ニグンさんがお気に入りなんです。   作:ぷにぷに肉球ランド

25 / 28
今回も閑話です。
シリアスよりもほのぼの日常系の方が書きやすいですね
短めです。


25 閑話 クインティア兄妹の感動の再会

 どうしてこうなった!!!!

 

 

 ここにきてもはや何度目かもわからない自問自答をクレマンティーヌは繰り返す。

 

 どこで間違えた!?

 何がだめだった!?

 どうしてこうなったんだ!?

 

 あのクソ兄貴から、漆黒聖典から、法国から逃亡したのが間違いだったのか。それとも闇の神殿が爆発した混乱に乗じて土の巫女姫を殺し叡者の額冠を奪ったのが間違いだったのか。ああ、そういえばあの叡者の額冠はアイツに渡す約束してたんだっけ。

 いーや! そんなのはもうどーでもいい!!

 

「ん゛ん゛ん~~~~ッ!!!!」

 

 クレマンティーヌは猿轡ごしに必死に悲鳴をあげる。今からどんな目に遭うのかを理解しているからだ。なぜなら拘束されたクレマンティーヌの丁度前方、そこには拷問され殺されたのであろう屍体がいくつも転がっており、あまりの惨さにそれらがかつてどんな姿をしていたのかすらわからない。

「ん゛~~ッん゛ん゛ん゛~~~~ッ!」

 さっきまでの黒に染まった悍ましすぎる部屋から出られるならどこでもいいなんて思っていた自分は馬鹿だ、大馬鹿だと泣き喚いて許しを請いたい。今ならいくらでも誰にでも頭を下げられる。地に這い蹲って無様を晒せる。いっそ心を入れ替え真面目な聖職者に再就職もできる!

 それほどまでに、クレマンティーヌのプライドはボロボロに捩じ伏せられていた。

 

 

 カラカラ、カラカラカラと車輪の転がる音が聞こえてくる。そして金属製品が盆の上で触れ合う音。

 もしどこかの豪邸で朝にこの音を聞いたなら、メイドが豪華な朝食を運んできたのだろうとも思えるワゴンの音だ。

 が、そうではない。そんなわけがない。

 運ばれてくるのは恐怖と絶望だ。この世に存在するありとあらゆる最悪をも凌ぐ悍ましすぎる最悪だ。

 

 

「――あらん、起きてたのねん?」

 

 ワゴンを押してきた存在が暗闇からぬらあっと姿を現し――クレマンティーヌは失禁しながら声にならない絶叫をあげた。

 

 

 

 

 と、それがあったのがだいたい今から三時間程前である。

 現在クレマンティーヌはナザリックの第六階層に建てられたログハウスにて、まるで執行の時を待つ死刑囚のような気持ちで待機させられていた。

 楽しいナザリックツアーの第二幕、ドキドキ☆拷問体験中に突然やってきた骸骨の化け物――エルダーリッチだろうか?――にそろそろいいだろうと言われ、問答無用よろしくとここに放り込まれたのだ。

 そのまま骸骨は再びどこかへ行ってしまったが――

 はあ、とクレマンティーヌは深く重い息を吐き出す。そしてこんな目に遭っているそもそもの原因であるあの白い女悪魔を思い出し、ぶるりと身を震わせた。そうだ、何が一番の間違いだったのかは明白じゃないか。

 

 アイツだ!

 アイツに関わってしまったのが間違いなのだ!!

 

(くそがああっ! 陽光聖典め、というかニグンめええ……ッ! 同じ任務についたことなんて過去数回しかなかったけど、あんな化け物を連れてくるなんてあいつ馬鹿じゃないのか!? 頭おかしいだろ!? 狂ってるんじゃないか!?)

 快楽殺人マニアのお前が言うなとどこからかツッコミが聞こえてきそうだが、アレに比べたら自分はノーマルだ。断言してもいいとクレマンティーヌはぎりぎりと歯噛みする。

 

 さてさてしかしだ。

 あとの祭りとはまさにこのことであり、クレマンティーヌは気をぬくとドババッと滝のように溢れそうになる涙を必死に堪え、大人しく待機を続けるのであった。

 

 

 

 そしてどれくらい待ったのか、ログハウスのドアがノックされる。

「あー……ちょっと来い、クインティア妹」

 骸骨の化け物が顔を見せ、今度はなんだか少し疲れたような声色でクレマンティーヌを呼んだ。

 

(……クインティア……妹?)

 

 確かに自分にはクソ兄貴がいる。だがなぜ今の状況で妹呼びなのだとクレマンティーヌは違和感を覚えたが――何も言えずにそのまま骸骨の化け物の数歩後ろをついていくしかない。

 森を抜け、野を進み、やがて豪華絢爛な回廊が続く。

 歩く目前には豪勢な漆黒のローブを纏った骸骨の背中、その隣にはあのクソッタレな白い女悪魔にどこか似ている黒髪の女――同じ種族なのだろうか?――に、そして自分の背後にはダークエルフの子供が二人。途中の廊下でもぞろぞろと化け物たちがクレマンティーヌの様子を蔑むような眼差しで見てくる。化け物、化け物、たまに綺麗なメイド、化け物、化け物、綺麗なメイド……おいなんなんだこの廊下は。

 

(もうやだ……かえりたい。おうちかえりたいよおおお……!!)

