ロックマンエグゼ6 〜熱斗くんにいとこがいるだけの話〜 作:ぴんころ
アーティファクトデータの使用を、祐一朗は
形而上の存在である天使としか思えない見た目に至るから、だそうだ。
初めて見たときに玲惟もその表現に納得するほかなかった。
今も、その表現はなるほど間違いない、そう思っていた。
「行くわ……」
「これは……っ!?」
背中から真白の翼が生えている。
手には弓を持っていて、彼女の飛翔速度はテングクロス状態をはるかに上回っている。
眩ゆき白銀の籠手を身につけた彼女の姿はまさしく天使か、あるいは戦乙女か。
出力の上昇に伴って細かい動きまでは難しくなってしまったのだが、単純な行動であればむしろこちらの方が好都合。
極度の集中がなければ完全な状態で放つことができなかった『電子機器制御能力』すらも、集中せずにとっさに使える程度の出力だけでナビの動きを阻害することができるレベルにまで高まっていた。
ただ、代わりにというべきか、今の彼女はフルシンクロ状態でないと行動ができない。
元からエクサメモリを組み込んで生まれたロックマンとは違うため、今のアイリスは内側にある強大な力の制御に全力を注がざるをえず、代わりにアイリスの行動の全てを玲惟が制御している。
ひらりと飛んだ彼女が、その手の内にある弓から矢を放つ。
分裂したその矢がフォルテを襲う中、彼は腕を変化させて炎を放つことによってそれらを焼き落とす。
とは言え、ジャミングによって動きは鈍くなっている。
「えい……っ」
「っ」
炎の持続時間が終了したことによって再度の装填を臨まれたのだが、それが間に合わない。
動きも阻害されているために範囲外に出ることが難しい。
彼が選べたのは、その矢の雨を耐えながら攻撃の用意をすることだけだった。
「吹き飛べ……っ!」
先ほどまで火炎放射器だったはずの腕が再度変貌している。
今度は、手首より先の部分だけではなく、腕全体が。
戦車砲と呼ぶべき代物へと変化していた。
「アイリス……!」
矢の全てが戦車砲から放たれる弾によって折られていく。
連射性能はどうやら低いようだが、その勢いは激しく、一発ごとに発生する乱気流にアイリスの羽が絡め取られ、飛行に制限がかかる。
それでも避け続け、そして制限時間が近づく中でもう一つ、この姿での能力を思い出す。
玲惟がバトルチップのデータを送って、それがアイリスに反映される。
ただし、見た目には反映されない。
アクアソードを送ったにもかかわらず、彼女の手元に剣は登場しない。
代わりに、純白の翼が淡い水色に染まっていた。
「やぁっ……!」
翼をはためかせれば、水色に染まった羽が硬質化して降り注ぐ。
チップを一枚翼にロードさせることで放てるこの姿限定の技。
キャノン系統のチップでは不可能なのだが、それ以外であれば問題なく使用できるそれはフォルテに対しても確かな効果を発揮して、彼のマントの端を縫い止める。
「ぬ、うぅぅぅっ!」
逃げ場などすでにない。
フォルテの全身に突き刺さっていく水色の羽。
彼の肉体の全てを覆い尽くすほどにまで殺到したそれらによってフォルテの姿が隠れ、彼もまた沈黙したところで、玲惟はポツリと呟く。
「……やったか?」
「……いいえ、まだよ」
アイリスが言葉にしたのと同時、全ての羽が吹き飛ばされた。
とはいえ、確かなダメージがあったのかフォルテも息切れしている。
「……ククク、まずまずの力を持っているようだな。お前とはいずれ、再びまみえることになるだろう。その時まで腕を磨いておくんだな」
さらばだ。
そう言ってフォルテは姿を消した。
「……とりあえず、プラグアウトするか」
「……そうね」
「叔父さん、今日グリーンエリアに行ったら、中心の大木のところにウラインターネットにつながる穴があったんだけど」
その日の夜、どうやら才葉学園のブラックボードのメンテナンスをしていたらしい祐一朗が熱斗とともに帰ってきたのでそのタイミングでフォルテがいる空間に繋がっていた大穴について伝えておくことにした。
「……なんだって?」
「いや、だから見えにくいようにウラインターネットへつながる穴が隠されてたんだ。あれ、多分そのままにしてたら危ない」
ついでにフォルテにあったことに関しては内緒に。
流石にそこまで言葉にしてしまえば心配されることは間違いないから。
「わかった。時間があるときにでも修正しておくよ」
「お願い。……多分あれ、正規の道じゃないから」
そう言葉にしてから玲惟は部屋に戻る。
フォルテ相手に勝った……勝った? まあとりあえず生き残ったアイリスに何かしてあげないといけないだろうという考えからか、玲惟は帰ってくるよりも先にしてほしいことを尋ね、そしてつい先ほどその答えをもらったのだ。
「ほら、おいで」
ベッドに腰掛けて、羞恥に頬を赤く染めたアイリスを誘う。
彼女が望んだのは膝枕。
昔であればたとえコピーロイドがあったとしても言わなかっただろうことを言うようになったのは成長と取るのか堕落と取るのか。
人によってその答えは変わるだろうが、少なくとも玲惟はそれを喜んでいた。
そういうわけで、アイリスの頭を膝の上に乗せて、彼女の頭を撫でている。
「重くないかしら……?」
「重くない、重くない」
コピーロイドに入っているのでその分の重さを感じる程度。
そして、頭を乗せている程度なので重いと感じるような何かはない。
物憂げな表情をしていることが多かったアイリスが豊かな表情を浮かべているという事実に喜びを噛み締めながら、彼女が満足するまで頭を撫で続けるのだった。
フォルテは出てくる予定はもうない
フォルテ「!?」
……ここからはちょっと遅れそう。