ロックマンエグゼ6 〜熱斗くんにいとこがいるだけの話〜   作:ぴんころ

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第十八話

「熱斗、早めに寝ておいたほうがいいんじゃないか? 明日は裁判に証人として参加するんだろ?」

 

「うん、わかってるって!」

 

 万博の選考予選を終えて家に帰ってきてみれば、はる香が喜んでいて熱斗はちょっと恥ずかしそうにしていた。

 その様子から見て悪いことではないのだろうとは思っていたのだが、話を聞いてみれば上記の通り。

 水族館の事件での解決者として、証人として裁判に参加してほしいという連絡が来たとのこと。

 裁判を執り行うグリーンタウン、そこには才葉シティで起きた犯罪全てに対して裁判を執り行う『審判の木』があって、それが不調だったために今の今まで伸びていたのだが、メンテナンスも終わったので裁判を実行するということらしい。

 

「最近じゃ赤外線通信でプラグインできるから、傍聴席にも人を入れないって話だからな」

 

 かつてディンゴによる事件が発生したときに、彼は鏡を利用してパーティー会場の外からトマホークマンを送り込んでいた。

 その事案を知っているからか熱斗もそれにはなるほどと頷いていて。

 

「ただいまー」

 

「パパ、おかえり!」

 

「叔父さん、今日は早かったんだ」

 

 そのタイミングで祐一朗が帰って来た。

 一流の科学者である彼は帰ってくることそれ自体が珍しく、そして帰って来たとしても熱斗たちが寝静まった夜中であることが多い。

 なので、二人は驚いているのだが。

 

「ああ、今日は才葉シティの科学省の機器のメンテナンスがあったからな。……そうだ、玲惟」

 

「?」

 

「明日の放課後、才葉シティの科学省まで来てくれるか? 渡したいものがあるんだが」

 

「それは別にいいけど……」

 

 もしかしてアイリスに送ってもらったメール関係なのではないか、と少しだけ身構えたのにもかかわらずそんな話ではない。

 本来なら、アイリスがいることによるしわ寄せを受けることになっているのだから文句の一つを言ってもいいはずなのにそれがないというのは逆に怪しくて。

 

「うん……? ああ、アイリスのことか」

 

「うん」

 

 なんだそんなことか、と祐一朗が笑い、そんなことって何さと、これからもアイリスと無事に過ごしていくことができるのか結構悩んでいた玲惟からすれば仏頂面になってしまう。

 

「いや、そっちに関してはもう解決したからな」

 

「早っ!?」

 

 相談してから半日も経っていない。

 それだけの時間で交渉材料となるものを見つけてアメロッパ軍との交渉を終わらせたという事実に驚愕する。

 

「ど、どうやって……?」

 

「もともと、アイリスの中にあった爆弾を排除した時に彼女の能力についても調べていたんだ。あんな代物を作り上げるなんて並みの科学者ではできないからな。……さすがにワイリーが作ったとは思っていなかったが」

 

 それでも、その能力を構成するプログラムを解析して、そして自分の方でも作り上げることができれば、ワイリーが新たなアイリスを作ったとしても電子機器制御をさせずに済むのではないかという考え。

 一年以上かかったが彼はそれを再現することには成功したために、一度作ることに成功してしまえば量産も可能であるということで、電子機器制御能力のプログラムを一つ与えたらしい。……向こうにそれを量産できるだけの科学者がいるかどうかは別だが。

 ついでに、こんな簡単に交渉が終了した理由をもう一つ挙げるとするならば、アイリスはワイリーが個人保有していたナビらしくアメロッパ軍の軍事機密には一切関わっていなかったということがあるのだが、まあそれは今は関係ないことだ。

 

「まあ、そういうわけだから問題はないぞ。……ワイリーも、その気になればアイリスよりも高性能なものを作れるだろうし、わざわざ狙ってくるような相手もいないはずだ」

 

