ロックマンエグゼ6 〜熱斗くんにいとこがいるだけの話〜   作:ぴんころ

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第二話

 彼がそのナビ……アイリスと出会ったのはとある休みの日のことだった。

 

「どうか、したの?」

 

 その日、彼を引き取ってくれた叔父さん……その奥さんであり、今となってはもう一人の母親と言っても過言ではないかもしれない人の頼みを聞いてインターネットを通じてそのお友達のナビに届け物をしている最中、PETとの接触が悪かったのか一時的にオペレートできない状態に陥った。

 そんな中で通常の汎用型ナビでしかない存在がそう長く耐えられるはずもなく、オペレートできる状態にまで持ち直した時にはすでにデリート寸前でリカバリーすらも使えないような状態だった。

 そして、デリートとほとんど同時に通りがかったのが、アイリスだった。

 

「君は……?」

 

「私は、アイリス」

 

 事情を説明すれば、それを届けることを買って出てくれて。

 そしてその電脳に向かうまでの間を彼がオペレートしたのだが、どちらにとってもそれが心地良いと思えるようなものだったので、ちょうどと言ってはいけないのだろうが彼のナビが消滅してしまったことも合わせて、彼のナビにならないか、という話が出てきたのだ。

 アイリスが野良ナビだ、ということをその歩く中で聞いていたことも彼の言葉が出てくる理由になったのだ。

 

 その後、叔父さんである光祐一朗にそのことを伝えて、アイリスの状態の確認をしてもらった時に彼女の内部に一定条件下で爆発するという謎のプログラムがつけられていて、それを外すのにまた一苦労することになったのは別の話だ。

 未だ彼は、どうしてそんな爆破プログラムなんてついていたのかなんて知らない。

 アイリスから語らないのであれば知る必要すらないと思っている。

 彼はあの時の、恥ずかしそうながらもこちらの力になろうとしてくれたアイリスのことを信用していて、彼女が語りたくないことを無理矢理に知ろうとは思わなかった。

 

 そうして、それこそWWWと熱斗の最初の戦いよりもずっと前から一緒にいたアイリスと、今初めて玲惟は現実世界で出会っているのだった。

 

「アイリス……」

 

「……!」

 

「おわっ!?」

 

 見た目には普通の少女のアイリスに彼が声をかければ、感極まったように表情を歪めて抱きついてくる。

 通常のナビ……彼のいとこの熱斗が持つロックマンのような特殊なナビとすらも違って、腕も足もまさしく普通の少女にしか思えないアイリスは、きっと何も知らない人物が見ればナビだとは思わないだろう。

 小学生ぐらいの見た目の少女が高校生に抱きついているという点で事案にしか見えないのだが、抱きつかれている側からすればそんなことは今はどうでもいい。

 アイリスと現実世界で出会えた嬉しさはあるのだが、コピーロイドに入った状態なので、見た目からは想像もつかないくらいに重たいのだ。

 そのため支えることができずに倒れこんでしまった。

 

「ははは。イチャイチャするのはいいが、今は授業中だからな。別に今しか使えないというわけでもない。この街にいれば使う機会なんていくらでもやってくるだろう。その時にでもゆっくりと話すといいさ」

 

「は、はい」

 

 そういう間柄ではないのだが、きっと教師からすればペットとイチャイチャしているというような感覚なのだろう。

 コピーロイドであるために泣くなどの行為はできないのだが、それでも胸元に顔を埋めて体を震わせているからある程度は気持ちもわかる。

 要するに『会えて嬉しい』という気持ちが溢れているのだと誰もが察して、それだけ慕われていることに対してニヤニヤとしている面々もいたりした。

 その視線に居心地の悪さを感じながら、彼はアイリスが落ち着くまで背中を優しく叩き続けるのだった。

 

 

 

 

 

「む……?」

 

 アイリスがPETの中に戻ってからも続いていた授業を中断させたのは、教師用のPETに届いた一つの連絡だった。

 

「警備ロボットが……?」

 

 才葉学園はエスカレーター方式で、小中高大、全てがセントラルタウンの敷地内に揃っている。

 そのため学校の敷地はとても広く人間が見守りきれるような範囲ではない。

 よって敷地内を警備しているロボットがいるのだが、それが異常な活動を始めたというのだ。

 

「今から自習だ。先生はちょっと職員室まで戻って、確認してくる」

 

 そう言って先生が教室を出て行けば、教室の中にはざわめきが生まれる。

 滅多にない事態なので、そして当事者にはなっていないので、通常の高校生ならばおかしなことではないだろう。

 

