「ペロロンチーノ殿ペロロンチーノ殿、私はやはり完璧で綺麗なものはダメなのです。そりゃあリアルだと私だってアーコロジー内上流階級なイケメン勝ち組男好きですよ? あわよくば攫って縛って虐めて監禁してでも玉の輿に乗りたいですよ? でもダメなのです。それじゃあ心にグッとこないのです!」
「ははーんなるほど。つまりシラタマ殿は汚い方がお好みだと! それはそれで需要ありますよねー俺も奴隷ものエロゲ大好物ですよ」
「いやその奴隷だって結局美少女じゃないですか奴隷舐めてんすかペロロンチーノ殿」
「美少女最高じゃないですかー!やだー!」
「でもその美少女をぼろくそに汚しまくるのは最高ですねペロロンチーノ殿」
「おお! イケる口ですねシラタマ殿今度それ系のエロゲ紹介しますよ!」
「ほんとですかあ! やっ
【モモンガ がログインしました】
「こんばんはー。あれ? 誰もいない?」
「やべえモモンガさんだ!」
「ひええ解散解散! あっモモンガさーん今どこですかー」
これはかつてナザリックにて秘密裏に行われていた『世間から白い目で見られがちな性癖同盟』会合の一幕である。
他のギルドメンバーがログインしていない時間に隙を見て行っていた性癖トーク。互いのコレ最高を語り合ったものだ。
ナザリック第九階層、至高の四十二人の居室へ続く廊下をシラタマは鼻歌交じりに進む。その道中仕事をしていたメイド達が一斉に手を止め頭を下げてきたことに少し驚いたりしたが、まあいいかとやり過ごした。
到着したのはもちろん自室である。
シラタマの部屋の内装はかつて物語で見た英国貴族のようなアンティークで揃えられ、それらしい暖炉付きだ。元々アーコロジーの外側で生まれ育ったシラタマは、アーコロジーの中よりも物語の中の世界に憧れていた。
それをなんとか再現したのがこの部屋である。が、シラタマはそれらをスルーしてその奥へと進む。そこにあるのは寝室と――
「あーはー!」
牢獄であった。
これはナザリック第五階層、ニューロニストのいるとっても素敵なお部屋を参考に自分なりに造ったのだ。
内装は繋いでおく為の鎖、壁には様々な拷問器具、そして檻の中には似つかわしくないシルクのベッドが置かれている。しかしただのベッドではなく、このベッドに張り付けられるようヘッドボードには鎖と手枷が付いている。
ノリで造ったこの場所がまさか実用できるとはと期待感にシラタマはだらしなく破顔していた。
陽光聖典達は只今第二階層にある黒棺だ。そこで軽く躾を終わらせた後、第五階層の真実の部屋行きが決まっている。シラタマにお渡しされるのはその後だろう。
「まだかなー」
ベッドにごろりと寝転ぶ。
「ひまだな……」
メイドに飲み物でも頼むか先に拷問器具でも磨いておこうかと思っていた矢先、モモンガから《伝言》が入る。
『終わりましたかあ!!?』
『あ、すみませんまだです』
『ァ、ソウデスカ…(スッ』
『ちょちょちょ!! 何《伝言》切ろうとしてるんですか!! ……さっき陽光聖典達を第五階層に移して尋問しようとしたんですけど……その……』
モモンガがモニョモニョと口籠もる。
『どうしたんですか?』
『あの……シラタマさん怒らないでくださいね?』
『そうですね、内容によっては夜中にモモンガさんのお部屋に超位魔法ぶち込みますね』
『やめてください死んでしまいます! あああ、というか死んだんです!』
『……はい?』
『……ごめんなさい。シラタマさんに言われてたニグンって人……死にました』
『今そっちに行きます』
即転移と同時に目の前で「あわわあ」と狼狽えるモモンガをビンタしてやった。側に控えていたニューロニストや拷問の悪魔たちがわたわたと狼狽えている。
「それで、一体何があったんですか? 理由によっては手出しますよ?」
「もう出してましたよ!?」
(あの
モモンガは肩を竦め、シラタマに陽光聖典達には三回質問に答えると死んでしまう呪いのようなものがかけられていたと説明する。
それにより最初に質問したニグンが死んでしまったのだと。
「いやモモンガさん馬鹿なんですか?」
「ごめんなさい! シラタマさんが早く欲しがってると思って一番に尋問しちゃったんですっ!」
(ああなるほど。私の為に良かれと思って……)
「本当にすみません」
「いいんですよモモンガさん。そんな悪趣味な呪いユグドラシルにはありませんでしたしね。むしろありがとうございます、私のお願いの為なんかに」
「いえいえ、俺も迂闊すぎました。反省です」
「モモンガさん……」
そう。我らがギルドマスターはとっても優しいのだ。だからこそシラタマはこれ以上モモンガの気持ちを落とさせないために
「大丈夫ですよホラ《
「ファッ!?」
雑談感覚で蘇生魔法を発動させた。
モモンガが驚きの声を上げ彼女を止めるすきもなく、二人の足下に転がっていたニグンが息を吹き返す。
「ななななな何やってるんですかシラタマさん!? 馬鹿ですか!? 馬鹿なんですか!? もし蘇生場所が敵の拠点とかだったら逃げられてましたよ!? こっちの情報だって」
「はえー」
「はえーじゃないですよ!!!! ――……ふぅ、もう勢いで行動しすぎですよシラタマさん……気をつけてくださいよ…」
「す、すみません…」
攻守交代。今度はモモンガが怒りだしシラタマが頭を下げる。
「……でも蘇生の実験にもなりました。ありがとうございます」
「えへへへ」
「えへへへじゃないですよ褒めてないですよ」
その後まだ意識が朦朧としているニグンを叩き起こしたっぷりと情報を吐いてもらった。
その間もシラタマは何やらひとり「ぉぃまじか……まじかよおい……いやよく聞くと……まじだ……うわあ」とぶつぶつ言っていたが、モモンガは現状とは全く関係なさそうだったのでスルーしておいた。
そしてしばらく問答をした後――さすがは隊長という役職についていただけあった――かなり多くの情報が得られたのである。
ちなみに隊員達の何人かは実験に回し、残りは保留として牢獄に入れられた。
「それじゃあモモンガさん! 今日の所は一先ずお先に失礼しまーす」
ニグンの後ろ襟を掴みズルズルと引きずっていくシラタマ。モモンガは「ア、ハイ」と応えながらも
(シラタマさんってあんなキャラだったかなあ……?)