 ブラストマンというナビについて疑っているとバレない範囲で尋ねてみたらしいが、向こうは本気できょとんとしていたらしい。

 ついでに熱斗の繋がりでライカ……シャーロ軍の方でも調べてもらったらしく、ワイリーの作ったナビ、ということを知っている様子だったブラストマンがWWWであることはほとんど確定した。

 では、WWWがこれからもアイリスを狙ってくるのか、ということを考えると、その可能性は低いと考えてもいいだろう。

 そもそもアイリス……その大元であるカーネルが作成されたのは二十年前。

 つまり、アイリスが持つ電子機器制御能力も二十年前に作成されたもの。

 ならば、今のワイリーであればアイリスを超える力を持っているナビを作り出すことなど不可能とはいえないはずだ。

 そう考えれば、そしてアイリスをたまたま見つけた、というようなブラストマンの言葉を考えれば、見つけられればそれで良し、程度であり、そこまで狙われる可能性は高くないのだろう。

 

「熱斗曰く、サーカスマンも組織に入っているらしき言葉を放っていたのだろう? ワイリーだと考えれば、どちらもおかしなことではない」

 

 ブラストマンが放たれたのは熱斗を殺すことで作戦の邪魔をさせないため。

 電脳獣を得ようとしたのが作戦の本命。

 そこまでおかしなことではないのだ。

 

「そっか……そうなると」

 

「ああ、ワイリーが持って行ったと考えると、これからの電脳犯罪はより激化する可能性がある」

 

 気をつけろよ、と真剣な顔で口にして祐一朗は事務的な内容を終える。

 そこからは普通の会話だ。

 今日学校で何があったのか、のような普通の家族としての会話を夜が更けるまで行なっていた。

 

 

 

 

 

 翌日は、土曜日だったために授業は半日だけ。

 熱斗は午後からの裁判に向けてグリーンタウンに向かい、玲惟は祐一朗に呼び出されているので科学省に。

 やってきたところ、渡されたのは一つのデータだった。

 

「これは……?」

 

「もしもの時にロックマンを止めるための力だ。アイリスの強化パッチという形で用意したんだ」

 

 名前は、アーティファクトデータ。

 容量が膨大で、今のPETではインストールが不可能に思える。

 祐一朗が苦笑して、新しいPETを渡す。

 

「これは容量が大きいからな。こっちのPETにアイリスを移して、それでインストールしてくれ。アイリスにはインストールできるようにしてあるから」

 

「わかったよ。……アイリスもいいか?」

 

「……ええ。ロックマンを助けるためなんでしょ? だったら止める理由はないわ」

 

 インストールをする中、玲惟は祐一朗に問う。

 それはアーティファクトデータについて。

 これほどの大容量を誇るものは、様々な悪の組織が世界を滅ぼすためにやってきたいろんなことを見てきた彼の知る中でもそう多くはない。

 

「それで、これってどういうデータなの?」

 

「このアーティファクトデータは、人工電脳獣とでも呼ぶべきものだ」

 

 名前をつけるのなら、電脳獣アイリス。

 わかりやすく言えば、アイリスの能力を電脳獣クラスにまで引き上げるためのプログラム。

 今の時点でもある程度は制御できる電脳獣を、完全に制御できるようにするためのプログラム。

 

「ただ、そういうわけだから単体では何も効果を持たない。アイリスに組み込んで、初めて効果を発揮するプログラムだ」

 

 それに合わせる形で、電脳獣クラスの存在を格納するためにエクサメモリも組み込むらしい。

 ナビカスタマイザーの要領で組み込まれたそれらによって、けれどアイリスの負担にはならないように最初から電脳獣の五十パーセント程度の力しかない、とのこと。

 

「まあ、とりあえずは試してみて貰えばわかるさ」

 

 今は眠っているアイリスだが、そのプログラムを組み込んだ状態でRUNすれば使えるようになっているはずなのだと。

 

「まあ、目覚めたら試してみようか」

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