ニグンさんがお気に入りなんです。   作:ぷにぷに肉球ランド

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02 そしてサキュバスはひらきなおる

「ではシラタマ様、行ってまいります」

「はいはーいモモンガさんによろしくー」

 

 

 武装したアルベドが先に向かったモモンガを追っていく。

 シラタマはヒラヒラと手を振りそれを見送ると、目の前の遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を眺めていた。

 そこに映るのは騎士達に虐殺されかけている小さな村だ。

「お、デスナイトくんじゃん」

 モモンガが召喚したのだろう。そこへ突然乱入してきたデスナイトに騎士達は阿鼻叫喚という風で順番にお片付けされていく。

 一方でシラタマは殺されていく騎士達ひとりひとりを吟味するように見つめ、いいのがいないとわかるや大きなため息を吐き出した。

 

 

「あー違う! 違うなあ~そうじゃないんだよなあ~!」

 

 ひとりだけちょっと惜しいかなという者はいた。村を襲っている騎士達の隊長だろうか、いや隊員か? どっちでもいいか。とにかく下品な上に見事なまでの雑魚。デスナイトにやられている最中に何か叫んでいたので盗聴に特化した僕を送り聞いてみたが――おかねあげましゅと言っていただけだった。残念不合格である。

 下品すぎるのはダメだ。程よく下品で程よく雑魚、これがベストなのだとシラタマはそれを見送る。

 俺は妥協はしない、それこそがポリシー! エロゲー イズ マイライフ! 思い出の中のペロロンチーノがヒャッホオオオイと両手を掲げている。

 

(ほんとその通りですよペロロンチーノ殿!)

 

 

 そうこうしているうちにあれよこれよとモモンガの初陣イベントは進行していく。

 村を襲っていた騎士とはまた別の兵士みたいな連中が来て、そこの兵士長らしき男とモモンガが何やら話し始めた。

 

(うへーこいつらは一番苦手なタイプだわー)

 

 暑苦しいのは却下だ。このまま見ていても特に面白い事はないだろう。

 

 

 しかし、だ。

 どうやら神はこんな哀れなサキュバスにもご慈悲を与えてくださったらしい。

 

 

 

 

 

++++++

 

 

 

 

 今、すべてを奪われようとしていたニグンの死に物狂いの哀願が終わった。そしてその無様さを黙って見ていたモモンガはやれやれという風に肩を竦め、ゆっくりと口を開く。

 

 

「確か……こうだったな。無駄な足掻きを止め、そこで大人しく横になれ。せめてもの情けに苦痛なく殺してや

 

「ちょま――――――ッッ!!!!」

 

 

 が。突如空から女の子、いやサキュバスが落ちてきた。その勢いにドワッと砂塵が捲き上り、彼女はそのままモモンガと陽光聖典の間に立つと

 

「モモンガさんスト――ップ!!」

 

 中止中止ぃと手をバタつかせるのであった。

 その様に呆気にとられたのはモモンガだ。

「……え、ええぇ」

 口をあんぐりと開けたまま固まり、精神は沈静化される。

 

「え、えーと……シラタマさん?」

「ごめんモモンガさん……お願いがあるんだけど」

「えっあ……ハイ、何ですか?」

 

 真剣な表情のシラタマに、モモンガは何か重大な内容なのだろうと気持ちを立て直す。

 しかしそんなモモンガの思いなど露知らず。シラタマはビッシィと陽光聖典の方を指差すと

 

 

「この人間私にくれませんか!!!?」

 

 

 沈黙。静寂。そして少し遅れてモモンガの「……ぇ?」という気の抜けた声だけが返ってくる。

 

 

「え、そ、それはそこの人間達全員をって事ですか?」

「え!? あー違います違います! コレだけでいいです!」

 

 たははと笑いながら小走りで棒立ちしている陽光聖典の中をかき分け、ニグンのみを指差す。

 

「あとのはいらないんで! モモンガさんの好きにして下さい。拷問でも餌でも実験でも」

 

 

(((拷問!? 餌!? 実験!!??)))

 

 

 軽々しく飛び出たとんでもない単語に陽光聖典の隊員達の顔がさらに絶望に染まった。

 それと同時にどうして隊長なんだという怨嗟がさらに積もり、全員がニグンを睨んでいた。

 こいつが自分だけ助けろと命乞いをしたせいなのだ――と。

 

 

「でもシラタマさん、その男この部隊の隊長でそれなりに情報持ってそうなんですよ。だからまずは拷問して拘束するべきかと」

「あ、そなの? じゃ他の奴にするか」

 

 

(((他の奴にするの!!!!?)))

 

 

 そのフットワークの軽さに隊員達が再び心の中で叫ぶ。命乞いを聞き届けたわけではなかったようだ。ならば自分達にもまだ助かる可能性があるはずだと、隊員達が哀願の目でシラタマと呼ばれている少女――見た目からして亜人種なのだろうか?――を注視する。が、

 

 

「…………や、違うな、やっぱこいつらじゃねえな」

 

 

 落胆するように肩を落とす。

 その瞬間、隊員達の生存へのアタックチャンスは始まることすらなくゲームオーバーしたのであった。

 

 

「モモンガさーん、拷問の後でもいいんでやっぱりこの人間欲しいです。ください」

「そうですか? うーん、シラタマさんがそこまで言うなら」

「わーいやったー!」

 

 万歳し楽しそうにはしゃぐシラタマ。腰から生えている白翼も嬉しそうにバッサバッサと羽ばたいている。

 その姿にモモンガは

(シラタマさん、子供みたいにはしゃいで結構可愛げあるんだなあ……もっと真面目な人だと思ってたのに……ふふ)

 そんな感じで微笑ましく見ている骸骨と隣の黒甲冑、アルベド。

 すでに生気を失い棒立ちしている陽光聖典隊員達。

 そんな中で、目の前で今度は小躍りまで始めた白い少女からニグンはぼんやりと視線を空に見遣り

 

 

(どうして……こうなったんだ……)

 

 

 そう祖国の神に問いかけていた。

 もちろん神は何も答えなかった。

 




ここでのモモンガさんはまだアインズと名乗っていません。
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