ロックマンエグゼ6 〜熱斗くんにいとこがいるだけの話〜   作:ぴんころ

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第七話

「兄さん! コピーロイド貸して欲しいんだ!」

 

「は?」

 

 翌日、叔父さんに電脳獣グレイガがゴスペルに似ていた、という話をしているとシーサイドタウンに向かった熱斗からのオート電話がかかって来た。

 それの口調から急いでいることはわかったが、それでも理由がよくわからない。

 朝からアイリスを出していたために一度充電が切れかけている、という状況にまで陥っていたのがある意味では功を奏したかもしれない。

 充電完了まであと一分、というタイミングの電話になっていたのだ。

 電話での状況説明が終わる頃には充電も完了していて。

 

「わかった、今からそっちに行く」

 

「お願い! こっちでも何かないか探してみるけど……」

 

 クラゲが大量にいる水槽の中を、水族館の中にいたゾウアザラシが好んでいるボールを取りに行かないといけない、ということを伝えられた彼はすぐさま出発の準備を整える。

 だが、向こうもコジローと彼に懐いていたペンギン……ギンジローの命の危機らしく、彼が来るまでの間をじっと待っているわけにはいかないらしい。

 よってシーサイドタウンに向かうまでの間に、そちらでも何かないかを探しておくらしい。

 アイリスを即座にコピーロイドに転送したことで、彼女の手で運ぶ(動く)ことができるようになった。

 予備のバッテリーが一つしかないために、行って、戻ってを繰り返すのには少し心許ないが今は少しでも時間が惜しい。

 

「行くぞ、アイリス!」

 

「ええ……!」

 

 

 

 

 

 シーサイドタウンにたどり着けば、熱斗から聞いていた通りに海洋生物が外に放流されてしまっている。

 それでも、水族館までは陸続きなので特別問題がなく進むことができる。

 アイリスとほとんど並行して走りながら水族館の中に滑り込むような形で入り、PETの電話を起動した。

 

「熱斗、水族館まで来たぞ! お前がいる場所はどこだ!?」

 

「水族館の受付の裏から道なりに進んで!」

 

「わかった!」

 

 熱斗からの頼みで走り出す。

 オート電話で案内を受けながら、コピーロイドの性能がナビ本来のそれとは違うせいか全力で行動した場合に発生する差異で、走ってる途中で転びそうになったりするアイリスを支えて、熱斗が指定した場所に向かっていく。

 そうして、恐らくはショーをすると思わしき巨大な水槽の上のステージにまでたどり着いたところで、彼はそこに立つ唯一の人影、青いバンダナを巻いた家族を発見したのだった。

 

「熱斗!」

 

「サンキュー、兄さん!」

 

 たどり着いたところでアイリスをコピーロイドから戻す。

 そして同時に、ロックマンが転送される。

 アイリスという女の子の姿から一瞬でロックマンという男の子の姿に変わるのはこれまでやったことはなかったのだが、それでも熱斗と玲惟は結構な時間を同じ家で過ごしてきたので、それぐらいのコンビネーションはできるはず。

 そう確信して一切の打ち合わせを行わずにそれを成功させたのはなかなか奇跡的なことなのだが、今はそんな奇跡は関係のないこと。

 コピーロイドに入ったロックマンが、クラゲが無数に存在する水槽の中にゾウアザラシが遊ぶときに使用するボールを取りにいく。

 

「……どうして私じゃなくてロックマンが?」

 

 その最中、アイリスからはそんな言葉が。

 別に責めるような意図が込められているわけではない、ただの純粋な疑問。

 その答えは結構簡単なもので、PETの中から問われたオペレーターは苦笑しながら告げる。

 

「いや、だって。アイリスはスカートじゃん」

 

 アイリスは通常のナビとは違って、普通の人間のようにしか見えない見た目なのだ。

 服装も、コピーロイドに入って現実に出てきても問題ない程度には普通のもの。

 そんな状況下で、水の中に入れようとは思わなかったというだけ。

 

