を突き進むミサイルようなローキックへと。

 

 湿った枝を折るような音がした。

 踏み込んでいた諸星の脚が膝関節からへし曲がる。

 一真の蹴りが、七星剣王の片脚を完全に破壊した。

 

 一瞬、会場から音が消えた。

 露出した関節の破断面。傾き倒れゆく七星剣王。

 駆け引きの裏の裏を綺麗に合わせた一真が、もはや直立すら出来なくなった七星剣王に今度こそ止めの一撃を振りかぶる。

 

 終わりだ。そう思った。

 彼を応援していた全てが黙り込む。

 否。それでもただ1人、彼を諦めていない者がいた。

 小さな声援だった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、掠れに掠れた錆びた声。

 しかし。

 無音の中ですら聞こえるかどうか分からないその声援を、彼は何年も待ち続けていた。

 

 「がんばっでぇぇぇええ! おにぃいぢゃぁぁあああぁああん──────っっっ!!!!」

 

 「任せとけぇぇえええええええええ!!!」

 

 瞬間、会場中に轟く声で吠えた諸星が、その場にいる全員の度肝を抜く信じられない事をやってみせた。

 片脚を破壊され立つことすら儘ならない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 気力や根性では説明のつかない明らかに様々な法則に反した動き。一真は突然懐に入ってきた諸星に対して迎撃のアクションを取る事が出来なかった。

 不可解な起き上がり方をした諸星。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 《暴喰(タイガーバイト)》を纏い魔力防御を無効化した《虎王(とらおう)》は、目を剥いた一真の腹から反対側までを薄紙のように貫いた。

 

 「ぶち抜けぇぇぇええ!!! 《虎王(とらおう)》ォォォォォオオオオ!!!!」

 

 深々と。深々と貫通した。

 腹から侵入して斜め上、腹に収まった内臓の全てを引き裂く一撃。

 捻りを加えて手首まで腹筋に埋まるまで捻り込まれた《虎王(とらおう)》は、ここまで諸星が受けた痛みを優に上回る致命傷を一真に与えた。

 もうこの時点で勝負あり。

 何ならここからもう一捻りでも加えるだけで粒子程度の可能性すら潰せるだろう。

 

 それが事実の筈だった。

 

 「・・・・・・(すげ)えわ。お前」

 

 巨大な手のひらが諸星の肩を掴んだ。

 鉄臭い赤色が滝のように落ちて石造りのリングを汚す。

 一真が栓の壊れた蛇口のように腹から噴き出している大量の血溜まりを見下ろす諸星は全てを理解して瞳を震わせた。

 逃げられない?慌てて止めを刺そうとした槍は、肩を掴む手と締め上げられた腹筋によって手首ごと固められている。

 

 (この感触、コイツ───────!!!)

 

 

 「──────《百舌鳥早贄(もずのはやにえ)》」

 

 

 大きな水風船を叩き割ったような音。

 ゼロ距離で一真に張り付いていた諸星が、ゼロ距離で蹴り上げられた。

 真下から杭のように腹に叩き込まれ、真上に突き上げられる蹴り。

 脚から発生し腰によって爆発的に増幅された力を一滴も残さず伝えられた諸星は吹き飛ばされる事もなく、高々と真上に掲げられた蹴り脚の上に、技名の通り虫のように乗っかっていた。

 臓腑を磨り潰した確かな感触。

 不随意の電気信号に身体を痙攣させる諸星はしかしそれでも眼下の一真を(しか)と見据え、上ってくる血を堪えて最後の力を振り絞り言う。

 自らを倒した本物の強者に。

 どこまでも純粋な意地で自分にぶつかってきた真っ直ぐな男に、自分の楽しみを託す為の精一杯の憎まれ口を。

 

 「・・・・・・・・・しゃあない。譲ったる」

 

 「ハナから俺のだ馬鹿野郎」

 

 決壊した。

 最後の力を出し切った諸星がバケツをひっくり返したような量の血を一気に吐き出し、そのままずるりと脚から落ちてリングに転がる。

 それと大して変わらない量の血液を腹から拍動に合わせリズミカルに噴き出している一真は、それでも傲然とした仁王立ちで諸星を見下ろしていた。

 腹腔の内部を蹂躙されたとは思えないその立ち姿に、貴徳原カナタは戦慄と共に皮膚を粟立たせた。

 

 「・・・・・・元々何がどうでも膝を着かない人だと思ってはいましたが、内臓を引き裂かれても立ち続けるとは。流石に恐怖すら覚えてしまいますわ」

 

 「違うよカナちゃん。カズくんが今ああして立ってるのにはちゃんとした理由がある。見た目こそひどいけど、カズくんの内臓は大して傷付いてない」

 

 「内臓は無事、ですか? あれだけの大穴が貫通しているのに!?」

 

 「うん。カズくんは刺される直前、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。諸星くんが貫いたのは中身の無いスカスカのお腹、だからカズくんは耐えられた。

 ・・・・・・とはいえ、筋肉も血管もズタズタにされたには違いない。あの量の出血でショック症状も起こさず反撃して、尚且つ立ってられるのは馬鹿げたタフさと言うしかないけれど」

 

 そして一輝とステラが見ていたのは諸星だった。

 いま目の前で起きた現象を、2人は神妙な顔で語り合う。

 

 「・・・・・・いま七星剣王、()()()()()()()()()()()()。それによって捻り出した魔力を一気に放出して推進力に変え、そのまま《暴喰(タイガーバイト)》で貫いた。よくもあの状況であんな奇襲を成功させたわ」

 

 「片脚が使い物にならない状況であの速度で接近してくるなんてまず考えないし、そうしようなんて発想も浮かばない。諸星さんは脚を砕かれた瞬間も、どうすればここから勝ちに辿り着けるかを考え続けていたんだ。『冷静』なんて言葉じゃ到底足りない、恐ろしいまでの(したた)かさだよ」

 

 一輝は知らず知らずに拳を握る。

 これから自分はこのレベルの相手と戦うという事実に、戦慄と昂揚がないまぜになった形容し難い感情が腹の内で荒れ狂っていた。

 激戦を演じた2人の戦士に、黒鉄一輝は最大級の敬意を払った。

 

 「2人とも本当に強かった。とんでもないものを見せてもらったよ。・・・・・・これが決勝戦だと言われても、何の疑問も抱かない位に」

 

 『し、試合終了ぉおぉおおおおお!!! 想定外に次ぐ想定外、大波乱の死闘を征したのは《蹄鉄の暴王(カリギュラ)》王峰一真選手ッッ!!

 前年度の王者を下し、期待されていた玉座に向けて大きな1歩を踏み出しましたァァアアッ!!!』

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