ロックマンエグゼ6 〜熱斗くんにいとこがいるだけの話〜   作:ぴんころ

20 / 21
第二十話

「ここ……どこなのかしら……?」

 

 大木を見に、グリーンエリア2の中央にまでやって来たのはいいのだが、エリアに入った方向からは確認できなかった大穴があって、そこに入ってみれば見たこともないエリアにつながっていた。

 

「雰囲気的には秋原町から行けたウラインターネットに近い気がするけど……」

 

 これまでの事件のたびに関わって来たウラインターネットに近い雰囲気を持つエリア。

 ウラインターネットそのものということではないだろうが、それでもきっとウラインターネット。

 何を言っているのか、と言われると彼らにも説明は難しいのだが、それでもここはウラインターネットであり、同時に悪ナビが跋扈する通常のウラインターネットとはまた違うエリアなのだとわかった。

 

「どうする、進むか……? 今日のところは戻るのも手だと思うけど……」

 

「……進みましょう。ここからグリーンエリアに何か出て来るかもしれないから」

 

「……わかった」

 

 アイリスの言葉に頷いて進んで行く。

 どうやら本来の通路とはまた別の繋がり方をしているようで、遠くに別のエリアとの繋がりが見られる中で、ここは一本道になっている。

 

「なんか嫌な予感がするな……」

 

「そう……なの……?」

 

「ああ」

 

 電脳世界に漂うオーラに関してはオペレートするだけの玲惟に比べれば実際にその空間にいるアイリスの方が感知する能力は高いが、こういう直感という点では玲惟の方が優れている。

 そんな彼が嫌な予感というからには本当に何か危険なことが待ち受けているのだろうとアイリスも思うのだが、だからこそグリーンエリアにその危険が這い出てくるよりも先に倒してしまわなければならないだろうと覚悟を決める。

 こういったところは、玲惟と過ごして様々な犯罪組織と戦いという形で関わりを持ってきたことで彼女が成長したところだった。

 

「あれって石碑……か?」

 

「どっちかっていうと墓石ね……何か書かれてるわ」

 

 そうしてたどり着いた一番奥、そこにあった墓石は見るからに二人の嫌な予感というものを駆り立てて。

 そしてそこに書かれていた文字を見て、二人はその嫌な予感が間違いではなかったと悟るのだった。

 

 ”電脳の破壊神…………ここに眠る……”

 

「電脳の破壊神って……もしかして……!」

 

 そこまで口にして、けれどもう間に合わない。

 今からのプラグアウトが間に合わないほどに、その墓石が淡い輝きを帯び始めた。

 

”俺の眠りを妨げる者は……誰だ……”

 

「アイリス、逃げるぞ……!」

 

「……もう無理よ。戦うしかないわ……!」

 

 アイリスが構えた。

 その眼前で罅が入っていき、そして内側から破壊されるようにして砕けた墓石の中から、一人のナビがその姿を見せた。

 

「まさかこの地に足を踏み入れるナビがいるとはな……」

 

 マントに包んだその総身。

 ナビマークには裏切られた証として切り裂かれた痕が残っていることを知っている。

 これまでの戦いで、何度かその姿を見たことがあるナビなのだ。

 その強さについても十分知っている。

 

「俺の眠りを妨げた罪……お前の命で購ってもらうぞ!」

 

「来るぞ、アイリス!」

 

「わかってるわ……!」

 

「弱き者よ、消え去るがいい……!」

 

 その言葉とともに、アイリスはフォルテとの戦いに身を投じた。

 

 

 

 

 

 アーティファクトデータの使用は玲惟へ完全に委任されている。

 アイリスと玲惟の間でのフルシンクロは、アクアマンがリンクナビになった時から行えるようになっている。

 そのため彼のオペレートに完全に身を委ねることでアイリスもクロスシステム、そしてアーティファクトデータによる強化にもスムーズに対応することができる。

 今も、フォルテによる初手シューティングバスターを、その起こりを確認したタイミングでテングクロスに変化して風と一体になることによって避けている。

 「風を裂いて」という表現があるためか、テングクロスもソード系統の攻撃には弱い。

 フォルテがソード系の技を持たないなんて考える方が間違っているため、アイリスが負うことになるだろう手傷は、本当に玲惟次第なのだ。

 そしてクロス系チップは通常のバトルチップに比べてエネルギーの再チャージに時間がかかる。

 一度の戦いにつき各クロスは使えるのが一回だと考えるのがいい。

 

