ロックマンエグゼ6 〜熱斗くんにいとこがいるだけの話〜 作:ぴんころ
「な、なるほど……」
全ての魚データを集め終えた時には、なんとなく『水をテーマにしたウィルスバスティング』というものが理解できて来た気がした。
あるいは、水の能力を持ったナビの扱い方から学べるところと呼んでもいいかもしれない。
最初は水系のバトルチップで戦うだけかと思っていたが、魚データを捕まえたことでそれが違うということがわかった。
要するに『水をテーマにした』というのは、簡単に言えば”流れに逆らわない”ということなのだ。
アクアマンの泳ぐ速度では決して追いつくことができない魚データを、水流を利用することで加速して捕まえたりすること。
それをウィルスバスティングになぞらえるのであれば敵の攻撃に対してのカウンターなどが該当するのだろうか。
「集め終わったっぴゅ〜!」
アクアマンが喜んでいる中、水族館のHPに戻って職員のナビに対して集め終えた魚データを渡す。
彼が確認している間に、どうやら水族館には電話をしていただけらしくすぐに戻って来た舟子がこの後のことを教えてくれる。
「それじゃ、魚データの確認が終わったらプラグアウトして、準備が整ったら私に声をかけてください。そしたら試験を始めますので」
舟子の発言から数十秒程度経ったところで、職員のナビが「良し」と言う。
魚データは不正なものではないと言うことの確認が終わったようだ。
アクアマンをプラグアウトさせて、PETを返したところでその試験についての説明が開始された。
「で、試験って何をするのさ?」
「私のオペレートするアクアマンと戦ってもらいます。……準備はいいですか?」
「アイリス、行けるか?」
「ええ、もちろん……!」
その言葉に、彼はアイリスのことを確認する。
少し機嫌が悪そうだった彼女だが、今はなぜか戦意が普段よりも湧き出ているように見える。
そこに疑問を抱かないわけではなかったが、彼女にやる気があるのであれば今この場で言及するようなことでもない。
先ほどのパソコンにプラグインするわけではなく、お互いのPETを有線で繋いで一時的にバトルフィールドを構築して、そこにナビを送り込む。
アイリスの目の前にはアクアマンがいて、その姿を捉えてアイリスは目を細める。
「それじゃ、バトルスタート!」
お互いの準備が整ったと判断した舟子がその言葉を発したことで、『水をテーマにしたウィルスバスティング』と『|水の力をどんなナビにでも操れるようにするための研究《クロスシステムについて》』の授業の最終試験が幕を開けた。
「アイリス!」
「アクアマン!」
アイリスの走りはこれまでに見たことのあるどの時よりも力強い。
少しだけ、アクアマンに対しての攻撃的な様子に驚きながらもバトルチップをスロットイン。
アイリスにはバトルチップ無しで使える、元から内蔵されている攻撃手段というものは存在しない。
せいぜいが『電子機器制御能力』がそれに当たる程度なのだが、目紛しく状況が変わる戦いの中でとっさに使うことができるようなものではない。
だが、アクアマンには攻撃手段はある。
内蔵している三つの攻撃手段の一つである、ロックバスターと同じように腕を銃口に変化させることが前提となる技、『アクアホース』から水の塊を発射する。
それが地面に落ちるか、何かに当たるかすることで破裂して周囲に泡が広がることは知っている。
当たれば動きが封じられるし、そうでなくても破裂した泡も避けなければ意味がないために、少し大回りになって、一手取られてしまう。
どちらがマシかといえばもちろん後者なので、アイリスは避けると思いきや。
そこで、彼女の手元にデータを読み込まれたバトルチップが送られてくる。
「エアホッケー……!」
送り込まれたエアホッケーの枚数は四枚。
それらがアイリスの持つ、軍事用ナビとして創造された彼女の演算能力によって計算された軌道で放たれて、アクアマンの足元を崩しにかかる。
「ぴゅっ!?」
「なんですかこれっ!?」
空を飛べないアクアマンの足に直撃しそうになって、それを避ければ別のエアホッケーがそのホッケーに当たることで軌道が変化して戻ってくる。
それを避けて体勢が崩れれば最初のエアホッケーを弾いたホッケーがまた別のエアホッケーによってアクアマンの元に向かってきて、ということを繰り返している。
水の塊も、エアホッケーに当たる形でアイリスの元にまで届くことはなく、その場で停止したホッケーをアイリスが蹴り出す。
「なんか、アイリス……怒ってないか?」
玲惟から見れば、先程は機嫌が治ったかと思ったのに今はまた怒っているように見える。
彼女の今の状態としては”嫉妬”が一番正しい。
