ロックマンエグゼ6 〜熱斗くんにいとこがいるだけの話〜 作:ぴんころ
「じゃあ行こうか」
前日、舟子の授業を受けている間にセントラルタウンで新装開店したらしいアスタランド。
放課後からスタートする電脳ダンスショー、学校から家までは三十分程度の距離。
熱斗たち小学生とは違って、彼の授業の終了時間からして開始には間に合わないと判断してそちらに寄っていたのだが、熱斗からの連絡もあってそこまで時間を割くことができずに家に戻ってきた玲惟。
彼の中では”まあ、今度また見ればいいか”という程度の考えであり、すでにロックマンはそちらに向かっていて、彼が家に帰ってくる十分ほど前からどうやら始まったらしい。
「兄さん、アイリス、もう始まったみたいだぜ!」
「はいはい、俺たちも今から行くから。セントラルエリア3でいいんだよな?」
「ああ!」
「なんだか変な踊りだけど……妙に目が惹きつけられるよ……」
ロックマンはすでにセントラルエリア3で見ているようで、そんなことを呟いている。
玲惟のパソコンのHPとセントラルエリア1の繋がる場所は、熱斗のHPへのリンクの真横。
プラグインしたアイリスはそこからインターネットの海に入り込み、小走りでセントラルエリア3に向かっている。
基本的に電脳ショーのような娯楽とは縁がないナビとしての生だったので、彼女も若干期待しているのだろう。
足取りはなかなかに軽快だった。
そんな時、彼女の足を止めたのはPETを通して聞こえてくる玲惟と熱斗の会話だった。
「ナビが今ダンスを披露して……って何だこれ? 何でロックマンの
「ね、熱斗くん……これ、攻撃だ……力が、どんどん抜けて……」
「ロックマン! おい、ロックマン!……玲惟兄さん、ロックマンが!」
「アイリス……!」
「わかったわ……!」
先ほどよりも急ぎ足で向かう。
ついでに、アクアクロスになるためのチップもすでに
そうしてセントラルエリア2に入った時、電脳空間全体が揺れたような錯覚をアイリスは得た。
「な、なにこれ……」
それが余波なのだということは誰も知らない。
けれど確かに、別のエリアにまで届くほどの大きな地震なのだ。
アイリスは、元々軍事用ナビである。
ある程度であれば、戦いに対しても耐性……戦うことに対して忌避することはあっても怯えるようなことにはならない。
だから、初めてだったのだ、怯えを見せたのは。
だが、別にそれもおかしなことではない。
セントラルエリア3にいるにもかかわらず、セントラルエリア2にまで届く圧倒的なエネルギーをたった一つのプログラムが持っているという事実の方が、本来ならばおかしなことなのだ。
そんな存在に対する反応としては、なにもおかしなことはない。
「アイリス……」
「大丈夫……行きましょう」
だが、それでも止まることはない。
オペレーターである玲惟は他に比べられるものがないほどの”特別”ではあるが、ロックマンや熱斗も彼女にとっては特別だ。
恥ずかしいので口にしたことはないが”家族”のように思っているし、ロックマンに至っては生まれて初めての”友達”である。
そんな彼のことを見捨てるつもりなど、アイリスにはなかった。
「……いや、行かなくてもいいみたいだ。ロックマンはネットポリスが強制プラグアウトさせたらしい」
「……そうなの?」
気合を入れて走り出そうとしたところで、玲惟からの言葉。
それも、熱斗から伝えられた言葉をそのまま伝えた、というだけのことなのだが。
こてんと小首を傾げるアイリスに頷いて、そしてその場で留まらせる。
ネットポリスには強制的にプラグアウトをさせる権限というものがある。
凶悪な
ロックマンはそれのお世話になる形でプラグアウトして、今現在PETの中でバッテリーを消費する形で急速な回復を行なっている。
「だから、無策のまま行くのはダメだ。それでアイリスが死ぬようなことになったら……」
「……わかったわ。一旦戻る」
「頼む……」
そう言ってプラグアウト。
実際には今セントラルエリア3で何が起きているのかわからないままなのだが、ロックマンを通してそこは知ることができるだろう。
少なくとも、このままただ向かうよりはきっと、アイリスが死ぬ確率が減るはずだと信じて、これが最悪の結果につながることにはならないと信じて、彼はPETの中に戻ってきたアイリスとともに熱斗が父親に話を聞いているはずのリビングに向かう。
「電脳獣の倒し方を教えてよ!!」
入った途端聞こえる熱斗の大きな声。
普段は聞かないような大声であり、基本的にはワイリーが相手であってもここまで大きな声を上げることはないので、玲惟も驚いた。
「熱斗、お前……電脳獣を見たのか……?」
「うん……」
そして次に、あのインターネットの地震が電脳獣によるものなのだと知って再度驚いた。
あれが伝説ではなかったということに。
「…………」
祐一朗は黙り、熱斗の焦燥だけがその空間に満ちる。
「……ダメだ、今回はさすがに荷が重すぎる! それに、もうすでにネットポリスが動き出している!」
「で、でも……」
「今回はお前とロックマンが出る幕はないんだ。電脳獣のことは大人に任せておけ。……決して、電脳獣に近づこうなんて考えるんじゃないぞ!」
普段は見せない怒鳴り声。
それを向けられているわけでもないのに、玲惟は萎縮してしまったのだ。
実際に向けられた熱斗の心境やいかに。
「……怒鳴って悪かった。しかし、電脳獣はそれだけ危険な相手なんだ。わかってくれ……」
ただ、それも祐一朗が熱斗のことを心配するがゆえのもの。
彼の声には心配が含まれていることはわかったから、熱斗も、玲惟も、ロックマンも文句なんて出るはずもない。
「お義父様」
だから、このタイミングで口出しをするとしたら、アイリス以外にはいなかった。
光一族の血を継いでいないアイリスしか。
「私の能力なら電脳獣を制御できると思います」
「なんだって……?」
その言葉は、祐一朗が驚き、そして考え込むには十分な材料であり、だがだからと言ってそう簡単に承認するわけにはいかない言葉でもあった。
「……いや、ダメだ。制御できる保証がない。それに、もしも制御したとしてもどうする? 封印するにしても場所はなく、倒しきるにしてもそれまでの間ずっとアイリスが制御していられるのかという疑問もある。……万が一にも君が死ねば、玲惟をとても悲しませることになる」
だから今回は行かないでくれ、と明確なまでの拒絶を見せている。
ロックマンの調子が悪いんだから部屋に戻って休んでなさい、というような言葉とともに熱斗が部屋に戻されたのを見送って。
「……」
「……!」
そしてその時にアイコンタクトだけでなんとなく相手の意思を読み取れたので、玲惟も部屋へと戻っていった。
熱斗の、明確な勝算がないにもかかわらず、それでもなお立ち向かおうとする、これまでいくつもの悪の組織と戦ってきた時の瞳を見て。
アイリスがいないのでロックマンは生命エネルギーを取られましたとさ。
祐「電脳獣を制御したとしてどうする? 電脳獣グレイガは巨大なバグ融合体。捕らえたところで……」
熱「なんだ、あいつバグ融合体なんだ。だったら簡単だよ!」
祐「……なに?」
熱「ほら、これ!」