ロックマンエグゼ6 〜熱斗くんにいとこがいるだけの話〜 作:ぴんころ
「玲惟さん、来てくれてありがとうございます!」
荷物を回収して戻ってくると、どうやら椅子に足をぶつけて転んだ挙句机の上に突っ込んだ結果、色々と資料が散乱しました、というような惨状になっていた。
それの片付けを終えた後、まるで何事もなかったかのように舟子はそんな言葉を発して玲惟に対して授業を開始しようとした。
「私の授業で水の心を知って、水の力を応用したネットバトルを身につけてもらいます」
教師と生徒という立ち位置だからか、それとも自分からお願いする形だったからか、今回は玲惟が座って話を聞くという形。
年下の少女を立たせて自分だけが座っているというのが居心地が悪いのか、なんとなく不愉快そうな表情。
ただ、それはアイリスぐらいにしかわからない程度の表情の変化だったので舟子が気がつけるはずもなく。
彼女は普通に話を進めていた。
「ところで玲惟さん。貴方は”クロスシステム”ってご存知ですか?」
「クロスシステム……?」
少し考え込む。
ついでにアイリスの方も見る。
アイリスも首を横に振る。
「知らないなぁ……」
「ふふっ」
アイリスと二人で揃って知らないということを示したのが琴線に触れたのか、舟子は笑う。
「クロスシステムっていうのは最近研究されてる最新の技術で、この技術を使えば、あるナビの持つ能力が、別のナビにも使えるようになるっていうすごいシステムなの」
(どこかで聞いたような……)
「簡単にいえば、アクアマンの持つ水を操る能力が、アイリスちゃんにも使えるようになるってことなんです」
(…………ソウルユニゾン?)
思い浮かべたのはロックマンの持つソウルユニゾンという
それと似てはいるが、システムとして研究されているということは他のナビであっても利用することが問題なくできるということ。
「ただし、能力を受け取る側は、他人の能力を受け取るために、それなりの基礎知識や基礎技術を身につけておく必要があります」
「ならこれは、その二つを身につけるための授業ってことか……」
「はい、そうですね」
(……今の所はちゃんと先生できてるな)
今回の授業は『生徒に教えるための練習』ということになっている。
生徒が玲惟だけだというのが『彼がわかっていないだけ』なのか、それとも『舟子の教え方が悪いのか』の判断をつけづらいのだが、今の所は知らないであろうことはしっかりと説明しているから問題はないように思えている。
「なので、まずは水の扱い方を知ってもらうために、玲惟さんには”アクアマン”をオペレートしてもらいます」
そう言って、舟子は奥にあるパソコンを指差す。
その画面には彼女のナビであるアクアマンが映っている。
「じゃあ、まずはこのパソコンでアクアマンを見てくだだい。……ああ、それとこれをどうぞ。これがないとインターネットへのアクセスができませんから」
「ありがとう、舟子先生」
「もうっ、からかわないでくださいっ!」
そんな会話をしているとアイリスがすっと目を細めてPETの中から玲惟のことを眺めている。
ごめんごめん、というようにこつんとPETをつつけば、仕方ないと嘆息したような声が聞こえて。
そんな状態で、一時的に貸し与えられたアクアマン用のPETを繋いでパソコンの中の様子を確認する。
「玲惟、よろしくっぴゅ〜」
「ああ、よろしくなアクアマン」
中にいたのはアイリスやロックマンとは違って二頭身のナビ。
以前にも見たことのあるそのナビの特徴は何かといえばやはり金魚鉢のような頭だろう。
その頂点からは小さな噴水のように水が噴き出していて、床に落ちることもなく霧散している。
そんな、アイリスのような女性らしい可愛さではなく、マスコットのような愛くるしさを持っているナビこそがアクアマン。
城戸舟子のナビである。
「それで、俺は何をすればいいんだ?」
「まずは、アクアマンをオペレートしてシーサイドエリアにある水族館の
「別にいいけど……なんで水族館?」
「以前バイトをしていた縁で、少し使わせてもらえることになったの。とは言っても使わせてもらえる時間はそこまで長くはないから、早めに行かないと、ね?」
「おっけー。で、ついたらどうすれば?」
「水族館のHPの中に職員さんのナビがそれっぽい格好で立っているから、そのナビに声をかけてね」
頷いて、どうやら先に舟子は話を通しに行くようだ。
電話をすればいいのに、と思わないわけではなかったが、そのためのPETを借りているのかと納得して。
いや、それでも借りているのはアクアマンをオペレートするための最低限の機能のものだから本体は向こうにあるのではと思って。
そして最終的に、基本的に全部ナビがしているからわからなくなるタイプの人か、という答えにたどり着いた。
「ま、いいか。俺たちも行こうぜ、アクアマン」
「レッツゴーっぴゅ〜」
少しばかりアクアマンのオペレートに慣れるまでに時間はかかったが、それでも進みながらやれば
そうしてシーサイドエリアを歩いて、少しばかり迷いそうな見た目のエリアから水族館のHPにまでたどり着いた。
「おっ、アクアマンじゃないか。舟子ちゃんはもう来てるぞ。……確か、今日は先生をするんだったか?」
「そうだっぴゅ〜」
アクアマンが話しかけたのは職員証を胸のナビマークの横につけた、ちょっとだけカスタマイズされたナビ。
それにしてもアクアマンがなぁ、と感慨深げにしていたそのナビは、舟子が水族館でバイトをしていた縁があると言っていたことから考えて、きっとこれまでの二人のことをしっかりと見ていたのだろう。
どことなく背伸びしているような子供を見るような目でアクアマンのことを見ている。
「それじゃあオペレーターくん。これから君にしてもらう授業についてだが」
「は、はい……!」
舟子とアクアマンであれば年下であり知り合いということで気楽にできたが、職員のナビともなれば年上である。
よって玲惟も少し緊張して、代わりに知り合いということで今度はアクアマンが少し気楽な様子に。
「今から舟子ちゃんに、シーサイドエリアの電脳バルブを開いてもらって一時的に水没させてもらう。そこに水族館で使っている魚データのダミーを放流するから、それらを捕まえて来てほしいんだ。合計十五匹、設定上のスペックではアクアマンが泳ぐスピードを超えているから、普通にオペレートするだけじゃ捕まえるのは難しいぞ」
「了解!」
「玲惟、魚データはエリアの上の方を泳いでいるっぴゅ。普通に歩くんじゃどれだけ頑張っても捕まえられないから、エリアにある渦巻きの流れを利用して上の方まで泳いでいくっぴゅ!」
魚の捕まえ方についてアクアマンからの説明が入る。
これは授業として用意されていたものだから、捕まえ方についても確立されているのだろう。
説明するアクアマンの言葉に淀みはない。
「だけど、泳ぐのって結構疲れるっぴゅ。僕の体力については大体の数値化されたものが
「戻すのが間に合わなかったら……?」
「間に合わなかったら……」
ゴクリ、と息を飲む。
どのようなペナルティが待っているのか。
もしもデリートされるなんてことになってしまえば、合わせる顔がない。
「もう一回最初からだっぴゅ〜!」
「あ、そうなの……」
ちょっとだけホッとした。
お魚捕まえ編は没シュート。次回の最初にでもどういう状況だったか載せる予定。