ロックマンエグゼ6 〜熱斗くんにいとこがいるだけの話〜 作:ぴんころ
「クッ、クウゥゥゥゥゥッ!」
ブラストマンが崩れ落ちそうな状態をこらえていることがはっきりとわかる。
その状況で、ロックマンとアイリスのことを睨んでいた。
「お、お前らみたいなやつに負けちまうとはな……!!」
肩で息をしているとはいえ、まだデリートされたわけでもない。
油断は大敵。けれど戦いはすでに終わっていて、これ以上の行動をブラストマンはできそうにない。
オペレーターがいれば話は別だが、コジローのことを捨てたのは彼の方。
今更になってコジローが何かをするとは思えるはずもなかった。
「はぁ、はぁ、……あ、あのお方に叱られちまうじゃねぇか」
「あのお方……?」
ロックマンの疑問に答えることはない。
「こうなったら……クォァッ!」
生み出されたのは炎の壁。
ブラストマンの末端からプログラムのかけらになって崩れかけているほどの無茶。
それでも、それだけの価値はあったようで、ロックマンもアイリスもそれを超えてブラストマンにとどめを刺せそうにない。
「こ、この勝負……第一ラウンドは……お前らの勝ちだ……」
息も絶え絶えで、それでも負け惜しみのような言葉を発しながら。
「はぁ、はぁ……つ、次やるときは、黒焦げにしてやるぜ」
「ま、待て!」
ロックマンの制止の言葉。
けれど、待てと言われて待つバカなどいるはずもなく。
ブラストマンはプラグアウト。
そしてその数秒後、彼が生み出した炎の壁が消失したことが最後となって、管理システムの電脳のエラーは消滅した。
「アイリス、大丈夫か? 火傷とか……」
「大丈夫よ。私はプログラムだから……」
そして、それに少し遅れる形で現実の方の状況も通常業務に戻った。
ブラストマンを倒したことによって、才葉学園で起きた騒動は終結を迎えた。
今回の事件は、外部から如何なる手法によってか侵入したブラストマンによって起こされた、ということで一件落着。
とはいかなかったと後から玲惟は熱斗を通して話を聞いた。
彼は高等部の生徒なので、小学部のことは終わった後で聞いた話だけなのだが、それでもブラストマンの教唆によって事件を起こしたコジローは教師から怒られたらしい。
本来なら処罰は停学、あるいは退学レベルの、一歩間違えば人が死んでいてもおかしくはない事件だったのだが、彼は自分から率先してやろうとしたものの、それでも結果としてはブラストマンが勝手にやったことであるという事実、そして彼がやらなくてもブラストマンが勝手にやったであろうこと、最後にコジローという生徒を外部から守るためにその程度で済ませた、とのこと。
一応今回の一件は対外的には存在しない事件……というわけではなく、形としては『警備システムの
そして、その事件を教師が解決できずに、いくら市民ネットバトラーの資格を持つとはいえ小学生に解決してもらったというのも『教師は何をやっているんだ』ということになりかねない。
そのため、(Sランクの)市民ネットバトラーであり、大人として見られることも出てくるような時期である高校生という立場で、事件解決に貢献した玲惟を大々的に『事件解決に貢献しました』とすることでそちらに対しては視線を向けさせないという話。
「ちぇっ、兄さんばっかりずるいぜ」
「そんなことを言われてもな……」
実際、彼からしても『警備ロボットの炎を止めた』ぐらいしかしておらず、どちらかといえば事件解決そのものには熱斗の方が活躍していると思っている。
だが同時に、ここで熱斗が大々的に有名になれば、それはそれで彼にいろんな厄介ごとが引き寄せられるのではないかと言う心配もあって。
だからこうして、それを享受しているのだった。
「玲惟……ちょっといいかしら?」
「どうかしたのか、アイリス?」
アイリスが声をかけてきたのはPETからではない。
現実世界に彼女が出現している。
これも、彼の方を有名にするための手段の一つ。
注目の度合いを高めるために、コピーロイドを贈呈されるという形になった。
一応は『事件に巻き込まれたにもかかわらず文句を言うこともなく解決に尽力して、死人を一人も出さなかったほどの人物なのだから、彼ならば間違ったことには使わないだろう』と言うことらしいのだが。
実際のところは『一般人に使わせるテストケース』『万博に向けた展示品としてのコピーロイドを人に広めたい』と言ったところか。
けれど、そんなことを知らない一般人からしたら『試作品でしかないコピーロイドを個人で所有している』と言う事実だけがそこには残っていて、それが原因で彼に対しての注目ばかりを高める。
結果として熱斗にはそこまで注目が向いていないのだから、彼にとっては万々歳。
ただ、それは人間側の都合であって、そんなことはアイリスには関係ない。
コピーロイドを贈与されたことによって、家の中程度であればバッテリーもそこまで気にすることはなく歩けるようになった彼女は、事件から数日が経った今、一つだけ気になっていることがあった。
そのため、彼女は自らのオペレーターを引っ張って部屋へと連れ込む。
ベッドで二人並んで座ればわずかに沈黙が生まれ、それをアイリスが自ら壊した。
「聞かないの……?」
「ブラストマンがお前を知ってた理由か?」
頷くアイリス。
コピーロイドが家に来てからと言うもの、暇さえあればアイリスはコピーロイドに入って彼らと同じ時間を過ごすようにしていた。
無論、彼がインターネットに潜りたい時やおつかいを頼まれた時、学校に行く時など、そして何よりも熱斗とロックマンの関係性を知っているため結構な頻度でそちらにもコピーロイドを使わせているため、その間はPETの中に戻るのだが。
熱斗が犯罪を犯さないということを確信しているために、そんなことだって問題なくできる。
ついでに家の中だけなのでバレなければ問題ない、と考えているのだろう。
これまでの数日、彼は彼女に対してなぜブラストマンが彼女のことを知っているのかなどは一切問わなかった。
それを疑問に思ったのだろう、彼女は逃がさないと言うように彼の手に己の手を重ねてじっと視線を合わせる。
「別にアイリスが言いたくないなら、話せるようになるまで待つつもりだってだけだよ」
アイリスを光祐一朗に見てもらった時に、一定条件下で作動する爆破プログラムが発見された時から、彼女が何か抱えていることは知っていた。
ならばあとは彼女が語ってくれるのを待つだけだと、最初の時から決めていたのだ。
彼女が語るよりも先に何かしらそれっぽい連中が来たと言うだけで、その気持ちは今も変わっていない。
「…………ありがとう」
「どういたしまして」
事件と言っていいレベルの火事が発生したためにしばらくの間は休校だったのだが、翌日からはまた学校が始まる。
一日中、それこそコピーロイドの充電が保つようであれば、特に何も用事がない日は現実にいたアイリスも、明日からはまたPETなどの電脳世界にいる時間が長くなる。
名残惜しくはあったのだが、ベッドに腰掛けて会話をしている時間もコピーロイドの充電という時間制限によって終わりを迎える。
翌日の準備はすでに終えた。
「それじゃ、おやすみアイリス」
「おやすみなさい」
その言葉を口にしてから、彼女をPETに戻す。
ついでに転送待機状態にするのは、この数日間の慣れによるもの。
朝起きた時の挨拶と夜眠る時の挨拶、どちらも現実でしたいというアイリスからの頼みによるものである。
転送用のゲートが開いた状態で寝ることで、翌日の朝にはアイリスが勝手にコピーロイドに移っていられる。
そうして、彼はベッドの中で眠りにつくのだった。