ロックマンエグゼ6 〜熱斗くんにいとこがいるだけの話〜   作:ぴんころ

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第三話

「アイリス、大丈夫か?」

 

「ええ、大丈夫」

 

 スプリンクラーの中にアイリスがプラグインしたことを確認して、そこの環境が大丈夫なのかを確認する。

 熱斗は熱斗で管理システムの電脳の攻略を進めていると信じて、消火システムの作動を彼女に任せる。

 彼の視界の端では教師たちが警備ロボットの放つ火で脱水症状を起こしているのかフラフラとしている姿が見えるので、緊急で行わなければならないという焦りが彼の中に生まれる。

 だが、その程度のものが今更になって、世界を五度救った小学生と一緒にずっと戦ってきた彼のオペレートに対して影響を与えるはずもなく、消火システムにまでたどり着く。

 そもそもチップフォルダを作成しているとはいえ、もともと彼女の能力は『電子機器及びプログラムへ干渉し制御する能力』に特化しているために、ほとんどそれが使用されることはない。

 どちらかといえば、戦いに不慣れな彼女が対応することができない部分を彼のオペレートで補うというのがこの二人の関係性の正しい形。

 その気になれば、アイリスは一人でだって戦える。

 

「消火システムを発見したわ」

 

「作動を頼む」

 

 玲惟はチップフォルダからバトルチップを取り出していつでも送れるようにしながら、アイリスの持つ能力による干渉を頼む。

 本当のところ、彼女はそこまでこの能力を使用することを良しとしない。

 その理由を彼女は語りたがらないのだが、きっと、彼ら二人がどちらも己の相棒になったと感じたであろう、少なくとも玲惟はそう思っている日から、彼女は彼のためにこの能力を使用することを決めている。

 アイリスは彼のネットナビであり、だからこそ彼女のことを絶対に守ると彼は誓っている。

 ネットナビなので、どちらかといえば彼女に守られる側なのだが、絶対に彼女のことを死なせない、彼女が危険な目に合うような時は必ず助けると誓ったからなのだと、そう考えている。

 

「消火システム、作動……っ!? 玲惟、ウィルスが来るわ!」

 

「任せろ!」

 

 無理な解除を行えば、セキリュティがわりに飼育されていたウィルスが出て来るかもしれないということは彼らにはわかりきっていた。

 彼女ならば少し時間があれば解除したという結果から正しい手順を逆算してウィルスを戻すことも可能。

 よって、彼がしなければならないことは、それまでの間アイリスが問題なく作業できるようにしてあげること。

 少なくともこのウィルスはプロテクトなのだから、簡単に壊していいものではないのだ。

 

「バトルチップスロットイン!」

 

 入れたチップに書かれた絵柄はかつて熱斗が戦った『ドリームウィルス』の小型版にも思えるウィルスがオーラをまとった姿である。

 そのチップの名称をドリームオーラ。

 一撃で一定以上の威力を出さないと解除できない、合計ダメージで消滅するバリア系統の上位種。

 たかだか学校のプロテクト程度であれば決して超えられないであろう、最強クラスの防御能力を誇るチップなのだ。

 スーパーキタカゼのようなバリア系統を剥がすチップがあったならば話は別だが、そのような高価なものをたかだかウィルス風情が持っているはずもなく、チップが効果を発揮するのと同時に黄色いオーラによって包まれた今のアイリスにダメージを与えられない。

 

「っと、まずい。ちょっと急いでくれ!」

 

「待って、あと少し……」

 

 アイリスによるカウントダウン。

 残り五秒からのカウントが始まったのだが、その時点でもう先生たちが限界に近いようで倒れそうになっている姿まで見える。

 死人が出そうになっているという焦燥が彼らのことを襲っている。

 

「できたわ! 消火システム、作動!」

 

「よっしゃ!」

 

 思わずガッツポーズ。本当にギリギリのタイミング、あと一分でも遅れていればその時点で誰か死人が出ていたかもしれないというレベル。

 そこでスプリンクラーが作動して、警備ロボットたちの炎を潰しにかかる。

 ついでに内部の回路もどこかで漏電したのか、ぶすぶすと煙を吐きながら警備ロボットが動作を停止する。

 

「アイリス、悪いけど……」

 

「ロックマンの手助け、ね……?」

 

 戻ってきた彼女に問えば、アイリスもやるべきことは心得ていると言わんばかりに言葉を発する。

 かつて、出会った頃に比べて彼女は本当に能動的になったと思いながらも彼は頷いて、そして熱斗の横にまで来てからPETを管理システムに向けた。

 

「プラグイン! アイリス.EXE トランスミッション!」

 

 叫んで、再度彼女をプラグイン。

 熱斗の横に立ったところで、ロックマンに遅れる形ではあるが管理システムの電脳を突き進んでいく。

 炎が飛んでくるときにはキューブの影に隠れることでやり過ごす。

 チップを使って防ぐことはできるだろうが、一度使ったチップはしばらくの間は使えなくなってしまうために、ここで使ってしまえばコジローという少年のナビであるブラストマンと戦うときに回復している保証がないのだ。

 

「アイリスちゃん」

 

「ロックマン、無事だったのね」

 

「うん、なんとかね」

 

 追いついたのは、おそらくは最奥の管理システムの直前と思われる場所。

 プログラムくんたちが炎を消している最中。

 つまり、追いついた直後からボス戦と呼べる戦いに突入することになる。

 

「クォォォォッ……きやがったな!

 ここまで黒焦げにならずに来たことだけは褒めてやろう」

 

 そこまで言って嘲るような視線をロックマンに向けた。

 少し後ろにいるアイリスには気がついていないよう。

 

「……しかし、俺に戦いを挑むのは冷静な判断とは言えないぜ!」

 

 特徴的な叫びをあげる、ストーブをモチーフとしたかのようなネットナビ。

 それに対して青いネットナビ、ロックマンは一切の油断も慢心も、そして友好的なものなど一切含まない、常態で彼に対して相対しながら構える。

 

「ブラストマン! もうこれ以上、お前の好き勝手にはさせないぞ!」

 

「どうやら引く気は無いよう……だ、な……?」

 

 そこでようやく、アイリスの存在に気がついたようで。

 

「ククク……クハハハハ!」

 

「……?」

 

 アイリスを見て笑うことの理由がわからない。

 ロックマンからすれば意味がわからないことだが、アイリスからすれば一つだけその理由に思い当たるものがある。

 それはオペレーターである玲惟にすら伝えていないことで、少しだけ表情が歪められることになった。

 

「まさか貴様がここにいるとはな!」

 

「……っ!」

 

「ならば話は簡単だ! プログラムのかけら一つ残さないようにその青いナビを燃やし尽くし、貴様をあの方の元へと連れて行こう!」

 

「来るよ!」

 

 ブラストマンの胸にある噴出口に過剰なまでの熱量が集まっていることが目に見えてわかる。

 炎系統のネットナビというのは、今この状況を構成している警備ロボットの炎、電脳内部で起きていた爆煙などの情報から確定しても問題はない。

 よって、水系統のチップを取り出して、二人も構える。

 

「任せろ! バトルオペレーションセット!」

 

「アイリス、こっちはいつもみたいに」

 

「……大丈夫よ」

 

 少しだけ怯えが出ていたようにも見えたアイリスだが、ロックマンと熱斗の闘志、そして相棒である玲惟が何も聞かずにただ呼びかけて来たことでいつもの調子を取り戻し、彼女も構えた。

 

「イン!」

 

「行くわ……」

 

 二人に、チップが転送された。

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