アクアマンがオペレートされていたことに対しての、”自分の方が彼の期待に応えられるのに”という、可愛らしい嫉妬である。
ただ、まあそんなことは戦ってるアクアマンや舟子からすれば関係のないことで。
「アクアマン!」
「ぴゅーっ!」
舟子の叫びを聞いてアクアマンも叫び、その場で超高速で回転する。
まるで独楽か何かのような回転と共に、アクアマンの頭頂部にある小さな噴水が勢いよく噴き出す大きなものに変わり、アクアマンにつられるようにして時計回りに水を撒き散らす。
ただし、飛距離自体は大きなものではないようでアクアマンを包む水のヴェールというのが関の山。
だが、直撃しそうになるエアホッケーを水で押しつぶし、エリアに流れた水によってエアホッケーを見当違いの方向に滑らせることによって全てのエアホッケーを消去して、そこでようやくアクアマンの反撃が開始する。
「食らうっぴゅー!」
両手を変化させてアクアホースを無数に放つ。
アイリスは避け続けるが、それでも濡れたエリアが広がり続けるせいでまともに動ける場所はどんどん減っていき、最後には跳躍するしかなくなる。
逃げ場のない空中に跳んだアイリスに向けて、アクアマンが召喚したホースからの放水が向けられた。
アクアストリームと呼ばれる技でありアクアマンの持つ技の中で最も破壊力の高いそれが噴射され、けれどそれが届くよりも先にアイリスの前に体全体を隠すほどに大きな、メットールのヘルメットを模した盾が出現する。
バトルチップ『リフレクメット』。
それがホースから飛び出す水流を受け止めている。
「やるぞ、アイリス!」
「ええ……!」
玲惟は、アクアマンのオペレートで何かが型に嵌まったような感覚を得ている。
女性型ナビなのでそこまで筋力などのパラメータは高くないアイリスに、これまでは避ける動きをしてもらっていたのだが、流れに逆らわず、むしろ流れを利用するような動きをアクアマンのオペレートで学んだからか、少し違う動きができそうな気がしている。
それが、言葉にしなくてもアイリスに彼の考えていることをしっかりと伝えて、
「バトルチップ、スロットイン!」
三枚連続スロットイン。
以前熱斗が使っていたのと同じように、これで
送り込んだチップデータはキャノンが三枚、コードは順にABC。
これで完成するP.Aはギガキャノン。
アイリスの手元に大口径の拳銃が出現するのと同時に、彼女はリフレクメットの縁を蹴って跳躍することで、アクアストリームの射線上から逃れる。
アクアマンはアクアマンで、アイリスが跳躍したのは見えているが、かなりの勢いで水を噴射している、体全体で抱えないといけないぐらい巨大なホースの向きを簡単に変えるなんてことができるはずもなく、その無防備な体を晒すことになる。
「えい……!」
ギガキャノンが放たれ、されど狙いはアクアマンからはずれている。
「どこを狙って……っ!?」
「ぴゅっ!?」
舟子の驚愕。
狙われたのはアクアマンが持つ、どこから伸びているのかよくわからないホース。
ギガキャノンの、もはや砲弾ではないかと見紛うような威力の一撃を受けてホースは途中でちぎれ、そこから一気に水が漏れ出す。
それは一番近くにいたアクアマンを押し流し、そして同時にそこまで広くはないバトルフィールドを水浸しに。
アクアマンの腰元まで届くほどの水量まで増えたところでようやく、流されていたアクアマンが落ち着いてホースを消す。
「『ラビリング』!」
かつてのトーナメントの時のようにアクアバキュームによって水を回収するのか、それとも水中移動を行えるという強みを活かすことにしたのか。
どちらを舟子が選ぶのかはわからないが、それが行動として現れるよりも先に新たなバトルチップがアイリスに。
このバトルチップを回収することができるラビリーというウィルス、そのコイルのような耳を模した帽子がアイリスの頭に被せられ、彼女が頭を振ることでそこから電撃のリングが水中に向けて発射される。
「ぴゅぴゅぴゅぴゅぴゅっ!?」
実際には当たらなかったのだが、感電して痺れたのか奇妙な鳴き声を上げるアクアマン。
この時点で、アクアマンの次の行動が一手潰された。
「えい……!」
投げ込まれたのはアイスシード。
それによって水が凍りつき、アクアマンが動けなくなったところで。
「これで、終わり……!」
消滅しかけのリフレクメットを蹴って飛び出し、二頭身のために腰元までの水が溜まったことによって一緒に腕まで凍ってしまったアクアマンに向けて、新しく転送されてきた剣を突き出す。
電撃を纏ったその剣はバトルチップ『エレキソード』。
それがアクアマンのナビマークに向けて突き刺さり、トドメとなってバトルが終了した。
ふへへ……次回はクロスシステムからスタートじゃあ……