ロックマンエグゼ6 〜熱斗くんにいとこがいるだけの話〜 作:ぴんころ
「お願い……行かせて……!」
「アイリス……」
部屋に戻った直後、アイリスはオペレーターである玲惟に懇願していた。
電脳獣のもとに向かわせて欲しい、と。
玲惟も、熱斗のあの様子を見ればロックマンがセントラルエリア3に向かうだろうことは見当がついた。
そして、ロックマンがダンスショーと銘打った電脳獣復活のためのエネルギー吸収によって力を奪われた今、きっと電脳獣を倒せるだけの力を絞り出すのは命に関わることになるだろう。
そうならないためにはアイリスの力があった方が間違いなくいいのだが。
「……」
玲惟の本心を語るのであれば、彼にとってアイリスよりもロックマンが上に来ることは絶対にない。
それは、光彩斗と言う人物を知らないためである。
熱斗のように、彼の弟であると言うわけでもない。
彼にとって、接してきたのはロックマンだけであり彩斗と言う人物ではない。
ならばその上で、他の人のナビよりも自分のナビの方が上にやって来ることは決しておかしなことではないだろう。
熱斗がかつてヒノケンと言う男に騙されて科学省を火の海にした時に他の人よりも父親のことを心配していたのと同じように、玲惟にとっても光家の面々とアイリスが同率で一位であり、ロックマンはそれよりもわずかに下にいる。
もちろんロックマンも大事な家族であることには間違い無いのだが。
だから、ロックマンを死なせないためにアイリスを死地になるかもしれない場所に送り込むことに即断できなかった。
それだけではなく、きっと即断できないのは熱斗よりも年上だからと言うこともあるのだろう。
いろんな知識が入ってきて、熱斗よりも考えられる範囲が増えたから。
アイリスが一度怯えてしまった、と言うことが一番彼女を行かせたくないと思ってしまう原因なのだが、それ以外にも様々な理由が頭の中を渦巻いていた。
「玲惟は……お爺様のことは尊敬している?」
「……? いきなりどうしたんだ?」
「いいから……答えて」
「そりゃ、尊敬してるよ。今の社会を形作った人だし、こうして俺とアイリスが話をできるのだって、爺さんがネットワーク社会を作ったからだしな。……それに、そうじゃなくても爺さんは優しい人だったから」
「そう……だったら私のことも信じて」
「何言って……」
話が繋がっていない、と。
玲惟はそう感じた。
まるでそれでは彼の祖父……光正が作ったネットナビであるかのような言葉なのだが、アイリスのような心を持ったナビはロックマンが生まれて初めてなのだから、光正が生きている時代に生まれているはずがないのだ。
少なくとも、玲惟がした会話ではそう言った、アイリスのようなネットナビについての情報はなかった。
だから本気で、話が繋がっていないと思ったし、そして次のアイリスの言葉には驚く他なかったのだ。
「私は、お爺様のライバルである……お爺様と同様にネットワーク社会の基礎を築いた権威の、ワイリー博士によって作られた私の性能を」
「…………え?」
ワイリーが作った、と言う言葉に空気が固まった。
アイリスは悲しそうな表情になる。
確かに逃げ出しはしたが、あれでも一応は父親である。
そして、彼がいなければ自分は作られることはなく、今こうして会話をすることもできなかった。
そんな相手がこうして嫌われているのはこれまでの所業からして仕方ないことだとは思えるが、そんな彼に作られたということが原因で自分が嫌われてしまうのではないかと思うと、胸が痛くなっていた。
でも、それでもアイリスが彼を納得させる方法として思い浮かんだのは自分自身の性能だけであり、そしてその性能を納得させる手段として彼女が持つものは、『光正のライバルであるワイリーが作った』ということと『彼が作ったカーネルの一部だった』ということ、そして『二十年ほど前に作られながらもカーネルはまだ最強クラスのネットナビである』という、三つの事実ぐらい。
それだけしか、彼女が提示できる根拠はなかった。
「その、ワイリー博士が作ったから信用できないというのはわかるけど、えっと……」
そして、それを理解していたからアイリスも、ワイリーの作ったナビなんて使えるか、と捨てられる可能性があることもわかっていたし、騙してたのかと言われる可能性も理解していて。
それらを考えると泣きそうになったが、それでも彼女が彼に対して向けた感情の全てに嘘はなく、だからせめてそのことだけはちゃんと伝えようと思って、しどろもどろになりながらも言葉を紡いでいた。
「別にいいよ」
「え……」
泣きそうになった。
あらゆる言い訳を切り捨てるかのような言葉にしか聞こえなかったのだ。
これで捨てられるのだな、と冷静なところは考えているのに、彼女の心はそれを認めようとはしていなかった。
「ワイリーのことは信用できないけど、これまで見てきたアイリスのことは信じられるから」
だから、数年程度の付き合いなのにもかかわらずこんな言葉を口にした彼の姿に、今度は別の意味で泣きそうになったのは仕方ないのだろう。
ただそこまで気が付かずに、むしろこれまでのことを思い出して玲惟は謝りたくなっていた。
「むしろ俺の方が謝らないとな。アイリスに生みの親と戦わせてたわけだし」
「……それは別にいいの。今のワイリー博士は昔の、私がまだ
「……そっか」
そう言って、玲惟は彼女がいるPETをパソコンに向ける。
こんな会話をした後でプラグインさせてもらえるとは思わなかったのかアイリスが驚いているように見える。
「……絶対に語りたくなかっただろうことを語ってくれたんだ。それなら、俺もそれに応えないとダメだろ」
「……うん!」
彼は別にワイリーのことを信用したわけではなく。
信用できる要素などないのだからそれはあまりにも当然で。
だが、アイリスに関しては信用できるだけの時間を共に過ごしてきたから。
彼女の性格を知るには十分な時間で、フルシンクロまでできるようになったアイリスとの間の信頼関係は簡単に崩れるようなものではないから。
アイリスがその事実を語るためにどれだけの勇気を振り絞ったのかは想像に難くなかったから。
だから、それに応えることにした。
「行くぞ、アイリス!」
その言葉はこれまでも言ってきたはずの言葉なのに、これまでよりもどことなく軽やかに、そして根拠のない負ける気がしないという思いを内包して告げられたのだった。
「なに、これ……」
セントラルエリアに入れば、先ほどまではいなかった悪霊のような何かがそこにはいる。
少し遅れて入ってきたロックマンは近くにいたネットポリスから悪霊退治用の何かを受け取ったよう。
そのことが見えたために、アイリスもロックマンの方に向かう。
電脳獣が出てきたことによって電脳世界そのものがアンダーグラウンドの影響を受けているのか、ウィルスも凶暴化しているようなので慎重に、けれど時間がないために急いで。
「アイリスちゃん!」
「ロックマン、どうするの?」
「今、ネットポリスのナビから悪霊を退治するための武器を組み込んでもらったから、僕が悪霊退治をするよ!」
「なら、私はその邪魔をさせないようにウィルスを撃破するわ」
送り込まれたクロス用のチップのデータによって、セーラー服の上から天女の羽衣を纏ったような姿へとアイリスは変化していて。
こちらに近寄ってきていた、どういう理屈か炎系統のウィルスへと変化した、おそらくはメットールだったのだろう存在に向けて
ボクタイのssのあらすじでも載せようかと思ったけど、思いつかなかったからごめんね……