ロックマンエグゼ6 〜熱斗くんにいとこがいるだけの話〜   作:ぴんころ

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まさかの……


第八話

「あ、あの……こんにちは〜……」

 

 シーサイドタウンの事件の翌日、日直の仕事のために遅くまで残っていた玲惟が日誌を書き終えて担任の教師に渡し終えたところで、職員室にそんな声が響いた。

 

「……?」

 

 どこかで聞いたことのあるような声に疑問を抱くが、すぐには答えが出てこない。

 それでも時間は待ってくれるはずもなく、教師がその声の持ち主を呼ぶ。

 

「ああ、君が新しい研究生か、よく来てくれたね。こっちに来てくれたまえ」

 

 そうして入って来た少女……少女と呼ぶには少しばかり年上なのだが、それでも雰囲気から小動物のような何かと、そしてしっかりとした芯を感じ取れる女性が歩いてくる。

 どこかで見たことがあるような、ジャージを着たツインテールの女性。

 

「城戸舟子です。よろしくお願いします!」

 

 その女性が担任に対して自己紹介したことによって、彼の記憶の中からも彼女についての情報が出てくる。

 

 城戸舟子。

 

 かつて熱斗が参加したトーナメント。

 デューオと呼ばれる、隕石の中に存在する地球外のネットワークの住民を説得する地球最強のネットバトラーを決めるためのトーナメントの予選、シティバトルトーナメントに参加した選手の一人で、彼女のナビであるアクアマンが一度インターネットを水浸しにした時に探すのを手伝ったのだ(アイリスではなく汎用ナビで、だったが)。

 そういうわけで知り合いであり、だからこそここにいることに驚いた。

 

「なんで舟子さんがここに!?」

 

 彼女は中学生なのだ。

 高校にやってくる理由がない。

 清掃員のバイトか何かかと思ったが、研究生ということから違う様子。

 そしてその悲鳴じみた叫びによって、彼女の方も玲惟に気がついたらしい。

 

「まあ、玲惟さん! こんなところで会えるなんて思わなかったわ」

 

「それはこっちの台詞だと思うんだけど。なんでこんなところにいるんだ?」

 

 進学のため、という様子ではない。

 そもそも大会の時に司会から『貧乏ネットバトラー』と呼ばれてしまうような彼女が、弟たちの学費を稼いでいるのにも関わらずに高校に通う余裕があるとは、失礼ながら思えない。

 

「この学園が主催している、『水の力がどんなナビにも使いこなせるようなシステムの研究』に参加することになったの……」

 

「ああ、なるほど……」

 

 それならば納得だ。

 彼女のネットナビであるアクアマン以上にそれが適任な水属性ナビなど、彼には思い浮かばない。

 ただ大泣きするだけでインターネットを沈没させられるほどの水を生み出せるアクアマン以上に最適なナビなど。

 更に言えば実力だって他の人たちとは違って『トーナメントに参加することができる』という程度はあるのだ。

 

「あ、あと、それだけじゃなくて」

 

「……他にもあるのか?」

 

「ええ。水をテーマにしたウィルスバスティングの授業もすることに……」

 

「先生って……大丈夫なのか?」

 

 舐められたりしないだろうか。

 年下ということで、最初は言うことを聞いてもらえない可能性もあるのではないかと言う心配に、舟子は苦笑い。

 彼女自身もそのことについてはちゃんと考えているのだろう。

 少なくとも、驚いたような様子を見せなかったのだから一切考えていなかったと言うことはないはずだ。

 

「私も最初は自分よりも年上に対して授業するなんて抵抗があったんだけど……」

 

「だけど?」

 

「お、お給料が良かったから……」

 

「な、なるほど……」

 

「それに、もしも言うことを聞いてもらえないようなら、ネットバトルで私の方が格上だって見せれば多分どうにかなるんじゃないかなって」

 

 ネットバトルは基本的には禁止、と言うほどではないが推奨はされていない。

 もしもデリートされるようなことがあれば、機器がウィルスに侵された時にウィルスバスティングができない可能性があるからだ。

 なので基本的にはウィルスバスティングの技量が、そのままオペレーターとナビの技量になるわけだが。

 舟子は無数のバイトを掛け持ちして、様々な場所でウィルスバスティングを行って、あるいは侵入したナビを追い返したり、デリートしたりしている。

 普通の高校生程度の技量では、彼女が相手する場合一人や二人では瞬殺となるだろう。

 その技量さえ見せれば、ウィルスバスティングについての授業を行うには問題ない、と言う考えを彼女は示していた。

 

 問題があるとするならば。

 

「なんだ、二人とも知り合いなのか?」

 

「はい。以前彼にはお世話になったことがあって……」

 

 彼の担任の言葉に彼女は頷いて。

 そこで、何かに気がついた様子。

 「あ、そうだ!」なんて言って、舟子は玲惟の方を向く。

 

「玲惟さん、私の授業を受けてみてくれませんか?」

 

「お、俺が舟子さんの授業を!?」

 

 妙案だ、と言わんばかりの彼女の晴れやかな顔。

 少し、断りづらい。

 

「玲惟さんに教えるのならいい練習になると思うんです! 私の方で何かミスがあってもある程度までなら対応できると思うし……」

 

「……わかった、わかったよ」

 

 本番の授業で失敗しないための練習、と言われれば断る理由がない。

 ウィルスバスティングの腕そのものは問題なくとも、教え方が下手な可能性だってある。

 そのことを確認して、直せるところは本番をする前に直しておきたいのだろう。

 

 というか断って、彼のクラスの授業になった時に不幸を引き寄せたらそっちの方が怖い。

 よって頷いて、いつからやるのかということを問いかける。

 

「そうですね……玲惟さん、この後暇ですか?」

 

「問題ないけど……」

 

「それなら決まりですね。私はそこの部屋にいますから、帰る準備が整ったら来てもらってもいいですか?」

 

「わかった、ちょっととってくるよ」

 

「それじゃあ、また後でね」

 

 そう言って部屋の中に入っていく舟子を見送って。

 彼はアイリスに向けて話しかける。

 

「あの人、前にあった時に比べて結構しっかりしてたな……ってアイリス?」

 

「……」

 

 表情は変わっていない。

 だが、少しだけ機嫌が悪そうに見える。

 どうしたのか、と声をかけようとしたところで彼女が入っていった部屋からとても大きな音とともに、彼女の鈍臭さを示すように「誰よ、こんなところに椅子を置いたのは!」なんて声が聞こえて来て、それでアイリスも少し気を張っていたのが馬鹿らしくなったのか、少しだけ表情を緩めた。

 そのため、本当に数瞬の出来事となってしまったので問いかけることもできず。

 

「……前言撤回した方が良さそうかな?」

 

「そうね……」

 

「とりあえず、行こっか?」

 

 基本的に、ウィルスバスティングと言われて水を思い浮かべられる人はいないだろう。

 そのため、『水をテーマにした』と言われるとなかなか気になるものがあって。

 本来ならそのまま帰る予定だったので職員室の外に置いて来たリュックを取りに戻った。




なんでアイリスにクロスシステムをさせようと思ったのか、過去の俺に小一時間程問い詰めた。
『作者の欲望』と言われて納得した。

ちなみに舟子さんが来た時点で熱斗くんはヒノケンの授業を終了しています。
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