ロックマンエグゼ6 〜熱斗くんにいとこがいるだけの話〜   作:ぴんころ

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第十九話

「ふう……これでおしまいね」

 

 アイリスが言葉を発したのは玲惟のパソコンのホームページ。

 科学省から帰ってきて、アイリス専用の獣化とも呼べるものによる疲労が回復したところを見計らってプラグインしようとしたところで、パソコンの画面表示がおかしくなっていることが確認できたので、アイリスに確認してもらったところウィルスが入り込んでいたのだ。

 それを退治した今のアイリスの格好はつい最近獲得したばかりのテングクロス。

 髪の色はテングマンと同じく暗いグリーンになり、顔の横には天狗のお面。

 紅白の巫女服に身を包み、手に持った大団扇で口元を隠している。

 その団扇を振るったことによって起きた突風が、入り込んでいたウィルスたちを電子の海に放り出したのだ。

 

「あー……どうせなら叔父さんからもらったプログラムも使ってみればよかったかな?」

 

「そっちは、また今度でもいいと思うわ」

 

「そっか、それならしょうがないか」

 

 アイリスに疲労が溜まるシステムであるからできる限りは使いたくないシステムなのだが、慣れておかないとロックマンが超獣化(ビーストオーバー)をした時に戦うことができないかもしれない。

 そのことを考えれば練習しておきたいものだったのだが、今日科学省で確かめたことで一度使用したのでアイリスにも疲労がすでに溜まっている。

 いくら休んだとしても眠ったわけでもないので、そう簡単には取れはしない。

 アイリスはそんなことを口にしていないにもかかわらず、けれど彼女が玲惟の言いたいことを理解できていないなんてことがありえないと思ったために理由があるのだと判断して、それ以上のことは言わない。

 

「なら、どうする? これからインターネットにでも行くか?」

 

 熱斗から来た連絡で、マサカリによってグリーンエリアとセントラルエリア3を繋ぐ場所を塞いでいた木が切り倒されたことは知っている。

 グリーンタウンに行くのも今からでは、というような時間帯なのでそれもありかとは思ったのだ。

 

「……ええ、そうしましょうか」

 

 アイリスの許可も得られたために、セントラルエリア3にまで向かい、そこから気が切り倒されていることを確認してそちらのエリアに進む。

 そうしてワープによる移動が多いエリアを進んでいけば、グリーンエリア2に向かうためのセキリュティの前にまでたどり着いた。

 

「プログラムくんの頭を無断で叩いたらどんな刑罰に問われるのか、だって」

 

「実際に叩く……はアウトだな。そんなことしてアイリスが変なことされたりしたら大変だし」

 

 とりあえず知っている誰かを探すのが正解だろうと考えて。

 まずは今家にいるはる香は選択肢から消して、可能性が高いのはグリーンエリアにいるプログラムくんかナビの誰かだろうと、とりあえずアイリスに探し回ってもらうことにした。

 

「おや、君可愛いね……ちょっと一緒にお茶でも」

 

「コノあたりデハみナイなびデスネ。……フムフム、『ぷろぐらむクン(私たち) ノ あたま ヲ たたイタラ ドンナ けいばつ ガ くだる ノカ』デスカ。……スミマセン、ワカリマセンネ」

 

 アイリスの見た目が可愛らしい少女なため、いろんなナビに聞いて回ってみてもデートに誘われるだけか、答えを聞きたかったらデートしてよ、みたいなことばかりを言われる。

 アイリスの恋愛関係に対して玲惟は口出しできるような立場にはないので、彼女の好きなようにしてくれればそれでいいと考えているが、まあそれでもアイリスは性格的に初めて出会った男性から『ちょっとデートしよう』と言われてホイホイついていくような女の子ではないことは知っている。

 よって、アイリスが嫌がっていると判断して、それでもぐいぐいと迫ってくる男性ナビの場合はとりあえずプラグアウトさせることによって退避させていて。

 その度にグリーンエリアに向かうことになるのでちょっと時間がかかるのだった。

 

「ん? どうかしたのかい?」

 

「えっと、ここは……」

 

「ここは『弁護士の卵の集い』。司法試験に向けて皆で勉強しているのさ! ……君も入らないかい? 可愛い女の子が一人増えれば、それだけでも潤いが生まれるからね。入会料は1000ゼニー。これだけで弁護士になれると思えば安いものだと思うけど……」

 

「玲惟……どうするの……?」

 

「あー、うん……」

 

 真面目、と言ってもいいのかどうかわからないが、それでも先ほどまでのデートに誘ってきたナビたちに比べればかなりまともな勧誘だ。

 少し悩んだが入ることに決めて、『弁護士の卵の集い』の入会金を支払う。

 

「うん、確かに。これで君もこの集いの仲間だ。ついさっきも青いナビが加わったばかりだから、今日は二人も入ってきてくれたことになるなぁ……」

 

「青いナビ……」

 

「青いナビ……」

 

 二人の脳裏には同じナビが思い描かれている。

 確かに今日、グリーンタウンに向かうと言っていたからグリーンエリアに入っていてもおかしくはないし、そうなればグリーンエリア2に入るためにこの集団に入ったとしてもおかしくはない。

 そう考えると1000ゼニーの払い損なのでは、と思わないわけではなかった。

 

「……それで、刑罰について聞きたいことがあるのだけれど」

 

「うん、なんだい?」

 

「プログラムくんの頭を無断で叩いた場合ってどういう罰を受けることになるの?」

 

「……さっきも同じこと聞かれたなぁ」

 

 答えは『プログラムくんに怒られる刑』だそうで。

 それは刑罰と言えるのだろうか、とジト目になったアイリス。

 

「そ、そんな目で見ないでよ。なんだか変な扉を開いちゃいそうで……」

 

「アイリス、行こう」

 

「ええ」

 

 くねくねと体をひねり始めたナビを無視してグリーンエリアに再度向かう。

 司法に関わる場所だからこそ、やってはいけないことを理解してやりたくなる年頃なのだろうか、それとも勉強のしすぎで頭のネジが外れたのだろうか、と益体もないことを考えながらセキリュティに対してその答えを投げかければ。

 

「正解です。どうぞお通りください」

 

「……………………」

 

 無言になったのも仕方ないことだろう。

 どう考えても刑罰にするまでもなく怒られるのが当たり前なのだ。

 それでも刑罰にされているということは、もしかしてこれが定められるまではプログラムくんは怒ることすらも許されていなかったのだろうか、と生まれる前のネットワーク社会の闇の一部を覗いたような気分になりながら先に進む。

 

「今日はどこまで行きましょうか?」

 

「うーん……それなら、このエリアの中心にあるあの大木にまでたどり着いたらそれで終わりにしようか」

 

 途中のネットカフェで休みを入れながら。

 そう言えばアイリスも頷いて、少しだけ恥ずかしそうにしている。

 

「どうかしたのか?」

 

「その……今度現実の方でカフェに連れて行ってもらってもいいかしら?」

 

「コピーロイドでってことか? それぐらいならいいけど……」

 

 どうしてまたそんな、と思う。

 ただ、そのことは彼女も理解しているようで、玲惟が受け入れたことに対して驚いている。

 

「今度の休みにでも一緒に行くか」

 

「う、うん……!」

 

 ただ、アイリスは嬉しそうなのでそれでいいかと思って、一周しないと近づけない仕組みになっている大木に向けて歩みを進めるのだった。




グリーンエリア2……大木……裏……あっ
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