「……そう」

 

 アイリスは頬を赤くして顔を少し背ける。

 そんな彼女の姿はPETの前にいるオペレーター以外に見られることはなく、そんなことになっているとは知らないロックマンは水の中にボールを取りに行く。

 

「熱斗くん!」

 

 水中のロックマンがバッテリーの心配をする。

 このままだと間に合わない可能性もある、と。

 本来なら沈まないはずのボールなのだが、どうやらこれは「ゾウアザラシが最も気持ちよく遊べるように計算されたボール型の電子機器」だったようで、さすがにこれを持ったまま上がるにはバッテリーが厳しい。

 コピーロイドそれ自体は防水性なのだが、さすがにバッテリーまでは防水性な訳がなく、ロックマンが水の中に残ってしまえばその時点で回収ができない。

 間に合うか、間に合わないか、焦燥に駆られながらロックマンは全力で走り。

 

「ぎ、ギリギリ……」

 

 水中から上半身が出たところで、コピーロイドのバッテリーが切れた。

 熱斗が遊び道具のボールを回収して、玲惟がコピーロイドを引っ張り上げる。

 コピーロイドのバッテリーを予備のものに変更している間に、熱斗がゾウアザラシの気をひくためにボールを転がして。

 

 ”アウ、アウアウアウ!”

 

 それにつられて動くゾウアザラシの鳴き声を聴きながら熱斗がガッツポーズ。

 

「よっしゃ、これで管制室に行けるぜ!」

 

 そして、バッテリーを取り替えた直後の玲惟に向けて熱斗は振り向いて。

 

「兄さん、ありがとう! あとは俺たちでどうにかするよ!」

 

「いや、それは別にいいんだが……手伝わなくて大丈夫なのか?」

 

「大丈夫、兄さんは俺たちよりもアイリスのことを心配しなよ! 大々的に目立ったらまずいんでしょ!」

 

「聞いてたのか……!?」

 

 昨晩の会話を聞かれていたことに驚いて。

 だが、熱斗の言葉に利があることもわかる。

 熱斗は普段の学校の授業では色々とやらかしているが、こういう時には知恵が働くのだ。

 

 前回のセントラルタウンでの一件は学園内部で全てが完結していたからこそ、アイリスはそこまで目立つことはなかった。

 『玲惟がコピーロイドをもらった』という事実ばかりが知られていて、彼のナビにまでは注目がいかなかったのだ。

 それは、アイリスが人間と瓜二つの見た目をしているために現実世界にいてはそこまで目立たないことももちろん理由なのだが。

 

「…………わかった。ここはお前らに任せる」

 

「ああ、任せてよ!」

 

 熱斗が行くのを見送って、バッテリーを入れ替えたコピーロイドにもう一度アイリスを送り込む。

 心配そうに見送るのだが、それでも彼に任せると決めた以上は信じるほかない。

 彼とロックマンであれば問題ないのだ、と信じるしか。

 それができる程度には、彼らには実績があるのだから。

 

「大丈夫よ、あの二人なら」

 

「……ああ、そうだな」

 

 そうとなればこれ以上ここに留まっているわけにはいかない。

 事件を解決できるほどの人材がいたのに何もしなかった、となると光家にも面倒な中傷が飛んでくる可能性がある。

 誰かに知られるよりも先に、シーサイドタウンを出た方がいいのだろう。

 それでも後ろ髪を引かれる玲惟を落ち着かせるようにアイリスは微笑んで手を握り、そのまま手を引いて走り出す。

 

「今日の彼らは頑張ってくるんだから、帰ってきた後に少し豪勢な食事にしてもらえるよう先におばさまに頼んでおきましょう?」

 

「……ああ、そうだな」

 

 アイリスに促される形でシーサイドタウンを脱出する。

 それから大体一時間ほど後のこと、家で待っている間にやってきた熱斗からの連絡によって事件が解決したことを知って、彼らはホッと一息をつくのだった。

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