「えいっ……!」

 

 アイリスが扇を振るう。

 それだけでバトルチップの『トップウ』と同規模の風が巻き起こり、エネルギー弾が吹き飛ばされ、同時に彼の体を覆っていたドリームオーラも引き剥がされる。

 その様子を見てフォルテは笑っている。

 敵対者が強いのであれば、それはそれで嬉しいということなのだろう。

 

「クククッ……思っていたよりはやるようだな」

 

 では、こんなのはどうだ。

 そう口にしたフォルテの背後から出現した二つの闇色のリングが吹き荒れる暴風を切り裂きながらアイリスに迫る。

 さらに頭上からはフォルテが腕をリングと同色の剣へと変貌させて落下して来る。

 追尾型のリングから逃れるには上空に向かうしかなく、だが上空にいるフォルテへの対処ができない限りは上に逃げても意味がない。

 一瞬だけアイリスは悩んで、悩む必要など何もなかったと玲惟のオペレートに身を委ねる。

 頭上のフォルテをどうにかするという考えならば、彼女はそれを実行するだけ。

 送られてきたソード系統のバトルチップによって手に持つ団扇が硬質化したことに思考が及ぶよりも先に、アイリスは跳んで頭上のフォルテのソードに合わせるように団扇を振るう。

 

「っ……!」

 

「ふん、力が足りん」

 

 が、押し負ける。

 ナビとしての筋力値の違いから。

 それでも舟子の授業で体得した流れに逆らわないという水を操る上での重要な一点を重視して、フォルテの攻撃を流す。

 

「ちっ……」

 

 押し負けたのはアイリスなのに、地面に落ちたのはフォルテだけ。

 それが、力技しか知らない、力技だけでどうにかなってきたフォルテと、非力ゆえに技術(わざ)を覚える必要があったアイリスとの違い。

 このままであればヘルズローリング(闇色のリング)がフォルテの肉体を切り裂くのだが、そんなことは実際には起きず、それらはフォルテの体内に吸収されて消滅する。

 振り向いたフォルテの腕が、巨大な岩が連結したかのような、マッシブなものへと変貌している。

 防御を抜いて来るだろう(ブレイク性能を持つ)攻撃だと判断して、アイリスは一気に上空へと。

 テングクロスの特徴として、空を自由に飛び回れるというものがある。

 それを利用したものだった。

 

「ふんっ!」

 

「負け、ないっ……!」

 

 振るわれた腕と扇。

 お互いが起こした風がぶつかり合って乱気流を巻き起こし、アイリスの飛行を邪魔する。

 その間にフォルテが接近、ソードをアイリスに対して叩きつけるようにして切り裂く。

 

「っ……」

 

 ダメージとしては多少の切り傷程度。

 そこまで大きなものではない。

 ただ、テングクロスだったために弱点属性ということでアイリスにかかる負荷(ダメージ)は通常のそれよりも大きなものになり。

 何よりも、クロスが解除されてしまいアイリスから飛行能力が失われる。

 

「アイリス、やれるか……!?」

 

 玲惟の言葉。

 自らがオペレートをミスしたことで彼女に痛い思いをさせてしまったという後悔は確かにある。

 だが、それにかまけていてはアイリスがデリートされてしまうから、今はその罪悪感を無理矢理に押しとどめる。

 アイリスも、彼の心が伝わってくるが彼自身が押さえ込もうとしているのだから今は無視する。

 

「ええっ……!」

 

 PETの中に用意された、アーティファクトデータを使用するためのスイッチを起動する。

 そうして、アイリスの力を最大まで引き出すことにした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。