 

 そんな地獄の回廊をしばらく進み、ある扉の前に到着する。そこは普段あまり使うことのなかったいわゆる客間となっており、ユグドラシル時代はたまにアインズ・ウール・ゴウンの力を借りたいとやってきた他ギルドやソロプレイヤー達がメンバーとの謁見の際に使っていた部屋だ。

 扉の前にいたメイドが一礼し、扉を開ける。

 

(ああ――きっとこの向こうは地獄の底なんだあ)

 

 生まれて二十数年、漆黒聖典第九席次として活動していた頃なんてスッカスカに思えるくらいの圧倒的濃密さをこの短時間で経験したクレマンティーヌは憔悴しきっており、もはや何が起こってもどんな化け物がきても驚かないやあと心の中で自虐し笑う。

 

 そしてゆっくりと開かれていく扉の向こうには――

 

 

「うおおおおオオオン! 神イイ! 我が神よおおおお! その偉大なる御姿を再びお見せくださるとはなんとあああああッあア――ッンフゥゥ神イイイイ!!!!」

 

 

 全裸のクアイエッセが五体投地で泣き噦っていた。

 

 

 そっと骸骨の化け物が扉を閉める。

 

 

「「「「……………」」」」

 

 

 全員が沈黙し――クレマンティーヌも無言で硬直していた。

 

 再びメイドが扉を開け

 

「んあああああああア――ッ!! かm」

 

 そっと骸骨の化け物が扉を閉める。

 

「……………」

 

 骸骨の化け物は無言で虚空を見上げた。

 

 

 そして全員がしんと静まりかえる中……やっと覚悟を決め扉を開ける。

 

 

「ンハァ――ッ神イイイイイイ!! このクアイエッセ・ハゼイア・クインティア! 神からの数々の試練! しかと賜りましたアアアッ!! これに勝る喜びはございません我が神よオオオオオオ! んハ――ッ!!!」

 

 そこには全裸でハアハア、いやハフハフと興奮しているクアイエッセがおり、その頭の上ではくっついてきちゃったのか小指サイズの例の黒い昆虫がカサカサと振り回されている。

 

「うそやん…」

 

 全員が酷くどん引きする中、クレマンティーヌはひとり事切れ、いや、白目を向いて気絶した。

 

 

 

++++++

 

 

 

 クレマンティーヌは――……兄が大嫌いだった。

 

 

 どれくらいかと問われれば、殺して殺してぐちゃぐちゃにしたあと唾を吐きかけてやりたいくらいに大嫌いだった。

 自分と違い兄は幼い頃から将来の英雄を約束された才能に溢れ、両親からも周囲の奴らからも期待されてチヤホヤされて、最初は小さな羨みから始まり妬み、僻みへと変わっていった。自分がどれだけ努力を重ねても、頑張っても頑張っても、誰もが自分ではなく兄を賞賛した。誰も見てくれない。誰にも見てもらえない。

 兄は英雄で自分はただのクインティアの片割れ。

 

 だからクレマンティーヌは――兄が大嫌いだった。

 

 

 そんなクレマンティーヌは今――

 

 別の意味で兄が大嫌いになっていた。

 っていうかこんなのと血縁関係とか本当に嫌だ。マジでやだ。今までクインティアの片割れと呼ばれるたびに憎悪が湧いたが――これからはクインティアの片割れと呼ばれたら世間様に頭を擦り付けて詫びながら自害したくなる。もうほんとにやだ。

 

 

「おおおおおっ! そこにいるのはクレマンティーヌ! お前も神に威光に触れ導かれたか! 我が妹よ!!」

 

 妹とか呼ばないでくださいほんとむりですと他人のふりをするが、周りの化け物たちの視線にクレマンティーヌは勘弁してくれよと涙を浮かべる。

「……ぁ、兄貴」

「クレマンティーヌゥウウん!!!!」

「ヒイイーッ!」

 全裸のクアイエッセに抱きつかれ、クレマンティーヌは悲鳴をあげた。

 ふと周りを見渡せば骸骨の化け物やその仲間たちはまるで汚物でも見るような目で二人から距離までとっており、屈辱と恥ずかしさと申し訳なさともういろいろな感情がクレマンティーヌを襲う。

 

(殺してええええ!! いっそのこと殺してええええ!!!! もうやだあああうわああああん!!)

 

 哀れ、クレマンティーヌ。

 しかし彼女の奮闘劇もここから始まるのであった。

 




ナザリック「お前の兄貴だろなんとかしろよ」

がんばれクレマンティーヌ。
クインティア兄妹好きです。やっぱ兄妹仲良くしないとね!(白目)
そういえばなんか変態しか出てないですね、最近。もういっそのこと副題~ようこそ変態動物園~でいいんじゃね? って感じです。ごめんなさい。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。