ひとり首を傾げるのであった。
++++++
第九階層のシラタマの自室へ続く廊下、上質な赤いカーペットの上をシラタマは早歩きで進む。
もちろんニグンは引きずったままだ。
「…………あのー」
「うん?」
後ろから、というか引きずられながらニグンが恐る恐る声をかけてきた。
「貴方、いや、貴方様方は……神なのでしょうか?」
「……………うん?」
何を言い出したんだこいつはとおもわず掴んでいた手を離す。
(そういえばさっき言ってた情報にあったな……)
曰く、法国にはかつて六大神と呼ばれる神がいたと。絶滅寸前であった人類を救い、その教えが現在では宗教として法国の基盤となっている。
人間至上主義国家であると。
そう聞いた時モモンガが顔を――表情はないが――顰めていた。
しかも六大神がひとりであるスルシャーナはなんでもモモンガと瓜二つだそうだ。同じ種族、ということなのだろうか。
(間違いなく六大神とか八欲王ってのはプレイヤーだろうなあ……)
つまりこちらの世界、少なくとも法国の人間にとってはプレイヤー=神であるらしい。
シラタマは他のプレイヤーと鉢合うのはすごく面倒くさいなと小さく溜息を吐き
「……神っていうかプレイヤーだけど」
そう訂正しつつも首肯した。
「おおおっ! やはり、やはり貴女様は神であらせられたのですね!! 神イイッ!! 私が捧げてきた祈りは決して無駄ではなかったのですね!! だからこそ貴女は降臨され……っ!! あああっ!! どうか、どうか人類を……!」
(何か勝手に語り出したんだけど。宗教入ってる人ってこんななの? 怖っ)
「あーあーもういいから。話ならあとで聞いてあげるから……」
軽くあしらうがニグンの神よお救い下さいトークは止まらない。
なんだこいつは。なんなんだこいつは。
いやまあそんな所もポイント高いけどね!
もし今ここにシラタマの心の同盟者ペロロンチーノがいたとしても「うっそだろお前」と引かれてしまいそうであるが。
しかし玩具が主人の言葉に従わないのは大変問題である。ので
「黙れ!!!!」
一喝。
すると漸くニグンは「ヒイッ」と口を閉じ、神の怒りに触れてしまったと恐々と頭を床に伏せた。
(いやーでもさすがに神プレイは範囲外だわー、モモンガさんはなんか支配者ロールしてるけど疲れないのかなーアレ)
シラタマは支配者たる威厳を醸し出すモモンガを思い出し、自分には無理だなと肩を落とす。
「……まあもういいからさ。とりあえずついてきてくれる?」
「え、はっ、あの、どちらへ!?」
「ほら行くよテラ子安」
「てらこやす!? か、神よ、てらこやすとは一体!?」
「いいからさっさと走る!」
「は、はい!」
わけもわからずシラタマの後をせっせとついてくるてらこやす……じゃなくてニグン。
(うーんもしかしてちょっと早計すぎた? いや、直感を信じるんだ! うんうん、それにこういうのもありっちゃありだしね!)
何故だか本人は神の付き人にでもして貰えると勘違いしているようだが、どっこいそんなわけはない。こちとらカルマ値−400邪悪な悪魔様サキュバス様である。
シラタマはこれからこの生きた玩具でどう遊んでやろうかと期待に胸を高鳴らせるのであった。
さ、さっそくとお気に入り登録して頂きありがとうございます。
なんといいますか、本当に勢いだけで書いていきます。頭からっぽに読めるやつです。
公式アプリのストーリーいいですよね。
まさかここにきて陽光聖典が活躍するなんて…誰が予想できたでしょうか。