「警備ロボットに何があったんだろう?」

 

「珍しいな」

 

「警備する側が守らないといけない生徒たちに被害を出すってことになったら笑えないよね」

 

 そんな会話が横行する中、玲惟はアイリスに向かって話しかける。

 

「これって、またのパターンかな……?」

 

「そうじゃないといいけど……」

 

 この学園で事件が起きた、ということは彼のいとこである熱斗も現場にいるということだ。

 そしてこれまでの経験上、彼が遭遇する事件はだいたいがどこぞの犯罪組織によるものなのだ。

 現場に遭遇さえしなければ、ほとんどの事件は彼が関わるような大事になる前にオフィシャルによって解決される。

 彼は結構な頻度で事件に遭遇するのだが、それ以外にはニュースになるような事件がないというだけでオフィシャルがどれだけ優秀なのかがわかるというもの。

 

「……とりあえず、熱斗のところに行ってみるか」

 

「わかったわ」

 

 小学生のいる6-Aが熱斗の教室。

 中学、高校のある建物とはまた別の棟にあるのだが、警備ロボットの操作権もそこにある管理システムが担っている。

 『非力なために一番狙われやすい』小学生のところに、それを置いてあるのだ。

 そっちの棟には基本的に高校生は入れないのだが、こんな事態なのだ。きっと許してくれるだろうと考えて、彼も移動を開始する。

 

「じゃ、行くぞアイリス」

 

「ええ」

 

 

 

 

 

「熱斗!」

 

「玲惟兄さん! どうしてここに?」

 

「事件が起きたらお前が首を突っ込んで行くのは目に見えてたからな」

 

 玄関で青いバンダナをつけている少年を確認して、彼は声をかける。

 そのまま二人で走りながら、職員室に入るためのパスを熱斗がかざして職員室へと入るための道を開く。

 

「……また借りてきたのか?」

 

 こんな事態なので仕方がないことだとは思っているが、それでも最初のWWWとの戦いの時、熱斗が彼の父親からエレベーターを動かすためのIDカードを一時的に借りた(盗んだ)ことを知っているので渋い顔になる。

 

「大丈夫! 今回は先生公認だから!」

 

「ならいいけど……」

 

 そうして中に入れば、一人の幼い少年の声が響いた。

 

「お前ら、もういいからやめろって! それ以上やったら先生たちが死んじゃうよ!」

 

「コジロー、早く辞めさせろ!」

 

 熱斗が知り合いのようなのでそちらの説得は任せて、彼は管理システムと思わしきものに手を触れる。

 叔父さんから習った技術によって操作を行おうとするが、暴走しているようで受け付けない。

 舌打ちをしながら、この状況を解決するための手段を探す。

 しないといけないことは二つ。

 現実の警備ロボットの処理と、ロボットを操っている管理システムの異常を取り除くこと。

 

「わかってるよ。でもこいつら、俺のいうことを聞かないんだ……」

 

「でも、このロボットたちを操っているのはお前のナビなんだろ!?」

 

 背後から聞こえてくる声、もしかしたらこれで彼のナビがやめれば何もしなくてもいいかもしれない、と少しだけ希望が見えてくる。

 

「ああ、クソ! アイリス、もしもの場合は行けるか……?」

 

「……大丈夫、行けるわ」

 

 後ろからの声を聞く限り、今回はどうやら世界的な犯罪組織ではなさそうな気がするために、ちょっと度の過ぎたものではあるがただのいたずら。

 そう判断して、多分ナビも辞めてくれるだろうとは思ってはいるのだが、なんとなく嫌な予感がするために準備だけは整えて。

 

「玲惟兄さん! ブラストマンが勝手にやってるっぽい! 止めないと!」

 

「これでブラストマンが犯罪組織のナビだったりしたらもう笑うしかないな」

 

 その言葉を聞いて、二人がPETを同時に赤外線の受けに向ける。

 ただ、向ける場所は別。

 合計5回、熱斗が世界を犯罪組織から救う中で彼のことを手助けしてきたために、役割分担は簡単にできる。

 警備ロボットの吐く炎はすぐにでも止めないとまずいもので、先にそちらをしてからでもブラストマン退治は遅くはない。

 むしろ、ブラストマン退治にかまけたせいで死人を出す方がまずい。

 よって、片方がスプリンクラーを起動させるために、もう片方がブラストマン退治に入る。

 

「行くぜ、ロックマン!」

 

「悪い、頼んだアイリス」

 

プラグイン!

 

 二人の声が同時に響き渡り、二人のナビがそれぞれ別の電脳に向けて送り込まれた。

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